39話
大人の男性用革靴一足。
これほど高級な靴を履いて、この辺り、この家に出入りする人は一人しかいない。
太い肩が椅子の向こうに見えた。食卓の上の声はかなり和やかだった。
「……ですから。お薬はちゃんと飲んでいらっしゃいますか?お話を聞いて気をつけるように言っておいたのですが。」
「どういうわけか以前より良くなったわ。ありがとう、副代表。毎回こうして世話になってばかりで。多忙な方にいつも申し訳なくてどうしたらいいのかしら?」
「そうおっしゃると寂しいですよ。」
「あら、そう? あ、子供たちが来たわ。ジオ、ジロク、早く来てご挨拶しなさい。副代表がいらっしゃったわ。」
虎が振り返る。
目元にはすでに微かな笑みが浮かんでいた。
その憎らしい期待通り、ジオは両手をきちんとへその上に重ねた。
世の中を達観したキングジオはどこへやら、清鶴洞出身の子供のようにかなり礼儀正しいポーズだった。
「こんにちは、副代表。」
めんどくさいことさせやがって!
「その後、お変わりありませんか。」
さっさと失せろ。
目では全く違うことを言っているのが問題だが。
隣のキョン・ジロクも不機嫌そうな顔で頭を軽く下げる。
とにかく面白い家族だな。虎は笑いをこらえて応じた。
「私は元気ですよ。見ない間にジオさんはますますしっかりされたようですが。」
「あらあら、しっかりだなんて。まだまだよ。いつになったら分別がつくのか、行動は子供みたいで、好き嫌いばかり言って。私が40歳を過ぎても、あの子のせいで体感は現役よ。」
「好き嫌いはだめですよ、ジオさん。」
「……クソ。」
有無を言わさず公開処刑。
キョン・ジロクは、すでに部屋の中にさっさと逃げ込んだのはさっきのことだ。
ジオは魂のない顔で立って、ただ「はい、はい」と繰り返した。
違和感なく慣れた様子で会話を交わすパク・スンヨと虎。
幼い頃、国がS級キョン・ジオの担当として虎を選定したのが、すべての始まりだった。
最初は単にセンターの要請だからと承諾した虎だったが、本気になるまで長くはかからなかった。
したがって、自然につながった次の流れが、決縁後援プログラムの設立。
一つの駒を完全に隠すためには、盤全体が動かなければならない。
対外的な名目は、センターと〈銀獅子〉ギルドの公式コラボとして。
「悪夢の3月」の被害児童たちを〈銀獅子〉ギルド員たちが1対1で決縁を結び、成人になるまで世話をするという後見人制度だった。
社会指導層の率先垂範事例だと、あらゆる場所で絶賛されたが……。
実は、子供一人を水面下だけでなく、堂々と世話をするための大物たちのビッグピクチャー。
獅子の紋章が描かれた手紙が、すぐにキョンさんの家の郵便受けに投函されたのは、決まった手順だった。
そこに〈銀獅子〉副代表、「虎」の署名が捺印されたことも。
ジオをはじめ、キョン・ジロクまで。
そうしてキョンさんの二人の兄妹は、〈銀獅子〉の巨大な懐の中で育った。
幼年期のほとんどを虎と共にウン・ソゴンの大邸宅で過ごしたと言っても過言ではない。
突然の夫との死別により、一人で生計を立て、6歳の末っ子クムヒの面倒を見なければならない。
パク・スンヨにとっては命綱のようなものだったはずだ。恩人として手厚くもてなすのも当然だった。
「そろそろ失礼します、お母様。」
「久しぶりなのに食事でも一緒に召し上がっていきなさい。」
「他人と同席できない私の事情をご存知でしょう? ダンジョン化でご心配なさるかと思い、少し立ち寄っただけです。ジオさんの顔も見ましたし、十分です。」
上着を取り、虎が立ち上がった。
ゆっくりと羽織りながら片方を振り返る。
「見送りくらいはお願いしてもいいだろう。」
護衛もなしに一人で来たようだ。
大きな車は一人で路地の角に駐車されていた。家から出るとすぐに虎は懐を探った。
許可を求める眼差しにジオが適当に頷いた。
そうでなくてもずっと口元をいじっていた様子が、まさに、ずっと前からタバコが吸いたかったようだ。
あまりにも昔からの仲なので、相手の習慣のいくつかくらいは、わざわざ知ろうとしなくても知ることになった。
「私が来る前に母さんと何か話してた?」
「いつもと同じよ。獅子は死ぬまで自分のプライドを守る。そして、あなたは私のプライドの中にいる。」
「めっちゃ鳥肌。」
「この時代の若者たちの死んでしまった感受性に哀悼の意を表するよ。大人たちは好きだけどね。」
虎が目を伏せてタバコを一本取り出して口にくわえた。
「『人斬り抜刀斎』だったか?」
「……クソ。急いで適当に出てきたんだよ。」
火をつける口元からかすかな笑みが漏れる。ジッポーライターの光が大理石の彫刻のような横顔を照らして消えた。
タバコはマジシャン用角煙草。ライターは41年式オールドジッポー。
古書収集が唯一の趣味であるこの男は、年月が積み重なった物を好む方だった。
「ネーミングセンスはもともとすごいじゃない、うちのジョー様は。驚きもしないよ。」
「……」
「むかついてないところを見ると、事故を起こしたという事実もよく分かっているようだし。だから使わないサブキャラはなぜ作るんだ? 面倒なことばかりだ。」
「……」
「全部塞ぐことはできない。記者というのは、触れば触るほど騒がしくなる連中だからな。」
もちろん「キョン・ジオ」という名前が人々の口に上ることはないようにするだろうけど。
「万が一に備えてB級ハンターライセンスが一つ発行されるだろう。局長と合意した内容だ。」
「何でもいいよ。私はうちの母さんさえ知らなければいいだけだから。」
虎が失笑した。
「王の逆鱗に触れるほど人々は愚かではないからな。」
「……」
「タク・ラミンと言ったか? 一人だけなかなか賢く立ち回ったようだ。」
文書を閲覧した直後、勘の良い緊急対応班は情報統制を要請した。
おかげでセンターでも素早く動くことができた。
報道陣の方は、言ってみれば、より大きな騒音を防ぐために放置しただけだ。
今頃、ダンジョン内の目撃者たちは一人残らず政府と接触中だろう。秘密維持誓約書に署名するために。
だから人々がいくら「抜刀斎」についてあれこれ言ったとしても、表面をなぞるに過ぎない。
「キョン・ジオ」という内核まで掘り下げる可能性はなかった。
「顔が売れてないのを幸運に思え。そうでなければ、これほどきれいに済まなかっただろうからな。」
「ふむ。ところでB級ライセンスとかいうのは必ずもらわないといけないの?」
「お前も知っているように……国家権力で口封じ不可能な一人がいるじゃないか。徹底していて損はないだろう。」
ろくでなしの暴力団豆腐め。
ジオは心の中で黎明を思い切り噛み砕きながら呟いた。
「忙しそうだね。」
「おかげでミーティングをいくつか潰したよ。」
タバコの火が早く燃え尽きる。
最後の煙まで吐き出した虎の靴が火種を踏み消した。
見当違いなところばかり見ている視線。
虎は自分の大きな手をその頭の上にぽんと乗せた。
「似合わないのに気を遣うな。」
「……やめて。」
「罪を犯してしょんぼりするのは犬たちがすることだ。可愛いけど猫らしくしろ。私は偏った人間だから犬の世話には興味ないんだ。」
「何よ、どけて。」
パチン、と音がするように叩き落とす手。
虎が笑った。
「こうでなくちゃ。」
そのまま車の方へ歩いていく。
遠ざかる、適当に履いたサンダルと艶のある男性用革靴の距離。
ジオはしばらく見てから後を追った。
「はい。」
差し出した黄色い傘を虎が見た。なぜ持ってきたのかと思ったら。
「雨が降るなんて言ってなかったぞ。」
「私がもっと正確なの。今夜は豪雨よ。」
ぶっきらぼうに言い放ってさっと振り返る背中。一度振り返ると絶対に振り返らない方だった。
路地の角の車はその小さな背中が完全に見えなくなる頃になってようやくエンジンがかかった。
そしてその夜。
虎はぼんやりと車の窓の外を見つめる。
ぽつり、ぽつり。
突然始まった雨粒は飽きることなく一晩中を濡らしていた。
ドアを開けると護衛たちが慌ただしく傘を広げる。彼はその下に入る代わりに手の中の傘を開いた。
大きな黒い傘の中で黄色い傘はひどく目立った。
笑わずにはいられず虎は笑った。
「小さいな。」
お前のサイズを渡してばどうするんだ?
このバカが。
* * *
[おはようございます、バベル! 視聴者の皆さん、CMを見てきました! 私は皆さんのMCモナ!]
[MCリザです。]
[水曜集中分析コーナー! 現在、招待席には貴重なお二人、ギルド「ヘタ」の大長老、8位ランカーのチェ・ダビデ様!]
[ハイ。]
[そして魔塔から来てくださった17位ランカーのチョン・ヒド様!]
[こんにちは。]
[なかなか見られない1番チャンネルのハイランカーのお二人が、引き続き私たちと一緒にいてくださっています!]
[途切れていた話を再開する前に、1部を見逃した方のために簡単に要約説明してみましょうか、リザリザ?]
[はい、モナモナ。今日の集中分析コーナーでは、昨日SNSを熱く盛り上げた巷の話題、鍾路2級ダンジョンに出現した、別名「抜刀斎」様に関する話を扱っています。]
[平均D級の攻略隊を連れて2級攻略に成功しただけに、優れた実力者であることは証明されたも同然でしょう! そうですよね?]
[ええ。また、それに比べて露出された情報は極めて少ないですし。]
[だから、眼識のある専門家が見ると果たしてどうなのかと思い、こうして! お二人を苦労して招いたわけです!
とりあえず先ほどダビデ様は、非常にレベルの高い剣士だと確信されていましたが! イギ……イギオ……先ほど何とおっしゃいましたっけ? すみません!]
[以気御剣鋼。]
[はいはい! イギオゴムまでは聞いたことがあるような気がしますが、イギオゴムガンは初めて聞きます。一文字だけ違うのに違いが大きいのですか?]
[何……比較になるか? イギオゴムは格好ばかり気にする奴らが、落ち着きなく棒をブンブン振り回しているだけで、それをどんなクソができないんだ、ああ?]
[きゃあ! ごめんなさい! 怒らないでください! モナを助けて!]
[ひ、卑猥な言葉の使用はご遠慮ください、ダビデ様。]
[ああ、いいから! もう騒ぐこともない。こいつはただのすごい奴なんだって。普通のイギオゴムガンでもなく、形が全くない剣鋼を飛ばすじゃないか。まともに目ん玉がついてる奴なら、欲しがるしかない人材だ。そういう意味でうちの……]
[ちょっと待ってください。失礼ですが、私の見解は少し違います。]
[何だと! 陰気な魔塔の奴が何を知って口出しするんだ? 黙ってろ!]
[……昨日、誰かが魔法オタク・ラミンだと言っていたので、夜通し映像分析をしてみたのですが。私たちは二つの可能性をさらに考慮する必要があります。この映像が操作されたか、あるいは……]
もしかすると「抜刀斎」という方は、相当な実力の魔法使いなのかもしれません。




