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38話 3.熟すほど頭が下がると、首が痛くなります

当面の危機脱出に目がくらみ、サブーキャラを誕生させたキョン・ジオがうっかり見過ごしたこと一つ。


関心種はいつどこにでも存在する。


人が大勢集まれば、目の前で誰かが怪物と死ぬほど一生懸命戦おうが、後ろでこっそりライブ放送でもつける種も必ず一人くらいは混ざっているものだということだった。


「失敗したよな……」


[あなたの聖約星、「運命を読む者」様が、だから何でも前もってやっておくべきだったと言って愛情のこもった小言を言います。]


[うちのベイビー、危うく全国津々浦々に可愛い顔を全部売るところだったと、誰かのプレゼントのおかげでなかったら必ずそうだっただろうと、あからさまに褒めを要求します。]


「黙っててくださいよ。」


ローブの中のジオが泣きそうな顔をした。


完全に元の木阿弥になった計画。


ダンジョンでファン・ホンが人々に口止めしろと脅しはしたが、それを信じるほど純粋なはずがない。


ジオは別の頼れるもの、いや、スキルがあった。


まさに「ライブラリー - エディター」。


別名、編集モード。


「ライブラリー化」した領域全体に対する編集権限を持ってくることで、人々がジョーの「消しゴム」と呼ぶ力もこれに属した。


ソンルン駅の時のように、今後の「展開」まで修正可能な状況で、人々の記憶をいじれないはずがない?


もちろん完全に記憶修正は危険負担が大きい。


だいたい彼らの記憶の中でジオの存在感をぼんやりさせるオペシティ調節程度で十分だった。


パーセンテージを半分だけ下げても、人々は抜刀斎キョン・ジオを簡単には思い出せないだろうから。


しかしメインスキルであり、聖位固有スキルであるだけに、発動時の魔力波動と存在感が非常に大きい「ライブラリー化」。


S級暴力団豆腐の視線もある。


ダンジョンの外に出たら、遠く離れてこっそり手を加えるつもりだったのに……





カシャカシャ!


爆発するフラッシュ及びシャッター音。


また久しぶりの特ダネに、必ずインタビューを取って帰ると騒ぎ立てるハンター部記者たちの怒号まで。


「一体何人いるんだ?」


スキル発動はくそ。


さらに抜刀斎様は誰かと記者たちがしつこく問い詰めると、純粋にもこちらを見ている間の抜けた生存者たちまでいた。


瞬間、記者たちの目にぱっと燃え上がる火花。


「うーん……」


前には記者たち、後ろには生存者たち。


中間に挟まれたジオが、私の道はどこにあるのか、どこへ行くべきなのか、かなりダメになったことを実感するその時。


ヒーローが登場するにはまさにうってつけの最高のタイミングだった。





ブオオオーン!


地軸を揺るがすモーターサイクルの排気音が聞こえた。曲がったタイヤが床をこすって焦がす匂いも。


群がっていた記者たちがわっと我先にと逃げる。


無慈悲に人波を切り裂いたつや消しブラックのバイクが正確にジオの前に止まった。まるで怪物の泣き声のようなエンジン音だった。


魔石を叩き込んで基準値をはるかに超えた改造レプリカ。


ゴシップに関心がある人は皆、持ち主を知っている有名なバイクであり、知らない人も見分けざるを得ないギルドマークだった。


シャッター音が止まった。誰かがうめき声のように囁いた。


「バビロン……」


それが全てだった。静寂が訪れる。


有名人も有名人なり。


有名な人にちょっと会ったからといって大声で騒ぎ立てるには、今現れた男はあまりにも大物すぎた。





タン、


荒々しくヘルメットを脱ぐ手つき。


ギルド〈バビロン〉の幼い主人、「ヤングボス」キョン・ジロクがうんざりした眼差しで座中を見回した。


「カメラを片付けろ。全部壊す前に。」


気性が荒く、私生活に敏感なことで有名なバンビだ。


その警告を無視するほど命が惜しくない人はいなかった。


いくら覚醒者が一般人をむやみに扱えないご時世だといっても、キョン・ジロクほどの人には無意味な話だ。


静かな中、キョン・ジロクが脱いだヘルメットを片方にぽいと投げる。


「何をぼんやり見てるんだ?乗れ。」


荒い口調とは裏腹に、それとなく優しくトスしたヘルメット。




感動した布のキョン・ジオがそろりそろりとバイクの方へ近づいて行った。



「これが……虎の威を借る狐の醍醐味……」


「何だよ、狂ったのか。荷物はまたなぜそんなに多いんだ?ダンジョンの家財道具を全部盗ってきたのか?」


初めて味わう虎の威を借る狐の麻辣味に酔いしれた耳には、弟のひどい言葉など聞こえなかった。


こうしてロマンスファンタジーで家族を極悪暴君に設定するんだな。


権力者登場で人々を黙らせる麻辣味の痛快さがすごい。


ジオはキョン・ジロクの背中にぴったりくっついて囁いた。


「バンビ、出発して。」


「……気が狂ったか。」


「私たちのジャンルはギャルゲーだよね?バイクまで完全に四天王の雰囲気。」


これが本当に口に出さなければいいのに。


誰のせいで顔が売れているんだ?


キョン・ジロクはうんざりしてアクセルを引いた。再び遠い轟音が鳴り響いた。







* * *


さっと遠ざかるモーターサイクル。


ファン・ホンは色眼鏡を外した。


かがめていた体を起こし、眼鏡のフレームで口元をトントン叩く。興奮した人々がそれぞれ我慢していた声を爆発させていた。


「わ、何、何、私バンビの実物初めて見た!やばい。」


「さっき何?キョン・ジロクがここへなぜ来た?」


「えー、クソ、ちぇっ!こうなると特ダネは特ダネだが、使えない特ダネだな。キョン家のやつ有名じゃん。攻略関連以外は自分の記事一行も出させないって。」


「抜刀斎って一体誰なんだ?なんで、キョン・ジロクが連れて行くんだ?」


音もなくその人波から抜け出すファン・ホン。


遠くで待っていた者たちがその後ろについていく。


「ヘッド。」


「……」


「これは一体どういう騒ぎですか?ライブから記者たちまで。露出でもされたらどうするおつもりで!だからダメだってあれほど止めたのに……!」


「ウナセムが。」


「はい。」


「まあ、お前の小言はしまっておいて、さっさと調べてみないと。」


外見とは相反する男性的な低音。


普段は明るく騒いで目立たないだけで、本気になればいつでも重みがこもった。


すぐに口を閉じたウナセムが彼のヘッドの前に恭しく頭を下げた。


夕焼けが迫っている。ファン・ホンは伸びをした。




「まずユン・ウィソ。何をするやつなのか調べてこい。下で何が腐ってもひどく腐っているのか、匂いがひどく臭い。」


それからもう一つは……


「見たろ、お前も?」


「バビロンギルド長のことですか?」


「それ以外に。あの食ってやるべき鹿の角のやつが拉致していった娘。猫みたいに小さくて可愛い娘がいるじゃないか。」


角を曲がると現れる一列の黒い乗用車たち。


腰をかがめた大男たちを悠々と通り過ぎながら〈黎明〉のギルド長、ファン・ホンが笑った。


「徹底的に探れ。あるもの全部。」








* * *


弟のキョン・ジロクがモーターサイクルに乗り始めたのは中学校の時。


覚醒した後、ハンターライセンスを発給されるやいなやだった。


本来は満16歳以上からしか取得できない原動機免許だが、国家が認証したハンターライセンスを所持している場合なら例外となる。


危機的状況時の素早い機動力のためだとか何とか。


もちろん誰でもできるわけではなく、色々と条件が厳しいが……


ご存知のようにキョン・ジロクはスペシャルなS級。ヘルメット未着用も許容されるほどだ。


ジオはヘルメットを脱ぎながらぶつぶつ言った。


「超不便。お尻が半分になったみたい。」


「後ろに誰かを乗せるために作ったんじゃないから当然だろ。乗せたこと自体がこいつに対する侮辱だ。お前すぐにうちのクリスティーナに謝れ。」


「……いつも言ってたクリスティーナってこいつだったの?」


「クリスティーナ・キョンがこいつ以外に誰がいるんだ?」


「まさか苗字はキョンなの?」


「俺の娘だから当然キョン氏だろ、。」


とんでもないことを聞かされたという目つきで睨みつける。


「今私がおかしいのか……?」


私の甥がバイクとは……


いつもクリスティーナ、クリスティーナと歌うから、どこか外国人の彼女でもいるのかと。


ジオはとぼとぼと家の門に向かって歩いて行った。


(片方がひどい力隠しだが)S級二人が住んでいるにしてはかなり質素な外観の住宅。


しかしこれさえも、家賃暮らしだった幼い頃と比べると天地がひっくり返るほど変わったことだった。


母方はその有様だし、父方は全くいないし。


貧しい暮らしの中で三兄妹を育てると両親二人が苦労した。


「悪夢の3月」事件で父親が死亡したが、ジオがその時覚醒して家計が良くなったのが皮肉といえば皮肉。


最初のS級に良く見せようと政府が裏でそれとなく面倒を見てくれて。


また後見人として乗り出した〈銀獅子〉ギルドでも物心両面で後援してくれたから。


もちろんそれもキョン・ジロクのデビュー以降は全部必要なくなった。


水準以上のハンター一人が記録する収入はまさに途方もない。


各種アイテム及び金銀宝貨から魔石たち、その他戦闘外的収益まで。


今キョン・ジロクほどのレベルならほぼ天文学的な金額を稼ぎ出していると言ってもよかった。


しかも「ジョー」と関連した副収入もまた侮れなかったし。


したがってキョン・ジロクが何度か良いところに引っ越そうかとそれとなく母に勧めてもみたが……



「おい、装備を全部脱いで入れ。」


「あ、そうだ。はい、あげる。」


「ふざけてるのか?お前のインベントリに入れろ。なぜ自然に俺に渡すんだ?」


「……私のお星さまがこれ全部体に良いって。」


「なに気を使っているふりをしている?分かりきってる。インベントリに空きがないんだろ?整理一つもしてないんだろ。想像がつく。」


「うちのバンビを愛してるから、あげるの……」


「消えろ。ああ、こいつを本当に殴ることもできないし。よこせ。」


ぶつぶつ言いながらアイテムを受け取るキョン・ジロク。


深いアイホールと高い身長。


ジオは表向きは、心の中でも大人びた弟をじっと見つめる。


行動はやや荒っぽいものの、生まれ持った性分だけは元々優しかった。


よっぽどなら胎名である「バンビ」を成長してからもそのままずっと呼んだだろうか?


家でずっとバンビと呼ぶから、小学校の頃まではキョン・ジロクではなくそちらが自分の本当の名前だと思っていたやつだ。


そしてそんな鹿のような息子が最前線で戦うハンターだという現実をパク・スンヨは簡単には受け入れられなかった。


今はまだキョン・ジロクがくれたプレゼントも持ち歩くほど良くなったが、一方ではまた相変わらずだった。


相変わらずバンビがハンターとして稼ぐお金を使うのを嫌がり、相変わらずバンビが塔へ出発すると眠れない日々を送った。


だから三兄妹は相変わらず彼らが生まれたこの町に住み、相変わらず平凡な娘、息子であるかのように過ごしている。


少なくとも家の中ではハンターと関連したものは何も見えないように。


「……何?このモノクルなぜ伝説等級で騒いでるんだ?ちょっと待て、これ、一体いくつあるんだ?何か根こそぎ奪ってきたみたいに。どこかサイコロの神でも降りたのか?」


「天才じゃん!」


素早く整理を終えたキョン・ジロクが手をパンパンと叩いた。


「どうせ使わないから適当に処分する。ところで、お前ダンジョンが爆発するやいなや母さんに電話はしたか?」


「当然したよ。すぐにした。」


「何て言った?」


「塾がダンジョンになって、友達を失って、目撃者だから協力してほしいと言われて、しばらくいたら、帰ると。夕飯前に帰ると言った。」


黙って差し出す手のひら。


ジオはパチン、軽快にハイタッチしながら歩いて行った。


そうやって言い争いながら庭を通り過ぎる二人に聞こえてくる声。


「迎えに行ったの?」


特有のシニカルな口調がはっきりしている。開いた玄関に斜めに寄りかかった末っ子キョン・グムヒが首をぶんぶんと横に振った。


「シスコンの極みじゃん。早く入ってきて。お客さんが来てるわ。」


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