364話
「....だから、最初に失敗した時に諦めればよかったのに、最後まで意地を張って試みるから。バベルは一寸先も見えない星座の無謀さに本当にため息しか出ません。」
「あのドブズシュート」
ファン・ホンへの怒りに、触手チュー想像の余波も跡形もなく洗い流される。
ジオは歯を食いしばって拳を握りしめた。
とにかく、私の人生に何の役にも立たない小麦粉ヤクザ豆腐。
馬鹿が敏感だと厄介だと言うが、ファン・ホンはまさにその通りだった。
「なんだ、ここに猫がいるのか」
「ニャア~。」
「こいつ、過度に可愛すぎるのがすごく怪しいぞ?100%モブだ。間違いない。通報しろ、お前ら。」
「はい、兄貴!」
「ニャ、ニャアク…!(犬野郎!)」
1回目の試み、失敗。
「こんにちは。席、空いてる?ちょっと座るね。」
「、、、、!く、夢にまで見た俺の理想のタイプ......?! 」
「(ふふん。やっぱりな。)ここ、すごく騒がしいけど、一緒に出かけない?」
「俺と?わ、なぜ?どうしてですか?」
「別に。そんなこと、わざわざ聞くの?当然、君が気に入ったから-」
「スパイだ。」
「?????!」
「お前みたいなやつが、俺をひと目見て気に入るはずがない!」
「マジかよ、なんでそんなに断固としてるんだ?」
「美人局だなんて、そんな安っぽい手にこの俺、ファン・ホンが引っかかると思うか!」
「男!男!男、ファン!ホン!」
「うちの兄貴の理想のタイプは、百回言い寄っても兄貴に目もくれない、クールで気高い人間猫美女だ!おい!予習復習して出直して来い!」
「そうだ!ウォー!」
「こ、こんな馬鹿集団、初めて見た、、、、!」
2回目の試み、壮絶に失敗。
「最高管理者、これ以上無理をすると本当に大変なことになります。もう諦めて復帰された方が.... 」
「黙れ。キングが刀を抜いたら豆腐でも切らなければならないんだ。帝王の面子にかけて、このまま引き下がれるものか。」
「死ぬほどムカつく」
「来るぞ、あそこに来る。シー。んん。」
「チイイイイ!」
「••••••?!コ、ゴホッ。(この消毒液、何だ!)」
「悪かったな、ヒヨコちゃん。最近、全国的にトコジラミが大発生してて、お兄さんがすごく用心してるんだ。それじゃ、アディオス。」
「••!(このクソッタレが!)」
3回目の試み、失敗。また失敗!
「マジでクズじゃない?どうしてあんな可愛いヒヨコに消毒液なんかかけることができるんだ?」
あの豆腐サイコパスか?
「消毒液ではなく、バベルは芳香剤だと記憶しています。」
「もっとムカつく。芳香剤と殺虫剤も区別できない奴にやられるなんて、もっとムカつく、、、!ああ、お母さん、あああ、、、!」
無理に繰り返し顕現した後遺症で、次のターゲットであるナ・ジョヨンに会いに行く時には、コガネムシの姿だった。
ナ・ジョヨンが、ただの虫けらにさえ優しい天使だったから良かったものの、とんでもない。
とにかく、余波がそんな顕現体にだけ及んだのなら、まだ良かった。
一時的な顕現体なんか、用が済んだら脱ぎ捨てればいいんだから。
ところが。
「これから力を大きく使う時は、ずっとこの状態だって言うのか?私の本体がこうなってしまったって言うのか。はあ。いつまでこうしていなければならないのか、本当に計算が合わないんだけど?」
「最高管理者が万全の状態だったなら、この程度のペナルティくらいすぐに回復したでしょう。しかし、90%以上の力を「世界復旧」に投資されたではありませんか?」
「それとも、今からでも回収しますか?」
「まさか。そんなわけないだろ。どこで荷物を持ち上げようとしてるんだ?生意気な。」
「あまりにも嫌がっていたので、もしかしたらと思いました。」
「だから、最後のことは本当にやめておけばよかったのに、、、。あのネームド個体に、結局、最初から最後まで全部手取り足取り教えてしまったせいで、ペナルティをまともに受けたのではないですか。」
「あいつが馬鹿なのが、私のせいか!」
悔しくなったジオが、再びうつ伏せになって足をバタバタさせた。鱗と羽がパラパラと落ちた。
「あいつの執着は、、、、」
一人くらい諦めてもいいはずなのに、それができなくて。はあ。バベルがため息をついた。
「とにかく、これで計画されたすべての宿願は干渉が完了しました。」
「あっ-」
「最高管理者」
「バベルは最後に尋ねます。」
「本当に実行しますか?」
「警告します。開始すると、このプロセスをキャンセルしたり、元に戻したりすることはできません。」
バベルが淡々と通告する。
普段とは違って人間味もなく機械的に表示されるそのアラートウィンドウに、ある懐かしさがこみ上げてくる。
だから星座は、キョン・ジオは喜んで笑った。
「ああ、バベル。」
未練なく決断を下した。
「私は今から『世界』を復旧する。」
「最高権限命令を確認。」
「命令を遂行します。」
「命令:世界復旧」
「掲示者:星座 キョン・ジオ」
「対象:バベルネットワーク内のすべての世界」
「復元基準点:メインストリームE03K-1093(物質界07番銀河 - 太陽系惑星地球)、国家大韓民国 - 20XX年3月1日」
「システム復元プロセスを開始します。」
「中断できません。」
ポツン。
感覚範囲に届いていたすべての星系の流れが止まる。
時間、空間、万象力など、バベルを構成していたすべての要素が一時に停止した。
万流標中断。
各地各所で管理者たちが忙しく記録していたデータ、星団に上っていたすべての功績値が流れに逆らって上り始める。
逆算。
逆流。
逆結。
木の葉が咲き、散る。
三つの柱が壊れては再建されるのを繰り返した。
世界線と運命の車輪が歪む。
天秤の塔がよろめく。
星と神、超越者と微物、全銀河の生命と死が揺れ動く変化の波に揺さぶられた。
バベルと星座を探して叫ぶ。
しかし、もう取り返しがつかない。
星座は目を閉じた。
そして、、、、、。
すべてが無限に遠くなる頃。
《バベルネットワーク、星系アラート》
「世界復旧 」
ザーーーーーー......!
「風.......」
肌に触れる馴染み深い風の感触。
うぶ毛が逆立つ。
つま先から上がってくるくすぐったい感覚に、百会穴までゾクッとした。
続いて、息苦しい煤煙と地熱で熱せられたアスファルト、道端の食べ物と豆を挽く香りなどなど。あらゆるものが混ざり合って五感を刺激的に掻き回した。
目が回る。
忙しく行き交う人々の、それぞれ異なるデシベルの話し声が聞こえてきて、ますます。
「は。」
キョン・ジオはついに堪えていた息を吐き出した。
果てしなく長かった髪が、いつの間にか短くなって首のあたりで揺れている。
そのくすぐったい感覚。
そして。
「目を開けないのか?期待してたじゃないか。」
自然に後ろから抱きしめてくる腕。
自分がいる場所は当然ここだと言うように、とぼけた態度に思わず笑ってしまった。
「ああ、待ってたよ。」
キョン・ジオはその馴染み深い腕を撫で回しながら目を開けた。
眩しい日差しが網膜を刺す。
3月。
それほど熱くも寒くもない、ほどよく熟れた春の日差しだ。
首を精一杯傾けた冬が、彼女の耳元で囁いた。
「おはよう、愛しい人。」
「うん。」
その硬くて頼もしい腕の中で、自分のように短くなった灰色の髪を指の間で散らしながら、ジオは正面を見つめた。
韓国が、ソウルが見える。
人々が見えた。
高い摩天楼と熾烈なアスファルトジャングル。
憎くて愛おしい、自分だけのユートピア。
私の、私たちの故郷。
ティリン!!
目の前に馴染み深いステータスウィンドウが表示された。
センスの良いバベルのサービスだ。
[覚醒者 キョン・ジオ.]
[故郷へのお帰りを歓迎します。]
それにもう笑いを隠すことができなかった。
キョン・ジオは明るい笑顔を爆発させた。
声を出して笑った。
振り返ると、つられて嬉しそうな彼がジオをひょいと抱き上げた。そんな恋人の首に抱きつきながら、ジオが囁いた。
「家に帰ろう。」
「ああ。」
冬がニヤリと笑った。
「私は死んだな。キョン家の人たちに。」
「キョン家だけ?」
「ああ。うちの女史がいるな。パク家も追加。」
「パク家だけ?このクソ星、勘違いがひどいな。」
「核家族って聞いたことあるか。私は直系血縁だけを扱うんだ。誰のために、根も葉もないやつらまで数えるんだ?」
「何、その偏狭な発言は?その基準だと、あんたも私も他人じゃない。完全に他人。」
「ワイフ、くだらないこと言ってないで、行きましょう。」
「な、何?」
「婿の初訪問なのに、うちの義母が何か用意してくれてるかな。ダーリン、実家に連絡してみたら?」
「こいつ、とうとう頭がおかしくなったか。キムチ汁は一人で飲んでろ。」
☆
「息子!何かあったの?大丈夫?ちょっとドアを開けてちょうだい!え?お母さんが心配でそう言ってるの。息子!息子?ダメだ。ゼミに連絡を、、、、!」
「お母さん!俺をちょっと放っておいてくれ!」
「本当?大丈夫なの?ああ。ベッドからドタバタ転げ落ちたりして。うちの子、朝からどうしたの、心配だわ。」
シャー。ポツン。
蛇口の水滴が止まる。
洗面台にもう一度顔を突っ込み、顔を上げると、白くて滑らかな顎から水滴がポタポタと落ちた。
誰が見ても、朝から一体何をやっているんだと思うだろうが、冷水摩擦でもしないと、本当にこの現実が信じられない気がして。
だから、そうするんだ。
水蒸気でいっぱいの浴室。
手のひらで鏡をサッと拭くと、顔が現れた。
びしょ濡れのピンク夕焼け色の髪、冷水とは名ばかりで、夏でも冷たい水で洗わないせいで暖かく温められて、ほどよく赤らんだ頬。
髭の跡一つないつるつるの顔は、紛れもないお坊ちゃま。
しかし、上半身にびっしりと入った尋常ではないタトゥーが、彼を安易に推し量ることができないようにする。
見栄えのためと言うには、あまりにも醜悪な人生の痕跡。
当然だった。
この男は、世界規模のギャングスターギルド〈黎明〉の主人。この国にたった4人しかいないS級覚醒者だから。
「資格は十分だ、ああ。あり余るほどに。だけど。」
バチン!
彼は容赦なく自分の両頬を叩いた。
ジンジンする。
じゃあ、本当にこれが夢ではないってことか。
「、、、、。うわ、大変なことになった。じゃあ、俺が本当に。」
ファン・ホンは鏡をグッと押さえた。
鏡の中、前例のないほど深刻な眼差しの青年が彼を見つめる。
これが本当にマジだって?
「俺が、回帰者だなんて、、、、!」
俺が、この世界の主人公だなんて?!




