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361話

「…あの、子猫ちゃん?出てきてくれるとありがたいんだけど。おじさん、急いでるんだ。どいてくれる?」


「ミャアアアオン。」


「……」


……困ったな。


腕組みをしたジョン・ギルガオンが車のキーで顎をじっと押さえた。


この難関をどう乗り越えればいいんだ?考えろ、ジョン・ギルガオン。



「いや、それにしても真冬でもないのに猫が車の下に……」


「ニャア。」


「あっちに他の車がたくさんあるじゃないか。少し場所を移ってくれない?君の暖炉にするには、あの車は高すぎると思わない?」


「ニャアアアク!」


「オーケー、オーケー。わかった。落ち着け。なんて猫の気性だ。」


無理やり引っ張り出してどかすには、あまりにも小さな猫だ。


体格を見ると子猫のようだが、親もいないのに一体なぜこんなところに?


ジョン・ギルガオンは黒い子猫を心配そうに見下ろし、そっと近づいて車のドアを開けた。


開ける音に驚いてどこかへ行ってくれという気持ちでした行動だったのに。


「ニャア〜。」


「ちょ、ちょっと!」


そのまま飛び乗って中へジャンプ。



「……事がここまでこじれるとは?」


「ニャハ。」


運転席に乗り上げた猫が再び立ち上がり、見せつけるようにとぼとぼ歩いて助手席に体を丸めて座った。


完璧な占領。


「……」


ジョン・ギルガオンはため息をついた。


「これ、猫じゃないかもしれない。」


「ニャハアアク!」


「あの、お客様?何か問題でも?」


ドアを開けたまま固まってしまった彼が気になったのか、従業員たちがそっと近づいてきた。


そして、そんな彼らの後ろに見える、まだ未練がましい顔で覗き込む人々。


「捕まったら最低30分以上……」


「いえ、何でもありません。」



バタン!


ジョン・ギルガオンはすぐにドアを閉めてエンジンをかけた。


彼の事情も知らない猫は、隣で大あくびをしている。


「参ったな。私は毛むくじゃらの動物は大嫌いなのに。お前、基礎予防接種は済んでるのか?」


「フニャアアア。」


「…ハハハ。まるで興味がないって顔だな。まあいいさ、モンスターじゃないだけマシだと思うしかないか。洗車してたら猫を拾うことだってあるさ。そういうことだ。」



オーケー。精神勝利、終了。


ジョン・ギルガオンは悟りを開いた顔でナビを操作した。


その状態で車が出発して5分も経たないうちに、着信が入る。


手足も同然の秘書、ビビアン・キムからだった。


「出発されましたか?シン社長がさっきからずっと大騒ぎですよ。」


「なぜ?」


「どこからかギルド設立の話を聞きつけたみたいで。本部長が独立するって本当かと、秘書室をひっくり返したそうですよ。」


「なぜ他人事のように言うんだ?お前は今、秘書室じゃないのか?」


「抜け出してきました。うるさくて。コーヒーでも飲んでます。本部長が入られる時に一緒に入ろうと思って。」


「……すごいな、本当に。会社生活ってそうやってするものなんだな。本当に尊敬するよ。」


「ありがとうございます。タイミングを合わせて入らないといけないので、到着する前に連絡してください。デザートも頼んでありますから。」



「少し遅れる。」


「まさかまだ洗車場にいらっしゃるんですか?」


「いや。出たんだけど、出る途中でちょっとした問題が発生してな。近くの動物病院に寄ってから行くよ。」


「動物病院ですか?近くで魔獣でも捕獲したんですか?ゲートの連絡は受けてませんが。」


「似てるけど違う。」


ジョン・ギルガオンは、まるで自分の家のリビングのように食パンを焼いている助手席の猫をちらりと横目で見た。


「ノーマルな子猫だ。私の車に不法侵入してきたからって、会社まで連れて行くわけにはいかないだろ。動物病院に預けようと思って。そうすれば、そっちで何とかしてくれるだろう。」


「ああ〜。飼うおつもりはないんですね?最近の本部長の精神状態には、ペットを飼うのも悪くないですよ。アニマルセラピー。」


「すでに食わせてる人間の動物が何千人もいるのに、全くセラピーになってないんだが?とにかく切るぞ。デザートは法人カードで落としとけ。サボってる家族でも、私の家族には変わりないんだから、私が面倒見なきゃ誰が面倒見るんだ。」


「あら、勤務時間に個人カードを使うんですか?当然のことを恩着せがましく言わないでください。ゆっくり来てください。」


電話が切れると、車内に再び静寂が訪れる。


ラジオでもつけようかと思ったが、ジョン・ギルガオンはやめた。他人の声はない方がマシだ。



「…アニマルセラピー、か。」



ふむ……


ハンドルをトントン叩いていたジョン・ギルガオンが、ふっと笑って助手席に手を伸ばした。


「パパと暮らすか?お前一人養ったところで、私の生活が困窮するほどではない… あ!ちょっと、信号!信号が変わったじゃないか!運転中だぞ!」


「ニャアアアアク!」


あ、いや、なんて気性だ?!


ジョン・ギルガオンは唖然として、あっという間にボロボロになった自分の人差し指と猫を交互に見た。


子猫だと思っていたのに……トリプルA級ハンターの体に傷を……?


「…パパって言うのは取り消しだ。とても勇敢に育ちましたね、お嬢様。」


「ニャ。」


歯を食いしばった彼の言葉に、猫が鼻でせせら笑う。そんなはずはないだろうが、本当にそうとしか見えない表情だった。







「…だから。ガオン!わかった?結論は申し訳ないけど、また連れて帰ってくれってことだ。」


「……」


「ギルガオン?もしもし?聞いてる?」


「…あ、すみません。何とおっしゃいました?」


ノンストップで続いていた会議ラッシュがやっと終わった後、オフィスに戻るや否や受けた電話だった。


ジョン・ギルガオンは乾いた手で顔を洗い、眠気を追い払った。



「いや〜、本当に。お前が少し前にうちの病院に預けた猫のことだよ。」


「猫?…ああ。はい。」


最近、社内では彼が会社を辞めて独立するという噂が広まっていた。


そのせいで、会社の雰囲気は非常に不安定。


噂の真偽を確かめようと探りを入れる人から、自分が掴んだ綱が失敗だったのではないかと不安に思い、しがみついてくる人まで。


最後まで秘密にするつもりはなかったが、予想以上に疲れるのが事実だった。


洗車場で拾った猫のことなど、その間に頭の中から消えてしまうのは当然。



「また連れて帰ってもらわないといけないんだ。お前が。」


「なぜですか?何か問題でも?」


「そういうわけじゃないんだ。何も異常もない。むしろ健康すぎるくらいだ。問題は、こいつがしょっちゅういなくなるんだ。」


「え?それはどういうことですか。」


「言葉通りだよ。いなくなるんだ。うちももっと気を配ってケアしてるんだぞ?それでも本当に跡形もなく消えてしまうんだから。お前がうちの病院に立ち寄る時だけ、何事もなかったかのようにまたおとなしく入ってきてるんだ。」


「……一体どういうことだ、これは。」


そんなことが可能なのか?


「普通の猫で間違いないんですよね?」


「お前、私の腕を疑うのか?」


「まさか。先輩の実力を。確認のためにお聞きしたまでです。普通のことではないので。」


「確かに普通のことではないな。ただうーん……妙に賢くて、人見知りするみたいなんだ。とにかく、健康に異常もないし、お前しか探さないから、お前が来て連れて帰ってくれ。お前が拾った命なら、最後まで責任を持たないと。」


「先輩。言いましたが、私が拾ったのではなく、あいつが勝手に私の車に…」


「じゃあ、今日ピックアップすることでいいな。カミのお父様。」


「カミって何ですか?誰がお父様…先輩、先輩?」



ああ…本当に参ったな。


知り合いの病院だからと何も考えずに預けたのが間違いだった。


後悔しきりだ。頭を抱えて悩んでいると、携帯電話が再び鳴った。


先輩からのメッセージ。


病院が閉まる前に来いという、親切な営業時間案内だった。いや、ちょっと待てよ。


「何で病院がこんなに早く閉まるんだ、また?」


みんな本当にワークライフバランスを徹底してるな。


すごいな、韓国国民たち。


ジョン・ギルガオンは大きくため息をつき、車のキーを手に立ち上がった。


「あら、もう退勤されるんですか?」


外に出ると、彼の服装を素早くスキャンした秘書たちが、コートまで羽織っているのを見て、急に顔色を明るくした。


最初はみんなこんなじゃなかった気がするんだけど……これも全部ビビアンのせいだ。


ドジョウ一匹が川を濁すとは、まさにこのことだ。


「…退勤でもしてください。」


「うわー!本部長、最高!」


「お前は私と一緒に行くぞ。」


「私ですか?ハ……」


指名されたビビアンが、死ぬほど嫌そうな顔でこちらを見ている。ジョン・ギルガオンはむっとして言った。


「まだ定時まで1時間も残ってるじゃないか!仕事だと思ってるのか?」


「みんな退勤するのに、私だけできない気持ちを本部長はわかってますか?部下の気持ちもわからずに……」


「何が欲しいんだ。」


「残業手当をつけてください。」


「まだ夜にもなってないのに、何の残業…!ああ、わかった。わかった。オーケー。いいから、とりあえず行こう。」



口論してもどうせ負ける。


クビにもできない従業員に勝ったところで、何の得があるだろうか。


高位覚醒者のビビアン・キムは、どんな採用市場でも見つけるのが難しい優秀な人材だった。


「数ウォンをケチるよりも、私の精神衛生の方が重要だ。」



ジョン・ギルガオンは諦めて手招きした。


ビビアンは嬉々としてついてきた。


二人はエレベーターの前に立った。


「ところで、何かあったんですか?」


「今頃になって気になるのか?」


「そんなに意地悪しないでくださいよ。何があったんですか?」


「お前は動物が好きだったか?魔獣を思い出して、体の大きなやつは苦手だってのは知ってるけど、そうじゃなくて。例えば…」


猫とか。


そう切り出そうとした瞬間だった。


ピンポーン!


「……」


ジョン・ギルガオンは言葉を止めた。


エレベーターから出てきた相手も、ここで鉢合わせするとは思っていなかったのか、眉をひそめた。



「…出かけるところみたいだな?よかった。危うく無駄足を踏むところだった。」


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