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340話 キッド特別外伝3話

ブオオオオオオオ!


イタリアには最高等級の覚醒者はまだ現れておらず、シチリア島はバベルから淘汰された国々が皆そうであるように、ますます旧時代に回帰していた。


今入ってくる汽車が代表的な例。


優秀な覚醒者を保有する強国は、魔石と魔力を利用して革新に革新を重ねているというのに、ここは倉庫から過去の遺物を取り出して使っている。笑えることに。




シラクーサ駅。


オソロニファミリーの著名なクズを見つけた通行人たちが、恐怖に顔をしかめながら通り過ぎる。


浴びせられる視線の中で、キッドは倦怠感に満ちた顔で葉巻の煙を吐き出した。


「韓国か……」


5番目のS級だったか?


知られていない最初の1人を除けば、アメリカ、ネパール、中国に次ぐ。


S級覚醒者の誕生は、持つ力と同じくらい波及力も相当なため、何日も何日も世界中が大騒ぎして知らないはずがなかった。


もちろん、彼が東洋の小さな国を気にするのはそんな理由からではなかったが。


「韓国系の名字だった」


バベルは親切にステータスウィンドウを多言語に翻訳することができ、そこで示された【宿命】の相手が持つ名字は、紛れもなく韓国系だった。




5年前のあの日。


結局彼はティモシー・リリーホワイトから【役割】を譲り受けなかった。


欲しくなかったと言えばもちろん嘘になる。


【審判者】になることで世界から約束される特権は、少し見ただけでも途方もないものだったから。


それでも安易に飛びつくには、どうにも気が進まなくて。


「おかげでかなり遠回りすることになったが」


「はい?」


「いや」


世界が提示した特権を放棄したため、彼のステータスウィンドウは依然として判読不能な文字で壊れている。


しかし、覚醒者の道はすでに諦めていたことなので、少しばかり癪に障っても、二度諦めたからといってさらに悲しむこともなかった。


グイード・マラマルディは慎重な男だった。


「盤のサイズが大きすぎた。世界とは、どう見ても命まで差し出さなければならないことなのに……。それに」


他人の宿命を自分のものとして受け入れるなら、相手の顔くらいは先に見ておくのが道理にかなっているのではないか?


ティモシーとの連絡はまだ切っていない。


この繋がりを切らずに繋いでおけば、


本当に彼とティモシーに世界が与えたものが「宿命」であるならば、当然彼らの前に自然と現れるのではないかと思った。


偶然のように……あるいは運命のように。



ドゴォォォォォォォォン!




「ピーーーーー!」


「た、襲撃だ!」


「カポ!お逃げください!覚醒者テロです!あー!」


揺れる地面の上で、キッドは慌てて体のバランスを取り戻した。


連続的な爆発テロ。


数年間続くマフィアの対抗争のおかげで、見当がつく理由はあまりにも多い。


遠くから入ってきていた汽車が、赤い爆発に巻き込まれてそのまま線路から脱線した。


墜落する汽車から覚醒者と思われる人々が急いで飛び出してくるのが見えたが、もうもうと立ち上る土埃のせいですぐに見えなくなった。


「ちくしょう!」




ピーーーーー。


耳鳴りが爆発で麻痺した耳を刺す。


「駅をすぐに離れなければ」


キッドは歯を食いしばって懐を探った。しかし騒ぎで彼のコートが脱げてしまい、緊急避難用スクロールはどこにも見当たらない。


ティモシーが誕生日プレゼントにくれた防御用リングは……。


「置いてきたか、家に」


くそ、今日は何の日だ?


こんなミスをするなんて。


「マラマルディ、あのクソ野郎から探せ!」


「あそこだ!あそこにいる!」


「狙いはこっちだったか」


キッドは乾いた笑いを漏らした。


覚醒者が混じっているのか、あちこちで色とりどりの光の渦が爆発しているのが見えた。いくら彼が身体を鍛え、必死に生き残る毒気を誇ると言っても、超人である彼らと正面から立ち向かうことはできなかった。


そんな気も全くないし。


彼は未練なく振り返り、力の限り走った。


「お母さああああん!」


「誰か助けて、助けてください!」


駅の外は避難する人々でごった返し、騒ぎに紛れるのに苦労はなかった。


近くに転がっている死体から帽子を剥ぎ取ったキッドは、それをそのまま被り、小走りで足早に歩いて行った。


「兄ちゃん、あの兄ちゃんの腹に血が……!」


「シーッ」


指差す子供の手を抑え、彼は路地、さらに奥の路地に隠れた。


爆発の過程で飛んできた破片が彼の腹部に突き刺さり、出血が止まっていなかった。


泣きっ面に蜂、背後からは足音がついてくる。


息を殺した歩幅。闇を借りて生きる者特有の足取りだった。


こそ泥程度ならどれだけ良かったか。残念ながら、この地の暗黒はすべて彼のようなクズどもが飲み込んでいた。


マフィア。


それも敵対マフィアに違いない。


「しぶとい命もここまでか」


地面の血痕が長くなる。


こんなに痕跡を残していては見つけられない方がおかしい。キッドはケラケラ笑いながら路地の中に座り込んだ。


「ああ、こうなるなら」


あれ、俺がやると言えばよかった。


ただの候補者に過ぎない俺とは違って、ティミーは今頃もう会っているかもしれない。


視界がぼやける。体温が下がり寒くなった。寒気が骨身に染みる。


もし死ぬことになったら、必ず地中海、彼が生まれた場所が見える場所ですべてを整理したかったのに……。


「【え、何だ。】」


「……」


「【ヨーロッパはこんなキラキラしたものも地面に転がってるの?誰が他人の国の宝物まで盗んでいく泥棒国家だって言うんだか。ったく……チッ。腹が膨れてるんだよ、とにかく。海賊とジャガイモの国らしいね。】」


「それは……」


意識が遠のく。


キッドは倒れながら思った。


「それはイギリスだ、間抜けな韓国人のガキ……」






「ハアッ!」


キッドは冷や汗で濡れて飛び起きた。


こんなに無防備に意識を失ったのは一体いつぶりだろう?眩暈がするほどだった。


震える手で顔を拭うと、やがて自分をじっと見つめる一対の目を発見した。


「……なんだ?」


錯覚だったか?


ちょっと待て、縦長の瞳孔だったような気がする。


「まさか。人間が縦長の瞳孔だなんて、俺は何のありえない錯覚を」


彼が作り笑いを浮かべている間も、相手は依然として何も言わない。


平静を取り戻したキッドが、目尻を下げて狐のような笑みを浮かべた。


本能的な判断だった。とりあえず助けてくれたようだし、幼いが確かに女だから。


「君が俺を助けてくれたのか?ありがとう」


「……」


「初めて見る顔だけど、ここの地元民じゃないだろ?シラクーサにはいつ来たんだ?一人か?」


「……」


うーん……。


「無口なタイプなのか?」


余裕綽々だったキッドの笑みが徐々にぎこちなくなった。子供はまだ幼いようだ。彼の魅力が通用しないとは。


「それでも気絶する前に声を聞いたような気がするが……」


「……【クソったれ。】」


いきなり飛び出す韓国語。


いきなり悪口だ。


キッドは驚きを隠してとりあえず笑った。


するとそんな彼をじっと見つめながら、少女が再びため息を深くつく。暗くなった顔色で地面がへこむほど深くため息をつく顔が、世界のすべての苦悩と逆境を背負っているかのようだった。


「【クソバ……何言ってんのか全然わかんねえ。ハア、スウ……私の鼻の穴が三つになっちゃうほど大変なのに、どうしてこんな役立たずのヤンキーを拾ってきちゃったんだ……おい、何見てんだ?顔が良けりゃいいのか?韓国語もできないくせに、コラ。笑えてくる?】」


「……」


「【韓国語は基本教養じゃないのかよ。あのさ、世宗大王ハラボジがすごく斬新に作った文字だって言ってたのに、こんなリスペクトも知らない無知な西洋人め。笑えてくる?】」


韓国人の自尊心……この程度だったか?


当然のことだが、基本教養であるはずがなかった。


しかし偶然か不幸か、この場のキッドにだけはある程度当てはまる話だった。


彼の知能は非常に優秀な方であり、【宿命】の相手が韓国系だと知った以上、学習していたいくつかの言語に韓国語を一つ加えることくらい造作もなかったから。


結論:全部聞き取れている。


「……」


葛藤は短い。


キッドは素早く判断を下した。


「知らないふりをしよう」


言葉が通じるとさらに面倒になる相手だった。


社会の底辺でもまれにもまれた生存本能が下した判断なので、信じるに値するだろう。


「イタリア語が全くわからないのか?おや、シニョリーナ。言葉もわからないのにどうしてシラクーサに来ようと思ったんだ?ここがどこだかわかってるのか?それとも君もティモシー、あの間抜けみたいにどこかネジが一本抜けた狂人なのか?ああ?馬鹿だな」


にこにこと愛嬌たっぷりに笑みを浮かべながら、わざと抑揚を早く、さらに難しく発音した。


何も聞き取れないくせに、少女が彼を真似てぎこちなく笑う。


「【何言ってんだ、クソ野郎……。】」


笑いをこらえるのが難しかった。


「可愛いところもあるな」


キッドは痛む腹を抑え、姿勢を楽にした。相手が無害で扱いやすい外国人だと判断すると、緊張も解けた。


「君、名前は?」


「【うるさい……。】」


「名前を聞いているんだ」


「【ハア、お母さん、興宣大院君様……。】」


こんな簡単な英語もわからないのか?


大韓民国の教育水準を内心軽蔑しながら、キッドは笑顔を浮かべたままゆっくりと言った。


「Your Name, babe. N, a, m, e.」


「【ああ~名前は何かって?】」


身振り手振りまで加えて言うと、ようやく会話が通じた。理解した途端にすぐキラキラ輝く瞳がなかなか可愛-


「ジオ」


「……」


シラクーサの奥、旧市街の路地。


みすぼらしく穴の開いた日よけ幕から夕陽が差し込む。その下で真っ黒な黒髪が黄金色と血の色を帯びた。


二つの泣きぼくろが特徴的な目元が綺麗に歪む。少女がニヤリと笑いながら自己紹介をした。


「マイネームイズジオ。キョンジオ。ナイス トゥ ミーチュー。アイム ファイン。サンキュー。エン ユー?」


心臓がドスン、という音とともに落ちた。


キッドはそのまま凍り付いて見つめた。


本当に偶然に彼の前に押し寄せた、世界が与えた彼の予備された【運命】を。


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