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336話

「……ふっ!」


バベルが彼女を超越者「ジオバンニ」ではなく「キョン・ジオ」として再定義したのと同時だった。


フウウウウウ-!


クグググ!


どこから来たのか分からない虹色の球体が水しぶきのようにジオを通り過ぎる。とても速いスピードで。


押し寄せて回転しながら、ジオはそれらが何なのかすぐに分かった。


それは、


人「キョン・ジオ」の人生だった。


生まれて、学んで、成長し、人々と出会い、彼らを守って。


時には怒り、悲しみ、戦い、闘争しながら笑い、泣いた彼女の人生のすべての瞬間が込められていた。


ジオは一瞬、自分をかすめていく球体の一つを覗き込んだ。かすかで懐かしい笑い声が聞こえた。


幼い頃、ある日の記憶だ。


「ジオ、早く行きなさい。バンビが待っているわ。」


挨拶するヤン・セドの顔に申し訳なさそうな気配がありありと見える。


ジオは心の中でぶつぶつ言った。


「待ってるわけないのに。」




1月1日。


新年の初日。新正であるジオの誕生日は祝日なので、皆がそれぞれの理由で忙しい日だった。


去年までは皆、時間を作って祝ってくれたのに、もう受験生だからそんなこともない。


ママは休みがなく、キョン・ジロクは午前中からギルドの仕事に出かけ、グミは友達と新年パーティーに行くと言っていたから、家に帰っても……。


「がらんとしているだろう。そうでしょう。」


ケチなお星様とも先日大喧嘩したせいで、絶賛冷戦中。


完全に一人だ。ジオは唇を尖らせてとぼとぼと玄関を開けた。


予想通り、電気もついていない家。


……いっそ家出でもしようか。


寂しい気持ちでそう思っていた時だった。どこからか聞こえてくる囁き。


「マジで……?本当にやるの?」


「何言ってるの、そうすることにしたんじゃない!ふざけてるわけじゃないから!」


「俺はただの冗談だと思ってた……」


「マジ勘弁。ぐずぐずしないで早く出て行け、鹿野郎!このままじゃロウソクが全部消えちまう……ああ、もういい!」


ゴホン、ゴホン!


ジオは咳払いにハッと顔を上げた。まさか。


「まさ……」


r……冬に生まれた〜美しいあなたは。雪のように清らかな私だけのあなた〜!」


パン!


爆竹と共に鳴り響く歌声。


電気の消えた家。壁の後ろから歌を歌いながら、中学校の制服を着た、キョン・グミがロウソクのついたケーキを持ってゆっくりと出てきた。隣には気まずそうな顔のキョン・ジロクがいた。


「何……?」


「あ、知らない!キョン・ジロク!本当に歌わないの?」


そうでないふりをしても恥ずかしいのか、顔を赤くして睨みつけてくる末っ子。


結局、視線に耐えられなくなったキョン・ジロクが頭を深く下げて爆竹をマイクのように握った。指先が真っ赤だった。


「……冬に生まれた愛らしいあなたは〜雪のように澄んだ……私たちのあなた。」


「誕生日おめでとう〜誕生日おめでとう〜」


ひどい不協和音だ。


アハハ!結局、声を出して笑うジオを見て一緒に微笑む弟たちの眼差しが優しく温かかった。


いざ歌い始めると恥ずかしくないのか、キョン・ジロクとキョン・グミが嬉しそうに大声で歌を歌った。


「ああ、やめて!鳥肌が立つ!」


「私だけのあなた〜!」


そしてタイミング良く続く


ピンポーン、玄関のドアが開く音。


「誰、近所迷惑に新年の初めからこんなに歌を歌って?」


「ママ!」


「あらあら、可愛い私の子供たち!」


手にたくさんのプレゼントを持って入ってきたパク・スンヨが肩に積もった雪も払わずにジオをぎゅっと抱きしめた。


「ったく。何よ、おばさん。忙しいって言ってたのに……。」


「忙しくてもうちの組長様の誕生日はお祝いしてあげないと。誕生日おめでとう、うちの娘。愛してる。」


だんだん歌声が遠ざかっていった。


冬に生まれた、


私たちのあなた……。


「キョン・ジオ。」



—タッ。


ついに足が着く。


虹色の球体が消えた。水しぶきと深淵も過ぎた。


漂流が終わった。キョン・ジオは自分がもはや[外部]領域にいないことに気づいた。


ここは……バベルの領域。


そして。


[キョン・ジオ]の領域だった。


[求道者「キョン・ジオ」確認完了。]


[精算されていない業績があります。]


[不明なエラーにより一時中断されていたプロセスが「再進行」されます。]



キョン・ジオは自分の顔を明るく照らすお知らせウィンドウを見上げた。黄金色のウィンドウだった。




[素晴らしい!]


[崇高な自己犠牲(Sublime Self Sacrifice)!]


[万流天秤の塔が永遠の勝利者に敬意を表します!]


[超越の死まで克服し、抗えない大業を成し遂げたあなた!予定されていた栄光の道を放棄し、あなたが完成させた価値は何にも匹敵しません。]


[数万の世界を救ったあなたが救った生命を業績に換算中です。]



数字が絶え間なく上がっていった。


無限に。数えきれないほど。


「万流天秤オープン。」


「候補の功績を計算中です。」


「功績計算中断。」



そしてついに。


最後の勝利者のための鐘が鳴る。これまで以上に強烈で、燦然たる勝利の音で。




デエエン-!


《バベルネットワーク、星系お知らせ》


聖座即位


《万流天秤の主が誕生しました!星系全域に神聖な誕生の名前が鳴り響きます。》


ザー……


ステータスウィンドウが消える。


すべての制御と制限が消える。


新しい情報と遥かな力が天の川のように降り注いできた。


時空間が指先に触れた。不可能と可能、奇跡と奇跡が両目に宿った。


運命の韻律が歌う。


点線のように数えきれないほどの星が唯一の王を包んだ。星雲でできた天球が拡張するように広がっていき、神聖な光を放った。


ヒュイイイ!


全身を包み込みながら起こった星の光と共に黒い髪がなびく。ジオは顔を上げた。


彼女の頭の上で舞い散っている無形のベール。


いつからだったのだろうか?キョン・ジオはその瞬間、すでに自分が[終幕]の中にいたことに気づく。


[古い終幕]はまさに今、ここにいた……。


トボトボ。


新たに誕生した王が歩き出すと、足元に五色絢爛な波紋が起こった。


顔が見えない影たちが歩みに合わせて丁重にひざまずく。


バベル所属の管理者たち、その全員だ。時空間を超えて星系全域から到達した彼らをゆっくりと見回したジオがつぶやいた。


「バベルと話したい。」


「Admin:望み通りになるでしょう。」


無数の影たちがすぐに消え、空間に静寂が訪れた。


キョン・ジオは幕の間から一筋の光を放つ黒い星の天秤を見上げた。


[バベル]だ。


ジオは尋ねた。


すべての答えを知っているはずの万流の天秤に。


「どういうこと?」


バベルが答えた。


『即位されたのです。』


「いや、そうじゃなくて。」


しばらく沈黙していたバベルが答えた。


「過程をお尋ねでしたら。」


「沈むべきものが沈み、浮かび上がるべきものが浮かび上がって。」


「混沌蚕食に入った後、未精算の功績が残り、関連星系規約により対象の消滅が一時保留されましたが、保留は保留。バベル管理の向こうの[外]と接触した以上、致命的な損傷によりもはや格の維持が不可能になり、消滅が手順でした。」


本来ならそこで消えていたはずだ。しかし。単調な口調でバベルが続けて説明した。


「急流が過ぎ、再開された消滅手続きの途中、割り込みアクセスにより未曾有の変数発生。シナリオレベルの割り込みと接続されていた「キョン・ジオ」の格が浮上し、消滅予定の「ジオバンニ」と衝突。」


「その結果、エラー解決過程で〈虚無の呪い〉が突然変異「ジオバンニ」の運命をすでに除去し、消滅予定の対象がないことを発見。」


「ちょうど損傷から完全に復旧した「キョン・ジオ」の格に従い……」


「消滅手続きに吸い込まれた対象のために接続を見つけられず、一時中断されていたバベルプロセスが「キョン・ジオ」を見つけ、再進行されたのです。」



その結果、押し寄せていた「自己犠牲」という、莫大な世界救済の功績が反映され……。


結局、沈むべきものが沈み、浮かび上がるべきものが浮かび上がったというバベルの要約が正しいわけだ。




「でも……」


依然として疑問は残っていた。ジオが納得いかないように眉をひそめた。


「特殊ペナルティがあったはずだ。〈虚無の呪い〉を使用すると運命だけでなく、これまで積み上げてきたすべての功績値が消滅すると確かに……」


「それはバベルも分かりません。」


副王プワンの門に入るまで最高管理者の過去のすべての功績が消滅したことをバベルも確認しました。復旧原因と時点は分かりません。」


「[外]で発生した過程をバベルがすべて把握することは不可能です。何らかの変数の干渉があったと推測するだけです。」


「干渉……だと?」



キョウルだ。


彼の仕業で間違いない。


ジオは唇を噛み締めた。


一緒に滅亡する最後の瞬間、あの愚かな頑固者が結局また一人で何かをしたのだ。彼女のために。


『疑問が解消されたら最高管理権限を引き継ぐプロセスを進めてもよろしいでしょうか?』


「……今すぐに?」


その言葉だけを待っていたかのように下位管理者が突然割り込んできた。


「Admin:王が想像する以上に長い時間、空席だった玉座です。現在、最高管理者がバベルから引き継いだ力はわずか0.094%に過ぎません。」


いや……何なの……。


突然の催促に呆れたジオがドスンと足を踏み鳴らした。


「おい、良心のない奴ら!家も失い、愛も失い、苦労の末に宇宙の支配者になったのに、ありきたりな願い事の一つも叶えてくれずに仕事からさせようとするのか?何なの……朝鮮時代の王様でもあるまいし!」


『最高管理者オーダー受付。』


「願い事遂行準備中です。命令してください。」



「Admin:あ、いや……ダメ……!」


いや、またできるの?


「じゃあまた……ありがたく受け取らないと!」


だいたいどういう状況なのか、そろそろ分かってきた。


管理者たちが別に望むことがあっても、バベルが最優先的に、無条件に聞く命令はただキョン・ジオの言葉だけなのだ。


要するに絶対的な無双の権力というわけだ。そういうことならこっちの専門分野だった。


キョン・ジオはニヤリと笑った。


時計と世界を長く回って、ようやくすっきりした気分で。


「私の願いは……」


「でもとりあえずストップ。止めてみて。その前にやることがある。」


広大な天の川、その上を歩いているのはキョン・ジオだけだった。


指先に触れる星をトントンと叩きながらジオがバベルに囁いた。


「—こんなこともできるの?」


バベルが答えた。


「可能。しかしお勧めしません。」


「なぜ?」


「副王と最高管理者は星系規約による不可侵の関係。しかし、それが最高管理者の安全を完全に保証するわけではありません。」


「「彼」は副王の門の中で、高い確率で消滅して残った「ジオバンニ」の時間のある場所に漂流していると推測されます。」



あるいは、すでに根源に吸い込まれ、門の一部になった可能性も無視できない。



『数万回の時間道を遡っても収穫がない可能性がある選択。リスクが非効率的に大きいです。』


「何のリスクを考えてるの?行くわ。」


「再考することをお勧めします。時間は相対的です。数万回の時間道と言いましたが、まだ継承が完了していない状態の最高管理者が歩いて感じる体感ははるかに長くなるでしょう。ご希望でしたら予想データを……」


「いいわ。それでも行くわ。」


王の言葉が落ちた。


命は絶対的で、不服従は不可能だ。


バベルはそんなことが可能になるように作られていない。




クググン!


[外の門]が開かれる。


古い太古の目が新たに誕生した幼い王を深幽に見つめた。


「本当に……いつ見ても恐ろしい格ね。宇宙のチンピラって感じ、本当に。」


身震いしながら中に入るとすぐにバベルの力と影響力が弱まった。しかしジオは止まらずに深淵の中に足を踏み入れた。


そうして、お馴染みの既視感と共に図書館が現れる。


時空間の底。


すべての記憶の棺、無風の海。即位と共に開いたジオの目には漂流していた時とは比較にならない、無数の線が入ってきた。


「キョウル」。


繰り返して繰り返したジオの時間だ。


彼はその中にいるはずだ。


そんな確信があった。


ジオは深呼吸した。


「私を諦めなかったから、私もあなたを諦めない。」


ただ私を愛して、私が死なないことを願った彼だった。


その道で成し遂げた悪業と罪を決して許されることはないだろうが、この広大な星系に彼を許すことができるたった一人の人がいるなら……それはまさにジオだった。


キョン・ジオは歩いた。


彼に向かう永遠の道を。


100日。


1000日。


10000日……100000日。


狂った悪魔が戻してまた戻した時間と同じくらい道は、遥かに長かった。


数多くの死を目撃し、数え切れないほどの愛を感じた。



取るに足らないジオを見て彼は一緒に取るに足らなくなり、惨めになれば一緒に惨めになり、絶望すれば一緒に絶望し、可愛ければ一緒に可愛がり、また崩れる時は一緒に崩れて。


愛する時は、もっと愛した。



ドキドキ。ドキドキ……。


「……間違った道に行けばどうなの。学べばいいのよ。導いてあげて、その手を握ればいいのよ。」


誰でも案内人になれるし。


誰でも助けが必要だ。


こうして足りない私たちだからこそ、互いに頼りながら生きていくのだ。道を外れて壊れずに、正しい道に行けるように。


ジオは手を伸ばした。


ついにたどり着いた古い門の端。


巨大で乾いた死の壁に剥製にされたまま、無数の剣と槍、矢に刺され深淵と融合している彼がいた。


絡み合った混沌の蔓の中、艶のあった銀灰色の髪からは真っ黒な水がポタポタと落ちる。


ここは不定形の世界。ジオは彼をめちゃくちゃにしたのが彼女が与えた傷だと分かった。



ファアアア……。


星座の神聖な手が触れると、後に続く金色の光に彼を襲い包んでいた深淵がバラバラに散らばる。


ジオは深く粘り強い闇をかき分け、彼の頬を包んだ。静かに口づけをした。


冬が目を開ける。


夢のような顔で彼女を見る。


長く待たせてごめんという言葉の代わりに、ジオは明るく笑って挨拶した。


いつも遅かったから、


今回は彼よりも先に。


「こんにちは……私の愛。」


会いたかった。


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