329話
世界そのもの。
キョン・ジオが失敗し、死ぬ間際の瞬間ごとに地球の世界樹を複製して殺しては、絶え間なくロールバックし、リセットした。
番人たちが懇願した。
あなたにはこの世界の悲鳴が聞こえないのかと、このままでは壊れてしまうと、耐えられないと。
バベルが止めるよう勧告した。
しかしバベルは、ネットワーク運営のために時空間コントロールに関して彼の力の一部を借りており、外神である彼は、王が不在のバベルシステムを維持する外部大株主の中で最も強力な絶対者だった。
不滅の恋人を失いたくない狂った彼を止めることができるものは、本当に何もなかった。
ジオは唇を震わせた。
「……なに、何を。」
何を……戻す?
ドクドク。心臓の音が大きく響いた。
キョン・ジオは、自分の指先が震えているのを感じた。認知範囲をはるかに超えた真実だ。混乱した顔でジオは口ごもった。
「じゃあ本当に、本当にキッドの言う通り4千回以上も……」
「4千?」
冬の悪魔が失笑した。
「お前は私が貴様の星ではないと否定したな。一つ言い訳を聞いてくれ。」
「数万回だ。」
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「以降は数えることさえやめた。数万回以上もお前が私の目の前で死ぬのを見ながら、自我まで分離しなければ、ジオ。」
彼の顔がゆっくりと歪んだ。噛み砕くように投げつける。
「私が正気でいられただろうか?」
「この取るに足らない世界を粉々に打ち砕いて飲み込まずに、放っておけたと思うか……!」
この瞬間にも背後の扉が彼を待っていた。
究極の「門」。
太古から存在する古きものであり、始まりであり終わりであり、過去であり現在であり未来であるもの。
束縛されない究極の「向こう」の恐怖。
彼の根源であり本体であるあの門が開けば、今まで握っていたすべてのものが終末を迎える。「あれ」は厳密に言えば彼ではなかった。
「私のエゴはすでに限界に達している。ずっと前からそうだ。私がもう「私」を維持できずに門が再び私を飲み込んだら、このすべては何の意味もなくなってしまう。すべてが消え去る。」
「お前は私が、お前を大切に愛するこの一粒の自我を守ろうと、どれほど必死にもがいているのか、一瞬たりとも考えたことがあるのか?」
歯を食いしばる彼の顎に血管が立った。気が狂いそうだった。
自らを切り刻み、切り刻んだ。
[全知の悪魔]は、星系に散らばった彼の破片の中でも最も弱い化身だった。
たった一度の揺らぎにも根源に吸い込まれる可能性がある。飲み込まれないように必死だった。
何も愛さず。
何も大切に思わない存在として、永遠に孤独に星系をさまようことに何の意味があるのだろうか?
彼は慎重に努力した。
彼女の人生を追いかけ、そばに寄り添いながら、時には人間として、時には超越者として、さらには超越の格を分け与えることさえしてみた。
すべて失敗した。
どうしてもだめだ。本体を引き寄せた時点が、現在の「キョン・ジオ」の人生。
今回が本当に最後だから。
どんな結果も出せずに9回目の輪廻が終われば、私たちの次の章に残されたものは破滅だけだから。
お前を失いたくないから、お前を失う危険を冒してそうするんだ。
「それなのに、お前は!」
「それなのに、お前は……何とも思わずに投げ捨てるんだな。これを何とも思わずに投げ捨ててしまう。」
目を疑った。
今回こそ「終幕」が開かれると信じていた。数十万回も飽きもせず生を繰り返し、積み上げてきたジオの闘争的な人生には、それだけの資格があった。
しかし終幕は開かれず。
計算が失敗したことに気づいたが、彼は気にしなかった。もう少しだけ……もう少しだけ行けばいい。ついに希望のようなものが見えたのだから。
ところがジオは今回も自己犠牲を選んだ。
彼が見ている目の前で。
「功績値を消滅させる?」
彼の口元が冷笑で歪んだ。
「いつもあの世界、あいつらの人間どもが問題だったんだ!二度とそんなことが起こらないように、お前の魂からあの忌々しい人間的な面を剥ぎ取ってやったのに、またか。」
「……剥ぎ取った?」
黙って聞いていたジオがつぶやいた。
冬は無関心に応じた。
【じゃあキョン・ジロクは何だと思う?】
「……!」
9回目、輪廻の最後の人生のために、彼は以前とは違うように多くのことを準備した。
どの前世にもキョン・ジロクが存在しなかった理由だった。外部干渉によって初めて生まれたキョン・ジオの半分だったから。
「あいつがお前の一部で、お前にはもう一人の自分も同然だからな。自分の半分を助けようと狂ってしまうまでは理解できる。しかし……。」
地球の方を見つめる冬の目に憎悪が染まった。彼は再び悲嘆にジオを振り返った。
「あんなものが何だ?」
「あんなものが何だというんだ、貴様の私をこれほど惨めにするとは……。」
言葉に詰まった。
世界とペク・ドヒョンを救った自分の選択が間違っているとは思わない。ただ、静かに訴える彼があまりにも
苦しそうで、寂しそうで……。
「納得しようと努力してみた。」
「お前が記憶できないように世界を戻したのは私だ。繰り返される回帰は苦しい。貴様がそんなことで苦しむのはどうしても見られなかった 。これが最善だと思った。なぜなら。」
なぜなら……。
冷静であろうと努めていた彼の顔が崩れるのは一瞬だった。
「それでもお前が私を再び愛してくれると信じていたから。」
最後だ。
お願いだ。
懇願する。
どうか私を裏切らないでくれ。
私を一人にしないでくれ。
人間は運命から3回の輪廻を約束される。
最も低い場所から上がってきた、世界の特異点だったお前は、9回の輪廻を約束された。
すでに共にできる何度かの機会を捨てた。輪廻が終われば、魂は虚無な空虚に戻る。
そうして永遠に、別れだ。
ジオは今この瞬間、どんな言葉を言うのが正しいのかわからなかった。
心臓が張り裂けそうに痛かった。とても計り知れない歳月、また重み。
彼の言葉が本当なら、自分は本当に二度とない裏切り者であり、世界で誰よりも無情な恋人だった。
しかし。
ジオは爪痕が残るほど拳を強く握った。最初で最後の告白は、うめき声のように出た。
「私も。」
「私も、あなたを愛してる。」
そうなった。あなたが自信を持っていた言葉のようにそうなってしまった。
それなのに。
それでも、そうして数えきれないほどの裏切りと罪悪感にもかかわらず……今日彼の前に立つキョン・ジオは「人」だった。
=〒, =〒•
石造りの床が濃く染まる。
ジオは落ち始めた涙を止めることができなかった。
耐え難く悲しかった。自分の口でこの言葉を言わなければならないことが。
「それなのに、それなのに……結局そうするために、この多くの人々を地獄に突き落としたって、今その話をしているんでしょう。」
明晰で、目を背けることができなかった。
賢くて、安心して目を閉じて見ぬふりをすることができなかった。
死ななくて、彼女は今日生きているから。
「違うように理解しようとしてもだめだ。結局は……番人たちが言っていたことが全部本当だってことじゃないか。私を星座に上げようと強い敵を呼び寄せ。この世界を蝕んで。」
蒼白な顔から止まることなく涙が落ちてきた。
吐くたびに自分の言葉一つ一つが、自分自身に刃のように突き刺さってきた。痛かった。苦しかった。
「ペク・ドヒョンを死なせて、おじいさんが死んで、人々が死んで……私の、ヒック、私の弟まで……このすべてが結局全部あの忌々しい愛のせいだってことじゃない…」
今泣きたくない。
もう泣かないで、キョン・ジオ。
荒い呼吸を吐き出しながらジオは顔をこすった。固く閉じた歯の間から抑えられたすすり泣きが漏れた。
なぜそうしたの、なぜこうするしかなかったのかと……問い詰めて叫び悪態をつきたいのに、口に出すことができなかった。
理解できることが何よりも苦しかった。それでもキョン・ジオが彼を愛しているという確認射撃も同然だから。
私のため、私の世界を地獄に突き落としたあの悪魔を。
「すでに何度も死んだ場所だ。」
落ちる涙をぼんやりと見つめながら冬が呟いた。彼もま疲れ果てた声だった。
「 今回の文明もまた、遠くない滅亡を控えていた。お前によってバベルシステムに属し、そうして延長された寿命だけでも感謝すべきだ。この問題で言い争いたくない。」
「あなたは……すでにこれを何回も繰り返してきたんでしょうから。」
数えきれないほど経験してきたのだろうから。
世の中に両足をつけ生きていく不滅者と、世の上から見下ろす絶対者の埋められないこの隔たりを。
遠くに見える青い星の蒼空には、まだ閉じられていないアウターゲートが数えきれないほどあった。
そこに人々がいる。
キョン・ジオと同じように息をして生きている人々が。
キョン・ジオが大切にし、ぶつかり合い愛した、大切な縁が。
「全部元に戻さなければ。」
原因が消えれば結果も消える。魔法の第1法則だった。
ジオは深く深呼吸した。
「鎖を断ち切らなければ何も変わらないのは当然だ。キッドがなぜ、番人たちがなぜ殺さなければ終わらないと、あんなに必死だったのか、もうわかった。」
「馬鹿なことを言うな、頼むから……。」
「私が終わらなければ全部終わらない。」
そしてこの男もまた……。
私と一緒に死ななければならない。
そうでなければ、脆弱な世界が寿命を終え、壊れようがどうしようが気にせずに、またこの残酷なことを繰り返すだろうから。
「また……」
決意を固めた目。
じっとジオを見つめていた彼が口元を歪めて上げた。冷たく冷え切った目は少しも笑っていなかった。
「死ぬ?どうやって死ぬつもりだ?」
「私が貴様一人だけ死なせてやるとでも思っているのか?それが可能なら私にも教えてくれ。何でも喜んで手伝うから。」
ジオが無言で見つめる。
冬は無視して背を向けた。
一度に押し寄せた真実だ。彼の小さなジオが耐えきれないほどだった。十分に理解しているので、彼はただ次のことをすればよかった。
ザー……。
灰色の石造りの祭壇の上に木が一本生えてきた。
寿命を終えようとしている地球の世界樹だった。あれを殺し、コアを新しい苗木に移植すればいい。
そしてその次、世界をスターティングポイントに再びロールバックする。
すでに数万回もやってきたので、息をするよりも簡単なことだった。
トボトボ。そうして彼が祭壇に足を運ぶ刹那だった。
【……!】
タタタッ!
全力で走るジオ。
素早く石柱を踏み、一気に目標地点に到達する。
「門」の前だ!
-タアッ!
頑丈な腕が細い腰をあっという間に掴んだ。
間一髪。
ドクン、ドクン!
触れ合った脈拍が気が狂ったように跳ねた。それほど危ういタイミングだった。
世界の時間線を巻き戻す巨大な動力を得るために、「門」はすでにジオの体格ほど開いている。彼が掴まなければそのまま終わっていただろう。
「貴様……!気が狂ったか!」
ついに大声が出た。
冬が歯を食いしばってジオを睨みつけた。怒りに目が燃え尽きそうな気分だった。
「もういい加減にしろ、私の目の前で自殺をするのか?こんな忌々しい!貴様のような悪魔が他にどこにいるというんだ!正……!」
声がぷつりと途切れた。
鼻が触れ合うほどの距離。
言い争ううちにすれ違っていた二人の視線が、しっかりと絡み合う瞬間だ。
彼の目が激しく揺れた。
ジオはまだ泣いていた。
「……泣くな。」
貴様が泣くとすべてを諦めたくなる。
怒涛のように沸き上がっていた感情が嘘のように静まる。低く沈んだ嗄れた声にジオが腕を伸ばした。
魔法のようなことだった。
何でも理解され、許される交感が噛み合いながら押し寄せてきた。両腕で首を抱くと冬が崩れるように自分の背を屈めてきた。
唇が触れ合う。
重なり合った隙間から彼が諦めたように苦笑した。
「私が望んでいた死に方とは違うんだが……。」
「私は貴様が死ぬとき私も一緒に死ぬことを望む。私たちが一緒に滅亡することを願う。」
「わかってる。私に人生をプレゼントしてあげたかったんでしょう。」
20歳で終わる短命から抜け出し、愛する恋人、大切な人々と長く長く一緒に暮らして目を閉じる……そんな幸せな人生。
温もりを感じながらジオは泣いた。
申し訳なくて。
それに比べて自分の愛があまりにも足りなくて。
「……でも仕方ない。」
背中をぎゅっと抱きしめた。彼が優しく唇を噛んできた。ジオは囁くように自分の永遠の恋人に囁いた。
「一緒に滅亡しよう。」
背中を反らした。力いっぱい足を離した。
ヒュッ!
重みが傾く。
後ろへ、
後ろへ。
深淵の門が大きく開かれる。
足に触れるものはもう何もなかった。感覚が消えていく。私たちが、「私」が消えていく。
キョン・ジオは笑った。
墜落の瞬間、悟ったから。
彼女はこの美しい銀河の中で最も強力な炎だった。
最も大きな星が最も騒がしく落ちるように、必死に華やかに満開だった自分の人生もまた、最も華やかな瞬間に暮れるための使命だったことを。
世界よ、
さようなら。
私は永遠の勝利と共に消え去る。




