32話
* * *
突然の昏倒だったが、すべての過程が問題なく迅速に処理された。
パク・スンヨの目を欺くことも、周囲の口を封じることも。
母に絶対に知られてはならないと事前に念を押しておいたおかげだった。
国家レベルで動いたので、嘘はそれほど難しくもなかった。
ジオはセンターが手配した国立病院で「悪夢の3月」被害者のための国家支援トラウマ治療という長い名目の下に長期入院することになった。
おかげで外部の人と主に会う場所も小児病棟の遊戯療法室。
ジオが気のない口調で言った。
「おじさんが韓国のコントロールで一番だって?」
「俺がそうだって?」
「うん。どうして?正直、それほど強そうには見えないけど。」
「お前ほどじゃないだろ。」
「私は総合1位だから、私と比べちゃだめだよ。」
顔色一つ変えずに言う子供。
スケッチブックの絵に熱心に集中しているその小さな後頭部を見て、虎は黙って失笑した。
「今日はタバコの匂いがあまりしないですね。」
「頑張ってみたんだ。ある子供のおかげで。」
「全然しないわけじゃないけど?」
「お香の匂いに飽きたから吸ってるんだ。禁煙までは無理だから、このくらいで勘弁してくれ。」
「いいですよ。勘弁してあげます。」
クレパスの色を変えながらジオが呟いた。まあ、おあいこってことで。
「おじさんも私を勘弁してくれるから。私がしょっちゅう倒れても、ずっと会いに来てくれるじゃないですか。」
「……」
「私は誰かが私と話している途中で一人で眠ってしまって、それが続くとすごく会いたくなくなると思うんだけど。」
等級測定。
バベルとの最初の物理的接触がきっかけだった。
サーバーに正式に「登録」を終えると、聖約を通じた不完全覚醒状態から完全な覚醒者へと生まれ変わったのだ。
したがって、聖位から受けた力ではなく、覚醒者キョン・ジオ固有の力、「竜魔の心臓」、「魔力遅滞」などの特性も完全に目覚め、肉体内の魔力が沸騰し始めたのだった。
以前までは聖位側で制御してくれていたが、「聖痕」を開き続けるのは幼い体に無理があると判断。
聖約星は魔力暴走の兆候が見えるたびにジオのスイッチを強制的に切る方を選んだ。
ナルコレプシー患者のようにしょっちゅう倒れて眠ってしまうのは、すべてそのせい。
なぜ勝手に人を眠らせるんだと、ジオがいくら文句を言ってもキョン・ジオオタクを止める方法はない。
おかげで聖位とも何日も口をきかない冷戦状態。
虎はじっとジオを見つめた。
気にしていないふりをしているが、こちらに傾いている体や、ちらちらと様子を窺っているところを見ると。
「不安がっているじゃないか。」
来る途中でざっと目を通した報告書の内容が頭をよぎる。
「非常に自己防衛的な性向であり、責任を負うことや関係を極端に嫌うと……」
トラウマ治療をするふりではなく、本当にやらなければならないんじゃないか?
センターもまだまだだな。
虎は失笑しながら顎を突いた。
「私は好きだよ。」
「……え?」
「私は好きだって。」
「……」
「お前の寝顔は可愛いんだ。ずっと見てても飽きないくらい。だから起きていようが、眠っていようがあまり気にならないんだ。」
ジオは答えなかった。
スケッチブックに向かった顔を上げることもなかった。それでもベテランの大人である男はわかった。
「安心しているな。」
本当に可愛らしい。
「絵が好きみたいだな。」
「……別に。何を描いても下手くそですよ。看護師のお姉さんたちが悪魔の才能だって。」
「そう言いながらも熱心じゃないか?」
「スンヨさんが喜ぶから。」
「スンヨ……さんって誰だ?」
「私のママだよ。」
「ああ。」
「昔、ママの夢は、美大に行くことだったんだって。貧しくて生活が苦しくて行けなかったけど。だから私が一度行って教えてあげようと思って。」
「大学生活を?」
「違うよ。行ってみても本当に大したことなくて、すごくつまらないから、ママは未練なんて一つも持たなくてもいいって。」
トントン。
クレパスを置く。
ジオが両手を払った。
ずっと俯いているせいで見えなかったスケッチブックが、ようやくまともに見えた。
虎は沈黙した。静かに尋ねた。
「何を描いたんだ?」
まっすぐに腰を伸ばした子供が答えた。
「私の中に住む怪物。」
明日からはここに来ないで、おじさん。
訓練室で会おう。
遊びの時間はもう終わりだから。
* * *
戦闘型魔力特化系列。
計り知れない潜在力。
リミットのない魔力回路。
至極の魔力感応度。
聖約がなくても人類史上、名を残す魔法界宗主の器であり。
結局、究極格を持つ聖位と出会い、種族の限界まで打ち破り、時代と世代の頂点に立つことになった怪物だったのだ。
「医務チーム、早く!すぐに接合を!急いで!何をしているんだ!」
「し、真魔力によるダメージなので損傷が深刻です!とりあえず接合してもすぐに移送して上級治療を、ちょっと虎様……!」
ざわめく人々の中で、幼いジオは赤い自分の手を見つめた。
四方が塞がれたキューブ式の訓練室。
白色であるべき空間の片方の壁面が血で染まっている。
全部、虎のものだった。
[あなたの聖約星、「運命を読む者」様が囁きます。]
[あなたのせいではないと、あなたは警告したではないかと、大丈夫だと優しく慰めます。]
久しぶりに見るメッセージだったが、まともに頭に入ってこなかった。
無理に抑えてきた分、檻から放たれた猛獣のように沸き立つ魔力。
それでも虎の導きに従い、ここ数日、着実に訓練してきた結果、思っていたよりも安定していたので安心していたのに。
それが問題だったのだろうか?
今日に限って、ひときわ兆候が良くなかったのに……
結局、こんな騒ぎになってしまった。
「ジオ。」
「……あ。」
「大丈夫か?」
血まみれで人に言う言葉ではなかった。
ジオはぼんやりと虎を見つめた。
周囲の制止を振り切って近づいてきた虎が、ジオを慎重に観察した。
「やっぱり。怪我してるじゃないか。痛ければ痛いと言わなきゃ。」
「……」
「すまない。傷跡が残らないといいんだが。ヒーラー、こっちから。」
「……違う。」
謝るべき人はそっちじゃない。
掴まれた手のひらをぎゅっと握ると、虎が不思議そうに見つめる。
いつの間にか接合された彼の肩に、ジオは震える手を伸ばした。
魔法使いと魔力は一心同体。
自分の魔力が彼の肉を抉り取った瞬間の感覚が、恐ろしいほど鮮明だった。
「わ、私が、私が、ごめん……」
「……」
「ごめん……み、ごめんなさい。ひっく。申し訳、ありません、おじさん。私が悪かったです。本当に申し訳、ありません。私が、うわあ、そうしようとしたわけじゃ本当にないのに……」
血のついた手のひらで擦るので、すすり泣く顔がめちゃくちゃだ。
押し寄せる悲しみと安堵感が津波のようだった。無事に生きていることを確認するとそうだった。
虎はガタガタ震える子供を抱き上げた。
「……お前がなぜ?そんなこと言うんじゃない。」
抱き上げてみると、さらに小さい。
こんな子供を一番強いと担ぎ出すのが申し訳ないほど。
周囲を制して虎は訓練室の外に出た。
しがみつく背中を撫でる。
熱くて幼い頬にそっと唇を当てて囁いた。
「ジオ。前に、お前が聞いたな?俺がどうして制御の面で一番なのかと。」
「……」
「お前も知っているように、俺は鬼を扱う。彼らはいつも飢えている。敵味方を区別できず、機会さえあれば襲いかかる奴らだ。そんな奴らと一緒に生きるには……俺から治めなければならないんだ。」
毎日毎瞬間。
怪物たちと闘いながら。体の中でも怪物がうごめいている感じ。
「俺が怪物なのか、彼らが怪物なのか。」
俺でさえ区別が難しいのに、他の人たちはなおさらだろうか?
ハンターは人間でありながら、また怪物である存在だ。
否定できない真実であり、私たちは決してこの公式から抜け出すことはできないだろう。
「でもジオ、『ジョー』。覚えておけ。」
いつも腰を伸ばして顎を上げろ。
正面を見ろ。
「これがハンター(Hunter)の基本姿勢だ。」
そうやって絶対に飲み込まれない魂でまっすぐに立って。
自分の内なる怪物を直視し、きちんと支配するなら。
同時にいくらでも人間として生きていくことができるのもハンター。
「飲み込まれるな。向き合って、お前の怪物にとても頑丈な首輪をつけろ。そして離さなければ……」
お前は誰よりも偉大な『ハンター』になるだろうから。




