319話
[> ディレクターメッセージ:第2軍団長の消滅を確認。第4軍団長は退却。]
[「西の戦線でファン・ホンが大海の獅子王を消滅させ、ジョーが黒闇のラッパ手を撃退しました!」]
大君主が嗅ぎつけた不穏な流れの始まり。
激昂したサ・セジョンの声が耳元に響いた。常に冷静な判断で戦場を補助していた参謀が見せた初めての喜びだった。
「我々も高地は目の前だ。」
白鳥が低く呟いた。
横に振り抜いた剣の一撃に、百人隊長二人が崩れる。
断固として敵を斬り伏せた白鳥が、間近に迫った異形の塔を凝視した。
繰り返された乱戦、味方ハンターたちの犠牲と奮闘の末に縮めた距離だった。
彼らが戦う戦線の最前線に位置する、最大規模の異形塔。誰が見ても、あの内部に敵の首魁がいると判断できる場所だ。
[「宗主。もうこれ以上のディレイは困ります。動いてください。北東510メートルの距離に、ソウルへ行くワープゲートを開けておきましたから。」]
「……分かった。」
ジョン・ギルガオンの冷静な督促に、白鳥が重々しく答えた。
彼女が担う役割は、救援投手。目標としていた高地が目の前であろうと、緊急の要請があれば呼ばれた場所へ動かなければならなかった。
ソウルのセンターが急襲されたという連絡は、2分前に届いたばかり。
振り返ると、待っていたかのようにその場にいたチェ・ダビデが叫んだ。
「行け!」
彼らは最も長い時間を共有した友人だった。
信頼の対話は、それで十分。
弓身弾影。
雑念を整理した剣士の人影が、そのまま北東方向へ弾けるように飛び出した。
「何を見てるんだ!死にたくて狂ったか?敵に集中しろ!」
去っていく白鳥を目で追っていた視線が、チェ・ダビデの獅子吼に慌てて眼差しを正す。
赤黒い翼が荒々しく羽ばたいた。全身が血と黒い土で汚れた夜叉は、すでに戦場を我が物顔で号令していた。
退かない味方ハンターたち、そして遠ざかる白鳥を見ながら、チェ・ダビデは覚悟を決めた。
私は韓国で二番目のS級だ。
キョン・ジロクは一人の軍団長を阻み、
馬鹿にしていたファン・ホンも命懸けで一人を消滅させた。
「今度は私の番だ。」
〈ヘタ〉。その千年の名を背負った以上、あまりにも当然のことだ。キョンジオでもなく、同級だと見下していた奴らより遅れを取るなんて?
「絶対にありえない!」
そしてその瞬間。
クググググ!
決然とした彼女の覚悟に応えるかのように、地軸がうねりを上げる。
「……来た。」
チェ・ダビデが正面から目を離さずに呟いた。窮奇の翼の付け根が警戒するように身を立て、全身の産毛が戦慄で逆立つ。ハンターたちが喚声を上げた。
「ぐ、軍団長だ!」
「ちくしょう、こっちにもついに……!」
蜂の群れのように溢れ出ていた虫軍団が止まる。
それらが一箇所に集まり、顔のような形状を描き、ようやく口ができたそれが、長い笑いを爆発させた。
[私がどれほどこの瞬間を待ち望んでいたか、可愛い地球の人間よ。]
[十悪軍団 第1軍団長 ‘疾病の寄生王(Parasite)’ Lv.Exceed]
「楽しそうだな。」
渦巻く東の空。ちらりと見たミモンの幻想王が舌打ちをした。
この惑星、地球は軍団長たちの中でも特に寄生王が欲しがっていたサーバーだった。「挑戦者」が熟すまで待てという大君主の厳命があったにもかかわらず、虎視眈々とゲリラ戦という抜け穴を通じてちょっかいを出し続けていた。
しかし、地球の挑戦者がついに求道者の位まで上り詰めたことで、結果的に先見の明となった。
奴に注がれる主人の寵愛に口の中が苦くなったが、仕方がないか?寄生王の功績は認められるに値した。
「内通した案内人のおかげで、アース征服が格段に楽になったのは事実だからな。チッ。」
人間の案内人は、取るに足らない存在のくせに頭が固いのが癪に障ったが、それはどうやらこの惑星の奴らの共通した特性のようだった。
ミモンの幻想王は顔をしかめながら、目の前の惨状を見つめた。
「…ちくしょう。」
シュエエエエク!
敵を侮った軍団長をからかうように、キョン・ジロクの〈バビロン〉が軍団を粉砕していた。
空間制約のない、幽霊馬に乗った騎士たち。彼らが地面を突き破って現れると、その上を森の木の根が覆い尽くす。
生命のように、戦闘的にうごめく樹林。覇道的な巨木が振り回す根と枝に、夢魔と蛇が貫かれて絶命するが。
「ヤングボス!受け取って!」
伝説の中のエルフのように、その木の間を慣れた様子で自由に飛び交う〈バビロン〉ギルド員たち。
ドミの叫びに、キョン・ジロクがちらりと上を確認した。敵の攻撃を受けたギルド員の一人が落下していた。
キョン・ジロクが走ると、彼が立っていた木の幹が斜めに傾く。落ちてくる腕を素早く掴んだキョン・ジロクが、そのまま力一杯ギルド員を再び上へ投げ飛ばした。ギルド員が軽やかに着地し、悪霊の首を一瞬で斬り落とす。
一つの有機体のように、無駄なく動くギルド。
[「ここは何も言うことがないな。」]
とてもよく戦っている。
ヒュッ。
軽く口笛を吹くジョン・ギルガオンに、サ・セジョンが誇らしげに答えた。
[「飯を食って喧嘩ばかりしていたんだから、当然だろ。」]
キョン・ジロクと一度ぶつかり合った後、一対一よりも絶対的な数的優位で押し切ることを選んだ第3軍団長だった。しかし、このまま行けば彼らの再勝負は時間の問題。
果てしなく積み重なった敵軍の死体山が、その証拠だった。
軍団長との再激突に備えて、キョン・ジロクも徐々に体力を温存しているのが見えた。
勝利は目の前にある。
誰もが確信した瞬間だった。
[……アハハハッ!生意気だという言葉は取り消してやる!]
その時、突然破顔大笑を始めた軍団長。キョン・ジロクが眉をひそめた。
「ついに狂った……」
しかし、彼の言葉は最後まで言い終わらなかった。見開かれたバビロンギルド員たちの目が、一斉に後ろを向いた。
地平線の方。
死体の山が積み重なり、積み重なったその方向だった。
グウウウウウ!
[「目覚めよ。」]
[ネクロマンサー9階級指揮系 究極司令 — ‘凱旋行進曲第1番、死者の日〈Triumphal March No. 1 Day of the Dead’]
[‘6番、悲愴(No. 6 Pathetique)’]
誰かの合図に、死んでいた敵が起き上がっていた。味方の顔が呆然とした。
彼らが歯を食いしばって、必死に打ち砕いた軍団。そして……犠牲と涙で倒れた仲間たちまで。
嘘のように、皆が復活する。
「ありえない……」
「ふざけるな、マジで……!」
絶望があっという間に広がっていった。
地平線が亡者と絶叫のこだまで満たされる。それを踏みしめ、希代の悪役が顔を上げた。
一国を滅ぼすほど美しい笑顔で、キッドが戦場の一方を指し示した。
「……あのクソ野郎が。」
目標抹殺対象。
ターゲティングされたキョン・ジロクの顔が、険悪に歪む。
今この瞬間、死から蘇った亡霊軍団の焦点のない眼球が、一斉にその一人だけを向いていたからだ。
作戦本部状況室。
「これは一体……」
生者と死者が合わさった軍団の規模が、眩暈がするほどだった。
すでに一度死んだ者たちは、自分の肉片が落ち、骨が砕けても意に介さず、火に飛び込む蛾のようにキョン・ジロクの方へただひたすら突進していた。
このままではキョン・ジロクは死ぬ。
サ・セジョンの顔が鉛のように蒼白になった。
「キョン・ジロク……聞こえるか?退け。一旦退けと言っているんだ。改めて戦略を練るから、作戦上後退しろ。ここで意地を張ったら、お前は気が狂ったんだぞ、コノヤロー、俺の言葉が聞こえないのか?!」
応答がない。
プライドを捨てたら死体のような奴だった。
人間としても、リーダーとしても、仲間の死体を目の前にして退けるような性格では絶対にない。
冷や汗で背中がぐっしょりと濡れる。サ・セジョンは慌ててジョン・ギルガオンを探したが……席にいない。
魔塔と国際連合から急ぎの連絡を受けに行ったのがつい先ほど。要員たちと会話していたジョン・ギルガオンの顔からして、そちらの状況も尋常ではないはずだった。
「俺が行かなければ。」
「ブ、副ギルド長様!」
決断は早かった。
引き止める手を振り払い、ポータルへ行こうと彼がドアを開けたその時。
「サ・セジョンハンター!どこへ行かれるのですか?」
センターとの通信を担当している国情院室長だった。汗まみれの顔で彼が叫ぶ。
「センターと接続しましたが、VIPと一緒にいたチャン・イルヒョン局長と連絡が取れないそうです!解放団の襲撃だそうです!」
「……神様。」
ぎゅっと目を閉じるサ・セジョンの顔から、完全に血の気が失せていった。
遥か遠い場所。
乳白色の枝の先にかけられた天体が、めまぐるしく回転する。
大きさも、色もそれぞれ異なる星の群れは、それぞれの場所でひたすら忙しく光を放っていた。
時には消えたり、さらに燦爛と咲き誇ったりしながら。
彼はそこから目を離した。胴体が割れ始めた世界樹を凝視する。
【お前も寿命が尽きかけているな。】
残された時間は少ない。
顔を上げると、白色の木の頂上。微細な亀裂が入り始めた空間が見えた。
一見するとドアのように見えるその隙間から、真珠色あるいは虹色の泡が少しずつ漏れ出ている。
それを見る「運命を読み解く者」の目が、空虚だった。
しかしそれも束の間、騒がしい動きを見せる星の群れの方へ再び視線が移っていく。彼はいつしょげていたのかというように、失笑した。
【そうか。】
軌道の重要な位置に置かれた星々。
不運と暗い影が彼らを覆うように前進していたが……。
【今回はお前の思い通りにはならないだろう。】
全知の悪魔が悠々と笑った。
まさに彼らの傍へ動き始めた小さな星々。
見えない星が導いた方向、そして王が岐路で選んだ選択の結果が噛み合い、軌道を変えていた。
「ヤングボス!」
「リーダー!避けろ!早く逃げろ!」
「お前らが……!」
お前らが逃げろ。
キョン・ジロクは血のにじむ唇をぎゅっと噛み締めた。
彼が守らなければならない人々が、自分が責任を負うべき仲間たちが、必死に彼を助けようと自分の命を捨てていた。
「このゾンビ野郎ども!良心もないのか!集団リンチにもほどがあるだろ!なぜうちのボスにだけ!」
「キョン・ジロクはこっちにいるぞ!こいつら!あそこにいる、あそこに!あいつがキョン・ジロクだ!」
「クソ、おい!ゾンビだからって馬鹿にするなよ?キム・サンロクの顔でヤングボスを騙るのは無理があるだろ!」
「クソ野郎ども!俺だって分かってるよ!俺が言ってないだけだ、マジで悔しい!」
こいつら、今冗談を言ってるのか?
腕を振り回すたびに、少なくとも十数匹がまとわりついてきた。大多数は敵だったが、時折戦死した仲間の顔も混ざっていた。
歯を食いしばって繰り出した攻撃に彼らの肉片が落ちると、何か胸の中から一緒に落ちていくような気がした。
そうして膝が自然と折れてしまうような絶望の中なのに。
ギルド員たちは崩れることも、倒れることもなく、彼らの隊長を助けるために活路を開こうと必死にもがいていた。
「この狂った野郎どもが……!」
「私たちのために行け!キョン・ジロク!」
ドミだった。
パキッ!キョン・ジロクを覆いかぶさる死霊たちを盾で叩き落としながら、振り返らずに叫ぶ。汗で濡れたその背中が、いつにも増して固かった。
「こいつら今お前だけを狙ってるんだ!敵が狙う通りに盤面を明け渡すつもりか?さっさと失せろ!!!」
死を覚悟した背中だから。
奥底から熱いものが込み上げてくる。キョン・ジロクは上から見下ろすキッドを見つめた。
キッド・マラマルディ。国際会議場で何度かちらりと顔を合わせたことのある奴だった。しかし、あの時と今の奴はまるで別人だった。
表情のない顔が、何を考えているのか分からない。キョン・ジロクは槍を握りしめた。
犠牲によって作られた活路。
「申し訳ないが。」
「……お前ら、まだボスの性格を知らないのか。間抜けな奴らめ。これが終わったら覚えてろよ。」
彼は森と大地に生きる鹿だ。魚でもないのに、他人が開けてくれたエラで息をすることはできなかった。
腕一本を失おうとも、あの野郎だけはここで殺して行く。
ヒュイッ!腐りかけた木の枝を踏み、キョン・ジロクが高く飛び上がった。走る。軍団長が息を潜めて待っていた時も、その時だった。
[ハハハハ!捕まえた!]
幻想が本質の悪夢は、どんな形態にも変わることができる。死んだ枝に息を潜めて染み込んでいた軍団長が、引き裂けるような嘲笑と共にキョン・ジロクのうなじを襲った。
M | 99
キョン・ジロクがハッと振り返り、
同時にキッドが指先から飛刀を放ったのもその時。
「ダメ!!!!」
ドミが目を見開いた。音にならない悲鳴が、ギルド員たちの口の中で砕け散るが。
「詐称にもレベルがあるんですか?」
シュイイイイク!
タールのようにねっとりとした魔物の血が、神聖な光に焼かれていく。神聖帝国の祝聖を受けた剣が、玲瓏にきらめいた。
「じゃあ、俺くらいの顔なら合格?」
「戦争には弾は多ければ多いほどいい。」
誰かの予知のように、決定的な瞬間に現れた、キョンジオの正しい選択。
チ・ウノが、いたずらっぽく細剣の血をパラパラと払いながら、ウインクをした。
「ギリギリセーフですね、兄貴!うちの弟が寝坊しまして。」
クワガガガガン!
眉を吊り上げたキョン・ジロクが、轟音がした方向を見つめた。事実、振り返らなくても分かっていた。死毒に腐っていた木々が、急速に生気を取り戻していたからだ。
[適応スキル、精霊召喚 一 自然属性: 大地(地), 最上位大精霊 ‘ハマドリアデス(Hamadryades)’]
「よっしゃ!」
内気そうだった普段の姿はどこへやら。
魔塔、大人の魔法使いたちの中に座ったキム・ダンテが、[ウィザードアイ]越しの戦場を見て、拳を固く握った。




