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308話

[下位ローカルチャンネル通知]


[—ゲートオープン]


[Warning! Warning’Warning!]


ソウル江西区、非常災害避難所。


双方向のコミュニケーションではないワールド、国家及び地域チャンネルの通知は一般人にも見え、聞こえる。避難所の中の人々の顔は青ざめていた。


生きてきてこれほど立て続けに鳴るゲートの通知を聞いたことがあるだろうか?




ウェエエエーン。


外ではサイレンが休まず鳴っていた。止まらない音に子供たちがぐずりながら耳を塞いだ。


誰かが呟いた。最初S級登場以前の暗黒期時代にもこうではなかった。


「こんなことになるなら地方に住むんだった……あのソウルの家賃が何だって」


「だから早くから帰農しようと言ったじゃないですか。自分の身を案じる人たちはとっくに下りたのに。」


「あなたも子供の教育のために田舎はダメだって言ったじゃない!危険な時は至る所にランカーたちとギルドたちがいるソウルの方がまだマシだって言っておいて!」


「ちょっと声を小さくしてください!」


「今更それが何の役に立つんですか?喧嘩しないでこれ召し上がりますか?エネルギーバーですよ。坊や、君も食べる?チョコ味もあるけど。」


見知らぬ人の優しい言葉に毛布を被った子供がそっと両親の顔色を窺う。夫人がため息をついた。


「お姉さんにありがとうございます、って言いなさい。」


子供を宥めると関心は好意を分けてくれた方へ向かう。夫人が好奇心に満ちた顔で尋ねた。


「聞くところによると人員把握のために救援物資は後でちゃんと分けてくれるとか。そちらはどうして余裕があるんですか?」


「あ、私も公務員なので。知り合いの方がいていくつか分けてくださったんです。周りに必要そうな人がいれば分けてあげてくださいって。」


「国の仕事をするお嬢さんだったの?それなら行って手伝わないでどうして。みんな忙しそうなのに。」


「それが私がちょっと曖昧なポジションで……明後日が初出勤予定だったんです。」


「あら。どこに?」


「センターです。」


「え?!すごいエリートじゃないですか!」


周りの人々の騒ぎに公務員、シン・アジョンは恥ずかしそうに眼鏡を持ち上げながら手を振った。


「そんなことないです。現場職でもないし本当に末端の中の末端なので。ただ配属運が少し良かっただけというか。」


「まあ、謙遜して。ご両親がとても誇らしいでしょうね。」


「ちぇ、それが何になる?出勤してみることもできずに死にそうな状況で。」


近くに座っていた男だった。聞けというように皮肉っぽく吐き捨てる。


「あら、ちょっと!何てことを言うんですか?」


「俺が何か間違ったこと言ったか?仁川に電線を構築してディレクターがあちらにゲートを集めてソウルや他の場所は安全だと言ったのにデタラメくそ!これが何時間目だよ。」


声が大きくなると集まってくる視線たち。すると興奮したのか彼はさらに声を上げた。


「通信会社が問題を起こしたとかでハンドフォンも繋がらない!放送も出たり出なかったりくそみたいにめちゃくちゃで。せめて家族の生死確認すらできないんだぞ!」


「それはあの人の言う通りだわ。まだデータ復旧一つできないのはやりすぎよね。」


不満があった人々もここぞとばかりに一つ二つと言葉を付け加え始める。


雰囲気急にどうしたの?シン・アジョンは不安になって目をキョロキョロさせた。


「どうしてあんなこと言うの。上ではできるだけやっているみたいだけど……」


Big3の記者会見が終わるとすぐに大統領府から大統領国民談話を発表した。


サルート総連合は戦争準備の一環であり、政府は事態を把握すると同時に国民の安全のために最善を尽くしている。


よって仁川及び首都圏市民の避難を強く勧告し、国民皆様の協力を願うという内容だった。


覚醒者非常招集令と部分動員令が発表されたのは当然だった。


記者会見以前から知っていた者たちは国防部の協力要請による言論統制も終わったことだし、戦線に向かう覚醒者たちと軍人たちの姿を我先にと報道し始めた。


公共放送ニュースではアナウンサーが震える声で言った。


「センターが発表した集計によると上位覚醒者たちの自願率が歴代最高値に達したとのことです。招集対象である覚醒者たちの場合は例外事由者を除けば全員参戦したと言っても過言ではないでしょう。国民の皆様、祖国と国民のために戦線に向かう人々の姿を……申し訳ありません。」


声が詰まるのか頭を下げるアナウンサー。


シン・アジョンも泣きながらその姿を見守った。


現代覚醒者の主軸は3世代。正確に彼女と同年代の覚醒者たちの姿がTV、YouTube問わず行き交った。


「ああ、震えないかって?クソ野郎、めちゃくちゃ震えるよ。それを言うか。」


「あ、兄貴。YouTubeも放送です!視聴者の前で悪口禁止ですよ。」


「すいません。それでも国を守りに行くから許してください。」


「クク、招集対象でもなかったのに志願した理由はなんですか?[D. I]ジョン・ギルガオンのフィシャルアウターゲートは並の1級では相手にもならないゴドゥン魔獣たちのパーティーだと言ってましたが。」


「つまりD級程度は引っ込んで家に引きこもってろってこと?」


「また拗ねてそう解釈するの?これは真剣に答えてみて。うん?」


長銃を拭いていた男が顔を上げた。しつこい友人の問いに照れくさそうに掻きながらカメラを真っ直ぐ見つめる。


「僕たちみんなそう習ったじゃないか。」


自由で正義哀れな祖国の無限の栄光のために。


国を守り、自分より弱い者を守り、そうやって。


「とにかく教育率が半端ないヘル朝鮮。クソ、教育効果が最高。身も心も捧げて駆けつける愛国お人好しがこんなに多いなんて。この国民族には変なDNAがあるんだって、マジで。」


「この兄貴、意外とカッコいいな。」


「ちょっと白鳥みたいだったか?どうしようもないだろ、今回はマジで国が滅びるかもしれないって言うじゃないか。ランカーたちはもうみんな死ぬ覚悟をしたって言うし、ハンターとしてのプライドがあるんだ。偉大なジョー様のカムバックまでは耐えてみようって。」


そんな人々が出てきて、ずっと出てきて、また出てきた。


平凡であろうと特別であろうと、皆が約束でもしたかのように少しばかり不器用だが躊躇なく自分の役割を果たしていた。


公務員たちは行かないという高齢者たちを懇願し、哀願して説得して移送し、政府は休むことなく地方避難所への避難を勧告した。


ゲートが人の多い場所、首都圏に集中するという事実は皆が知っている常識だから。ディレクターもまた淡々とした表情で言ったのではないか?


「アウターゲートが狙うのはバベルの塔があるソウルです。ソウルに火の手が及ばないようにすることが私の目標であり、また戦線上のすべての覚醒者たちの目標となるでしょう。」


しかしそれでも家を離れずに耐える者たちは多かった。


クラッシュバリアがあるのに何の心配があるんだという無事太平安全不感症者たちから陰謀論を振りかざしたり、懐疑主義者、または斜に構えた不平ばかり並べて見る者たち。


「まさにそんな人たちのことだ。」


「世界最強だと自負していた国の有様がたったこれっぽっちですか?え?市民を地下の鶏小屋の中に閉じ込めておくこと?税金ばかり食い散らかしてハン・ジョンウン政府が一体何をしているんですか?」


「は、あの野郎、国民ウリ党の支持者だな。善良な人々を扇動するな、青二才が!」


「何だって?」


「そこ、何ですか?皆さん、喧嘩せずに着席してください!」


結局公務員たちが駆けつけてきてようやく終わった。それが何になる、すでに周囲には石が投げられた状況。


さっきよりもずっと悪くなった人々の表情を見てため息しか出なかった。


「よりによってこんな状況で……」


「不安感を煽ったりしてふざけやがって、あんな奴らまとめて魔獣の餌に投げ込んでやるべきなのに。そうでしょ?」


シン・アジョンがビクッと振り返った。右側の高校生だった。


携帯電話から目を離さずガムをくちゃくちゃ噛む姿が良い子ではなさそうだ。不良学生……。シン・アジョンはそれとなく距離を置いた。


「何、無視するんですか?」


「え、あ?」


「人が話しかけてるのに無視するじゃないですか。まさにそんな考えをするタイプだから代わりにスピーカーの役割をしてあげたのに。センター所属だって言うから仲良くなってみようと思ったのにこのお姉さんも全然使えないな。」


「……お、お姉さん?」


男の子じゃなかったの?


短い髪でとても長身だからそう思った。ぼんやりとしたシン・アジョンを見て高校生がニヤッと笑った。


「ジョン・ユジュです。中央高3年。」


事情を聞いてみるとバレーボール名門の将来有望な高校選手だそうだ。合宿後に帰宅せずにうろついていたら避難所に拉致されたとか?


「ご両親は心配しないの……?」


「外国にいるんですよ。保護者として兄貴が一人いるんですけど、あの兄貴は核が爆発しても一人で 勝手に生きているような感じ。あ、考えたらムカつく。」


それなりに情報が多いはずなのに癪に障ることに戦争が起こると耳打ちすらしてくれなかったとジョン・ユジュがぶつぶつ言った。


「お兄さんは何の仕事をしているの?」


「大したことはないですよ。ただマ……」


ちょうどその時までだった。


のんびりと座って会話を交わすことができたのは。




ドゴゴゴーン!


全てが遅くなる瞬間だった。


シン・アジョンはぼんやりとした顔で上から崩れてくる天井を見上げた。


鉄壁のように厚かった防空壕の壁が崩れる。その隙間から突き抜けて入ってくる緑色の瞳!


八つの虫の目と醜い翼がついた六つの腕。


[第1軍団長「疾病の寄生王」配下の偵察兵ドロソフィラLv.Low]


「怪物……?」




タアン!ドドドドド!


響く銃声とむせ返る火薬の匂いにハッと我に返る。


避難!市民たち、今すぐ避難させて!


軍人たちが走りながら叫んだ。ジョン・ユジュが手を掴んでわっと引っ張る。


「何してるんですか!走りますよ!」




ウェエエエーン。


サイレンがこの中で、とても近くに聞こえてきた。


「こちらへ!こちらへお進みください!」


「助けて!」


「うちの子を探してください!」


「一体状況はどうなっているんですか?公務員さん!何か説明でもしてください!」


「皆さん、落ち着いて案内についてきてください。連絡を受けたランカーが来ています。本当にすぐ来ます!」


戦時状況だ。


とっくに全面戦争態勢に入った陸軍首都防衛司令部は武装を終えたままソウル地域の各大規模避難所を守っていた。


異次元のエイリアン魔獣たち。


姿形さえ見慣れない彼らの皮膚は魔石で武装した弾丸でも容易には貫通しなかった。


一般ゲートから出てくる奴らのレベルじゃない。背後から軍人たちの悲鳴が増えるたびに群衆の恐怖も大きくなった。


活路はもう他の避難所へと続く非常口通路だけ。


市民たちが我先にと逃げ出した。


しかし場内全ての人々が一度に避難するには避難所は広く、崩壊した天井の残骸に埋もれて抜け出せない者たちもたくさんいた。


非常口方向に自分を引っ張る軍人を押し退けた女性が気絶しそうな顔で悲鳴を上げた。


「どうやって私一人で行けるの!うちの子がいなくなったのよ……!」


「ママ……」


「大丈夫。ママは必ず見つけられるよ、チャンヒョン。」


シン・アジョンは子供を抱きしめてあやした。


ガタガタ震える子供が泣きながら顔を埋める。むしろ良かった。この前の光景が見えないだろうから。


シン・アジョンはドキドキする心臓の鼓動が子供のものなのか自分のものなのか区別できなかった。ぎゅっと抱きしめたまま涙を飲み込みながら呼んだ。


「ユジュ……生きてる?」


「……だ、大丈夫です。」


避難所内部に侵入した飛行怪物は何匹もいる。今も絶え間なく増えている最中だ。


そのうちの一匹が頭上を通り過ぎ、崩れた残骸が急いで走っていた彼らを襲ったのはほんの一瞬だった。


シン・アジョンと子供は天運で残骸の隙間の空いた空間に閉じ込められたが、ジョン・ユジュは……。


シン・アジョンはジョン・ユジュの足を押し潰した石の山を見て歯を食いしばった。


「チャンヒョン、目をぎゅっと瞑ってて。」


近くに崩れながら飛び出してきた鉄の棒のようなものがあった。シン・アジョンはそれを拾い上げ、テコの原理で力一杯石を動かした。


「お願い、お願い!」


「……お姉さん、ありがたいけど、このままじゃ私たちみんな死にますよ。怪物がすぐ石の向こうにいるのに見つかったら、うっ、どう、しようと。ハンターが来るまでただ。」


冷や汗をかいた顔でジョン・ユジュが必死に止めようとしたが、シン・アジョンは意に介さなかった。その時。




ゴロゴロ。


「……!う、動いたの?」


確かに石のようなものが動く音だった。希望に満ちた顔でシン・アジョンがパッと顔を上げたが。


「クソ……」


見つめ合ったジョン・ユジュの顔には絶望だけが溢れている。


シン・アジョンもその時初めて自分の頭上を


覆った影を目撃した。ゆっくりと


顔を向けると見えるのは……ああ。


「ま、まさか……」


隅で一人目を閉じていた子供もそんな大人たちを見た。


目がたくさんついた悪魔が大人たちの上で長く口角を上げて笑っていた。鉤爪のようにできた真紅色の爪が影を落とす。


怖い。




子供は再び目をぎゅっと瞑った。


ぶるぶる震える手で握って


いた黒い龍のおもちゃをさらに強く握りしめた。


そして願った。切望した。


誰でもいいからどうか来てほしい。


テレビで、本で見たようにとても強い魔法使いが来て魔法のように私たちを救ってくれたら……!


「それなら願え。」


ちゃんと声に出して。





ドゴゴゴーン!


キヤアアアアク!


ぎゅっと閉じた瞼に届く光


の感覚。想像の中の魔法のような囁き。


何だ?子供は憑りつかれたように目を開けた。続いて口が開く。


うっとりするような金色の粉が四方に舞っていた。


満開の季節の日差しのように。


ついに昇った太陽のきらびやかな曙光のように。


星が輝かない夜の真ん中で、唯一の星のようにそう。


「お願いをしろ。」


開いた天井の向こうに巨大な黒龍が伸びをする。人々の幾重にも重なった絶望の上にそびえ立つ支配者。


帰ってきた魔力、人間と世界の王がのんびりと自分の王国を見回した。疾風に真っ黒なショートカットを翻しながらキョン・ジオが涼しげに笑う。


「お前たちの魔法使いに。」


いつものように。


世界で最も偉大な魔法を行う救済者に願え。


「どうせなら叶えてやるから。」


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