30話
* * *
【CC級ハンター「シン・ジンチョル」様の次のパーティーに招待されました。】
【攻略】「鍾路クエストゲダン攻略隊」|難易度:4級|役割:その他
【承諾しますか?】
/パーティーチャンネル、「非公開」様が入場/
「マジかよ……ふざけてんのか?非公開って誰だよ!攻略パーティーはニックネームを実名にするのが基本だって知らないのか?力遊びに来たのか?今すぐ変えろ!」
/パーティーチャンネル、「非公開2」様が入場/
「……今、何しようってんだ!一回やってみるってか?」
真っ赤になっている攻略隊長を、力を隠した二人が対岸の火事見物していた。
「純粋な民間人は何も知りません」と「私は大企業でお前は下請けだ」という表情。
一方は民間人、一方は元請け。
二人の甲乙つけがたい男女の開き直りぶりに、座中が押し黙った。
一応ジオに説明しようとしたタク・ラミンもすぐに諦めた。
民間人に業界ルールを言っても無駄だし……
私は何が何だか全く分からず、全部システムがそうしたという(嘘)主張を聞いて何も言えなかった。
ファン・ホン側は上層部の〈黎明〉から来たと言って全くノータッチだったし。
「いいです。無意味なことで言い争う時間もないし、お二人は「ランダム」で行きましょう。」
バベルは匿名文化が活性化されたネットワークだ。
したがってそれに対する対策も一応備わっていた。
パーティーチャンネルのニックネームのような場合がまさにそれだ。
攻略中のオーダーの混乱を防ぐため、非公開ニックネームは多数の要請によってランダムに変更が可能だった。
パーティーメンバーが特定個人のイメージを思い浮かべると、バベルがその中で最もふさわしい名前を選んでくれるという仕組み。
/【ランダム】ニックネームが変更されます。/
/非公開 → にゃくざ、非公開2 → 豆腐王/
「にゃくざだと?」
にゃくざの三角目にタク・ラミンが視線をそらした。
「な、何?豆腐王?この野郎、見つけたらただじゃおかねえぞ。」
豆腐王の脅しにユン・ウィソが顔を背けた。
ともかく、こうして鍾路4級クエストダンジョン。
(力を隠した)S級二人を含む総人員、10人。
塔に押されて事実上の二部リーグであるダンジョン攻略史上、前例のない超豪華ラインナップが誕生した。
▶(ゲリラ)ダンジョンクエスト
/等級制限なし/
▷〈汚染の中の犠牲者たち〉
▷難易度|4級・人員|10/10
▷目標|暴走阻止及び救出
▷Timer|00:19:27:57
━アンラッキー!(๑˃o˂๑)異次元のゴミと遭遇しました。
━寄生王の配下の腹足種は遅くて劣等ですが、周辺を汚すことにかけては一日の長がある悪虫です。
━こいつらと汚染された個体を駆除し、内部に閉じ込められている市民を救出してください!「案内人」があなたを案内してくれるでしょう。(詳細を見る)
【完了時】
•浄化
【失敗時】
•ダンジョン暴走
* * *
いかさま師並みの手さばきで素早くアイテム帰属を終えたジオ。
おかげでクエスト上の「案内人」はもうキョン・ジオ一人だけだ。
それにもかかわらず、民間人は連れて行けないと騒ぐ攻略隊長のおかげで、その場で国家エリートのタク・ラミンの合流まで決定。
「お伝えした通り、ジオさんは「エンターストーン」に手を触れるだけでいいんです。」
「あれ?」
「はい。ポータルの横の水晶柱。入場申告のようなものだと思ってください。安全にダンジョンに入るために必ず必要な手続きです。」
計画になかった民間人の合流にもタク・ラミンは不快な様子はなかった。
センター所属の公務員ハンターが市民に弱いことはよく知られている事実。
ジオも彼の親切な説明をかなり熱心に聞いていた。
ハンター常識の基礎中の基礎に該当する知識だったが、こちらも言ってみればガチ初心者も同然の歴代級の金の匙。
ハングルを覚える前に、皇帝の服から着たような境遇で何が分かるはずもなかった。
実物ダンジョンだけでもほぼ10年ぶり。
それさえ虎の「ポケットダンジョン」だったので比較にならない。
「もう少し近くで見てもいいですよ。ダンジョンポータル実物は初めてでしょう?」
「わあ。」
「本当に滝のように見えませんか?」
「ひゃああ。」
「入ると実際に滝の真ん中を通るような感じがするんですが……ザーッ、サーッと。」
「うおおん!」
「ゴホン、ゴホホン!」
攻略隊長が大きく咳払いをした。
活魚のようなリアクションに、それとなく気分を良くして説明していたタク・ラミンが両腕を下ろす。
相変わらず無表情だが、赤くなった耳たぶで身なりを整えた。
「……とにかく。原則通りなら未覚醒者は入場できませんが、ジオさんはクエスト対象者なので大丈夫でしょう。よくあることなので安全面ではあまり心配しないでください。」
一ヶ所に滝のように位置したダンジョンの入り口、「ポータル」。
そしてそこを通過する入場装置、「エンターストーン」。
一般人がストーンに触れるとそのまま弾き飛ばされ、無視してポータルに飛び込むと綺麗に消滅行き。
もちろん例外の場合もある。
人里離れた山奥で山参を掘っていて転がり落ち、気がついたらダンジョンの中にいたとか、そんな奇跡のようなこともあったりするが。
それは本当に雷に打たれる確率だし。
普通、一般人がダンジョンに入る場合は「ダンジョン化」に巻き込まれた時。
今、ソ・ガヒョンと友達、民間人バージョンのキョン・ジオのようなケースだった。
タク・ラミンの言う通り、実際にもよくあることだ。
「要員様、あれは言わないんですか?」
「何をですか?」
「こうして巻き込まれた一般人は覚醒する確率も高いと。うまくいけば攻略の途中で覚醒者が新たに一人見れるかもしれません。」
体ほどもある大剣を持ちながら、ふんぞり返り始めたシン・ジンチョル攻略隊長。
「攻略しに来たのに、全く知らない人に覚醒洗礼をすることになるとは聞いたことがないな。いやはや、運もいいな。覚醒したらちゃんと恩返ししろよ、運のいいお嬢さん。」
「分かりました、シン・ミンチョルおじさん。」
「……?俺の名前はシン・ジンチョルだけど。」
「分かったってば、ジン・ジンチョルおじさん。」
「シン・ジンチョルだ。」
「アイアムグラウンドかよ?分かったってば、ジョン・ジンチョルおじさん。」
「……」
【聖約星、「運命を読む者」様が、あの生意気なジョン・ジンチョルというやつがなぜ人の子猫を睨みつけて騒いでいるのかと腕まくりをしています。】
【熱い星パンチをお見舞いしてやろうかとそわそわしています。】
「やめろ。星にもなって人間を殴るんじゃない。人間を守れ。」
【あなたの星約者、「運命を読む者」様が、でも、でもと駄々をこねています。】
いい。気に入らないからといって誰でも殴るほど、そんな家庭教育ファンタジーを受けていない。
ジオは謙虚に後ろ手に組み、背中に中指を立てた。
おじさんたちの気難しい心理が理解できないわけでもない。
突然連れて歩くことになった一般人から、上層部から送られてきたやつはあのざまあの体たらくだから。
ポータルの前。
毎秒3回ずつ、焦って虚空を見つめているファン・ホン。
「うわ……うわ、返事してくれへんの、ジョー兄貴……?このポンコツバベル、ラグってるんちゃう……?」
虚空をまさぐりまさぐり。
独り言をぶつぶつ。
ほんの数分で痩せて見える。まるで絹ごし豆腐が木綿豆腐になった感じ。
「ハッ。ひょ、ひょっとして緊急事態?救助信号だったのに、まさか俺が聞き逃した、そんな……」
「あいつ、このままじゃファンフィクション書くな。」
「どこや、閉じ込められてたら返事を……くださいね……」
「行った。行った。目がイっちゃった。」
バベルネットワーク
▷ローカル─大韓民国
▷国内ランカー1番チャンネル
|6|
夜食王:いつでも返事を頂ければ、この男、ファン・ホン、すぐに駆けつけます
|5|
バンビ:キチガイ
そしてランカー1番チャンネルが鳴るたびに、ファン・ホンよりもさらにビクビクしている一人の人。
「入場します!」
死体のように蒼白になったユン・ウィソを見つめながら、ジオは顔を背けた。
建物のガラスドア真ん中、滝のように揺らめくポータル。
攻略隊長のシャウトに一人二人と紫色の水晶の近くに集まって立った。
続いて手を上げるとすぐに襲ってくる……冷たい異質感と第5の感覚。
ほんの一瞬の後。
キョン・ジオは湿気に包まれて目を開けた。
苔と粘液がこびりついた壁と床、不愉快で慣れない匂い。
誰が見てもここは。
【クエストダンジョン。「隙間の汚染地(4級)」に入場しました。】
【規格超過のため難易度を強制再調整中……】
【ダンジョン暴走が加速されます。】
【警告!ダンジョン暴走が急加速されます。】
【「隙間の汚染地(4級)」→「広がった隙間の汚染地(2級)」】
【残り時間━00:05:37:45】




