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281話

誰かに見られるかと、三人は息を潜めて移動した。タク・ジンが事前に手を回していたのか、誰とも鉢合わせしなかった。


人けのない密室に入るとすぐに、タク・ジンが慌ててまくし立てた。


「どうやら密告者がいるようです。少し前、『円卓の部屋』と『王の庭園』周辺の警備を強化せよとの命令がありました。」


「その二箇所だけ名指しでですか?」


サ・セジョンとナ・ジョヨンの顔色も深刻になった。


元老院専用会議室である『円卓の部屋』と、聖地『王の庭園』。


どちらもマッドボールを探し、世界樹を燃やすために彼らが目的地とした場所だった。


「はい!聖地はまだしも、最上階の『円卓の部屋』周辺が特に問題です。天弓騎士団まで動員されたと聞きました。」


「天弓騎士団といえば……?」


「全員が飛竜騎士で構成された最強の騎士団です。元々は聖女様の直属でしたが、今はその代理人である大神官と元老院の命令だけに従います。」


「プギルマ様、どうしましょう?騎士団単位では、私たち二人では手に負えません。武力を抜きにしても、これは数的に……支援要請しましょうか?」


「サリュク氏と革命軍が動けば、全面総力戦になります。呼ぶとしても、全てをセッティングした後でなければなりません。」


サ・セジョンは頭を働かせた。


今ここで総力戦を繰り広げれば終わりだ。


デウス・エクス・マキナ級のキョン・ジオがいるとはいえ、絡んだ人と変数があまりにも多かった。おまけに、ろくに知らない他人の家の奥座敷、絶対に有利な戦いとは言えない。


「武力衝突は最大限避けなければ。考えよう。考え出せ。」


「……タク・ジンさん、首長のチャラン様は元々元老院所属だったと聞きました。目がそうなったのも、彼らの報復だったとか。」


「え、ええ。そうですが、いきなりその話はここでなぜ……?」


「元老院と反目する内部者が、チャラン様一人だけではなかったでしょう。だからこそ、あんな見せしめのような報復までした。」


殺さないのには、彼らなりの理由があるはずだ。殺せないうちにチャランを逃した経験があるので、警戒心はさらに強まったはずだ。


「近くに、手元に置いておきたかったのだろう。」


「この王宮のどこかに、彼らを閉じ込めた場所があるはずです。例えば、監獄とか。」


タク・ジンが驚いてよそ者を見た。


「ち、地下監獄はありますが。」


「そこへ行きましょう。急を要して藁にもすがる思いですが、追放された内部者がくれる藁なら、それなりに使えるはずです。」


敵の敵は味方。それより確実な支援軍はいない。


落ち着いて結論を出したサ・セジョンが目配せした。早く行かないのかと。


王宮の東側、聖地とは正反対に位置する地下監獄は、ひっそりとしていて冷たかった。


「運がいいですね。もし融通の利かないハンスという奴が今日担当だったら、絶対に入れてくれなかったでしょう。官僚様だとしても。」


「ありがとう。あなたの名前は忘れずに、護民官様に必ず伝えます。」


「ハハ、とんでもない。私たちのような弱者のことを気にかけてくださるのは、サリュク様だけです。世間の人は知らずに指をさしますが。」


人当たりの良さそうな看守がうなじを掻いた。


「しかし、ここはなぜご存知で?驚きました。裏切り者を見に来られるとは。看守の中でも、私のように古株だけが知っている場所なのに。」


「機密なので言いにくい。」


階段をぐるぐると回って到着した場所。分厚い鉄の扉は、鍵を開けるだけで五つの鍵が必要だった。


ギイイ。


納得した看守が松明を渡し、念を押す。


「足元にはお気をつけください。こちらには別途明かりを灯していないので。」


通路は暗くて狭かった。


うっ!むっとする悪臭に、ナ・ジョヨンが袖で鼻を覆った。


「ここか?」


「え、ええ。うーん……こいつは、それでは少し下がっています。あそこにいます。とても罪質の悪い奴らですから、お気をつけください。」


勘の良い看守が遠くに避ける。サ・セジョンは松明を奥へと傾けた。


ササッ。


突然の光に逃げ出す虫やネズミ。かすかなうめき声が聞こえてきた。


「大丈夫ですか?お尋ねしたいことがあって来ました。」


サ・セジョンの目配せに、光が漏れないように注意しながらナ・ジョヨンが呟いた。1等級ヒール。基礎中の基礎だったが、気力が底をついた者には命綱のようなものだろう。


「••••••う、うっ。」


「申し訳ありませんが、状況が切迫しているので、用件から話します。私たちは元老院が隠した『マッドボール』を探しています。」


体を震わせる囚人は、長く閉じ込められたせいでやつれていたが、年がとても多く、拘束具も多かった。


重要人物だろう。確信したサ・セジョンが声を低めた。


「それが何かご存知でしょうから、元老院ではない私たちが、なぜそれを探しているのかも察しがつくはずです。私たちはお互いを助け合え……」


「そちらではないな。」








u | n


「そいつはそんなことは聞いたこともない、ただの反逆者だ。」


背後。


反対側の鉄格子だった。


パッ!三人が素早く体をひねった。松明が大きく揺れた。


「これはこれは、どけてくれ。光は久しぶりで目が痛い。できればさっきそこのメディックのお嬢さんがやったことを、私にもしてくれればありがたいが。」


「……どなたですか?」


壁に寄りかかった老人が乾いた咳をした。がらんどうの両袖が、重みなく物寂しかった。


「それはこの老いぼれが聞きたいことだが。どこから来たのかわからんよそ者が来て、驚くようなことを言っているからな。」


しかし、みすぼらしく、老いぼれた姿にもかかわらず、眼光だけは炯炯としていた。


身を起こした老人が、鉄格子に顔を近づけて笑った。


「お前たち、『ジオ』様を探しているのか?」









「ああ、危機です! 」


ポタッ。


虎は床に落ちる自分の血を見た。赤い。どれくらいぶりに見る血なのか見当もつかなかった。


「……6年くらい経ったか。」


ジオが中学校に上がってから、コントロールを完璧に成功させ始めたから、おそらくそれくらい経ったのだろう。


言い換えれば、それはキョン氏姓の兄妹を除けば、今まで彼から血を見させた者がいなかったということだった。


「……恐ろしいな。感傷に浸る時間も与えてくれないとは。」





ザアアア!


肩を狙って殺到する木の蔓に、虎が上半身を少しひねった。相次いで体を膨らませて飛び出す棘の束。


金縁の環頭大刀が、それを優雅に切り裂く。


遠くから、真っ青な文字列の呪縛を握力で引きちぎっていたキョン・ジロクが、作り笑いを浮かべた。


「いつから剣も使うようになったんだ?」


「剣ではなく刀だ。最後に抜いたのが朝鮮時代だったか。」


「……マジかよ?」


武器を回収する虎を、キョン・ジロクがうんざりした顔で見つめた。それほど昔だとは信じられないほど、環頭の装飾は華やかだった。


「元々は儀典用なんだ。」


わざと親しげな冗談だったが、対峙状況は殺伐としていた。


百鬼の凄まじい鬼気と、乱暴な森を引き寄せたせいで、舞台はすでに粉々。保護障壁をひっきりなしに叩く石の破片に、観客席から悲鳴が相次いだ。


恐ろしい予兆だ。


虎はキョン・ジロクの槍の先から飛び散る雷電を凝視した。


元々も適業と聖位固有スキルによって、遠距離、近距離問わない奴だったが、再昨年に『雷霆』を得てからは、キョン・ジオ以外に敵はいなかった。


「成長が早い。危険なほどに。」


まともにぶつかってみてわかった。果たしてこれが『人間』に可能な力なのか?虎の眼差しが沈んだ。





カガガン!


地面を突き破って出てきた巨木の根を蹴って跳躍したキョン・ジロクが、上から槍を叩きつけた。


ぶつかり合う金属音に強風が吹き荒れ。


指先から伝わる感覚が、背骨まで食い込んでくる。虎は静かに正面のキョン・ジロクを見て、手の力を抜いた。


U | »






以大易剛!



素早く気づいたキョン・ジロクが槍を引く瞬間、軌道を変えて斜めに滑ってくる刀身。


「ありえない……!」


足を長く伸ばして踏み台にし、キョン・ジロクは力いっぱい体を反らした。短く握った槍の柄が、虎の鎖骨を砕くように下から突き上げた。


虎が待っていたタイミングだった。


[秘伝権能、鬼主直命 – 『制魔天羅禁諫網』]


タラン。


穏やかな湖に水滴が落ちるように、玲瓏な鈴の音が響いた。それと同時に爆発するように場内を覆う、真っ青な禁魔の網の帳。


「くそったれ!」


キョン・ジロクの片膝ががくんと折れる。のしかかる網に、彼の魔力が渦のように吸い込まれていった。


求心力を失った森が、急速に力を失う。


虎はそれを冷静に見つめた。


キョン・ジロクが呼び起こす森は、彼の意志と気分によって四季を行き来し、攻撃型、防御型、支援型……あらゆる変数に対応する変化自在な形態として、敵を圧倒し翻弄するが。


主人の意志に過敏なだけに、彼を制圧すれば少しも自発的に反応できない。


そして『鬼主』。


万悪と万鬼を屈服させる彼の根本は、制圧と制霊にあった。


世界魔力を意のままに操り、爆発的に叩き込む、ただのチンピラ暴君程度でなければ、『魔力』を扱う人間はそもそも相手にならない。


「怒ることはない。これはただ相性の問題だから。」


タバコ一本吸えばちょうどいいんだが、ここで取り出したら、こいつ本当に一生顔も見なくなるだろう。


失笑する虎の手の中で、環頭がスルスルと消えた。






「こんなことが!つ、ついに勝敗が決まったようです! 」


敗北を認めれば、そのまま決勝戦が終わる。


ひどく興奮した司会者の声が、ブンブン四方八方に響いた。


頬の血痕を人差し指で拭いながら、虎が軽くため息をついた。


勝敗が決まった状況でも、歯を食いしばって折れずに彼を睨みつける血走った目。


緑色の眼光から、荒々しい黄金色の電流が飛び散る。


「本当に嫌なら、引き分けということで……」


「……たわ、ごと。」


「..!」




[不屈の意志!格が違う敵にも屈服しません!]


[折れない戦士に勝利の加護があらんことを!特性、『不屈の意志』と呼応し、戦士として一歩さらに飛躍します!]


新しいスキルが開かれたという知らせが、ひっきりなしにキョン・ジロクの耳を叩いた。


初めて見るスキルだが、いつものようにどう使うのか本能的にわかった。


ファーストタイトル、神の槍。


セカンドタイトル、万兵之王。


ブツッ。キョン・ジロクの奥歯が激しく噛み合わさり。


[適業スキル、9等級戦士系極意 – 『逆転乾坤大挪移』]


クウウウウン!


反転は刹那だった。


吸い込まれていたキョン・ジロクの魔力、吸い込んでいた虎の霊力が方向を変える。逆。膨張してそのまま虎の範囲を飲み込んだ。


ツガガガガ!


再び地面が跳ねた。


砂埃が嵐のように巻き起こる。


そして……その全てが静まった時。


[ま、まさか……!反転の反転です! 1


「……こりゃ。」


喉仏を鋭く突き刺す槍の先。


神話を込めた槍の刃が、凄まじい唸りを上げた。性質が主によく似ている。虎はせせら笑った。


血に濡れた髪の間から見下ろすキョン・ジロクの目も、同じように笑っている。


「そろそろ敗北を認めたらどうですか、先生。本当に嫌なら、引き分けにしてあげましょうか?」


どうやら家庭教育を間違えたのが正解だったようだ。内心ため息をついた虎が口を開いた。


力はすでに抜けるだけ抜いた。ここでさらに行けば本当に生死決。もう子供じみた真似をするつもりで。


「ああ。負け••••••」





クワガガガガ!


キャアアア!




[み、皆さん!落ち着いてください!落ち着いて席を守らなければ……! 」


一体どういう状況だ?


観客席の保護膜の上をドンドン叩きつけ、遠くに弾き飛ばされる鉄の塊。


真っ黒な煙が魔導具スクリーンを瞬く間に覆った。


虎とキョン・ジロクの目が合った。


嫌な予感がした。


そしてまさにその時、トーナメント司会者の慌てた声を遮り、空を轟々と鳴り響かせるもう一つの実況の声。




「キャアア!墜落!墜落しました!リタイア!18番『コロナ』チーム脱落!レース開始51秒でトラックを完全に逸脱しリタイアします! 」


「 18番飛行船を撃墜したのは777番!ぶ、『ブガッティランボルギーニフェラーリ』チームのスフィアです!神よ!鳥肌が立つ狂暴なドライビングとしか言いようがありません! 」






「••••••棄権!」



「クソ、ここで棄権!誰が負けようと関係ないから早く終わらせろ!キョン・ジオ、あの狂った……!」


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