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279話

いつの間にか、二人の間には張り詰めた緊張感が漂っていた。


「……無線まで全部聞こえていたようだな。」


ジオの顔から表情が消えた。平然と受け止める。


「それがどうかしたか?」


「気づかれないのが暗殺の美徳だというのに、ずいぶんとずさんな暗殺者だな。ターゲットの前でそんなに堂々としていていいのか?」


「特性に獅子心があるんだから仕方ないだろ。全部バレて、どうやってこっそり殺すかまた考えなきゃいけないから、話しかけるな。」


「ずいぶんと用心深いな。何か手伝おうか?」


「ありがたいけど、遠慮するわ。」


そっぽを向いて手をひらひらさせる。その様子がとてつもなく図々しいのに、どうしようもなく胸をざわつかせた。


ジン・ギョウルは、上がり続ける口角をあえて隠そうとはしなかった。


こんな風に笑うのはいつぶりだろうか。だからギョウルは涼しい顔で再び尋ねた。


「死んでやろうか。」


「……何?」


「悪くもない。どうせ未練ばかり残った生だ。こんな手に終わるなら、その結末も悪くないだろう。」


冗談めかして軽くジオの指先を軽く叩く。彼のけだるい声が一段と甘くなる。


「喜んで死んでやろうか、お前の手に。」


「……こいつ、本気か?」


真意を確かめようとジオが端正な顔をじっと見つめる。


「本気だ。」


「……誰の許可を得て人の心を読んでいるんだ?プライバシーは守らないのか?」


「確かに、人の心など望まなくても見えていた時代もあったな。だが、もう昔の話だ。今はただ、君の率直な瞳を読んだだけだ。」


「昔?」


それは元々あった能力が消えたという意味だった。そうでなくても何かを感じていたジオは、彼をまじまじと観察し始めた。


絵のように立派な眉の下、底なし沼のように人を吸い込む瞳。


「……やっぱりおかしい。」


「何がだ?」


「しらばくれるな。違和感ありありだ。生きているのが本当か?まるで……」


「抜け殻のようだ、と?」


代わりに終止符を打つジン・ギョウルは、すべてを知っている顔だ。観察しながらうっかり彼の頬に触れたジオの手を、余裕で払いのけた。


そうしている間にも、ジオは目を皿のようにして彼を目で追った。


判断力に優れたこの魔法使いが、驚くほどそっくりの顔を前にしても確信できなかった理由。


この男、ジン・ギョウルからは、お星様の痕跡が少しも感じられない。


見れば見るほど、彼の言う通り、中身が空っぽの抜け殻のようだった。


「何をそんなに見つめているんだ。こちらは明らかに初対面からおかしいと紹介したはずだが。」


「冗談だろ?当然聞き流したよ。」


まあ、ちゃんと聞いていても同じだっただろうけど。


最近の世の中、狂人のふりをする痛々しい中二病患者がどこに一人や二人いるものか。あそこの微々たる無塔にも、すごいのが一匹いる。


堂々とした鉄面皮にジン・ギョウルは失笑した。


「大したことない。よくある失恋の話だ。命よりも大切なものを喪失し、ゆっくりと死んでいく。」


正確には、あの日の後だった。


恋人を失った日。その後、彼には何も残らなかった。


手のひらから砂がこぼれ落ちるように、「ジン・ギョウル」という人を形作っていたすべてのものが、内側から一つ二つと消えていった。まるで死のように。


記憶から意志まですべて。


残っているのはただ……「彼女」を探さなければならないという執念だけ。


「だから、殺してくれるならありがたい。」


「もちろん、私を殺しに来た者がお前以外の者だったなら、それはまた別の話だが。」


ジン・ギョウルがとぼけて囁いた。


壁に寄りかかりながら近づくと、ジオの耳の縁がギリギリ唇に触れる。


自然にそれを噛み砕く直前、ジン・ギョウルはハッとした。


「何だ?」


「……何でもない。」


ギョウルは慌てて当惑感を隠した。今のは意識したのではなく、ほとんど本能に近かった。無意識に染み付いた習慣でもあるかのように。


あまりにも似ているせいだろう。無理やり合理化しながら身を引く。


「ああ。」


ただの相手ではないな、本当に。


勘のいいジオの眉がすでに険悪に歪んでいた。


「何でもないだと?今、元カノの話でセンチメンタルなふりをして、変態みたいに私の耳にキスしようとしただろ。何だこのとんでもない変態クズ野郎!」


「……いや。本当に違うんだが。うーん、その、一部は当たっているが。」


「へ、変態だと堂々と認めたぞ、今?」


「落ち着け。そのレンガはちょっと置いて。」


一体どこで拾ったのか、いつの間にか手にレンガを持っているジオ。


有事の際には叩きつけるという意志が強固だった。鉄壁ジオが唸った。


「私があなたを暗殺しようとしたのは、勝てないからではなく、挙事のためだからな?お前はその挙事の過程に過ぎないんだ、分かったか?何でもないんだ。」


「はいはい。」


「抜け殻しか見るところのない奴が調子に乗るな、コラ。星の抜け殻、お前なんか私の握り拳にもならないんだぞ。」


「はいはい。ごめんなさいじゃないか。それより、抜け殻なら抜け殻で、星の抜け殻って一体何だ?」


「そういうのがあるんだよ。ほっといて。」


フン!と鼻で笑ったジオが、手に付いたレンガの粉を払い落とすその時。


[「トーナメント決勝戦5分前。警戒班、決勝戦終了後、障害物レース参加者の招集が行われるので、参考にして移動してください。」]


「キング!今どこにいるんだ?」


それぞれ異なる無線だった。


一つは状況を中継してくれる革命軍本部側、次いでティモシー。


今連絡があったかと確認したティモシーが、合流する場所まで一気に告げた。……ふむ。ジオは無線を切って振り返った。


「東門尖塔がどこにあるか知っているか?」


「知らないはずがないだろう。」


「案内しろ。見ているだけじゃなくて。」


なびく布と風、その間からジン・ギョウルが微妙に笑った。


「見捨てると思ったのに。」


「ニヤニヤするなよ?どうせ殺す奴、殺す前に恨みでも晴らしてやろうと思って連れて行くんだから。」


「恨み?」


「ああ。言ってなかったか?こっちの目的も聖女奪還だから。」


「何、、、、、?」


ずっと余裕があってとぼけていた態度はどこへやら。蝋のように固まった顔で彼がジオを直視した。


ジオはニヤリと笑った。


「どこにいるか位置も分かったら、卒倒するんじゃないか?」


「何と言った、今。」


「生意気な。顔を崩すなよ?」


二人の視線が譲歩なくぶつかり合った。冗談を言い合っていたのがいつだったかのように冷たい。


歯を食いしばったジン・ギョウルが近づき、ジオの顎を掴んだ。


しかし力を入れず、そのまま震えるだけの手。


ジオは静かにそれを見下ろしてから、目だけを上げた。すでに死んでいる男。哀れだが……そこまでだ。


「ジン・ギョウルさん。」


「私が甲だ。お前ではなく。」


「今すぐこの場であなたを殺すこともできる。あなたもそれなりにできるみたいだが、昔の話だろ?今のあなたには私には何もでもない。」



キョン・ジオは、魔力を解放した。


豪華な星が集まった小宇宙が、魔法使いの瞳の中で輝いた。


ジン・ギョウルの閉じた顎にさらに力が入る。


「死ぬ前に恋人の顔を一度でも見たいなら、私がかける条件を受け入れろ。道端で犬死にするよりはマシだろ?」


「言え。」


「[誓約]から。受け入れると。」


「こんな、魔法使い……」


ジン・ギョウルがついにため息をついた。感嘆のようでもあり、うめき声のようでもあった。


いつの間にか彼らの周囲を完全に掌握している魔法使いの背水の陣。


感じられた。これから言う内容は、魔の法則によって運命の領域に落ちる。


「……」


「いいだろう。[条件]は。」


彼に顎を掴まれたままジオがニヤリと笑った。小悪魔のような笑顔で。


「[聖女を見るや否や。]」


「[自決すること。]」


ジオは見つけることになる聖女が「死体」だということをあえて言わなかった。


革命軍の話によると、執政官は目の前で聖女の死を見ても希望を捨てていない状態だというから。


狂人を刺激する必要はない。


なぜそんな危険を冒す?刺激する代わりに、首輪をかけて静かに死に導けばいいだけだ。


そして賢い魔法使いは今、それを完璧に成功させたところだ。





••••••ok


死を宣告されたジン・ギョウルは笑った。最初は失笑だったが、だんだん肩まで震わせて笑う。


キョン・ジオは、彼の親指が自分の唇をなぞるのを放っておいた。


どうせ勝者はこっちなのだから。


「参ったな……」


やっと笑いを止めたジン・ギョウルがジオを見つめた。目元に奇妙な熱気が宿っていた。


「こんな死に方は想像もしていなかった。」


「世の中を投げ出した独裁者様が、まさか盛大に死ねると思ったのか。勘違いもいい加減にしろ。」


「キスしてもいいか?」


「••••••え?」


「我慢できない。」


浅い笑みを浮かべた顔でジン・ギョウルが頭を下げた。


魔法使いの厳しい誓約がすでに彼の命を縛り付けていた。本当に最期が近づいたと感じると、霧がかかったようにいつもぼやけていた精神が目覚めるようだった。


彼に死をプレゼントしてくれた目の前の悪魔を、できることなら噛み砕いて飲み込みたいほど。


我慢できなかったし、我慢したくなかった。


柔らかな唇をなぞる手が、先ほどよりもねっとりとしていた。近づいた唇からジン・ギョウルは視線を離さなかった。


「する。したい。」


……ま、マジかよ。死ぬってなったら本当に頭がおかしくなったのか?


「絶対嫌!消えろ。」


パシッ!




彼が醸し出す雰囲気に一瞬たじろいだが、慌ててジオが払いのけると、狂った目つきのくせに意外と素直に退く。


しかし視線だけは相変わらず執拗なほど唇に固定されていて……。


「一体何なんだ、こいつ?」


遠ざかったジオの耳が赤かった。両手で口を覆おうとしたが、ギプス そのため、片手で覆う。


ああ。ジン・ギョウルがそっと笑った。


「その腕、『格』による傷か。それならこちらが治せるかもしれないが。」


「何?それをなぜ今……いや、いい。遠慮する。別に不便なままでいいし、そんな見え透いた下劣な手口に乗ると思うか?」


「唇が嫌なら他の場所はどうだ。額、とか。」


「……額?」


キョン・ジオの表情が微妙になった。


心が揺れる。ものすごく。


「額にキスくらいならセシリーズでもしょっちゅうしてるし。額にフレンチキスでもするわけでもあるまいし。」


「ふむ。おい、星の抜け殻。その取引、受けてやる。5秒やる。」


「35秒。」


「え、値切りをこんなに無礼に?ありえない。10秒。」


「50秒。」


「••••••クソ。」


しろ、しろ。ジオが諦めて額にかけていたゴーグルを外した。


ジン・ギョウルはこみ上げてくる笑いを必死に抑えた。


実は沸き上がっていた衝動は、会話しているうちに静まってもう久しい。半分はただの冗談だったが、いざこうしてまた近くに立つと……。


「……自分の策略に自分が引っかかったな。」


どうやら本当に抵抗せずに死んでやるしかなさそうだ。


「何を見ているんだ?」


「無粋だな。……目を閉じろ。」


優しく落ち着いた低音。


反射的にジオが一歩後ずさると、大丈夫だとばかりに腰を支える。幼い頬と顎をゆっくりと包む手つきは切なく、また慎重だった。


だからだろうか、目を閉じながらジオはふと思った。


どんな表情をしているのだろうか?


近いのに、見ることのできない男の顔が、妙に気になる瞬間だった。


「ついにこの瞬間!待ちに待ったバトルトーナメントの最終ハイライト!星界ランカーたちの熾烈な接戦の末、まさに今この場所でたった一人!栄光の壇上に上がる最終勝者が誕生します。皆さん、拍手喝采をお願いします!ついに待望の決勝戦です!」


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