278話
キョン・ジロクはいい加減なことを言うやつじゃない。
ジオに関しては特にそうだった。むしろダムの方を選ぶだろう、決して軽率に口を開かない。
だからそれは(似合わないように)考え深い二番目の子がそれなりに悩んだ末に出した結論という意味。単に似ているだけではないのだ。
「他の人でもなくバンビが直接見たんだ。それなら確実だろう」
虎に輪廻が存在するということも聞いて知っている。水車で見た記憶もあるし、前世である可能性が高い。
「ジン・ギョウルが本当にあなたなの?」
でも……聖女だか何だかは死んだからいいとしても、ジン・ギョウルはピンピンして生きているのに。
「ウンイルクチャもここに一緒にいるじゃないか。しかもジン・ギョウルは自分が勘違いしたとはっきり認めたし」
混乱したジオが少し眉をひそめた頃。
【違う。】
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風のようにかすめる声。
ハッと顔を上げたが、そこまでだった。続く言葉はなかった。
……今、これは一体何をするつもりだ?ついにむっとしたジオがむっくり起き上がる。
「こちらはエンジェル。キング、なぜ何の報告もないんだ?まさか……お祭り見物しながら遊んでいるんじゃないだろうな?」
「まさか、そんなことはないだろう。それでも一国の運命がかかっていることなのに……執政官もそんなに強いのに「タンカー」である、私だけに任せてまさかそんなことはないだろう。ごめん、ドン・マイン!私はジオを信じてる」
「••••••ゴホン!」
余計なことを言ったとティモシーが謝る。ジオは慌てて手に付いた雲魚のタレを払い落とした。
「どうしたんだ、大丈夫か?」
「おお!大丈夫!いやあ、糸口をつかんだと思ったのに無線で気が散ってうっかり、うっかり見逃しちゃった!」
[「オー、ジーザス。ごめん!」]
「そんなこともあるさ。おお、あいつを見ろ?ティミティミ、私は忙しいからこれで!覚悟しろ、この野郎!」
他人から見れば一人でむなしく空に向かって指をさしている姿。
突然の狂人一人芝居に串焼き屋のおばさんと周りの通行人たちがひそひそ話をした。ジオは涙を飲み込みながら急いで抜け出した。
「ティモシー、こいつどこかで見てるんじゃないか?」
顔と体格だけはまともなアメリカ人のストーカー前歴を考えると、十分にあり得る話だ。
ジオは近くの屋台で帽子を手に取り、適当にかぶった。
監視されているのは少し不快だけど、仕方ない。
「遊びは全部済んだから一生懸命働こう!」
固い覚悟と共にあっという間に一時間が過ぎた。
「……ちっ。どこでいたずらしてるんだ。死にたいのか、誰の前で。え?」
「いたずら?!姉さん!こいつが今よくもいたずらをしたな?」
ドーン!
怒った身ぶりにテーブル全体が揺れる。髭ぼうぼうの中年男の顔が怒りで赤くなった。
「ここの社長を呼べ!よくも姉さんの前でいたずらをするか?こんな恩知らずなやつら、どこで企んでるんだ!」
「お、落ち着いてください!」
わっと押し寄せる中年のおじさんたちの抗議に襟首をつかまれたテキ屋がだらだら冷や汗を流す。
ジオは太鼓腹のおじさんが丁寧に剥いてくれる棒付きキャンディーをくわえながら凝り固まった首筋を揉んだ。
「ふう。いいか。私はこの世界でテキ屋だけを二十年やってるんだ。どこから転がり込んできたやつが汚く手品をやるんだ?マジで」
「お、二十年ですか?私はここで三十年以上商売をしていますが、今あなたを初めて見ますよ!」
「こいつが!うちの姉さんがそう言うならそうなんだ!」
「ああ、申し訳ありませんでした」
勝負に参加してからすでに13連勝目。
金で積み上げられた忠誠心は堅固だった。幼い女の子が何を知っているのかと見下していたおじさんたちは狂気の狂信者になって久しい。
「姉さん、選手交代です!あのテキ屋は両利きで「千の手のモンキー」としてこの世界ではかなり有名です」
「うむ。心配するな、デブ。今回の勝負もこのキング千手観音菩薩が指揮する」
「キング千手観音菩薩!忠誠!」
ティモシーの打ち砕かれた信頼と人間キョン・ジオの良心をじわじわ踏みつけ成長した賭博場友情が絶頂に達したその時。
ピーイイイイ!
「ち、治安隊だ!」
「早く店じまいしろ」
「あらまあ!」
賭博を根絶して光明を見つけよう。結末は当然良くないものだった。
「この人たち、みんな見覚えがあるな。お祭りの日だからって気が緩んでよくやるな。賭け金が一体、こんなに大きく賭けたら不法だって知らないのか?」
「は、クソ。やばい……」
余興に少し付き合っただけなのに……!
ジオはそっと涙を拭った。
どういう原理なのか治安隊が現れるやいなや片方の手首のシーリングが壁にピタッとくっついて身動きが取れない状態。
一人ずつ身上チェックしながら近づいてくる治安隊長が死神のように見えた。
「マジで進退両難……」
「あの……治安隊員さん?私はここでこんなことをするような人じゃないんです。将来有望な若いよそ者が汚い地元のオヤジたちの策略にうっかり引っかかっただけで。こんな汚れを知らない純粋さも罪になるんですか?」
「判断は隊長が下します」
「冷たい、冷たい。これがまさに社会の冷酷さ?」
「静かにしてください」
「分かったってば」
口だけ達者な犯罪者を治安隊員が睨みつけたが、ジオはきょろきょろ目を泳がせるのに忙しかった。
すでに治安隊長は目の前。
通り過ぎるたびに何か魔道具のようなものを拘束されていないもう片方のシーリングに当てていた。そして空中に浮かぶ何かを読んでいる様子。
あれは何だと聞こうとジオが口を開いた瞬間だった。
「え?」
見間違えたか?
……違う。
馬鹿でもないし、目の良い魔法使いが追っていたやつを見間違えるはずがない。
路地裏に入っていくあの後ろ姿は間違いなくジン・ギョウルだった。
心が燃え上がるように焦る。ジオは足を踏み鳴らした。
「お、おい!あのスキャンみたいなのしたら送ってくれるんだろ?私から先にやったらダメ?時間かかる?」
「じっとしててください。犯罪歴と最近会った人物リストを全部チェックするので少し時間がかかります」
「ま、マジか!それはもっとダメだ!」
大変なことになった。最近会った人物までシーリングに浮かび上がるなんて。サールク、この野郎、そんな話なかったじゃないか!
「ひっくり返して逃げてしまおうか?」
昨日会ったラインナップがちょっと豪華すぎるか?護民官から指名手配されている革命軍までずらっと出てくるだろう。
間違いなく怪しむだろう。
運が悪ければ敵陣の真ん中にいるサールクの命から挙事まですべて台無しにする可能性があった。こ、こんなポカとは!
「ちょっと遊んだだけなのに!」
「おい、手首をこっちに出せ」
「……治安隊長さん。実はこの身には重大な任務があるんだ。これもすべて祖国のためだと思って見逃してくれ。あなたの選択に挙事の運命がかかっている!」
「何を言ってるんだ?早く出せ。罪を重くするぞ……うっ!」
胸の中央に思いっきり叩き込まれる蹴り上げ!
不意打ちの致命打に近づいてきた治安隊長がよろめき後ずさった。うっ、ジオは純真無垢な目をぱちくりさせた。
「あっ。ごめんなさいごめんなさい。極度の潔癖症のため他人が近づくとつい」
「……こ、こいつふざけてるのか!」
そうだ、決めた!
「ひっくり返そう」
それが早いだろう。
一帯に睡眠魔法を敷き、どう転んでもソウルに行けばいいとジン・ギョウルの首を絞めればいいのだ!
憤慨した治安隊長が警棒を腰から抜き取った。正気を取り戻したジオも目を閉じた。
「適業スキル、6階級広域……!」
サラッ。
「……」
まさにその時。
壁に拘束された左腕の方だった。
もがくうちに摩擦で熱くなっていたシーリングの内側、熱い肌に見慣れない冷たい体温が触れる。
キョン・ジオがびっくりして顔を向けた。
「気配が……」
細い手首を包む手。
官能的に細い男の指がジオの手首を包んでもまだ余っていた。
手首の方にゆっくりと首を傾げたジン・ギョウルが一瞬ジオを見る。
とてもスローなシーンのようだった。
目があったままそのままシーリングの継ぎ目をゆっくりと噛み砕く唇。
……カチャッ。
チャリン!
虚しいほど簡単に外れたシーリングが床を転がる。ジオはいつの間にか彼の腕が自分の腰を抱いていることに気づいた。
ジン・ギョウルが低く囁いた。
「災いを呼ぶのは生まれつきの才能か?」
「お前……」
「構わない。面白い。似たような誰かを思い出すから」
がらんとした手首の上に唇が触れた。ジン・ギョウルのほのめかすような囁きには笑みが混ざっていた。
触れ合った体をさらに優しく密着させながら彼が治安隊長を見つめた。
深くかぶったフードに隠れて彼の顔が見えないのに治安隊長はすっかり凍り付いた様子だった。
そりゃ共和国でシーリングを身につけず、それを自由に外せる権限を持っているのは高位貴族たちだけだから。
「治安官には私から言っておく」
「……そ、そうでしたら」
誰が見ても恋人同士のようだった。シーリング解除をうっかり忘れていたのなら出会って間もない仲のようだし。
「密会か?」
勝手に納得した治安隊長の合図に急いで道が開かれる。
じっと自分を見ているジオを連れてジン・ギョウルが自然に歩き出した。
視線が集まっているのでわざと騒がしい染色通りに入っていった。
五色の海。
強烈な日差しが透過して淡い色の布、なびく色が偽の恋人の上をかすめる。
ジオが遅れて呟いた。
「……いつ会ったと思って馴れ馴れしいんだ」
「さっきは私が馴れ馴れしくしなければ大変なことになっていた状況に見えたが。違ったか」
「しれっとするな。私も似たような誰かを思い出すから」
「ああ。恋人がいるのか?」
ジン・ギョウルはそっと目を伏せてジオを見つめた。
彼女ではないと知りながらも繊細なまつげからそれと似合わない気性までそっくりで不思議だった。
「名前は何だ?」
「教えない」
「冷たいな。たった数分でも、恋人同士だったのに」
「戯言は生まれつきの才能か?」
「最後まで」
彼の笑い声が喉の奥で低く響いた。
ジオはまだ腰に巻かれた腕をバシッと叩き落とした。何でこんなに無駄に硬いんだ?
難なく離してジン・ギョウルがジオの方に上半身を傾ける。
空虚な瞳が送るその眼差し。ジオは少しイライラした。
「これ私を可愛がってるな」
することなすことお星様そっくりだ。だからもっとムカついた。どこから来たかも分からないやつが。
「顔を近づけるな。ブサイク」
「お前より可愛くないのは確かだな」
「マジむかつく……」
全くダメージを受けずに肩をすくめたギョウルがさらに奥にジオを誘う。人々の声がまた遠ざかった。
「あのさ。私は忙しい身なんだよ?これでさっぱりとお互い行く道を行きましょう」
「なぜ。「挙事」のためか?」
「……どこから見てたんだ?偽物野郎が陰険な面まで似てどうなってんだ」
「そんなに長くは見ていないが。そちらが私を一生懸命探していたという事実を知る程度には?」
「核心は全部見たな……」
虚脱した呟きと共にジオはぴたりと立ち止まった。その速度に合わせて歩いていたギョウルも一緒に止まる。
彼はじっと見つめるジオの視線を避けなかった。ザーッ、
どこからか風の音が聞こえてきた。
先に口を開いたのはジン・ギョウルの方。
だるそうに聞こえる口調で彼が淡々と尋ねた。
「執政官の首を取るとしたら私の首を言うのだろう。私を殺したいのか?」




