265話
世界初のS級。
「初」という言葉がもたらす感傷は、常に重々しかった。考え込む顔でキョン・ジロクが呟いた。
「最初……ティモシー・リリーワイトじゃなかったか?」
「違う。あいつは2番目だ」
「お前は?」
ジオは斜に構えて答えた。
「5番目」
韓国では最初だが、世界規模で見れば5番目だ。
3番目はネパールにいる高僧だったか、4番目はドン・ヨハンだったか?
これまで1番目は当然マッドドッグだと思っていたのに。とにかく。
「別に何も思ってなかったけど、言ってみたら、これ、意外とプライド傷つく……?」
赤ん坊が見ても私がこの区域最強なのに、なぜたかが5番目なんだ?
【あなたの聖約星、「運命を読む者」様が順番と強さは関係ない、生まれたばかりで覚醒できるわけがないとなだめます。】
【もちろん「最初」の称号をあいつに奪われたのは、ちょっと惜しいと言いながら、舌打ちします。】
ジオも厳めしい表情になった。
「泥棒野郎……。キングが覚醒するまでおとなしく待ってられないのか、割り込みだと?こんな天下に根無し草みたいなチンピラ野郎!」
「誰が見てもお前の方がチンピラっぽいけど」
「でも、あいつ書類上はトリプルAだったけど、確かなのか?名前を隠すだけでなく、等級までごまかせるなんて、マジかよ」
ホワイトハウスは、グイード・マラマルディの身柄を引き渡さなかったが、代わりに彼の身上に関する書類を韓国側に秘密裏に渡した。
もちろん韓国政府は当然それをジオに渡した。
無理に覚えようとしなかったが、魔法使いの優れた記憶力が勝手に情報を出力する。
「調教師」グイード・マラマルディ、26歳。
帰化したイタリア系アメリカ人。
南部シチリア生まれで、両親は確認されず。
地域のコスカ・ドン(Don)に養子として引き取られ、マフィアの後継者として教育され、12歳で組織内のカポの座に就くほど、その性情と手腕は残酷であった。
覚醒時点は確認不可。イタリアのバベルシステムに登録していない特殊覚醒者。
養父と組織を壊滅させ、未成年にもかかわらず異例の終身刑宣告、
レビビア刑務所に収監されたが、1年で脱獄。
インターポール手配中、ティモシー・リリーワイトの保証でアメリカ合衆国に帰化し、残りの刑期はゲート討伐で代替するよう両国政府が協議。
アメリカのバベルシステムに初回登録時、ローカルランキング2位。
最終等級 特殊系「L4級。」
ジオはむっとして文句を言った。
「安っぽいアマチュアゲームでもないのに、人類の安全を担うシステムがこれでいいのか?めちゃくちゃすぎて信用できるかよ」
【信用と実績の星系一のシステム!バベルネットワーク、公認されたシステム、安心してご利用ください】
広告メッセージをここで?
込み上げてくる呆れもつかの間。カッとなったジオが、このネジの外れたバベル野郎、悔しかったらちゃんと仕事しろとまくし立てようとした瞬間。
「規格外のイレギュラーは常に存在してきたし、バベルがあいつらまでコントロールできるわけじゃない」
ホン・ヘヤだった。バベルと誰よりも近い彼が、ジオを見て大きくため息をつく。
「勝手に能力隠して、身分変えてるやつ、そっちの周りにもいるじゃないですか。今更ですね」
「……あ」
瞬間、脳裏をよぎる鬼、虎の顔……。
気まずくなったジオの代わりに、キョン・ジロクが言い返した。
「あれは人じゃないからな。お前の言うことは、じゃあ調教師のあいつは人間でもないってことか?」
「はあ。表向きはタメ口の真似事でもしてたのに、もう完全にタメ口かよ……」
うまく包装されているだけで、姉に負けず劣らずマイペースで傍若無人な鹿だからな。ホン・ヘヤがそっけなく答えた。
「確かなことじゃないですよ。推測だって言ったじゃないですか。それくらいの業績じゃないと、レベルがおかしいんですよ」
「違う。人間は間違いない」
キッドを一番近くで見たのも、数多くの人外超越者たちを従えているのも、キョン・ジオだ。それだけは確かだった。
「どういう手品かは知らないけど……とにかく。今重要なのは、あいつが人間かどうかじゃないだろ?」
「そうだ。無塔がずっと俺たちを出し抜いて、ホン・ヘヤが防御に失敗したら、今回みたいなことがまた起こるだろう。運良く被害なく終わったとしても、次もこうだとは誰も保証できない」
対策を講じなければならない。苦心に沈んだキョン・ジロクが顎を撫でた。
「整理すると、あのアールタレコードのレベルが問題だってことだな」
「早くレベルを上げる方法はないのか?効果的な業績とか何か」
「ありますよ」
「……あ、あるのか?」
だったら最初からそれを言えよ。気まずそうなバンビを後目に、ホン・ヘヤが姿勢を正した。
これからが本題だ。
「ご心配なく。バビロンギルド長の目標ともある程度一致しますから。塔の55階」
U | 99
「アールタレベルを上げる一番の近道は、他チャンネルの「アールタ核」を吸収することです。ちょうど星間移動……ハブである55階が開いたので、今より適した時期はないでしょう」
その時。ホン・ヘヤの落ち着いた言葉が終わると同時だった。
ピン!【クエスト到着!】
十
シナリオクエスト /ランカー共通/
> 世界と世界の向こうへ
• 難易度 | NORMAL
> 目標 I アールタレコードレベルアップ
— さすが惑星代表がいるチャンネルは違いますね!素晴らしい成績でゼロベースを通過したチャンネル「国家大韓民国」!
— でも喜ぶのはまだ早いですよ。( 星系の錚々たるチャンネルと本格的に競争するには、万全の準備が必要です。)
— 出陣に先立ち、城は堅固でなければならない! 苦難に瀕している初心者ディレクターを助け、所属チャンネルのアールタレコードを成長させましょう。
— 数多くの挑戦者と旅行者が集まる憩いの場、55階の星間ハブ「国家中央銀河大共和国」にその答えがあるかもしれません!
[注意事項]
• 先発隊 人員5人制限
• 一時的に発行されるビザは3ヶ月後に再発行可能 (※ビザなしで出入り不可能)
[完了報酬]
• チャンネル「国家大韓民国」の星間ハブ出入国ビザ正式登録
[攻略失敗時]
• アールタレコードレベル低下
「ほほう……これ見ろ。待ってましたとばかりに投げてくるな?」
さっきの広告メッセージのタイミングもそうだし、バベルがこちらを注視しているのは間違いないようだ。
知ったかぶりのホン・ヘヤも、これは予想外だったのか、戸惑った様子がありありと見えた。
「ふむ。共通クエストか」
じゃあ、韓国のランカーたち全員に共通で出たのかな?ジオは背中に枕をもう一つ当てて寄りかかった。ギプスをした腕が慣れなくて重かった。
「……クソ、先発隊5人制限?露骨に精鋭でスクワッド組めってことじゃん。ふざけやがって、バベル」
吐き捨てるように呟いたキョン・ジロクが、険しい顔でホン・ヘヤを振り返った。お前。
「ビザが何か説明しろ。アールタ核とはまた何か」
「あの、私だって全部知ってるわけじゃないんですよ?詳しいことは塔に入って確認してみないと。アールタ核は……そのままの意味ですよ。「アールタレコード」の核」
1ランク / 2ランク / 3ランク。
中心である「核」のランクが高くなるほど、アールタのレベルも高くなる。
「現在、うちのチャンネルのアールタ核は1ランクです。他の核を吸収すれば、爆発的にレベルが上昇するでしょう。そうすれば、無塔のディレクターとも勝負になるはずです」
頷くホン・ヘヤ。
なんだか憎たらしく見えるな?ジオはぼんやりと見つめながら、生気のない目で呟いた。
「おい、初心者ディレクターさん……座ってあれこれ要求してばっかりで……望むことばかり多いんじゃない?」
その言葉を言うのが他の誰でもなくキョン・ジオなので、ホン・ヘヤも何も言い返せなかった。
大韓民国をハードキャリー中の少女家長が、寂しそうな顔でギプスをした腕を撫でる。
「腕がボロボロになってからどれくらい経ったと思って、また戦場に引きずり出されるなんて、ああ、K-主人公、私の運命……」
一体このろくでもない家は、私がいなければ回らないのか。
キング・ジオの説教臭い身の上話に、ホン・ヘヤが頭を下げ、キョン・ジロクもそっと視線を逸らした。
本音では、その体で行けるわけないだろうと怒鳴りつけたいが、今回の55階は不可能だ。
「必ず確認したいことがある」
中央銀河大共和国。
決して忘れられない名前だった。54階からずっと。
ガラス管の鮮明な残像に、キョン・ジロクが下唇を噛み締めた。
「……ホン・ヘヤ。キョン・ジオと俺は絶対に行く。残りの3人は調整してみないとわからないけど」
「うん。そうだよね。私は絶対なんだよね、やっぱり……」
「それでもS級で全部埋めるのは無理だ。ドヒョン兄さんも不在だし、空き巣は一度で十分だ。難易度がどうなのかから把握しないと。塔に行ってそれも一緒に確認してくれるか?」
「わかりました。ところで……」
目元を擦っていたホン・ヘヤが、ふと眼鏡を外す。
顔を上げると、ボサボサ頭の下から、華やかに輝く猛禽のような黄金の瞳。遠くを見つめる目で、韓国のディレクターが呟いた。
「空き巣の心配はしなくてもいいかもしれません。さっき味方の戦力がもう一度増強されたので」
「何?」
【おめでとうございます、韓国!】
【国家大韓民国にS級覚醒者が誕生します。】
【ローカルランキング 一 最上位10位圏 新規初進入!】
……ペク・ドヒョンの時と同じメッセージだ!
夕焼け空を広々と染めるバベルのラッパの音。
ト。ジオはベッドから足を下ろした。
視界の片隅、チャンネルのお知らせウィンドウがひっきりなしに点灯していた。
[Rankings] ローカル — 大韓民国
《 1》ジョー • キョン・ジオ –
《 2》虎-
《 3》白鳥 • ハ・ヤンセ –
| 4 | アルファ • ジョン・ギルガオン –
I 5 | バンビ • キョン・ジロク –
I 6 | 夜食王 • ファン・ホン –
I 7 | ダビデ – チェ・ダビデ –
I 8 | ギュニギュニ • キム・シギュン –
I 9 | ペク・ドヒョン –
I 10 | ダンテ • 非公開 NEW!




