259話
バアアアアン!
陣たちが一斉に光を放った。
頭上の空でただならぬ気運を放つ金色の陣たち。無形の力によってひざまずかされた者たちの顔が恐怖に歪んだ。
雨は止んだ。代わりに席巻するのは光線の暴雨。虚空の魔法陣が六芒星の胴体を回転させながらそのまま降り注ぐ。
「来るな、あっちへ行け! ああ!」
自分の体をどんどん小さくしながら陣が裏切り者たちへ飛んで行った。烙印のように額に刻まれる。苦痛は……
……ない?
ひたすら怖がって喚いていた者たちの顔が疑念に染まった。見守っていたジオが鼻で笑う。
「おとなしく死なせないって言っただろ」
一体何をするつもりだ? いっそ気絶したいというその表情。
ジオはチェ・ダビデの方を振り返った。
髪は振り乱れ、爪はすり減り折れて残っておらず、
どこ一つまともなところがない。
「……私は容赦を知らない。宗教もないし、人柄も最悪だからな」
代わりに、『代価』を取り立てることには滅法才能がある。
「損を我慢できるほど気が良くなくてね」
静かに伸びた手、その先から白色のまた別の魔法陣が生成される。
ヒュッと、チェ・ダビデの上へ飛んでいき、あっという間に赤色で円を満たす魔法陣。
これで『連結』は終わった。
再び正面を見る魔法使いの両目は、いつの間にか捕食者の黄金色にギラついている。腕を上げる。
指で指し、
「[潔白な者は目を閉じ、貪欲な者は頭を上げ額を差し出せ。我が烙印を押された汝。]」
宣告した。
「有罪」
[積業スキル、9階級呪詛系最上位超絶呪文(広域深化) – ‘魔女裁判(Witch Trial)’]
ツウウウウウン!
慈悲を知らない魔法使いの判決。
烙印を媒介に罪人たちに設定した罪の代価は、被害者の『苦痛転移』。
伝達される苦痛は深化し、その倍に達する。
「ああ、あああああああ!」
生きたままめちゃくちゃにされる苦痛が彼らを襲った。広大な大営庭があっという間に悲鳴で満ちた。
まるで巨大な拷問場のようだ。
「ま、まさか」
一歩遅れてこちらへ駆け寄ってきたナ・ジョヨンの顔が青ざめた。
しかし、揺らぎは一瞬。精神を取り戻し、はっきりとする眼差し。ヒーラーは急いで重傷者に近づいた。
「ダビデさん! 私の声が聞こえますか? 大変……少しだけ我慢してください、応急処置からしますね!」
「まず中毒から」
「はい?」
ちらりと振り返ったジオが説明した。
「戦闘系専用の散攻毒を使った。ダビデは内功がないから真気を蝕まれただろう。それから解毒しろ」
「もう出血もひどいのに、どうしてそんな……! これは今生きているのが奇跡ですよ!」
「他の覚醒者だったら死んでいただろうな」
完全にS級の器だから耐えたのだ。もちろん彼らの意図通りなら、チェ・ダビデもまた暴走した後、その状態で散っていく真気によって間もなくそうなるはずだった。
「相変わらず毒だね、チェ・ダビデ」
目も開けられないくせにその言葉はまた聞こえたようだ。チェ・ダビデがクックッと笑った。間の抜けた馬鹿みたいに。
「……私、よくやった……か?」
ジオはぼんやりと見下ろした。血にどっぷり濡れて前歯だけが見える友人を見て、淡々と答えた。
「ああ」
ふ。
「よくやった。よく耐えた。めっちゃかっこいいぞ、チェ・ダビデ」
今日のダビデに褒め言葉を惜しむ必要はない。自らを無事に守り抜いた人間より偉大なものはないのだから。
少し正気に戻ったチェ・ダビデがジオの足首を掴んできた。
「白……鳥。クッ、白鳥、探さなきゃ。早く……」
「自分の心配でもしてろ。あいつは見なくても無事だ。お前みたいにどこかで死ぬほど殴られてるようなやつじゃない……」
プフフフ!
その時だった。
発作的な笑い声。周囲の阿鼻叫喚を縫って鮮明に聞こえてきた。
「無事? 白鳥が?」
振り返ると床に倒れた3長老が彼らを見ている。唇を噛み締めて苦痛に耐えたのか口元が血で真っ赤だった。
「聞いていれば笑えてくるから我慢できなかった。なぜ? ランキングがそのままだったから?」
「あれは本当に典型的なあれだな」
ジオはうんざりした顔で手を上げた。口数の多いやつには即死が即効薬だ。ところが。
グワシ。足首を力いっぱい掴む手。
「……マジかよ? あからさまなヘイト稼ぎじゃん。誰が得すると思って乗っかるんだ?」
「ちょっと、ちょっと待ってくれ!」
何だ?
ジオを掴んだチェ・ダビデは何か心当たりがある顔だ。
「他に何かあるのか?」
キョン・ジオは考えてみた。バベルネットワークのランキングにランカーの現状が反映されない場合を。
一つ、覚醒者の肉体に異常はないが、行動が不可能な場合。
二つ、覚醒者の位置がサーバーの影響圏から外れる場合。
前者は冷凍睡眠に入った人間、後者は長い間霊界に留まった覚醒者のケースで検証された事実だった。
どちらも最後の記録だけがランキングに反映され、死んだり帰ってきたりした後にその情報が更新された。
「ハッ、ダビデさん! 動いたらダメですよ! キャー!」
「お前、チャ・メファ! お前ら何をした? 白鳥に一体何をしたんだ……!」
よろよろと、ナ・ジョヨンを振り払って歩いて行ったチェ・ダビデが3長老の胸ぐらを掴んだ。3長老、チャ・メファが笑う。血まみれの歯が赤かった。
「獬豸の鏡」
「その中から出てくる道を消してしまったの。きれいに」
白鳥はもう永遠にこの地に戻って来られないだろう。3長老がカラカラと声を上げて笑った。
〈獬豸〉の宗主継承試験。
『獬豸の鏡』。
チェ・ダビデも白鳥から聞いた。
「その中で一体何をするんだ? 山頂に行くまでは分かるけど。本当に何か本物の獬豸にでも会うのか?」
「……あまり楽しい話ではない」
「ああ、何だよ? もっと気になるじゃん!」
「入って神獣に会うのは正しい。ただし……鏡は資格のある者が入るのを許可するだけで、行く道までは教えてくれない。神獣に到達することもまた試験の一部だ。」
「えー、何だよ。そんなに難しくなさそうじゃん? 神獣さえ見つければいいんだな。鏡の中が広いと言っても、まあどれだけ広いんだよ」
「三国から大韓帝国」
「え?」
「『獬豸の鏡』が開く場所は、この国が歩んできた時代たちだ。獬豸を見つけるまで、その過去の時間の中を彷徨うことになる」
「……マジ?」
「外では刹那でも中は気が遠くなるような歳月だ。長く彷徨っていると帰ってくる道さえおぼろげになる。幸い山頂には先祖たちが残してくれた痕跡があり、道に迷うことはないが」
「お、お前はじゃあ一体そこにどれだけいたんだ……?」
呆然としたチェ・ダビデが尋ねると、白鳥が答えた。
数百年間。それ以上はもう数えなかったし、ひどく寂しかったと。
「何度行っても慣れないんだ。毎回道に迷った気分だった……。覚えているか? ダビデ、お前が獬豸に来た最初の年」
白鳥が洞窟から出てくるやいなや、抱きしめてくる体温があった。早く来いと、ずっと待っていたと責める声が。
当時門派に全く馴染めなかったダビデとしては、頼るところが白鳥しかいないので当然だったが……。
「本当に帰ってきた気分だった」
長い道を彷徨って家に帰ってきた気分だった。ついに初めて。
「あんなに笑っていたのに」
あの時のあの笑顔が私にはまだ鮮明なのに。
「道を……消したって?」
「神獣と一緒に埋めてやったと言っただろう、この間抜けな怪物め」
ペッ! 嘲笑いながら3長老がチェ・ダビデに血の混じった唾を吐いた。
「じ、ジオ様、あの言葉が本当なら宗主様は……!」
後ろでナ・ジョヨンがジオの服の裾をぎゅっと握る。こちらの顔が固まっているのを見て、さらに不安がっているのが見えた。
しかし。
「それのせいじゃない」
「……え?」
「後ろへ下がれ、ナ・ジョヨン」
「な、なぜですか……?」
説明はすぐに必要なくなった。
烙印を押された者たちが苦痛に耐えられず死んだり倒れたりした大営庭。
その静かな場所に響き渡る、クワドゥドゥク! 骨と肉が裂ける音。
風が方向を変える。逆風。
黒雲が濃くなり、邪悪な臭いが漂った。翼の形をした巨大な影が地面を覆う。
ジオは目を離さずに言った。
「できるだけ遠くへ」
[固有スキル、四凶 ‘窮奇’ 再臨- 窮極覚醒現身(顕現)]
キギャアアアアアク!
骨がねじれ、脱皮するように消える人間の皮膚。そうして一筋の断末魔が過ぎると……。
「ついに……!」
神話の中の災い。
人間の長年の強敵。
3長老がブルブルと体を震わせる。やった! 様々な変数があったが、結局結果は変わらなかった。
悪神の再臨。
いくら魔術師王でも相手にするのは容易ではないはずだ。むしろ好都合だ。
「あいつら同士で争って共倒れすればそれ以上のことはない!」
「ああ、天妃様……! 梅花はあなたのために最善を尽くしました」
近づいてくる爪を3長老が恍惚とした顔で見上げる。それが彼女の最期だった。
クウウン!
地軸が揺れる。翼が生えた紅色の虎が前に足を踏み出した。
理性を食い尽くした野性は敵味方を区別できなかった。3長老を踏みつけた直後、ジオを振り返る窮奇の目が凶暴に光った。
「……はあ。ある程度ボコボコにしないと正気に戻らないみたいだな」
[星位、‘運命を読む者’様がこちらは死なせずに制圧しなければならないというペナルティまでつけて始めるのかとバランスを見ろと舌打ちします。]
「何を今更。世の中は元々不公平だ」
特にS級にはいつもそうだった。
今すぐキョン・ジオとチェ・ダビデ、二人だけ見てもそうではないか?
皆の上で君臨して始めた最初のS級と、皆の冷遇の中で追い出された二番目のS級。
もしかしたら一度はぶつからなければならなかったことなのかもしれない。ただ知らないふりをして仲良く遊ぶには条件からして間違っていたから。
「お前の為にもな」
こっそり隠れて暮らすこと。それ私がやってみたけどやるもんじゃない。
「友達とはそもそも喧嘩しながら仲良くなるって言うじゃん」
この機会に更生パンチ一発盛大に食らわせてやるか、まあ。
キョン・ジオはニッと笑って手をひらひらさせた。
「そうだろ、ヤチャ」




