252話
「内部事情を言い訳に、いつまで外部のことに傍観ばかりしているわけにはいかない。今この瞬間にも誰かが、私たちみんなの答えを見つけようと命懸けで塔を登っているかもしれないのに。」
「私の味方になってくれと言っているのではない。〈ヘタ〉の精神を忘れないでほしいと言っているのだ。」
「宗主のお言葉、よくわかりました。」
果たしてそうだろうか。
白鳥は、じっと正面の男を見つめた。
1長老、空の雨。柔和な印象を持つこの長髪の男が、内部の泥沼の原因であることを彼女も知らないわけではなかった。
空の雨が穏やかに笑う。
「またその眼差し。私を叱責する眼差しですね。」
「過度な欲が災いを招くということは、経験から知っているのではないか?私はあなたの行動が理解できない。」
「宗主の理解を得ようとしているのではありません。いつもそうでした。私のこの両目を祖父に残酷に奪われた時も、それでも再びヘタに戻ってきた時にも。」
宗主継承試験、『ヘタの鏡』。
ヘタ宗のすべての歴史を受け継いだ少女、白鳥が扉を開けて出てきた時、当代継承はすでに決着がついたも同然だった。
三国、高麗、朝鮮、大韓第一剣。
先祖たちの長い歳月をすべて受け入れることに成功した者は、門派史上、白鳥が初めてだったからだ。
最も適法な継承だ。皆が次期宗主を敬い称賛した。
たった一人を除いて。
白鳥の異母兄弟である空の雨は、彼女と同等の条件の宗主候補だった。
ただ一つの違いは、白鳥が二本の足で歩いて出てきた扉を、彼は開けることすらできなかったという点。
それでも最後まで欲を捨てられなかった彼は、結局祖父の手によって応懲され、両目を失った。
破門された彼が門派に復帰したのは、祖父が死亡し、白鳥が宗主職に就いてからわずか二年が過ぎた時。
嘲弄混じりの彼の口調に、白鳥は浅い溜息をついた。
「自分の手であなたを再び迎え入れたことを後悔しない。これからもそうだ。だからこの辺で考えを改めるように。」
「……お前のそんな優しさがヘタを弱くしているのだ。まだわからないのか、姉さん?」
すべてを持っているお前は、一人で最後まで気高い。
空の雨が下唇を噛んだ。
「もっと率直に言ってみましょうか、宗主。あなたを蝕む周囲の害虫は追い払うことも知らなければなりません。いくら偉ぶってみても、あなたもただの人間に過ぎないことを知るべきですよ。」
「例えば、門の外で盗み聞きしているあの怪物。」
顎で指し示すと、慌てる影。空の雨が鋭く嘲笑した。
「甘やかすのもほどほどにしないと。目をつぶり、耳を塞ぎ、いつ爆発するかわからない時限爆弾を隣に抱えた宗主を、門徒たちが何を信じて従うというのですか?」
「1長老。」
「それどころか、普通の時限爆弾でもないでしょう。人を食い殺す醜悪な悪獣の……」
「そこまでだ。」
白鳥の気勢が冷たくなった。
その気になれば、眼差しさえ剣気になることができる女。
冷や汗が背筋を伝う。空の雨は、潰れた自尊心を抱きしめ、無理やり笑った。
「排除できないのなら、宗主も宗主が持っているものをある程度手放せばいいだけのことです。」
「高邁なヘタの汚点となっているのは、果たして誰でしょうか?『あれ』を私の目の前から片付けるまでは、交渉はありません。」
立ち上がって出て行こうとする空の雨。その背後から、落ち着いた低音が響いた。
「ヌルビ。私は私の人々を守るだけだ。あなたもまた、私の一人だ。この点は変わらない。」
「……もう行きます。」
ガラガラ!
扉を開けると、慌てて身を隠す人の気配。
そうしたからといって、獣のような気配が隠せるものか?
空の雨は、ぐしゃりと顔を歪めながら居所を後にした。
次第に遠ざかる足音。続いて沈黙が訪れる。
冷めた茶を味わっていた白鳥が、薄く笑った。
「そこにいないで入ってきなさい。月が明るくて、一人で鑑賞するには惜しいわ。」
「……鑑賞はクソくらえ。今笑っていられるのか?余裕ぶっこいてる場合かよ。」
「あの月は今日この瞬間のものなのに、見逃したら惜しいじゃない。これもまた、心象修練の一種……」
「あ、わかったって!小言ストップ!」
大きな音を立てて歩いてきたチェ・ダビデが、白鳥の隣にどさりと座り込んだ。
そうして、もじもじと唇を動かすことしきり。様子を窺いながら、そっと口を開く。
「そ、なんだ。ただ聞き流してくれればいいんだ。私はもともと一人だったから、一人でもどこでもよく食べてよく生きられるんだ。マジで。最近は独立がトレンドみたいだし。」
「適当な名分がないから、ダビデ、あなたを口実にしているのよ。あなたの罪ではないから、気にする必要はないわ。」
「き、気にしてなんかないって?絶対ないからな!あいつらみんな、私には一発のパンチにもならないのに、え?」
「一発ではないでしょう。ヌルビの境地はそれほど低くはないわ……」
「あー、クソ!比喩!比喩がそうだって言ってるんだよ!この鈍感な白鳥の頭め!」
胸を叩くチェ・ダビデを見て、白鳥が微笑んだ。
チェ・ダビデは両膝を揃え、その上に顎を乗せた。まるで幼い頃、自分自身を守っていたかのように。
「……1長老が要求しているのは『ヘタの鏡』でしょ?」
「ええ。ヌルビの人生で唯一の失敗だったから。未だにそこから抜け出せていないようね。」
もちろん、それ以外にももっとあるけれど、望んでいるのは結局それだった。
宗主職への再挑戦。
どうしようかしら。白鳥は、山稜にかかった月を静かに見上げた。
「渡さないで。」
「絶対に。マジで。私のせいで、もう諦めないで。」
なぜか子供のわがままのように聞こえるその言葉。白鳥は珍しく目を細めて笑った。
成長できていないのは、空の雨だけではない。彼女が大切にしている友人もまた、依然として幼い頃の姿のままだった。
「わからないわね。私がダビデ、あなたのために何を諦めたというの?」
「そんなことはない。むしろあなたは私に多くのものを与えてくれた人だ。最初から、今までいつもそうだったわ。」
「明日にはもう洗髓式の始まりなのね……。私の空席は今回も大長老、あなたが務めて。宗主が最も信頼する友として。」
「……クソバカ。」
膝が濡れてきた。
チェ・ダビデは顔を上げることができなかった。馬鹿みたいにわんわん泣く声が出るのではないかと。だからただ、いつも身につけているブレスレット、朱色と黒白の糸で編まれた結び目だけを、むやみにいじった。
ブレスレットの端についた鳥の形のメダルの感覚が、ひときわ辛い夜だった。
「これ、なぜできないんですか?」
「で、できないのではなく、これはもともとできないことなのですが……。星図の定められた順序があって、カパの場所にアルファを置くことはできないので……」
「順序を変えられないなら、軸自体を回してしまえばいいんじゃないですか?」
「それがそんなに口で言うほど簡単では……」
「なぜダメなんですか?」
「なぜこれができるんですか?」
なぜこれが本当に?A級魔法使いが深刻な顔で問い返した。
彼女だけではない。周囲に群がっているローブの塊たちも、同じ表情でジオを見つめた。
ああもう、間抜けども。まったく末世だ。こんな奴らを魔法使いだなんて。
固有特性、不世出の天才は、チッチッと舌打ちをしながら、見せつけるようにゆっくりと古代文字の一つを消して書き直した。
「おおおお?う、うわあああ!」
「ここで、え?真言体系を反転させてしまえばいいじゃないですか。これとこれは完全に相容れないから。お前らちょっと間抜けなんじゃない?」
「ジーニアス!キングジーニアス!」
興奮した魔法使いたちが、赤くなった顔でアザラシのように手を叩きながら歓呼した。MBTI検査だけすれば内向性Iばかり出てくる彼ららしくない声の大きさ。
あの魔法オタクども、どうしたんだ?
お前らちょっと見慣れないなという表情で通り過ぎる訓練生たちが、ちらちらと見ていたが、大儲けしたオタクたちには一切響かなかった。講義に感じられる
「尊敬する総長!もしよろしければ、これも見ていただけますか!」
「ふむ……またクソみたいな術式を持ってきたな。お前は恥を知れ、間抜け。」
「申し訳ありません!総長!」
一匹の米俵が、いきなり頭を下げた。
ジオはいつの間にか取り出した赤いペンを、見事に振り回した。
シュッ、シュッ。
赤いペンが添削して過ぎ去るたびに、ますます大きくなる歓声。魔法使いたちの眼差しが、きらきらと過剰な生気を帯びて輝いた。
「これも!これも!」
「持ってこい!ドゥルワ!」
そうして、無限称賛の監獄に閉じ込められてしまった魔術師王。
自分が情熱ペイで労働していることにも気づかず、得意げになっているキングジオが、嬉しそうに文字を書きなぐった。
タイミングよくその時、横からそっと差し出す一杯のアイスコーヒー。
「どうか召し上がりながらゆっくりなさってください、世界一の天才魔法使い様。」
なかなか奸臣のようなニュアンスだったが、一応次期魔塔主であるチョン・ヒドが、落ち着いて付け加える。
「先ほどのものは、サトル魔方陣を神言として借用し、増幅効果を倍数に増やされたのですね。驚くほど創造的です。」
「……お前ら何してるんだ?うちのヒドンに早く席を譲って。」
「ありがとうございます。それでは失礼。」
原始的な歓声もいいが、もともと称賛は詳細であればあるほど気分が良いもの。
頭の回転が速い奴らしく、ついにキョン・ジオ攻略法を少し悟ったチョン・ヒドが、周囲の魔法使いたちを見て卑怯に笑った。
最愛観覧1列隣の席から追い出された魔法使いたちが、ぶるぶる震える。
そのまま競争するように質問と称賛を叫び始めた。
一歩離れて見れば、珍しい光景だった。
「いい眺めね。」
「……毎回こうではありませんが、今日は特別に機嫌が良いようです。」
「なぜですか、本当にいい眺めなのに。」
困惑している虎の隣で、パク・スンヨが嬉しそうな顔で微笑んだ。
「そうなんです。幼い頃から問題解きのようなものが本当に好きだったんです、うちの娘。あんなに好きなのに、早く好きなことをさせてあげればよかった。私は罪が多いわ。」
「あら、そんな顔をすることないですよ。私は今からでも知ることができてよかったと思っているのに。連れてきてくれてありがとう、代表。またお世話になっちゃった。」
「とんでもない。」
9月6日。週末を迎えて、訓練生の家族にアカデミーの門が開かれた日だった。
邪魔になるのではないかと遠慮していたパク・スンヨだったが、やはり連れてきてよかったようだ。
1階のカフェテリアの中、魔法使いたちがわんさか集まっている方をじっと見ていた虎が、気を少し緩めた。
慣れ親しんだ鬼気に、思わず顔を上げるキョン・ジオ。自信に満ち溢れたその顔に、徐々に宿る驚き、そして嬉しさ。
ジオがぱっと笑った。
「お母さん!」




