250話
「残りのコストがあったのか?どこからこんな贅沢を、、、」
店でモノクルを買って全部使い果たしたはずなのに。
疑わしい虎の視線をジオがさっと避けた。
「まあ、コストなんて元々なかったりもするし…..」
[星位、「運命を読む者」様がうちの可愛い子が兄の骨までしゃぶって全部変なところに貢いでると嘆き悲しんでます。]
「ふむふむ、化身を大切にすること。」
[二度も大切にしたら家が全焼すると机をガンガン叩きます。]
「周りの奴らに鉄壁防御権1回発行。取引?」
[あなたの聖約星、「運命を読む者」様が777,777コストを後援しました。]
[あんな小細工が通用する自分が嫌だと聖約星が机に突っ伏してすすり泣きます。]
「……急に後ずさりはどうして?じっとして。そうすると転ぶぞ。」
「シーッ、ノータッチ。私は今鉄壁ジオだから。」
……誰も聞いてないけど?
突然蟹歩きで距離を取るジオを虎が呆れた様子で見つめた。
ああ!横でソンタンが分かったように大笑いする。
「その件のせいみたいですね!ヒド様から聞きました。この間授業参観の時、どこかの新入りとスキンシップをベタベタしてたとか?そのせいでヒド様が藁人形作りに忙しいとか。ハハハ。」
「お前、周りに友達いないだろ?」
「……え、どうして分かったんですか?僕から友達がいない匂いでもしますか。」
「空気が読めなさすぎるのがまさにそんな顔だ。」
ハッ。その時ソンタンが口を閉じた。
ジオのむっつりした顔を一度見た虎がシャツのボタンをもう一つ外す。何でもないように確認した。
「ジウンオ?」
「相変わらず幽霊みたいだな。どうしてすぐ分かるんだ?」
「チェックはいつもしてる。わざわざ口に出さないだけ。」
「ただの交通事故だったんだよ。おい、キムタン。お前は言うなら私があいつをぶっ飛ばした話までしろよ。マジで。」
「気にしてない。」
虎が平然と言った。
彼の嫉妬は冷たい方だが、結構うるさく相手を選ぶ。キョン・ジオの転換点になったペク・ドヒョン程度でなければわざわざ力を入れる価値もなかった。
「成長数値が気に障るからその点が目に付くんだな。ライブラリの確認は?」
「まだ。」
ジオはそっけなく答えた。
その時「人物情報文書化」を試みるには周りの視線が集まっていた。低い等級の覚醒者ならスキルなしでも大体読めるが……ジウンオはそれ以上だから。
「どうせ機会は多い。」
今すぐ確認が必要なほど重要にも見えなかったし。
知らない人だと言っていたペク・ドヒョンの言葉が少し引っかかるが、ジオはお星様の態度から確信を得た。
ペク・ドヒョン、ホン・ダルヤ、グイード・マラマルディ。
こちらに影響を与えそうな人物と遭遇すれば直接的、間接的に普段と違う様子を見せていたお星様がこれといった様子を見せなかったので。
[星位、「運命を読む者」様がますます勘だけ良くなると、このままではバベルに小言を言われると笑います。]
[でも戦争に弾は多ければ多いほど、良いんじゃないかと肩をすくめます。]
「ふうん。弾……」
そうだということか。
与えられたヒントが珍しく強力だ。お星様とハイタッチでもしたい気分。
ニヤリと笑ったジオが片足を組んだ。
「おい、キムタン。」
「僕の名前はソンタンですけど……」
「ここへのアクセス権限は戦闘系魔法使いたち限定だろ?」
「あ、はい!おっしゃる通りアカデミーに登録したダブルC級以上の戦闘系魔法使いたちのIDに権限を付与しておきました。」
「その制限を全部なくしてしまえ。」
「ええ?!」
ソンタンが慌てて叫んだが、ジオは平然としていた。穏やかな水面の上に超越者のそっけない顔が映る。
「何を驚いてるんだ?どうせ魔法使いに最適化された空間だ。ろくでなしどもは、もう自我が芽生えつつあるこの「賢者の石」が 勝手に、選り分けるだろうし。」
「む、もちろんそうではありますが……」
「可能性のある奴らに力を貸してやるのは悪くないだろ。開けとけ。」
「それなら、はい!分かりました……!」
連合総長であり設計者の命令。
理解せずに従うのは魔法使いがすることではないが、目の前のただ一人だけは例外だ。
ソンタンが周りの魔法使いたちに指示を伝え、現場が再び忙しくなる。
用事を済ませたジオと虎も場所を移動しようとしたその時。
「キョン・ジオ!」
彼らが立っている廊下の端、角から聞こえてきた呼び声。
こ、この声は!
ジオはパッと体を向けた。そしてそのまま走り出し、体当たりするように抱きつく。
慣れたようにすぐにその重さを支える両腕。反射的に自分の姉を抱き上げたキョン・グミが気まずそうに目を伏せた。
「……何よ、すぐに降りないの?」
「うう、グミ。禁断症状ヤバい。寮だからこっそり見にも行けないし……目を合わせても挨拶もしてくれないし……私空気になったみたい。」
引き離そうとあちこち揺さぶってみてもセミのようにベタベタくっついている。均衡感覚がこんな時だけ天才的だった。
「ああ、本当に!わめかないで!隣に友達がいるじゃない!恥ずかしいからやめてよ。」
「何。」
末っ子の首筋に思いっきり頬を擦り付けていたジオが振り返った。
するとすぐ隣、どうしていいか分からず気まずそうに立っているヨ・ウィジュ。
総長の威厳はどうしたんだ…….
背後で虎が小さく舌打ちする音が聞こえた。
妙な沈黙の中、ジオはおとなしく地面に着地した。後ろ手に組み思いっきり厳かな顔を(一歩遅れて)装着してみる。
「何か用か。キョン・グミ訓練生?本座に何か言うことでも?」
「遅いよ、バカ……」
聞こえないふりをする総長を見てキョン・グミが首を横に振った。ため息と共に懐から用件を取り出す。
「これ。」
「これは何……保護者同意書?」
見つめるジオの眉間がどんどん狭まった。
黒いのは文字で、白いのは紙なり…….氾濫する漢字に眩暈が急襲した。
う、眩暈が!
よろめくジオの前でキョン・グミが首の後ろを撫でた。
「そ、もうすぐその日じゃない。〈ヘタ〉洗手式。門主直系の弟子だから私も参加できるんだけど、師匠が保護者の同意をもらってこいって言うから。」
9月1日、白露。
白い露が宿る時期を指す言葉で、秋が本格的に始まる
時期を意味した。
そしてこの日、〈ヘタ〉では弟子たちの目を洗い清める洗手式が開かれる。一種の洗礼式で長期間続いてきた門派固有の行事だった。
融通の利かない白鳥らしく保護者に送る案内文は詳細な説明でぎっしりだった。場所、日付、行事の意義などなど..
署名欄もたくさん。グミの高校の担任からアカデミーの指導講師……これチョンヒもサインしたんじゃない?
「染み込みレベルヤバいな、ヒドンめ……」
真面目な性格の末っ子だからすでにミッションのほとんどを完了したのか空いている欄はいくつかだけだった。総長と保護者の署名欄だけ。
ふむ、ジオは手を横に出した。虎が自然に自分のペンを取り出して渡す。
「姉さん、その隣も。」
「••••••うん?」
口に蓋を咥えて総長欄にサインしていたジオが顔を上げた。
キョン・グミがためらいながら顎で指図する。
「その隣もしてくれって。」
「保護者欄?これはパク女史がしないと。グミ、お母さんに言ってないの?」
「言ったよ。お母さんが姉さんにしてもらえって。こういうことよく分からないから姉さんが許可すればお母さんもオッケーだって。」
「ほう……」
末っ子の外泊許可を長女に?
一段と変わったパク女史の信頼がひしひしと感じられた。
ジオはフッと笑った。
「これが認められた家長の権威なのか……!」
「変な顔しないで、早く。」
「シーッ、グミってやつは。幼いのに既にお泊まりしようとするなんて。え?姉さんがお前をそう育てたのか?最近みたいに物騒な世の中に!」
「ああ、お願いだから。説教モードに入ると思った。ふざけないで早くして!私次の授業があるの!」
「一時間ごとに姉さんに電話すると約束したらサインしてあげる。取引?」
「取引なんてクソ食らえ。マジでアカデミーも何もかも全部放り出して雪岳山に入ってしまうぞ。」
「こ、ここにすればいいの?うん。」
ほら、今するじゃん…….
善良な羊の皮を被ったジオが素直にサインした。
それでもヘタと姉さんの最近の関係がちょっとあれだから参考にしてね、とか余計なことを言おうとしたその時。
クック。小さく聞こえる笑い声。
「誰だ。誰が鼻で笑ったんだ?」
口元に拳を当てたヨ・ウィジュがハッとする。ジオと目が合うとは思わなかったのか慌てた様子だった。
チュートリアル以来まともに見るのは初めてか?前回は気を失って倒れた状態だったから。
ジオはヨ・ウィジュをじっと見つめた。
まともに両目を開けている相手、それもヨ・ウィジュのようにずっと格下の相手ならただ見ても読み取れることが結構多い。
例えば「聖約星」だとか。
「[ベールの裏の読書家]、か……
それでも星位の格があまり低くはないのか真名までは見えなかったが、あまり大したようにも見えない。
チュートリアルの最後の関門で犠牲になったから格の高い星位に出会ったはずなのに……覚えていてくれと言った割にはとても平凡だった。
それでも末っ子のそばにくっついて回るなら身上把握くらいはしておこうか。
「グミの周りの人、お前。名前は何て言ったっけ?」
ところが。
「ハッ!もうこんな時間になったの?私たち早く行かないと遅れる!」
「まだそんなに遅れては……」
「違うの!グミと違って私は足が短いからスピードが違うの!早く行こう。す、すみません。私たち授業があるので先に行きますね。」
「ええ..」
あんなに分かりやすく逃げると?
ヨ・ウィジュの疑わしさが100%増加しました。こんなお知らせが聞こえるような瞬間。
まさかあいつが「文書化」の発動条件を知ってそうしたのかと思いながらもジオは手首から掴んでみた。
「おい。お前の名前は何て言うんだ。」
グワッ、手首を掴む力。
「痛い••••••!」
外見とは違い意外と強い握力だった。
ヨ・ウィジュが慌てて目を泳がせるが。
「ヨ・ウィジュ。こいつの名前はヨ・ウィジュだって
一体何度言えば分かるの?これ離して。」
魔法のようだった。手首を強く握っていた力がキョン・グミの手と触れると、いつそうだったかのようにスルスルと解ける。
「いやあ。見たことない子がうちのグミの周りをずっとうろついてるから気になってそうしただけだ。」
「もう私の友達関係まで干渉するの?いい加減にして。ソル・ボミが姉さんのせいでビビってうちに寄り付かないのは知ってる?」
「えっ。あいつどうしてそうなったの?セラに言って精神教育でもしに行くか?」
「狂っ……!はあ、もういい。こういう話はやめよう。姉さんのせいでもないのに姉さんに怒る子もうやめたいから。」
「グミ……」
しょんぼりする暴君の姿はむしろ不思議なほど。
ヨ・ウィジュが口を開けたまま姉妹を交互に見つめた。
「本当に……本当に弱点なんだな。」
「手首大丈夫?赤くなってるけど。」
「あ、う、うん!私は大丈夫だよ!」
「うちの姉は元々そうじゃないんだけど、過保護がちょっとひどくてそうなんだ。ごめんね。」
気まずそうな顔で謝ったキョン・グミが行こうと言ってヨ・ウィジュの背中を押した。
過保護…….確かに正常な姉妹の間柄ではなかった。
グミと一緒にいて何度か会ったキョン・ジロクも過剰だとは感じていたが、キョン・ジオの方が倍はひどかった。
キョン・ジオがもっと怪物だからそうなのか?
彼らとキョン・グミを見ているとまるで狼の群れの中で育った人間の少女のようだった。生まれつき違うから必然的に怪物たちがかばい立てする。
それが奇異に見えたりもしたが、また一方では…….
ヨ・ウィジュはちらっと後ろを振り返った。
目が合う。斜めに立っているジオが二本の指を立てて自分の目とヨ・ウィジュの方を交互に指した。
見守っているという警告のジェスチャー。
「……羨ましい。」
ヨ・ウィジュは苦笑した。
世界観最強者の絶対的保護と盲目的な溺愛。
キョン・グミに向けられた世間の嫉妬が理解されるたびに私もどうしようもないエキストラなんだな、と確認射殺される気分だった。




