238話
「最初から、私とムスタインは結ばれるはずのない関係だったの……。それぞれのルーツを捨てることも、克服することもできなかったから。」
ファン・ホンのインベントリから出てきた真珠のイヤリングを見るや否や、マダム・ランベールはわっと泣き出した。
ああ、主よ。感謝すると言いながら、しきりに聖号を繰り返し描く。
ずいぶんと苦労したようだが、話を聞いてみるとそれも当然だった。
「別れる日、あの約束だけはするべきじゃなかった……」
たとえ私たちが婚姻を結べなくても、生涯互いだけを恋人と思い、絶対に他の誰かの妻にも、夫にもならないと。
「私たち二人の心が変わらない限り、永遠に。そう約束したわ。」
マダム・ランベールが物憂げな顔で真珠のイヤリングをいじった。
「これがその証よ。『真珠』は彼が私を呼ぶ愛称だったの。会えなくてもニュースや記事を通しては見ることができるから。彼は指輪、私はイヤリング。いつも身に着けることで互いの心を確認したわ。」
しかし、強い王権とは裏腹に、若い王であるムスタインの王位は、見かけほど盤石ではなかった。
モロッコの反政府軍もそうだが、周囲の敵。
確かな財力を背景に多数の覚醒者傭兵を抱える彼の叔父が、虎視眈々と王位を狙っていたからだ。
そんな恋人を助け、また守ってあげたかった。
ランベールは悩んだ末に「マダム」という称号と共に巨大な市場に飛び込んだ。
ピンタダオークションの収益の大部分は、毎年そうやってスイスを経て匿名で国王の個人金庫に寄付された。
「イヤリングをつけなくなったのもその頃だったわ。万が一尻尾を掴まれたら、ムスタインの敵がここを黙って見過ごすはずがないから。」
いつか彼に言わなければと思っていた。
いつかは必ず私がこうしてあなたを守っていると、私の心はあの日から少しも変わっていないと言ってあげなければと。
そうして果てしない4年が過ぎた。
そんなある日。
仕事に疲れ果てて家に帰ってきたランベールがテレビをつけると、何気なく流れてきた恋人の婚姻ニュース。
「手遅れだったの。すべてが。迷っているうちに、イヤリングも盗まれてしまって……絶望したわ。全部終わったと思ったの。」
もちろんイヤリング一つ見つけたからといって、また始まるわけではない。しかし。
しばらく躊躇していたランベールが、慎重な手つきでイヤリングをジオとファン・ホンの方へ差し出した。
「お願いがあるの。もしよければこれをムスタインに届けてくれないかしら?誰にも気づかれないように、静かに。」
「私はその間、ムッシュ・ジョンを治療しているわ。もちろんこのご恩も絶対に忘れないわ。」
愚かなことだ。ジオは遠慮なく言った。
「勘違いもいい加減にしろよ。そうしたからって結婚の日取りまで決めた男が、簡単に婚約破棄するもんか。」
「そんなことは期待してないわ。ただ……」
マダム・ランベールが苦笑した。
「何も知らないムスタインは、私が彼を裏切ったと思っているでしょう。私を非難してもいいわ。でも私のすべてをかけて愛した恋人に、裏切り者として記憶されたくはないの。」
持てるすべてのものを捧げた愛。
どうしてあんなことができるのだろうか?経験のない立場では、未練がましく情けないとしか思えなかった。
斜に構えてジオが考えていたその時。
なぜだろうか、その瞬間頭の中をよぎるいくつかの場面があった。
未来の予示、『大戦争』を目撃した衝撃で遠ざけていた記憶たち。大魔女の糸車が見せてくれた場面の中の、様々な世界、様々な姿をした恋人たち……。
「えーい、もういい。今更なんで。」
雰囲気を変えよう。むしゃくしゃする気持ちを振り払いながら、ジオは腕組みをした。
今は優先順位が別にあるんじゃないか。こんなことも、マダム・ランベールのラブストーリーも、真珠のイヤリングも全部違った。
もう11時。
真夜中が近づいていた。
取引を完了させるために、もうマダム・ランベールが確答しなければならない番だ。
ジオは抑揚なく尋ねた。
「人魚の半端者、お前。あいつ、確実に治療可能なのか?」
「可能です……!」
「私が言っているのは、確信しているのかと。適当に見て口先だけで言わないで。それからちゃんと確認しろ。後になって言い訳したら、ただじゃ済まないぞ。」
「……わかりました。確認してみましょう。」
おかしいな。ヒジャブを被ったあのショートカットの女。
終始命令口調を貫いているのに、抵抗感がない。むしろプレッシャーで言えば、この中にいる誰よりも強かった。
マダム・ランベールが涙を拭いて立ち上がる。ジョン・ギルガオンが薄く笑った。
「ありがたいわ。まさに私が言いたかったことだったの。タイミングを考えていたのよ。」
「少し見ますね、ムッシュ・ジョン。」
慎重に彼の手袋を剥がす。
ゆっくりと露わになる状態に、ファン・ホンがぎょっと顔をしかめた。
あの毒のあるやつ、よく我慢してたな?
呪いに蝕まれ黒く変色した腕。
インベントリから銀縁眼鏡を取り出してかけたマダム・ランベールは、少し前泣いていた時とは全く違う姿だ。
ジオはランベールが手を触れるたびに一緒に動く、黄緑色の魔力を目撃することができた。聖力に近いほど純粋な力だった。
「確かに……損傷の程度が深刻ですね。もっと詳しく見なければ。」
彼女の手が鍵で何かを開けるように、虚空をかき回した。
[専用武器召喚]のジェスチャー。戦闘系ではないが、決まった主力武器があるという意味。やっぱり。
カタカタ!
ジョン・ギルガオンの周りを包み込むように現れた、青い幻影の引き出し。各種糸巻きから針、絵の具……人形師の作業道具箱だった。
「[ベル、対象の状態を確認してくれる?]」
[聖位固有スキル、『助手ティンカーベル』発動]
虫眼鏡を持ったランベールの言葉に、引き出しの一つの段が開く。
「え、あれ本物の妖精か?」
ひゅっ、飛び立った妖精がジョン・ギルガオンの腕の上に光の粉を落としながら、ランベールに何やらぺちゃくちゃ話した。ファン・ホンが小声で言った。
「主人にしか聞こえないみたいだな。」
「損傷度、耐久度とか、そういうパーセントと使用可能なスキルリストを教えてくれてるんだ。今は確率計算中。」
「…?!」
ファン・ホンが驚愕してジオとマダムの方を交互に見た。
な、他人のスキルが見えるだと?何だこのバランス崩壊の詐欺キャラは……!
ランベールの方が集中していて聞こえなかったのが幸いだ。ファン・ホンが鳥肌の立った腕をさするが。
「可能です。」
額に汗が滲んだまま、マダムがつぶやいた。いつの間にか彼女の手に握られているネックレスの裁断鋏。
「修繕可能です、直せると出ています!」
よっしゃ!
拳を握りしめたファン・ホンが、声を出さずに歓声を上げた。
考えていたよりも状態が良くなくて心配したのか、マダム・ランベールもようやく安堵した顔だった。何か言おうとするが。
「……よかった。」
しまった。そうだ。彼女よりもずっと緊張していた人が一人いた。
ため息を深く吐いたジョン・ギルガオンが前髪をかき上げた。ジオの方を振り返る。そしてにっこり笑う顔。
「信じてる。後を頼む。」
「それでは私も、安心して気絶してもいいタイミング……ですよね?ハハ……」
「え?ム、ムッシュ・ジョン!」
糸の切れた人形のようにそのまま、ずるずるとカウチの上に倒れるジョン・ギルガオン。
マダム・ランベールが驚いて慌てる。すぐに駆け寄ったファン・ホンがジョン・ギルガオンの肩を掴んで揺さぶった。
「ジョン理事!ま、どうしたんですか、しっかりしてください!」
「ほっとけ。限界だったんだろう。」
[聖位、『運命を読む者』様が、ずっと蝕まれている感じがかなり凄かったはずなのに、並の毒のあるやつじゃないと興味津々です。]
そうだね。精神力だけはほとんど名誉の殿堂級だ。
ジオはチッチッと舌打ちをしながら窓際に近づいた。
「マダム、あいつ直すのにどれくらいかかる?」
「予想作業時間は約7時間と出ていますが、誤差が少しあります。それでも朝までには終わると思います。」
「ふむ。その間、あの真珠のイヤリングをムスタインのやつがよく見えるところに置いてくればいいのか?」
「……はい。」
日が昇れば国婚の前夜祭の準備に入る。
唇をきつく噛んだマダム・ランベールが顔を上げた。
「お二人だけを送るわけにはいきません。首都の王宮までは距離も遠いですし、準備は私がさせていただきます。難しいとは思いますが、ここに特に私が信頼できる人がいなくてお願いすること……!」
「さっきから思ってたんだけど。」
窓の外の満月が眩しいほど明るい。
夜の訪問者である泥棒には不利な条件だろうが、腕の良い怪盗にはなかなか適切な舞台。窓際を背景にジオは振り返った。
「マダムは口が多すぎる。」
取引成立。ショータイムの始まりだった。
「他のものは必要ない。座標を持ってこい。あの王宮とかいうところに。」
「王宮は一定以上の魔力が遮断されています。それでもまだ何事もないので、近くまでは可能でしょう。」
モロッコの首都、ラバト。
彼らがいたマラケシュからは約300km離れた距離。
しかし21世紀を生きる魔法使いには、その程度は家の前から漢江に行く程度に過ぎなかった。
「俺、今震えてるのか。」
「ビビったら抜けろよ、ヤクザ豆腐様。トロール始動すんなよ。」
「お前は俺のことをよく知らないからそう言うんだが、俺はトロールとは縁がない人間だぞ、詐欺師様。オーバーブロー・ウォールパーキルは俺のものだぞ?」
「……マジ?」
「なんだ、初めて俺に興味を持ったような反応は?詐欺師様、まさかオーバーブローやるのか?」
「お前のティアはどこだ?」
「当然チャンピオンだろ!まさか。本当にやるのか。ティアは何だ?」
「……ダイヤ。」
ぶっ、思わず笑ってしまったファン・ホンが反対側の柱を振り返った。
ジオは半分腐りかけた表情だ。
ちなみにオーバーブローのティアの順番は、
チャンピオン、グランドマスター、マスター、ダイヤ、クリスタルなどなど。
「え、マジで?うちの詐欺師様はゲームにはあまり才能がないのか?どうしたんだ。ダイヤならそこで本当に俺に口も聞けない……!」
「マジむかつく。お前のバベルランキング何位だ?」
ワールドランキング1位の凄まじい怒り。ひえっ、ファン・ホン(国内6位、世界14位)がすぐに口を閉ざした。
「朝鮮の地から出たらトップテンにも入れないやつが、どこで生意気な口を叩いてんだ。短命が願いか?リアルPKでもやるか?」
「申し訳ありません……!」
自分で注意してね。あれ。
人柄の悪さに不快だった気分がいくらかマシになったキングジオが再び正面を見た。
「ふむ……」
長く伸びている王宮の塀と、鋭い警戒の武装警備たち。
数年前、ゲートと反政府軍の襲撃で大規模な工事をしたとか……。果たして王宮は絶対に近づきやすいとは言えなかった。
マダム・ランベールの言う通り、お金をかけたのか魔力遮断のレベルもかなり高い。しかし。
うっしゃ。キョン・ジオは足を思い切り伸ばして柔軟にストレッチした。
「キャリーしてくれたら見てやる。」
反対側の柱の方で首と肩をぐいぐい回していたファン・ホンが答えた。
「IDだけ言え。毎日貢ぎ物を持っていく。」
「準備できたか?」
「いつでも。」
行こう。
合図は特に必要なかった。二人のランカーは同時に走り出した。




