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233話

「それでも行ってくるって、挨拶はしたかったんだ。」


再びモロッコ。


ペク・ドヒョンはやつれた自分の頬を撫でてみた。寝る時間まで惜しんで動いたからか、みすぼらしい姿がひどかった。


「ジオさんが今の俺を見たら、きっと嫌がるだろうな……」


意外と顔を気にする人だった。


自分の散らかしたものは片付けられないくせに、他人の汚い姿は見られない。


いつもより身なりに気を使って出かけた日には、誰に見せるんだとからかいながらも、結局頼みを聞いてくれたり……。


ふっと笑ったペク・ドヒョンがゆっくりと首を垂れた。低く呟く。


「……会いたいな。」


世界の辺鄙な外郭を回っていると、通信が繋がらない場所がざらにあった。


砂漠のダンジョンから出て、遅れてチャンネルと不在着信を確認したけれど……。


どうせ1人専用クエスト。


一緒に行けないのに、ただでさえ忙しい人に負担をかけたくなくて。もっと正直に言うと。


「自信がない。」


真実を話す自信も、頼らない自信もない。


今は自分自身が不安定な状態じゃないか。


本当に話さなければならないなら、まず記憶を完全に取り戻してからだ。その次だ。


ペク・ドヒョンが苦い味のビールを再び飲み干したその時。




ドーン!


少し離れた隣の席で、大男が酒瓶を強く置いた。酔っているのか顔が真っ赤だ。


「[くそ、残金を払ってこそ新しい武器を買えるんじゃないか!メイン武器なしでどうやってダンジョンを回れって言うんだ?] 」


どうやら武器が壊れたようだ。砂漠では腐食化の呪いがよくあることだった。


隣で仲間と思われる友人が慰める。


「 [アンダー・スクは行ってみたか?急ぎで探すなら、あそこも悪くないぞ。] 」


「[保証もないところを?俺は横流し品は扱わない、ちくしょう。それに、あの市場で英雄等級以上の武器をいつ見つけられるんだ?] 」


「[そうだ、お前はB級だったな。ああ!あそこはどうだ?マダム・ランベールのオークション会場。] 」


「[フランスの女か?まあ、モロッコだから当然そうだろうな。] 」


「 [マダム・ランベールを知らないのか?なんてことだ……ムスタインの愛人だった女性なのに。] 」


「[ムスタイン?ここの国王?] 」


「[口に出せない過去だが、この国のみんなが知っている事実だ。とにかく収集欲がすごい大富豪だから、あらゆる珍品が出てくるんだ。隔月で開催されていて、ちょうど今夜だ。] 」


「[えー、いいよ。そんなオークション会場なら、どうせVIP向けだろう。入るのも難しいだろうし。] 」


コップを拭いていた主人が聞いていて一言加えた。


「[3階からはもちろんそうですが、あそこが普通の規模だと思いますか?1、2階は誰にでも開放されているので、誰でも入れますよ。] 」


「 [おお……。] 」


「[遺跡ダンジョンが発掘されて初めての開催だから、品物もすごいでしょう。] 」


「[どうりで今日はずいぶんと騒がしいと思った。] 」


外国人傭兵がせせら笑いながらビール瓶を再び手に取った。


「[昨日から東洋人が見えていたのもそのためか?世の中、高いものは彼らが全部買い占めるからな。] 」


「[ああ、昨日食堂で見た韓国人たち?男2人に小柄な女1人だろ?仲間の一人が呪いにひどくかかっていたようだが。] 」


「 [砂漠を甘く見るとそうなるんだ。女の方は体格もまるで魔術師王みたいだったが、韓国の女はみんなそうなの?ここの目の下のホクロも同じ……!] 」


ドサッ。思うように動かない腕。


背後から肩を掴んできた手が、鎖骨の中府穴を正確に突いた。押すと一時的に腕を使えなくする急所だ。


誰かは知らないが、実力者だ。


慌てた傭兵が振り返った。


「 [な、なんだ……?] 」


「[どこにいる?] 」


「[何?] 」


冷たく目を伏せる。硬い英語でペク・ドヒョンが再び尋ねた。


「[どこで見たのかと聞いているんだ、その韓国人たちを。] 」








マダム・ランベール。


別名はメトレスアンティトル(王の愛人)。フランス系の女性で、ここモロッコで一番の大富豪だった。


「国際的な名士だからよく知っているよ。関連するラブストーリーがあまりにも有名だし。」


ジョン・ギルガオンの言葉にジオが問い返した。


「ラブストーリー?」


「今は王権が強いけど、バベルの塔ができてから、ここにもかなりの血の嵐が吹いたんだ。」


旧時代と似た街の風景を見るだけでも推測できることだった。


昔のスルタン時代に匹敵する王権は、平和から生まれるものではないだろうから。


「だから国も騒がしいだろうし、後継者保護の次元で現国王のムスタインが王子だった頃、フランスで亡命生活をかなり長く送っていたんだ。」


「なるほどね。マダムだか何だかと、そこで意気投合したってことか?」


「そう。」


他人の惚れた腫れたの話。それも有名人の痴情話なら見逃せないビッグニュースだ。


興味津々なジオを見て、ジョン・ギルガオンが付け加えた。


「ちなみにランベールは当時、『聖女』の最側近。聞いたことあるだろ?ワールドランキング12位、ジゼル・ジュヌイ。」


「おお。めっちゃ知ってる名前。」


「王子はアラビア語以外にフランス語しか話せなかったからそこに行ったらしいけど、それでも王族だから体裁は整えないといけないから、聖女と付き合わせてもらったんだ。」


他国でそれなりに苦労した時代だから、王子様は切なく思われたんだろう。


「ムスタインが一時期死ぬほど愛していたとか。そんな過去を持つ女性だから、この国で誰が手出しできる?」


それで人々が口に出さずに呼ぶ別名が始まりだった。


時に誰かにとっては名声が盾になる世の中。


マダム・ランベールは噂に隠れず、自分の名前をさらに広めた。有名税を背負ってモロッコの夜に君臨し、そうやって全世界の金を掻き集めた。


「でも不思議だな。ここ一部多妻制じゃん。なんでわざわざ愛人にするの?結婚すればいいのに。」


「ええ。お兄様そういうのに興味あるの?ハーレム?めっちゃがっかり。」


「こ、こいつ、言いたい放題だな。頭おかしいんじゃないか?絶対ないからな!俺は一途なひまわり純情男だからな!それにハーレムを連れて歩いているのはお前だろ!」


「この豆腐野郎がみんな隠している秘密を……!」


静かなのは5分も続かない。ジョン・ギルガオンは二日万年習慣になってしまったため息を飲み込んだ。


「言っただろ。聖女の最側近だったって。マダム・ランベールは熱心なカトリック教徒なんだ。」


「ああ。」


マイルドな味とはいえ、モロッコの国教は厳然とイスラム教。強力な王権を握る若い王とはいえ、宗教も、人種も、国籍も違う女性と婚姻するのは難しかった。


手すりにもたれかかりながらジョン・ギルガオンが呟いた。


「世紀の恋人にしては、ずいぶんと現実的な結末だね。約束は破られ、男は数日後に別の相手と結婚、女は遠い異郷で一人で立っているんだから……まさにあのように。」


言葉が終わると同時に、パアッ!と弾ける紙吹雪。


司会者がマイクを握って叫ぶ。


「[大変お待たせいたしました、皆様!拍手でお迎えください。今夜のホスト、イ・ピンタダ・オークションハウスのオーナー、マダム・ランベールです!] 」


手すりを掴んだジオが両手で顎を支えた。その隣に腕をかけるファン・ホン、横腹を寄り添うジョン・ギルガオン。


モロッコ遠征トリオはそうやってずらりと手すりにくっつき、下を見下ろした。


5階建てのオークション会場のホール。





わあああああー!


今日の目標、青いマーメイドドレスを着たマダム・ランベールが歓声と共に登場する。


優雅に挨拶するプラチナブロンドの美人は、有名なラブストーリーの主人公らしく、かなり魅力的だった。


「[ありがとうございます。期待以上の歓迎ですね。それだけ長い間この日を待ち望んでいらっしゃったという意味で理解させていただきます。] 」


輝くシャンデリアの下、マダム・ランベールが自信に満ちた声で言った。


「 [ご心配なく。最も熱い月に開催されるだけに、今日の祭りのために私たちも万全の準備をしてきましたので。それでは早速本題に入りましょうか?] 」


横に浮かび上がる魔力ホログラム。


5階建ての建物、ピンタダ・オークションハウスの模型だった。


マダム・ランベールが腕を伸ばして一番下を指した。


まず、1階共同オークション会場。


「[誰でも参加可能なオープンオークションで進行され、入場時にお受け取りになった整理券でご参加ください。世界の各種宝貨と珍しいアイテムに出会えるでしょう。今日1階のオークションに出品されるアイテムは、『英雄』等級までです。] 」


一般〉高級〉特別〉希少〉英雄〉伝説。


現実で触れることがほぼ不可能な準神話、神話等級を除けば、全6段階のアイテム等級。


その中でも『英雄』等級なら、上位ハンターたちが主力武器として使用するレベルだった。


うわあああ……。


わらわらと集まった人々が浮き立ってざわめいた。


「 [もちろん良いアイテムですが、その数量は多くありません。ご存知のように、お招きするのが難しく、貴重な存在ですから。もし十分な準備をしてこられたのに、残念ながら機会を逃してしまったら……。] 」


色が覆われるホログラムの3階、貴賓専用オークション会場。


「[その時は迷わずこちらへ。階を上がってきてください。VIP専用非公開オークションが行われる場所です。この部分については、ご要望の方に限り、弊社のスタッフが別途ご案内いたします。] 」


3階、4階が全部そうだった。


しかし、立ち去らずに何かを待ち続けているような人々。


「[ええ、そうです。ここまで聞くと、通常のオークション会場と変わりませんね。しかし、このランベールは決して皆様を失望させません。] 」


マダム・ランベールが美しく微笑んだ。


「 [ピンタダ・オークションの名物、祭りのハイライト。2階『パーティーパック(Party Pack)』を皆様にご紹介します。] 」


チャッ、拡大される2階。


華やかな照明がマダム・ランベールを包み込み、ジオと一行もにっこり笑い合った。


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