232話
これで確実になった。
ジオは身を起こした。
かろうじて落ち着いたムズナが、涙ぐんだ目でジオを見上げる。
「あ、ありがとうございます……」
「いいから。他に何か知ってることは?」
もちろんそこまでは期待していなかった。あの黒幕がそんなに隙だらけなはずがない。
むしろ、これは予想外の収穫と言える。
無主の塔の手がかりを、思いがけずここで得られるとは。
「とにかく、じゃあ、木の枝の情報もそれが最後?」
「使うと必ず死ぬ、遅らせるにはできるだけ能力を使わないこと以外は……」
それならこっちもすでに知っていることだ。
ジオの顔が曇る。
「ふむ、こうなると……」
持ち前の社会性を発揮して言葉を飲み込むが、空気を読めない豆腐メンタルのヤクザが突然口を挟む。
「しかし、こうなると無主の塔は二の次で、ジョン・ギルガオンは確実にデッドエンド確定じゃないか?〈解放団〉のボスを探すには時間がかかるだろう。その間にポックリ逝ってしまうぞ。」
ジョン・ギルガオンのハンサムな笑顔に、少しひびが入る。
「ハハ。そんなひどい言い方をしなくても。探せば他の方法がある、はずだ。ハハ……」
「ま、何も聞いてないのか。預かっていた店長も知らないのに、誰が知ってるんだ?そんなに状況把握が早くないとどうするんだ。チッチッ。」
「あの豆腐メンタル、マジですごい。」
あいつは本物だ。
本当にあんな風には生きてはいけないと思わせてくれる、この時代のリアルロールモデル。
深く感銘を受けたドングリの背比べ、ジオが頷いた。
ジョン・ギルガオンが深くため息をついた。
それでも、とにかく事態がさらにややこしくなったとしても、約束は約束。ムズナは確かに命の危険を冒して、彼らに知っているすべてを話してくれた。
サッと、ジョン・ギルガオンの手が亜空間から名刺を取り出す。丁寧に膝を曲げてムズナに差し出した。
「持っていればすぐに連絡があるはずです。遅くとも二日以内に整理して出発できるように手配します。息子さんと穏やかな余生をお過ごしください、マダム。」
「おお、チョン・ギル。」
「おおおお、ジョン理事。」
二人のS級バカが親指を立てる。
ターバンを再び口元に巻きながら、ジョン・ギルガオンがフッと笑った。
「望む答えじゃないからって知らないふりをしたら、ヤクザでしょ。ヤクザな真似は趣味じゃないから。」
「イヨオオル。」
「ふう、じゃあ行こうか?また悩みに戻るか。なんだかスケールがどんどん大きくなってる気がするんだけど……」
「え、でもご飯はくれないの?お腹すいた。」
「そうだ。俺も賛成。夕食を食べていこう。昼食も香辛料が合わなくて、ほとんど食べられなかったんだ。」
「それは君たちが特別に好き嫌いが激しいからでしょう。せっかく余命宣告された患者を前にして、今そんなことを言うなんて……」
「[あ、ちょっと!]」
何事もなかったかのように、普段通りにおしゃべりしながら出て行く三人。その後ろから、外国語が聞こえてきた。ムズナだった。慌てて思わず叫んだが、再び韓国語で話す。
「ちょっと待ってください。」
グッと、手の中の名刺と幼い息子を握ったムズナの手に力が入った。
命の代償。それ以上のものを受け取った。少しでもいい。助けられるなら、彼らを助けたかった。
「メトレス・アン・ティトル。」
「マダム・ランベールに会いに行ってみてください。」
「たぶん彼女なら、あなたたちが探している答えを持っているかもしれません。」
「[カサブランカ、一つ。] 」
聞き慣れないアクセントの英語。
バーのマスターはちらっと顔を上げた。
半分無法地帯になったとはいえ、それでも国教がイスラム教のモロッコ。
酒を売る場所は、新市街のホテルか、ここみたいに外国の傭兵たちがよく出入りする違法なバーだけだ。
だから、聞いたこともないアクセントを使う外国人が多いのは当たり前だが。
「 [……砂漠を渡ってきた東洋人は珍しいな。] 」
砂にまみれたターバンの間から、かすかに見える極東系のあっさりとした目つき。異邦人の視線が乾いたように聞こえた。
「[商売しないのか?] 」
「[ふむ、気難しいやつだな。] 」
タッと。マスターが肩をすくめて、瓶ビールを前に置いて姿を消す。
ペク・ドヒョンは口元の布を少し下げて、一口飲んだ。
ぬるいビールは韓国人の常識に反するが、仕方ない。マスターの言う通り、砂漠を渡ってきた身としては、好き嫌いしている場合ではなかった。
「ザゴラにはパスがなかった。」
ペク・ドヒョンがため息を飲み込んだ。
回帰前の記憶によれば、〈解放団〉の幹部が最後に位置していた拠点は、モロッコのザゴラ。
確率的に一番高そうだったが、これも空振りだった。彼は神経質な手つきで口元を拭った。
「どうしろって言うんだ、一体?」
尋ねても、彼の星は答えない。あの時のように。
数日前の記憶を辿るペク・ドヒョンの眼差しが沈んだ。
「遠い時を遡ってきた剣よ、そなたが裁かなければならない罪人は別にいるのではないか?そなたもすでに知っているだろうが。」
「それはどういう意味ですか?」
フウッ。押し寄せるプレッシャーに耐えながら、ペク・ドヒョンは辛うじて尋ねた。
月渓寺の住職、ボヒョンがそんな彼をじっと見つめる。
「ふむ、知らないふりではないようですね?星々のいたずらか、安全装置か……。」
「お坊様、ですから一体何を仰っているのか……」
「ハハ、何をって。そなたの回帰前の記憶が完全ではないと言っているのです、審判の剣士よ。」
ほう、ボヒョンの口元がニヤリと上がる。
「まったく予想していなかったわけでもないようですね。」
「そ、そんなはずは……。」
「そりゃあ、何かおかしいということは本人もそれとなく感じていたでしょう。相手を間違えたせいで、方向も思った通りには進まなかったはずですから。」
ペク・ドヒョンが歯を食いしばった。
そんなはずはない。
あの者が何か勘違いしているのだ。
長くて長い悪夢だった。忘れたくてもどうしても忘れられず、数百回、数千回と繰り返し噛み締めた恐ろしい記憶。そんなことを勘違いしたと?
「ふざけるな……!」
しかし、動揺するその眼差しまで隠すことはできなかった。
混乱に陥った苦行者を見つめながら、ボヒョンが静かに同意を求める。
「そうではありませんか、審判の剣?そなたの罪人は名もなき継承者などではなく、人間の王……。そなたの隣にいる彼女なのです。」
それと同時だった。
ピン!
シナリオクエスト
/条件付きランカー専用/
> 捨てられた塔を探して
- 難易度 ???
> 目標 パスを見つけて無主の地に到達する
— おめでとうございます!仲間たちの犠牲の末に、聖位「カイロス」の聖遺物を獲得したあなた!しかし、苦労して時間線を遡ってきたものの、聖遺物に少し問題があるようです。
— 無主の塔、天文台に登って聖位「カイロス」と遭遇してください。聖遺物の封印が解かれると、絡まった記憶が元の場所に戻ります。
[完了報酬]
• 記憶復旧
「ふざけるな、デタラメだ……。」
懐中時計のアイテム情報ウィンドウも素早く変わった。クエストウィンドウのタイマーが遅滞なく回り始める。
この狂った奴らが……!
ペク・ドヒョンの目元が赤く染まった。
「混乱している気持ちは理解できます。受け入れる時間が必要なら、少し席を外して……!」
「その口を閉じろ。」
サッ!
喉元に鋭く向けられた剣先。
ボヒョンの襟首を掴んだ手がガタガタ震えた。涙ぐんだ目でペク・ドヒョンが殺気を込めて睨みつけた。
「理解?あなたが、よくも私を理解できるな?」
一体どんなクソみたいな人生なんだ。仲間たちを踏みつけ、利己的で、がめつく取り戻した時間だった。
生きている人たちよりも、死んで去っていった人たちを忘れられず、みっともなく戻ってきた時間だった。
一度だけ、その顔をもう一度だけ見たくて。
そして、やっと生きている気がした。ついに生きているんだと思った。
ついにまた幸せだと、ふとそんな贅沢な考えまで浮かんだ。
なのに。
キッドではなかったと。
あなたが間違っていたと。
私が裁かなければならない最後の敵は、キョン・ジオだと。
そんな軽い言葉で。
「私を再び地獄に突き落としておいて、理解だと。全部クソみたいな私の勘違いだったから、もう目を覚ませと。ハ、クソ……。」
「……。」
「一体、一体!どこまで弄べば満足するんだ……!」
チャリン、剣が床に落ちる。掴んでいた襟首をゆっくりと離し、ペク・ドヒョンが崩れ落ちた。
静寂が訪れる。
あたりは彼が今感じている絶望と同じくらい、音もなく寂しく静かだった。
「……すぐに彼女を裁かなければならないという話ではありません。そもそも私にそんな資格もありませんし。」
無力に膝をついた回帰者。
彼を見てボヒョンが小さくため息をついた。
「ただ、真実と向き合うことは何よりも重要です。あなたのように審判の宿命を背負っているなら、なおさらそうでしょう。」
「剣士よ。自分の運命をきちんと知ってこそ、その宿命を捻じ曲げることもまた可能になるのではないでしょうか?」
「……!」
落ち着いたその疑問符。
それが最後だった。
自分がしなければならなかった話はここまでだと言わんばかりに、ボヒョンがそのまま法堂を後にする。
ペク・ドヒョンは一人残され、ありのままに真実と対面した。
「どういうことだ。説明しろ。」
尋ねても、彼の星は黙りこくる。
何を期待するんだ?ペク・ドヒョンは自嘲気味に笑いながら、ボヒョンの言葉を反芻してみた。
「宿命。宿命を捻じ曲げること。」
ぼんやりと希望が見える。しかし……。
疲れた。
ペク・ドヒョンはぼんやりと寺の外の風景を眺めた。
青々とした夏、こちらとは違ってあまりにも平和に見えて。
ふと死にたい気分になった。
苦痛の末に救われたと思ったら、また突き落とされた分、もうこのまま全部諦めてしまいたいという衝動が湧き上がった。
そんな時、ふとキョン・ジオが思い浮かぶ。ニヤリと笑うその顔がよぎった。
「……クソッタレ。」
生きなければ。
「クソッタレ!」
全部クソみたいで、最悪だけど、それでも生きなければ。
記憶に疑問を呈したボヒョンの言葉に動揺したのは、たった一つ理由があった。たまにそんなことを考えていたからだ。
一度。たったあなたを一度見ただけなのに、どうしてこんなにも愛せるのだろうか。あなたに対する私の気持ちがあまりにも強烈で大きくて。
「これは答えろ。無主の塔に行かなければならない理由は、カイロスがそこにいるからか?」
[聖位、「万物維持の人類守護者」が肯定します。]
星が付け加えた。消滅寸前の星たちがこの地に留まれる場所は限られていると。
クエストウィンドウに表示されたタイマーは、おそらく「カイロス」に許された時間を意味するのだろうとも。
その言葉が本当なら、残された時間はわずか1ヶ月ほど。一ヶ月以内に無主の塔に行けるパスを探さなければならない。時間がなかった。
ペク・ドヒョンは未練なく剣を拾い上げ、立ち上がった。
ぐずぐずするな。決意を固めた以上、動かなければならなかった。




