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218話

「韓食を運んで来い。コチュジャンの味。キムチの味。赤い味。」


「いや、さっきシェフが特別に作ってくれたトッポッキがあったじゃないか。あれを食べればよかったのに、シェフを泣かせて追い出すなんて!」


「韓国の味じゃなかった。誰があんな路地裏の食堂の腕前で挑んで来いと言った?ジオはなかなか美食家だぞ。」


「ミシュラン三ツ星のオーナーシェフだったんだ。今ニューヨークで一番ホットな人で、テーブルを取るのも難しいのに……!」


「分かった。もう餓死するしかないな。」


「……今作ってみようとしてるじゃないか。見て!俺は努力してるんだ、ジオ!」


ペク、ジョンウォン、トッポッキ、レシピ……。


リスニングとスピーキングは完璧だが、書くのが苦手なアメリカン・スウィートハート(名前:コンモシ)が、たどたどしくYouTubeを検索した。


カンザスでの圧倒的な勝利の後。


カリフォルニアの小さなジェーンと記念撮影、ブリザード本社(専用アイテム授与式)、ホワイトハウス訪問に続き、ニューヨークのハーゲンダッツポップアップストアツアーまで。


キョン・ジオ、カスタムバージョン改善式を終え、ついに観光客の自由時間。


ギュニギュニはフィフスアベニューの有名な武器マーケットに行ってみると言ってさっさと消え、ドビーは怪しげな笑みを浮かべながらブロードウェイの方へ飛び出して行った。


そしてニューヨーク、マンハッタンのランドマーク、ギルド〈イージス〉タワー。


最上階のギルド長専用ペントハウス、ティモシーのニューヨークの家には、韓米ランキング1位の2人だけが残った状態。


対面式のキッチンなので、リビングのソファからもティモシーが苦労している様子がよく見えた。


キッチンの穏やかな照明の下でハニーブロンドが輝き、集中する目はニューヨークの夕焼け色。そして端正にナイフを操る腕の筋肉……。


「ほほう。」


[あなたの聖約星、「運命を読む者」様がピーッ!今どこを見ているのかと警告のホイッスルを吹いています。]


「あなたのジオが無視します。」


視線が非常に自由奔放になったアメリカンマインドのジオが、クッションの上に顎を乗せた。


無駄に世界一の美男子と称されるわけではない。


ティモシー・リリーホワイトは好き嫌いが分かれず、全世界が共通して築き上げてきた美の基準に完璧に合致する青年だった。


まさしく童話の中のプリンス・チャーミング、万人の王子様。


実際には彼がちょっと情けなくて、優柔不断でも、とにかくミュートにして見ていると非常にそれらしく見えた。


あそこを見て、餅を分離して洗剤の中に浸けるあの指先も……。


「うん……?」


……洗剤?


料理音痴も慌てて飛び起きさせる、根拠のないヤンキー野郎のやらかし。


お前、この野郎、私の餅に何をするんだとジオがクッションを叩きつけようとした瞬間。


[ティミー、失礼ですが、同行の方に何か恨みでもおありですか?そうでなければ、直ちにその行為を中止してください。]


「うん?なぜ?」


[餅は器ではありません。水で洗うべきでしょう。]


「あっ、そうか。ありがとう、ヘラ。」


[どういたしまして。あなたを助けることが私の喜びです。]


……何か途方もない英語が過ぎ去った。突然降り注いだサラサラの行列に英語が苦手なジオが戸惑っている間に。


家中に響いた声が何をしたのかは分かった。ひどくエラーを起こしていたティモシーのやつが、まともに作動し始めたから。


「……さっきのは何?」


「ああ、ヘラ?人工知能システム。」


[こんにちは。お会いできて光栄です、ジオ様。]


「もう韓国語を使うんだ?」


「彼女はとても賢いんだ。家の管理からスケジュール管理まで、できないことはない。まさに映画の中のジャービスの実現だよ。」


[お褒めの言葉ありがとうございます、ティミー。]


マジで欲しい……。


急にペントハウスに満足していた自分がすごくつまらなく感じられた。


「キングジオの足元にも及ばないコンモシも、こんな最先端の富貴映画を享受して生きているのに……こっちはただの復学生のお兄ちゃんロボットだなんて……。」


[星位、「運命を読む者」様がおい、そこのキュートで可愛い化身。その復学生のお兄ちゃんロボットというのはまさかこちらのことを言っているのかと、からかっています。]


あの野郎、考えてみれば星も二つも付けて歩き回って……生意気だ。


ジオは壁をコンコンと叩いた。


「お嬢さん、私と行く?優しくしてやるよ。コンよりやっぱりキングの方が良くない?」


[魅力的な提案ですね、陛下。]


「な、何してるんだ!人工知能にも魅力発散を!ジオ、良いところに引っ越したって聞いたよ。断言するけど、きっとそこにもいるはずだ。ジオが使わないだけで。」


「え、そうなの?オッケー。ペク執事に調べてもらわないと……」


あ。


あいついないんだ、そうだった。


途切れる会話にティモシーが顔を上げた。


しかし見つめたジオからは、特に変わった様子は見られない。いつものように、どんな波もかすめることができないほど穏やかな顔。


「はあ、もういいや。お前を待つの退屈すぎるから、家の見物でもする?」


「ああ、うん。いくらでも、好きなように。」


アメリカの代表的な摩天楼都市。世界でも有数の超高層ビルが密集した都市、ニューヨーク、マンハッタン。


その中でも指折りのタワーの最上階といえば、殺風景なイメージを思い浮かべがちだが……。


飼い主に似るのか、ティモシーのペントハウスはあちこちに明るい色を配置して、なかなか華やかだった。


大事に飾ってあるのが明らかな


〈キングウィザード〉セット、ソウル市で特別製作した魔術師王デビュー10周年記念ポスター、床に落ちているゲーム機などなど。


家の主人の好みがそのまま見える品々に失笑していたジオが立ち止まる。


棚の一角、額縁が一つ倒れていた。間違い探しの絵のように一人だけ。


「••••••うん?」


「ジオ、できたみたいだけど味見してくれる?作ったことがないから……ちょっと待って!ストップ!」


……ジーザス・クライスト。


遅かった。


「神の子」というニックネームとやや似合わない嘆息を漏らしながら、ティモシーが頭を垂れた。


伸ばしかけた彼の腕の下で、ジオはじっと額縁を見つめた。


青い地中海を背景に立つ二人の青少年。


友達に肩を組んだまま明るく笑うティモシーの顔は、一点の曇りもなく晴れやかだった。


そしてその隣で斜めに微笑んでいる翡翠色の……


グイード・マラマルディ。


写真の色褪せ具合や顔つきから見て、二人の昔の写真のようだった。


うなだれたティモシーが言い訳のように呟いた。ごめん、どうしても捨てられなかったんだ。


「初めて会った日の写真だから……。でもお前が来る前に片付けておくべきだった。」


「いいよ。お前が未練がましいのは初めてじゃないし。」


「俺の友達だよ。」


怪しいやつだと分かっていながらなぜ放っておくのか。そう尋ねると寂しそうな顔で答えたあの日の羊飼いを、ジオは忘れていなかった。


誠心誠意の優柔不断な引率者。


おそらくティモシーを一生理解できないだろうが、それも彼の罪ではないことを知っている。


善良な者たちには寛容にならなければならない世の中だから。キョン・ジオはもうそれをはっきりと知っている。




トントン。


背後に立つティモシーの方へ、ジオは後頭部をわざと強くぶつけた。


痛い……。ティモシーがうずくまりながら、通じもしない甘えん坊を演じる。


「思ったより二人は古い仲みたいだな?」


「14歳で出会ったから13年くらい。短い時間ではないよ。」


「ふむ。」


「何よりも……初めてできた、友達だったんだ。」





13年前、シチリアの夏。


ティモシーが覚醒して2年ほど経った頃だったか。


全世界で2番目に現れたS級。田舎町アイダホ出身の羊飼いの少年に降り注ぐ世間の関心と視線は、手に余るばかりだった。


ただ大人たちの言いなりにあちこち引きずり回されるばかりの日常。生まれて初めて到着したヨーロッパでも同じだった。


衝動的にどうにか逃げ出してはみたものの、暑くて、言葉も通じなくて……。


特に行く当てもなく、ぼうぜんと迷子のように立っていたその時。


「アメリカ人?」


救いのように聞こえてきた声。


シチリア、コーサ・ノストラの最も若いカポ(Capo:行動隊長)。グイード・マラマルディとの最初の出会いだった。


「周りには戦えと強要する大人たちばかりで、同年代はいない。自分の意志で一言もまともに言えない時だったから……本当に助けられたんだ。」


「会ってみたから分かると思うけど。優しいじゃないか。中身はどうだか知らないけど、少なくとも表向きは。」


もちろん知っている。グミもその優しさに騙されたと聞いたから。


「……全部嘘だったけど。」


ティモシーがさらにうなだれる。


ジオは顎を上げて見上げた。


避けられない角度。


最も信じていた親友の裏切りにめちゃくちゃになった青年の感情が、そのまま見えた。




未等級ゲート閉鎖以後。


国立博物館で涙まみれの妹を救出した後、ジオは一番最初に事件の裏を探った。


キョン・グミは自分を餌に利用した犯人を「グイード・マラマルディ」と名指しした。


アルケミストの死体からは、青島で遭遇した「ヘルパー」の魔力が発見された。これでアルケミストが〈解放団〉の一員であることは確実。


証言と状況が一致した。


結論:「キッド」はグイード・マラマルディだ。




キョン・ジオはこの事実を確信するとすぐに電話を取った。


早朝、韓国からの電話を受けながら、ティモシー・リリーホワイトは果たして何を思ったのだろうか?


友達はまた作ればいい。


そう言おうとしてやめる。


幼い頃からいつもそばにいたセシリーズたち、初めて先に手を差し伸べてみたチェ・ダビデ、盲目的で純粋なナ・ジョヨン。


彼らのうち誰かが自分を裏切ったとしても、同じことを言えるだろうか?


だからキョン・ジオは全部やめて、また言った。


「克服しろ。」


「今顔がすごくブサイクだぞ。もうグズグズするのを見るのはうんざりだから、早く克服しろ。」


やっぱり慰めなんてできない。


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