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21話

* * *


悪夢の3月。


総犠牲者約8000人。


亀裂もそうだが、犠牲がここまで大きくなったのは、人災も無視できなかった。


国民を見捨てた政府と義務を無視したハンターたち。


街では大統領弾劾を求めるデモが毎日続き。


巨大ギルドの処罰を求める署名運動が国民的に行われた。


獅子、ウン・ソゴンは片目を失った。


死傷者数が最も多かった雪岳山1級亀裂。


その前を阻んだ者たちは、ただ〈銀獅子〉とその傘下勢力のみ。


数多くの獅子の兄弟たちが帰って来られず、雪岳に永遠に埋もれた。


〈銀獅子〉ギルドは、大規模な覚醒者法改革案への支持を表明した。


議政府を一人で守り抜いた〈ヘタ〉も被害が深刻なのは同じ。


〈ヘタ〉の当代宗主は一時的な閉門と共に、高校生の孫娘ハヤンセに宗主の座を委任して引退することを発表した。





〈銀獅子〉と〈ヘタ〉を除く残りの巨大ギルドたちは、回避した彼らへの非難の炎は消えることを知らず。毎日違う所属の謝罪記者会見が開かれた。


しかし、もう終わった、


既に過ぎたことだった。




合同永訣式は犠牲者の人数が多すぎて地域別に分けなければならなかった。


ジオは遠くてよく見えない父の遺影を見つめた。


死亡推定時刻。


3月26日午前10時40分。


ジオが「うちのパパはどこにいるの?」と聞いていたその時、既にキョン・テソンは死に近づいていたのだ。


遅れて発見された彼の遺体からは、メモ2枚が出てきたという。


一つはA韓方病院に幼い娘と民間人が孤立しているので救助してほしいという要請。


もう一つは家族に送る遺言。


生きて帰れない可能性を念頭に置いて、あらかじめ書いておいたのだ。


おかげで残っていた人員全員が無事に救助された。


高熱のため救助直後に病院に搬送されたジオは、ほぼ1週間ぶりに目を覚ました。永訣式の直前に。


母を含めた皆がジオの参加に反対したが、泣いてわめいてジオはついてきた。


四方に満ちた重い空気。


遺族たちの悲痛な嗚咽の声。


ぼうぜんとしたジオのそばを弟のジロクが守った。ずっと握っていた手をもう一度握りしめる。


「姉さん。」


「……」


「両親が覚醒者なら、子供たちも覚醒者になる確率が高いんだって。」


「……」


「僕は、もし僕が覚醒することになったら……塔に登るよ。必ず、必ず最後まで登って、なぜ僕たちにこんなことをするのか突き止めるんだ。」


必ずそうする。


腫れぼったい目。


早く大人になってしまった目で誓う幼いキョン・ジロク。


1月、12月。11ヶ月違い。


同じ年に生まれ、姉妹というより友達のように育った弟だった。


込み上げてくるものを必死に飲み込む弟のその顔。


ジオは答えなかった。


出棺が始まると、母は半分を置いた。涙の跡もない顔で狂った人のようにつぶやいた。


「バカ野郎……キョン・テソン、この馬鹿で愚かな間抜け野郎。自分が何様だと……」


自分で何を言っているのかも分からないようだった。


「あんたが何様だって、あんたがハンターって何よ?サラリーマンにも劣るくせに。そこがどこだって、何ができると思って、何の力があると思って出しゃばって。未練がましいやつ。そこにあんたがなぜ行くの?行かないでって言ったじゃない。私は母親だとも思わない人間を、あんたが何で、何でかばって……」


「……」


「ジオ。」


「あんな風に生きちゃだめよ。あんたはーーーのように生きちゃだめ。ただーー。うん?ーー生きなさい。」


返事がないと母が振り返った。


パク・スンヨはジオが知っている世界で一番強い人だった。


そんな人が泣く顔は正直衝撃的で、また一方では怖かった。


膝を低くした母がジオの肩を握った。痛かった。


「ーー。ーーーー。ーー。」


「……」


「ーー。ーー。分かった?」


キョン・ジオは頷いて約束した。


分かったと。


必ずそうすると。






* * *


死んだ人を生き返らせることはできますかと尋ねた。


聖位は不可能だと答えた。


時間を巻き戻すことはできますかと尋ねた。


聖位はあなたが望むほどは不可能だと答えた。


できることは一体何があるのかと尋ねた。


聖位は


[あなたの聖約星、「運命を読む者」様が答えます。]


[ある記憶が思い出されないように覆うのはとても簡単なことだと囁きます。]


永訣式が終わった。


母は父に関するすべての物を消して燃やした。


半年が過ぎた。


ジオはもう父の顔が思い出せなかった。






* * *


再び立っている場所は、血の霧が濃く立ち込める花畑。


覆って遠くに消してしまった記憶の欠片が全部戻ってきた。


20歳のキョン・ジオはフードのポケットに手を突っ込み、斜に構えて立った。


視線を感じる。


ジオが知っている視線だ。


「……この変態クソ星、結局拉致の夢を叶えてしまったのか?」


【残念だな。】


聖位。


化身キョン・ジオの唯一の聖約星がのんびりと笑った。


【私の腕前なら、こんなみすぼらしい場所に案内するはずがないだろう。】


「じゃあここは一体どこなの?」


そっと触れる無形の感触をハエのように払いながらジオが尋ねた。


【冷たい都会の小猫ちゃんみたいだな。】


「どこだって聞いてるんだよ?」


【境界線の石山丘。】




わあ。そうなんだ。


あのー先生、そう言われても私が分かると思いますか?


黙って拳を振りかざすと、聖約星が悠々と付け加えた。


【精神系の微物たちが小細工をするたびに使う場所の一つだと思えばいい。】


【自分の場所に戻れない残りカスが肥料になって悪夢の蕾を咲かせる。】


精神系攻撃から目覚められなかった魂の最終処理場だということだった。


【ひどいところでぐっすり寝ていたから起こしたんだ。いい夢見たか?】


「知りながら聞かないで。」


【言いやすいように場を設けてあげるんだよ。人間はこれを配慮とも呼ぶそうだ。】


ジオは周囲をざっと見回した。


体に触れるたびに赤い花が霧のように散る。


ぞっとする実体と裏腹に、かなり美しい風景だった。


「要約すると、つまり。」


歩きながらジオが口を開いた。


「世間知らずで純粋無垢だった子供のジオが悪魔のような年寄り聖位の誘惑に乗せられて、パパとの思い出を全部消してしまう親不孝をしたってことだろ?」


【ふむ。異議あり。】


「被告星、発言してください。」


【悪魔とは、これはあまりにも格が落ちるのではないか……?】


「うるさい。サタン。」


聖約星は遠い響きで気だるそうに言葉を続けた。


【人間はいつも答えを探す。】


【答えを出すのもまた人間。】


【あの日のキョン・ジオが答えとして求めたのがそれだっただけ。】


【取り戻した記憶によって、何らかの心境の変化でも起きたのか?】


「そんなわけないでしょ。」


むしろ何とも思わなくて、これでいいのかと思うくらい。


「変わるものは何もない。ただそうだったんだと思うだけ。」


だからパパの話をするたびにバンビが避けていたんだ。


パク・スンヨの顔がああだったんだ。


記憶もないくせに、まだ約束はよく守ったんだな。


「ただこれだけ。」


摩耗していく人間性はハンターたちの職業病であり持病だし。


その中でも魔法使いが特にそうだが。


ただそんなことだけではない。


生と死。


その中間どこか。


異質な幻想の境界線で、一人だけはっきりとした色を帯びた一人の人間。


ジオの短髪が風になびいた。


暗い記憶とぶつかったとか、苦難の道だとか。


どこかのヒーローや主人公のように成長物語のためにへたり込むつもりはない。


ただいつものように顎を上げ、片足を組んだ。


変わることは本当にないだろうから。


既にキョン・ジオが立っている場所が、ここがまさに頂点なのに。


これ以上登るところがある?


この席は成長する者のための席ではなく、しっかり立って決して崩れない者の席だ。


「ママとパパを探して涙を流すのは、制服を脱ぐ時に一緒に卒業した。」


【残念だな。悲しげに涙でも流せば、そっとこの兄さんの太平洋のような肩を自慢してみようかと思ったのに。】


「キングジオは人生でたった2回しか泣かない。」


生まれた時。


また、パク・スンヨが特上カルビチムに塩の容器をひっくり返した時。



「姉妹品もあるよ。キングジオは人生でたった3回だけキレる。」


そしてこの席はまた、


鉄槌と慈悲の時を明確に区別しなければならない席でもあった。


空が歪む。


石山が波のように揺れた。


顔を上げたジオの顔が嵐の前夜のように静かだ。


「Wi-Fiにパスワードがかかっている時。他人が1位になる時。そして……」


「雑魚エキストラが身の程知らずにご隠居にちょっかいをかける時。」



[精神系固有特性が目覚めます。]


[隠された特性、「王の威厳」(希少)が解除されます!]


[特性、「不動心」が「王の威厳」と呼応して「獅子心」(伝説)に進化します!]


龍の首を絞めたことのある包丁がピラミッドの首を絞められない理由はない。


似たような理屈。精神系と遭遇したのが初めてでやられただけで、これが何か経験した今。


敵はもう「敵」ではなかった。



「お姉さん。」


【お姉さんって言うなって言っただろ。】


「じゃあおじさん。」


【叱るぞ。】


「なぜ何度も塔に行けと言ったのか理解した。久しぶりに声で会話できて正直ちょっと嬉しかったし。でもやっぱり頻繁には来られないな。」


もちろん面倒なことも面倒なことだが……


「来るたびにこんなレベルアップじゃ、まるでチンピラみたいじゃない。」


[相手と格の差が顕著です。]


[敵の拘束力が強制解除されます!]





ザーーー。


逆さまにねじれる境界、


そして世界。


波のように空に湧き出る赤い花が一斉に落花した。


レベルアップを終えた生態系攪乱種の帰還だった。


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