201話
ジオが見つめる。虎は超然とした忍耐力で手を離した。そして淡泊に身を引いた。
懐からマジシャン用煙草を取り出して口にくわえた時は、またいつものようにのんびりした顔だ。
「……番人は会うのが難しい連中だ。基本的に人間の垣根の外に存在し、自分の領域からあまり出てこないからな。」
「え、さっき連絡可能だって言ってたじゃん。」
「人間世界が好きな変わり者が一人いる。どういうわけか自分の領域を出て今ニューヨークにいると聞いた。」
滅多にない機会だった。彼らのほとんどは地上の極限的な境界で生きているから。
「ふむ、虎と知り合いってことは似たような存在だと見るべきかな?」
超越者たち。
三国時代に初めて自我を持つようになったという目の前の「鬼州」やアイルランドで実際に目撃された「妖精女王」、カリブ海のマーメイドもそうだ。
塔の出現は伝説としてしか考えられていなかった超越的な存在が世の中に現れるようになったきっかけだった。
だから似たようなものがもっといても驚くことではない。
「さあ。知り合うようになったきっかけは純粋に偶然だ。今考えてみれば偶然ではないかもしれないという気もするが……」
虎は習慣的にカチカチしていたジッポライターを下ろした。
「気になることがあるなら直接会って聞いてみるのがいいだろう。あちらもお前に結構好意を持っているようだし。」
「私が聞く限りでは全然そうじゃないんだけど?」
「ペク・ドヒョンか。」
ゴホン。ジオが咳払いをした。
いや、まあ……。
「まるで私の周りにその人しかいないみたいじゃないか。」
「回帰者が何と言っていた?」
「うん。私を捕まえて殺そうとしたって……!」
うわあ。またすぐにペラペラ喋ってしまった安っぽい口を掴んでジオがへたり込んだ。
「パク執事ごめんなさいいい!」
とにかくその言葉を聞いて虎はしばらく考え込む様子だった。煙草を一本残らず吸い終わると、低く言う。
「さあ、個人的な感じではかなり独立的だったが。」
「ふうん。」
めっちゃマイペースってことか。
理解したジオが頷いた。
「それぞれ持っている思想や観念も全く違う。そんな彼らの意見が一つに一致したとは到底思えない。回帰者の『あの世』がどうであれ。」
「ひょっとしてお前に不穏な気持ちを持っていたとしても、私のほうで気づかないはずもないし。」
要約すると一度会ってみてもいいということだった。
ジオはそっけなく言った。
「私がどんなことをして私を殺そうとしたのかは気にならないみたいだね。番人をなぜ探しているのかも聞かないし。」
フーッと煙草に新たに火をつけた虎が煙を吐き出しながら失笑した。
「気になるべきか?」
助けるだけで、逆らわない。
お前がそれを望むなら喜んでそうするが、正直この世がどうなろうと特に興味がないという目つき。
人が建てた建物で人が作ったスーツを着て立っているが、改めて人間ではないという感じが強くした。
あれを押さえつけてくれる銀石源ももういない。
ジオは来る途中で見た、以前より一層軍紀が入った〈銀獅子〉ギルド員たちの姿をふと思い浮かべてやめた。
「まあ、私に逆らってこなければどうでもいい。」
キングは私限定で寛大だ。
ジオは再びソファに倒れ込んだ。カチカチする指の魔力に従って虚空を漂う煙がどんな形を整える。
角のある王冠にたいまつを持った女性、自由の女神像だった。
「でも必ずニューヨークまで行かなきゃいけないの?面倒くさい、なぜ海を渡ってまでいるんだよ。」
そちらはこちらが太平洋の向こうにいるという事実は眼中にないようだった。
「本当に嫌なら……近いほうも考えてみて。国内にも一人いるじゃないか。」
……なんですって?
ジオは嬉しくもあり、呆れてもいて、飛び起きた。
「あの、それをなぜ今言うんですか?高速道路に乗れば済むことを、なぜわざわざ滑走路に乗せるんですか。石油一滴も出ない国で。」
「お前が嫌がるかと思って?」
「ちぇっ、このキングを何だと思ってるんだ!うちの可愛い国民を選り好みしたりしないよ、私はそんな人じゃない、まるで国会議員みたいじゃないか。お兄さんが勘違いしてるんだよ。うん!」
まあ、それならいいか。虎が頷いた。
「よかった。『大魔女』よりは月渓寺が近くていいだろう。」
「••••••え?」
「まあ、不便なのは私の個人的な事情だし、お前は幼い頃から知り合いだからそちらのほうがいいかもしれない。」
いや、ちょっと待って。月……何?
ジオは自分の耳を疑った。
安楽なマンチキンライフにしばらく忘れていた江原道PTSDが襲ってくる。
じわじわと這い上がってくる不安感に声が思わず震えて出てきた。
「つ、月渓?その不吉で凶悪な名前がここでなぜ……?」
「ん?言ってなかったか。」
「まさか。」
「『海東の円仏』。月渓寺の住職僧が東の番人だ。現在は『普賢』という僧名を使っているその者。」
「まさかあああ!」
仏の柔らかな微笑みと手の中で徹底的に弄ばれた雪岳ビッグピクチャーの記憶が脳裏をよぎった。
そ、それは絶対勝てない……!
三蔵法師の前の孫悟空のように衆生見ジオが頭を抱えた。
そのまましょんぼりとうなだれること数十秒。ゾンビのようにスッと腕を伸ばす。
「ニ、ニューヨーク行きの日にちはいつだっけ?」
一番早い日にちで予約してくれとか、私が番人を探しているというニュースが「そのお坊さん」に伝わらないようにしてくれとか。
苦しむ衆生ジオのつぶやきを無視して机の上の書類をパラパラめくっていた虎がハッとする。
「うーん••••••」
「すぐには行けない。ニューヨークのほうはスケジュールの調整が必要だから。それよりお前、学校はちゃんと行っているのか?」
「え?」
唐突に学校は何の学校?
まさか今、あの人が私を思いっきり侮辱しているのか?
長い悪夢の名前にこのグレートゴットジオが少し弱気な姿を見せたからって……
ボタンを押された浪人生がむっとして眉をひそめた。
「ふう、三秒あげる。この生意気な虎野郎、すぐに主人様にひざまずいて謝りなさい。」
虎は深くため息をついた。
うっかり忘れているだろうとは予想していたが、完全に記憶から削除してしまっていたとは。
「……参ったな。マスコミ対策は私がするからお前は学校に行け。」
ジオは依然としてきょとんとしていた。
あの鬼州のやつ、一体どうしたんだ?
「昔々卒業した学校にどうやって行くんですか。本気で何か変なものでも食べたんじゃないですか?もしかしてお兄さんもパクさんみたいに突然回帰したんですか?おい、今は20xx年だぞ。」
[あなたの聖約星、『運命を読む者』様がダメだと哀れむような目つきで最新記事を声に出して読んでくれます。]
[「出席はしていないが、貢献度はある」魔術師王、単位特恵論争]
「国家英雄だから特恵は当然?」ランキング1位をめぐる熱い攻防]
それにまるでパンドラの箱が開けられるようにわらわらと溢れ出てくるある記憶たち。
別名「ジオゲート」……
学歴に非常に敏感な韓国人たちだ。ハローワールド以降、全国的に明らかになったジオの身の上は当然熱い話題だった。
うちの1位が浪人生だなんて?
ハハハ、そんなはずないでしょう。
これは何か間違っている。きっと隠された闇の不正があるはずだ。
うちのジオ様は無罪、お前の大学は有罪。
現実否定を強く始めた国民たちが事件の始まりだったのだ。
インターネットを通じてすっかり盛り上がったその陰謀論がH大のエタに広まったのはあっという間だった。
集まる火力の速度も同様。
ジオ様がうちの学校に入ろうとしたのに不正入学を乱発する不正教授たちのせいで入学できなかったんだって!
「あの逆賊教授どもをすぐに捕まえて殺せ、うううう!!」
勉強したくないのにめっちゃラッキー!鉢巻きを締めたH大の学生たちがわらわらと立ち上がるに至る。
しり込みするうちに牛を捕まえる勢いで政界の子女の一部がマジで不正入学した事実が明らかになってしまう。
誰が世の中のすべての不正は絡み合っているものだと言ったか。
真実に刺激を受けた大学生たちと良心を取り戻した教授たちが大勢で動き出し、H大だけでなく各種名門大学の私学不正も続々と捕捉。
それによって有名政治家数名が刑務所に入り、大韓民国の遅い春が熱く盛り上がったが。
とにかく、結論だけ言うと。
祝)キョン・ジオ浪人生脱出
日大、いや。大韓民国初の
特別編入生の誕生。
「ついに思い出したようだな。」
虎が振り返ると国民の力で作られた大学生(元浪人生)がムンクの叫びのように声にならない悲鳴を上げていた。
「学生たちが署名運動をして総長が石膏大罪をするショーまで繰り広げたんだから、記憶くらいはしてくれてもいいんじゃないか。」
虎は手紙を手に取った。
「読んでみろ。学長が直接送った自筆の手紙だ。どうか来てくれるだけで残りは自分が何とかするとか……あまりにも切々としていて涙なしには読んでいられないほどだ。」
逃げ道がない。
ちょうど下半期のチュートリアルによって学事日程が少しずつずれ込んでいる状態。
自分たちの努力で入学させた大学生だからか、このくらいになれば冷めるはずなのに国民の関心度もまだかなり高かった。
というわけで結論は。
「学校に行け、ジオ。」
楽しい夏の季節学期タイムの始まりだった。




