20話
【……え?】
ジオは片足を組んだ。
斜めに顎も少し歪めた。
「契約すると言ってないのに。なぜもう捕まえた魚みたいに言うの?私が魚なの?」
【何を言うんだ!お前は猫だろ。そんなおかしなキャラ解釈は認められないぞ。】
いや、そうじゃないんだ。
【なぜ?】
小川で綿あめを洗って失くしたアライグマみたいにソンウィが慌てた。
【こんなに全部与える契約がどこにあるんだ?】
お客様、急に気が変わられては困ります。
経験1ヶ月目の新人相談員みたいにソンウィが感情的に詰め寄った。
9歳の小学生、キョン・ジオはひるまず、ベテランの迷惑客みたいに応じた。
「いや、まあ、オプションが多いのはいいけど、ピンと来ないんだよね。」
【当然、言葉だけでは分からないだろう。直接体験してみろ。ものすごいぞ!】
直接着用してみないと、他の星位との違いを きちんと感じられないですよ、お姉さん。
宇宙から選りすぐってチョイスしてきた子です。絶対に後悔させません。
典型的な誇大広告ショッピングモール式の返答に、ジオは酸いも甘いも噛み分けたベテラン消費者みたいに腕を組んだ。
この姿勢は心理学的に相手への不快感、あるいは防御と解釈されます。
「……」
これ以上の言葉は下手。
上手は無言で圧迫するもの。
焦ったソンウィが顧客の目線に合わせた説得に入った。
【そ、そうだ。】
【私がちょっと難しく言いすぎたな。認める。反省。後悔。かっこつけてみようと欲張った、ごめん。】
【でもよく聞いてくれ。お前はこのお兄さんと契約するだろ?そしたら遊んで食べて寝ててもいつも1位なんだ。】
【隣の家の学年トップのソンヨンちゃんのせいで、うちの子は表に出さなかったけど、今までどれだけストレスを受けてた?お兄ちゃんはお前のつらい気持ちを全部知ってるんだ。】
「ふむ……」
【もうソンヨン、あの意地悪な子が1位を自慢するたびに、うちのジオは心の中でせせら笑ってればいいんだ。】
【「やい、このアマ!お前はたかがセッピョル小学校の1位か?私は世界1位だ。私の下には世界中の人達がいるんだ。ふん!」】
「ふむふむ……」
仕返しサイダーに弱い民族らしく、韓国人の子供、キョン・ジオが揺れた。
甲高いソンウィの声真似がひときわ上手だった。
その後も他人とは差別化された豊かな安楽さが保証された人生、絶対に手に水一滴もつけない超豪華ライフなどなど。
あれやこれやとあらゆるレパートリーを取り出したソンウィが最後の出師の表を投げた。
【は、花の道だけを歩ませてやる。】
「……」
【うちのキョン・ジオが嫌なこと以外は全部やる。】
「いいよ。」
【それでも足りないなら……!え?】
「いいってば。」
なぜ?嫌ならやめるか?
私は構わないけど。
傲慢に腕組みを解いたジオが朝鮮時代の暴君みたいに後ろ手を組んだ。
……この生意気な小娘。完全に遊んでるな。
彼はあのネズミほどの小娘がまた駄々をこねる前に管理者から呼んだ。
【バベル。】
キョン・ジオの足元が浮遊する。
世界を終末に導く災厄と共に現れた超越者たち、星位。
これらの存在が一体何なのかについては、今も意見が分かれている。
人類を助けるために王臨した、善良な絶対者たちだと信じる人もいれば。
また一部ではバベルとグルである、終末の原因の一つだと嫌悪する人もいた。
しかしあれこれ考えて出てくる結論は毎回似ていた。
善良な存在であれ、悪な存在であれ。
それが何であれ。
もし彼らがいなかったら人類はとっくに終末を迎えていただろうということ。
一度縁を結んだ「化身」に彼らが与える力には何の代償もなかった。
塔の上の天文で、星たちはただ見守り、ただ助け。
また、ただ守護するだけだった。
故に人間はそうして星との契約を通じて持っていた限界を超え、単純な覚醒者以上の存在へと生まれ変わることに成功した。
バベルはこの契約を聖なる約束、「聖約」と呼んだ。
まるで遥か昔からそう呼んできたかのように、当然だというように。
ジオは息を吸い込んだ。
違う。
何か途方もないことが「ちゃんと」起こるということを子供の勘でも分かった。
急激に暗くなった四囲。
すぐに押しつぶすような存在感が漂う。
空間を爆発的に浸食される(。
星位。その究極の格。
- -. - - - .
未知数の黄金の紋様が虚空を埋め尽くし始めた。
そして壁にひびが入るように、空間が裂けて現れる深淵の中の瞳!
「何だ?」
ジオが唾を飲み込んだ。ふわふわになった(笑産毛が逆立った)。鳥肌?恐怖?
圧倒的な格の違いに本能的な恐怖が襲ってきた。
なだめるように彼が囁く。
【恐れるな。】
【その必要はない。】
【これは魂と根源の誓約。】
【最も古い約束に従い、お前と私は運命を共にするだろう。】
【お前の最後の最後の歩みまで私が見守るだろう。】
【キョン・ジオ。】
【私と契約するか?】
……
……
曖昧なのは嫌だ。
弱いのはもっと嫌だ。どうせやるなら本当にちゃんとやらなければならなかった。
ジオは最後に確認した。
「本当に、本当にで強いんだよね?」
【化身があまりにも幼すぎるのも大変だな。そうだ、強い。】
「……代わりにお姉さんに変えて。おじさんがいつも付きまとうのは気持ち悪いじゃん。変態みたいだし。」
【とんでもないことを言うのに可愛いから困る。】
「化身なんでしょ。私は当然唯一の例外でしょ。」
【お前はまだ返事をしていない。】
「するよ。」
星位が笑った。
見えなかったが、そう感じられた。
「究極星位、'■■■■'様が管理者に聖約公証を要求します。」
[バベルネットワーク、外部特別契約を確認します。]
[承認のため、対象キョン・ジオ様のヒストリーにアクセスします。]
[アクセス権限不足。作業中断。]
[上位星系権限で聖約承認のための検証手続きが省略されます。]
[聖約刻印を執行します。]
生まれて初めて見るお知らせが表示されるのと同時だった。
浮遊する足元に紋様、ジオも見慣れたバベルの紋章が描かれ。
すぐに空間がすっと消える。
「……ハッ!」
音のない悲鳴が響いた。
どこが天井でどこが床なのか区別できなかった。
方向がめちゃくちゃに変わり、いつの間にか後ろに倒れた姿勢で、ジオは急速に落下していた。
チャカッ、チャカッ。
全身を締め付ける鎖の感触。
虚空から湧き出た暗い金鎖がジオを包み込み飲み込んだ。
そしてそうして、視界が遠ざかっていく。
【私の小さなジオ。】
[唯一真(眞)化身 - キョン・ジオ様。]
【聖約は締結された。】
[あなたの聖約星、「運命を読む者」様が聖約は締結されたと知らせます。]
【お前は。】
[あなたは。]
【今回も私、■■■■のものだ。■■■■。】
[ - エラー発生。星位の声を読み取れません。]
* * *
ぼやける意識の中。
最後に記憶しているのは額を撫でる手つきと柔らかい声。
【帰ってからあまり悲しむな。他の格を受け入れるために不可避な時間だったのだ。】
【早かれ遅かれ、結果は変わらなかっただろう。】
* * *
その言葉が何を意味したのかはすぐに分かった。
ジオが目を開けた場所は病院のベッドの上。
A韓方病院ではなくソウル所在の某大学病院であり、駆けつけた家族は全部喪服姿だった。
「ジ、ジオ、ジオ。ありがとうございます、ありがとうございます……うちのジオ。私の娘、私の可愛い子、私の赤ちゃん……ママはここにいるよ。うちの娘はママが分かる?大丈夫?うん?」
「ママ……」
「そうよ。ママよ。大丈夫、もう大丈夫よ。全部終わったわ、終わったわ……」
キョン・ジオは自分を撫でるママのすすり泣きの中でぼんやりとカレンダーを見つめた。
目覚めた日付は4月1日。
滑稽でまた皮肉にも、
エイプリルフールだった。




