180話
L これ知らない人、意外と多いんだな。元々MZ世代向けに5月オープン予定だったんだけど、名前変更後にすぐ、コンセプト変えてリモデルして今オープンしたんだって。行くとニーズヘッグの模型が展示されてるらしいよ。
- ニーズヘッグ、あんなにかっこいい名前があったのに、カラスって呼ばれてるの見て、うちのジョーがどれだけ、気が気じゃなかっただろうか、めっちゃ笑えるけど悲しい笑笑
l よっぽどだったんだろうね、インスタの最初の投稿がニーズヘッグの写真アップして「こいつの名前はニーズヘッグだ」
- 私はジョーのインスタの通知が鳴るたびに、夢か生きてるのかって思う。私が魔術師王のインスタのアップデートを見てるなんて。
それもこんなにキューティーパティーアイドルだったなんて?これは何の慶事?こんなに受け取るだけでいいの??
L 俺、30歳…。生まれて初めてランカーグッズを買った。
L グッズもっと出してくれよ、マジでビジュアル最強アイドル、銀獅子仕事しろ
L ウンサジャ仕事しろ。虎様何してるの?2位になったらもっと頑張ってください
- ところで、見るたびにインスタのID、私だけ不思議に思う?レアニックなのにどうやって取ったんだろう?お金で買ったのかな?
L (リンク) [総合ニュース] 多国籍企業の世の中でたった一人のための特別なプレゼントのビハインド
L マジか。インスタ側でアカウントをあらかじめ開設しておいて、ジョーが正体を明かすことまで待ってたって?ふざけてる?ジョーオタたち、お願いだからやめて…!!!! やめてください
L 愛国心で胸焼けしそう、女将
L これこそが国威発揚じゃないか
- 本当にいつかdisるだろうって色々想像してたけど、ハローワールドから信じられない展開の連続
- でも素性も衝撃的だけど性格が一番意外。こんなに目立ちたがり屋だとは……。弟が一生かけてアップしたインスタの投稿数をジョが一ヶ月で追い抜いたの、マジ?
L お前、目立ちたがり屋なのが意外なの?俺も
L 空気読め
L その単語は言及禁止だよ友人
L H大学の学長があんなに号泣したら十分じゃないか。脱毛のせいで、丸刈りまでしたって言うのに、もうやめろ一
- 正直、マジでムカつく。大統領にもタメ口きいてるって言うし。歴代級の英雄だから愛国心、混ざってみんな甘やかしてるけど、眉をひそめるときが一度や二度じゃない。
L ふむ、そうですか。でもよく考えてみれば、ジョーが韓国を甘やかしてくれてるんじゃないですか?クソ野郎?
— 正論
- 子供の時に世界1位でデビューして…
十年以上トップ…コスト解禁から始まったニューウェーブまで…俺がジョーでも傍若無人になるわ
- でも、もう少し謙虚になる必要はあると思う。… 一人で生きてるわけじゃないし、色んな人の視線があるんだから、今は地球が自分のものみたいでも、もうすぐ宇宙の主人になる人らしく、位置にふさわしいエチケットを見せるべきじゃないかな
L いや、説教厨をフルボッコにしようと準備してたのに、こいつ何言ってんだ今。
L 私だけ読んでておかしいと思ったんじゃないならよかった
トントン。
「いらっしゃいますか?」
低く空気を震わせる声。気づかないうちにドア際に誰かが立っていた。
没頭してひたすらコメントを読んでいたパン・シンギが驚いて慌てて立ち上がった。
「あ、はい!お入りください。すみません。ちょっと何かしてて、ハハ。どうして…... うわっ?!」
ドタンドタン!
バランスを崩して椅子からそのまま滑り落ちる。びっくりした相手が近づいてきた。
道端でふと見れば大学生かなと思うほど平凡な服装の青年。帽子とマスクで顔を隠しているおかげで、露出しているのが目元だけなので見分けるのはさらに難しい。
しかし、ここ数日彼を部位別に分析することに忙しかったパン・シンギとしては、どうしても見過ごすわけにはいかなかった。
「ペ……ペク・ドヒョン!」
マスクを下げながらペク・ドヒョンが手を差し出した。
「大丈夫ですか?お立ち上がりください。」
「こ、ここは一体……?」
まさか俺が裏調査してるのを知って文句を言いに来たのか?
後ろめたいパン・シンギがしどろもどろになっていると、ペク・ドヒョンが例の無害な顔で問い返す。
「こんなところを探す理由が別にありますか?悩みがあって来ました。」
もともとこういうのを信じる方ではないけれど、周りの評判があまりにも良いので来ないわけにはいかなかったと言い、彼は照れくさそうに笑った。
[コロッセウム!キョン・ジロク(キョン・ジオのライバル)が敗北を宣言しました。勝者の名前が表示され、さあ、そのままバベルがスコア精算に入ります。3、2、1!]
[ま、まさか!これは一体何事ですか!驚きです!3045点!圧倒的な差で「ジョー」様が格闘場の王座を奪還します!]
[魔術師と槍術士!クラスの特性上、本来なら勝率が一方に偏ってしまうしかない対決なのですが。これは……すごい!]
[本当にすごいですね。不利なポジションを「詠唱省略」という、聞いたこともない方法でねじ伏せてしまうんですね、ハハハ。]
[これ完全に詐欺じゃないですか?魔術師がキャスティングなしでスキルを使ってしまえば、どうすることもできません。あ、今バビロンギルド長が決闘場に出てきていますね。結果を予想していたのか、淡々とした顔です。]
[どうやら、家族ですからね。誰よりもよく知っているでしょう。相手の強力さについては。]
[家族とは……。数ヶ月経ちましたが、聞くたびに本当に慣れない話です。聞くたびにドキッとします。現実感がないというか。うちの神が人間だなんてね。私たち、こんな私語は後で退勤してからにしましょう。一杯やりながら。]
[ハハ、はい。自重します!それでは試合の流れをすぐに振り返ってみましょうか?]
[序盤までは拮抗していたようですね。そうですよね?]
[キョン・ジロク、ハンターの決断が大胆でしたね。序盤からすぐに奥義を取り出して畳み掛ける姿を見せましたが。神話級武器らしく「ロンギヌスの槍」がキョン・ジオハンターの絶対結界を何度か打ち破りはしましたが、結局空間支配権を奪われてしまい、勝敗が決しました。]
[今リプレイ画面が出ていますね。キョン・ジロク(キョン・ジオのライバル)ハンターも自分が呼び出した「森」が自分を攻撃することになるとは思わなかったでしょう。そこでバランスが崩れたのが今回の敗北の決定的な要因でした。]
しばらく戦闘シーンのリプレイを食い入るように見ていた中継陣が我に返って感嘆する。
[いやー、それにしてもジョー様のスキルエフェクトはいつ見ても本当に……。私が理系なので文学的な言い回しはできませんが、何というか、黄金の天の川みたいです。]
[ハハハ。ちょっと見惚れてしまう感じがありますよね?その気持ち、十分に理解できますよ、イ・オンジュキャスター。]
[テジャ解説員も今日はひときは、楽しそうに見えますね。普段と声のトーンからして違いますよ。解説委員がこんなに偏っててもいいんですか?]
[何言ってるんですか?同じキョン・ジオオタク同士、このくらいは大目に見てあげましょう。]
[バベルが「コロッセウム」システムを開放してくれてからもう3ヶ月くらい経ちますかね?でも、あまりにも間隔を空けていらっしゃるので、来るたびにまるで、プレゼントをもらっているような気分になります。]
[そうですね。コロッセウムを見るのが最近国民の楽しみなのですが、もっと頻繁に来ていただけると……あ、ちょっと待ってください!]
[話した瞬間、ライブ画面が「チャレンジ」モードに切り替わります!]
[誰でしょう?まだ名前が画面に表示されていません。バベルが「チャレンジ」ステージの段階を確認します。3……32レベル!!!]
[「ジョー」!]
[きょ、キョン・ジオです!皆さん!]
キャスターが興奮して席から勢いよく立ち上がった。
[キョン・ジロクハンターから格闘場の王座を奪還した「ジョー」が立て続けにコロッセウムの華である、PvE(Player Versus Environment)!「ソロチャレンジ」段階の更新に挑戦します!]
バベル時代のニューウェーブ。
去る5月に魔術師王が測定不可ゲート、つまり未等級の亀裂を閉じて「コスト(Cost)」という新しいシステムを解禁して以降のことだ。
コストという取引財貨が生まれたので、したがってそれを稼ぐ場所も、使われる場所も生成されるはず。
よって、商店オープンから追加機能「コロッセウム」まで。
古代ローマ帝国が黄金期に巨大な競技場を開いて市民の呼応を導き出したように、バベルが開いてくれた「コロッセウム」はあっという間に全世界の人々に溶け込んだ。
たった一つの命をかけて入らなければならない塔やダンジョンではなく、血気盛んな挑戦者たちを配慮した本物の「練習」舞台。
覚醒者と覚醒者が一対一で対決する[格闘場]。
そして多数のモンスターたちを相手にした模擬戦闘フィールド[チャレンジ]。
二つのパートに分かれたコロッセウムは覚醒者以外入場が不可能だったが、事情通のバベル様が「観覧」機能をサポートしてくれているおかげで、あまねく視聴が可能だった。
覚醒者別に付与されたリンクIDさえ知っていれば誰でもアクセスできたからだ。
しかし、口で言うのは簡単だが、誰がいつ接続してくるかどうやって知ってひたすら待っているだけだろうか?
そこで、このよだれが出る市場を見逃したくない各放送局が国民に代わって素早く動いた。
主要ランカーたちのリンクIDを突き止め、24時間待機してマッチングが成立すればすぐに居間に送り届けてくれるようになったのだ。
中間商人だったが、広告収入はまさに莫大だった。テレビから遠ざかっていた若い層まで根こそぎその前に引き寄せたのだから。
[イシュー]ダンジョン脱獄派たち、最近暴落した理由.movie
数時間前、S社のゴールデンタイムに中
継されたコロッセウム
キム・シギュン(ギュニギュニ)VSハ・ヤンセ(白鳥)
- ああ、最近ダンジョンの実況なんて誰が見るんだよ
- これは見逃せない…コロッセウムが大きなことをした。一部のウチューバーたちがそのへんのクソみたいな実況を垂れ流しながら、自分たちじゃなければこんなの見れないと威張ってるのがマジでムカついてたから。ざまあみろ
L あいつら見てたけど、ファーストランカーたち見たら目が覚める気分。
L 天上界はほとんど塔がメインだからダンジョンには行かないじゃん。高等級ゲートが爆発するときくらいしか見れないから、もどかしかっただったけど、マジで最高じゃん~
これまで塔の中では電子機器が不通だったため、大衆とはやや距離があったランカーたち。
順位によって「コスト」報酬が与えられるコロッセウムを探して彼らが一人、また一人と集まり始めると、視聴率は最高潮に達した。
特に、コロッセウムのメインコンテンツと言える覚醒者ソロ舞台[チャレンジ]。
一対一格闘場も格闘場だが、スケール面で違いがある。レベルによって難易度が上がるこの挑戦者の戦場は、多数のモンスターとぶつかり合う激戦地であるだけに、見どころが華やか極まりなかったからだ。
そして……。現時点チャレンジ30レベル区間に進入した人は全世界でたった一人。
コロッセウムというシステムが全く馴染みのない既成世代までこの闘技場を注目させるようにした最大の原因。
[「ジョー」……大韓民国のキョン・ジオがフィールドに登場します。]
息を呑んだ解説のコメント。
続いてキャスターがスピード感のある口調で紹介した。
[ランカー情報が画面右側にまず表示されます!国籍 大韓民国。満19歳。7月28日現時刻基準、ローカルランキング1位。ワールドランキング1位。不動の王座、「神殺し」。魔術師王。]
[現代史に最も偉大な名前として記録される人物が今、戦場に姿を現しています。]
[チャレンジ段階32レベル。ステージは「呪われた黒魔女の墓」。]
[現在アメリカランキング1位のティモシー・リリーホワイトより7段階先を行っています。]
[警告の念波が鳴り響きます。戦闘すぐに開始されます!]
[視聴者の皆さん、集中してください。この偉大な魔術師の舞台はあっという間に終わるでしょう。]




