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178話

「くそ、そうすべきじゃなかったのに……一瞬の欲に目が眩んで……」


パン・シンギは熱い後悔の涙を飲み込んだ。続いてこっそり清心丸を噛み砕いて飲み込もうとした時。



カーン!テーブルを軽く蹴る足。


「店長。お前、客の前に座らせておいて、どこをキョロキョロ見回してるんだ。小便でもしたいのか?」


「おい!うちの兄貴が聞いてるじゃないか!答えろ!」


「まあ、頼んでもないのに。黙ってろ。一般人の前で口出しするな。」


「申し訳ありません!気をつけます!」


「親切にしろ、親切に。」


重々しい低音と、それとは対照的な、やや軽薄な口調。無彩色のスーツの中で、派手なカラーの服装が、乾パンの中の金平糖のように浮いていた。


その特徴的な姿と「白鳥」の紹介で来たという言葉に、目の前の男が誰なのかは容易に推測できる。パン・シンギは冷や汗を拭った。


「ランキング6位、ファン・ホン……!」


「き、貴い方がこんなところに、一体どういうご用で……?」


「おや、お前、腕がいいって本当か?すぐに分かったな?」


明るい感嘆に、隣の屈強な男たちが一糸乱れぬ拍手喝采を送った。


パン・シンギはお金も何もかもそのまま遠くへ逃げ出したくなった。


しかし、そんな心情を知ってか知らずか、ファン・ホンはなかなか用件を切り出そうとしない。


白鳥に何かしたからランカーチャンネルで宣伝までしてやるのかとか、インテリアがダサいだとか。くだらない言いがかりを散々つけてくる。


ハンカチがぐっしょり濡れて、もはや洪水になりそうなほどになったパン・シンギが、我慢できずに勇気を振り絞った。


「あの、大変申し訳ありませんが!一時間後に次のお客様のご予約が入っておりまして。ご検討されていらっしゃらないようでしたら、ご相談は次回に……!」



「違うんだ。俺は悩みが多いんだ。めちゃくちゃ深刻なんだ」


0. 1秒も経たないうちに否定したファン・ホンが、周囲をちらりと見た。


…ああ。


ようやく状況を察した彼の右腕、ウナセムが舌打ちをした。


「早く言えばいいのに。」


「何してるんだ?みんな出て行かないのか。兄貴がここの店長とじっくり話し合う問題があるようだ。ヘッド、それでは私も失礼します。」


「え?ああ……そうする?セム、お前がどうしてもそう言うなら……」


気の利いたナンバー2と黒いスーツの集団がそうやって出て行き、二人だけが残された占い屋。


カタカタカタ、落ち着きなく足を震わせる動きに、テーブルが揺れる。


ファン・ホンがさっとサングラスを外した。


「部下たちと一緒にいる時は分からなかったけど……この人。」


思ったよりずっと若い。ほとんど十代のアイドルのように見えるほど。


夕焼けのようなピンクの髪を見て、パン・シンギは改めて彼を実感した。


「店長。」


「はい。」


「これから聞く話は、お前の墓場まで持って行かなければならない。分かったか?」


「一体何なんだよ、こんなに脅して……」


……まさか組織の秘密とか?


地下世界の組織同士で戦争でも始まったのか?


「俺は、男、ファン・ホン。」


「あの!申し訳ありませんが、そちらの分野は全く私の管轄外で……!」


「仇の妹と、どうしようもなく恋に落ちてしまった。」


「……はい?何とおっしゃいました?」


一瞬耳を疑ったが、マイペースなヤクザは相手の反応に大きな関心がない。ただ、ついに言えたという、すっきりした顔。


彼は姿勢を正すと、すぐに機関銃のように愚痴をこぼし始めた。


「俺はそれを知って、その娘を好きになったんじゃないんだ。運命のいたずらというか。まあ、ロミオとジュリエットっているだろ。俺がロミオで、その子がジュリエットだと思えばいい。どうだ、分かりやすいだろ?」


「あ、はい。分かりやすいですね。ハハハ。」


こいつ、今、自分の口で自分をロミオだって言ったぞ……。


パン・シンギは、おぼつかない手つきで非常脱出ボタンを探した。


そんなことはお構いなしに、すっかりのめり込んでいるファン・ホンは忙しい。ため息とともに呟く。


「仇の妹を愛するなんて……俺は初めての恋も、どうしてこんなに困難な道を行くんだ?はあ。」


「もちろん、俺みたいに器の大きい男でも、認めるのは簡単じゃなかった。でも、それ知ってるか?これはもう拒否したりできるような、そんな感情じゃないんだよ。店長は、もしかして恋をしたことがあるか?」


「いいえ••••••」


「できればするな。傷つくぞ。」


クック。世間知らずを見るように笑ったファン・ホンが、足を組んで背もたれに寄りかかった。そして、寂しげな一匹のキリマンジャロのヒョウのような眼差しで、遠くの窓の外を向く。


「ふう、もう夏か……?熱病の季節だな……」


「勘弁してくれ。」


ハイランカーたちの中にまともな人間はいないって言うけど、その言葉は本当だったのか。


「まあ、みんな俺みたいに辛い恋はしないだろうな。ちょっと会いたいからって、市場の隠蔽アイテムを買い占めて、それすらバレて緑茸のやつにボコボコにされて……ああ、喉が渇いたな。何か飲み物はないか?」


「急に標準語に……?それよりそれってストーカーじゃないか。」


「コ、コーヒー一杯いかがですか?」


「砂糖多めで。」


ファン・ホンが厳かに注文した。


その後も長い話が続いたが、内容はとても簡単だった。


幼い頃からの憧れの対象だった偶像が、実は仇の姉で、生まれて初めて好きになった女性だったとか。


とにかく否定期も長かったが、最近、彼女がより多くの人々と交流する姿を切ない気持ちで見守りながら、完全に心を覚醒。


ただのよくある恋愛相談だったが、相手は自惚れヤクザだ。


ファン・ホンのキャラクター解釈をすぐに終えたパン・シンギは、適当に相槌を打つことにした。


「うーん、つまり結論は、恋愛占いをしてほしいということですね?相手の方の気持ちがどうなのか、また告白の時期はいつが良いのか、とか。」


「はあ、俺を何だと思ってるんだ。告白はした。とっくの昔に。」


「え?」


タロットカードをシャッフルしていたパン・シンギの手が止まる。いや、ちょっと待て。じゃあ結果も全部出てるんじゃないか?


「相手の方の返事も聞かれ……?」


「それが問題なんだ。」


そこからが問題だ。


険しい顔でファン・ホンが腕組みをした。雰囲気が一変して真剣になる。


「あいつが全然確認しないんだ。読まないんだ。すごく忙しいのか?」


「……あ。うーん。も、文字で送られたんですね。ああ、そうなんですね。」


「え?番号知らないのに?インスタのDMで送った。あいつ、最近それにハマってて、いつも見てるんだ。」


「……あ、でも返事は来てないんですね?」


文字での告白よりも罪が重いDM告白。


悲劇的な結末を予感したパン・シンギの顔色が暗くなったが、ファン・ホンは慌てて携帯電話を取り出すのに忙しかった。


「ああ。フォロワーがものすごい勢いで増えてて忙しいみたいだけどな。DMもどれだけ来てることか。見なくてもパンクしてるだろうな。だから俺も時間帯ごとに送り直してるんだけど、まだ見てないみたいだ。」


「し、時間帯ごとにですか?」


「一時間ごとに。今また送らないと。ちょっと待ってろ。」


「いや、やめてえええ!」


カジノの広告のようにルンルンと他人のDM欄を埋め尽くしている韓国ランキング6位のファン某氏。


「あれ?投稿された?よっしゃ、同時接続。この可愛いあいつ、今接続してるみたいだな。今日は読んでくれるかな?じゃあ、あと10個だけ送ってみるか。」


「未読スルーだ。これは誰が見ても未読スルーだ。」


「そ、それより、直接会って話す方が良くないでしょうか?」


あまりの気の毒さに、思わず口をついて出た言葉。


しかし、ファン・ホンはすぐにむっとした。


「お前、頭おかしいのか?」


「何か失礼でも……?」


「……恥ずかしいこと言うな!」


「諦めよう。こいつ、100パーセントモテないやつだ。」


滅びようがどうしようが、俺は金でも稼げばいい。


パン・シンギはぎこちなく作り笑いを浮かべた。


「ああ、ハハハ……。それでは、相手の方の気持ちがどうなのか、占ってみましょうか?」


「店長、お前、ダメだな。」


「また何だよ、こいつ……」


「やめとけ。好きな人の気持ちを、そんな卑怯な手で確認したいはずがないだろう?」


……何だよ、このバカの純情は?


どうでもいいところで純愛を発揮している。


パン・シンギは気まずそうにシャッフルしていたカードを置いた。これも違う、あれも違う……。


「本当に手のかかるお客様ですね。私に何かお手伝いできることはありますか?」


「一つ残ってるだろ。告白も、相手の気持ちも違うなら、何が残るんだ?」


ポツンと投げられたヒント。確信が持てない。


半分くらいの確信で、占い師がためらいながら口にする。


「……ライバル?」


ビンゴ。


ファン・ホンがニヤリと笑った。


間抜けに見えていた姿は、いつの間にかすっかり消え去る。彼が懐からメモを取り出し、ポンと投げた。


重々しい低音が室内を響かせる。


「名前、ペク・ドヒョン。陽暦XX年3月14日生まれ。」


「こ、この人は……


「そうだ。現在のランキング9位『白騎士』。あいつがいつもあいつのそばにいるから、邪魔で仕方ないんだ。過去はクリーンだけど、勘が悪い。」


プレッシャーがさっきとは全く違う。


ゴクリ。パン・シンギは生唾を飲み込み、目の前の男を見つめた。


顎を突いたファン・ホンが、退屈そうな顔で顎をしゃくる。


「何してるんだ?早く読んでみろ。まあ、そのガラクタの玉は、あっちに置いとけ。」


「恋愛占いはできなくても、他のことを読み取る才能はすごいじゃないか?あの有名なトジョン先生の子孫なら、名前負けはできないだろ。違うか。」


詐欺師パン・シンギ。


いや、「イ・シンギ」先生。


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