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176話 11. よく見れば真実、長く見れば嫌になる

「今、何時だ?結局『あの方』は来るつもりがないのか。」


「まさか……。幼い頃から育ててきたと聞いたけど。聞くところによると、二人はほとんど実の祖父母同然だったとか。育てられた情は、人である以上、無視できないだろう。」


「それもそうか?それにしても、あの人もそうは見えなかったけど、かなりの狸だったな。こんなことを隠していたなんて……」


「もともと物静かな人ほど怖いって言うじゃないか。」


日が照りつける午後2時。


ソウル汝矣島ヨイド国会議事堂前の広場。


5月末の初夏の強い日差しが照りつけていたが、雲のように集まった群衆は少しも顔色を変えずにその場を守っていた。


振り返ってみると、最初からそうだった。


規模も格式も最も高いこの国家葬は、主に歴代大統領を対象とした行事であるにもかかわらず、誰もこの決定に反発しなかった。


国家に大きな功績を残し、国民の崇拝を受ける者を弔う葬儀。


この大きな黙祷の席に、「ウン・ソゴン」という名前三文字よりもふさわしい人は見つけにくかったからだ。


国会の内外に数万人が集まった告別式は、現在、市庁前のソウル広場でも同時中継されている。


まさに挙国一致の哀悼だった。


最初の1世代覚醒者。


最初のギルドの設立、数えきれないほど閉鎖した亀裂、数多くの武功勲章および保国勲章、ノーベル平和賞……。


長くて長かった行政安全部長官の故人の略歴報告がついに終わる。


小さく囁く議員たちの向こうで、ペク・ドヒョンは大統領の沈痛な弔辞を聞いた。



「親愛なる皆さん。」


マイクを通して声が広く響き渡った。


「私たちは今日、国の大きな星であった故ウン・ソゴン様と永遠に別れる席にご一緒しています。」


「協心と協同の象徴である故人は、かつてないほど混乱した国家の混乱期に、誰よりも先に進み、災いに立ち向かい、国民と国の最大の盾として一生を捧げられた方でした。」


「……そのような国民のもう一人のリーダーだったあなたを失った今、もしかしたら私たちは再び混乱に直面しているのかもしれません。」


「しかし、ウン・ソゴン様。」


大統領が落ち着いて息を整えた。


「あなたが去られましたが、私たちのそばにはあなたがくださったものがまだ残っています。」


いつも弱者を先に思いやる精神。


危機と決して妥協しない信念。


そして……。


どんな苦難にも屈せず、共に闘い進んでいく、私たちの強い仲間たち。


「今日、私たちはあなたが残してくださったその崇高な精神と信念を 礎に、あなたが残された人々と互いに和合し、生前のあなたがそうであったように、何にも挫折することなく再び進んでいくでしょう。」


だからどうか、生前の重い荷物は下ろして……。


「安らかに永眠されることを心からお祈り申し上げます。」


ため息のようなすすり泣きがあちこちから聞こえる。


ペク・ドヒョンは黙々と俯いていた頭を上げた。


10数分間続いた大統領の弔辞まで終わり、次の順番は故人と親しい人たちの追悼の辞。


「〈銀獅子〉ギルド長が出てくるのかな……」


ペク・ドヒョンは前の方を見た。


遺影と近い最前列で、微動だにせず正面を見ている錆びた青銅色の髪の男。


遺族席に座った虎とキョン・ジロクの隣の席は、まだ空いていた。


囁く人々の言葉通り、結局彼女は来るつもりがないようだった。


「結局、予定された死は変えられなかったけど……それでも過去と雰囲気が変わっただけでも幸運だと思わなければ。」


1回目のウン・ソゴンの国葬が、すべての人々が絶望と挫折に飲み込まれる席だったとしたら、今日は悲しみを乗り越えて再び進んでいく席だった。


世代交代。老将は去ったが……


若い「王」が立ち上がったので。



韓国の王がついに厚いベールを脱ぎ捨て、時代は名実ともに新しいパラダイムを迎えているところだった。


「こんにちは、世界。」


全世界に響き渡るラッパの音、西風に現れた幼い顔、圧倒的に強力な力。


誰もが目撃した新世界だった。


初めて見る未知の敵は想像以上に恐ろしかったが、いつも日陰に隠されていた彼らの王もまた、想像以上だった。


未等級亀裂が押し寄せた、龍山


区一帯はまだ工事が真っ盛り。


しかし、工事現場の人々の高ぶった熱望まで覆い隠すことはできなかった。


大韓民国は今、悲しく、同時にかつてないほど熱くなっていた。


「次はウン・ソゴン様のご子息で後継者である現〈銀獅子〉ギルドの代表、虎様の追悼の辞があります……」




ピー一。


異質な雑音が響く。


進行者のコメントがぷつりと途切れた。


虎が関係者の方に何か言葉をかけていた。


進行者は困惑な表情。


関係者と思われる人が何人も慌ててそちらに駆け寄る。


生中継中に発生した突発的な状況。


儀典を責任を負う政治家の方から咳払いが出た。事態が長引くと、場内も少しずつざわつき始める。


しかし、ペク・ドヒョンは動揺せずに前の席をみた。


キョン・ジロクを含めた遺族および〈銀獅子〉の人々は全く驚いた様子を見せない顔だ。



「それなら……」


トボトボ。


靴は、ヒールなしで平らなローファー。軽くもなく、重くもない足音が場内に響いた。


人々の頭が自然に向く。


そして……


そのまま重い沈黙が降りかかった。


静寂の中でマイクを再び、虎が知らせた。落ち着いて。


「予定していた追悼の辞は〈銀獅子〉の名誉顧問が代わりに行うことになりました。ご了承ください。」


その放送と共に壇上へ歩み出る姿が一人。


強い日差しの下で行われていた告別式だった。長く伸びた影の間を縫って、異質な影が人々の視界に入ってくる。


人々は小さな人間の足元に落ちた、龍の巨大な影を目撃することができた。


黒い龍の主人。


すべての魔術の王。


「さあ、しばらく進行がスムーズでなかった点をお詫び申し上げます。それでは次の追悼の辞はウン・ソゴン様の長年の仲間だった「ジョー」様が……!」



ピーイイ一。


トントン。マイクの上を叩く、細く滑らかな指。


模様一つない黒色のワンピースが蒼白な肌と対照的だ。


進行者の言葉を遮り、彼女は低く言った。


「キョン・ジオ。」


「あ……」


「ウン・ソゴンの孫娘、キョン・ジオです。」


菊の香りが身にしみるほど濃い。


空が高く青い。


日差しも眩しかった。


ソウルの全景がこれほどきれいに見えるとは、この小さな国をひどく愛していた獅子を送り出すには、これ以上ないほどふさわしい日だ。



キョン・ジオは浅い微笑みと共に遺影の方を見た。


「おじいちゃん、見てる?」


最後の別れの挨拶に来たよ。


暗い雰囲気は嫌いだから来るつもりはなかったけど、それでも最後に、おじいちゃんがしぶしぶ嫌がっていたフード付きのパーカーを捨てた姿は見せてあげないといけないと思って。


たった一人の孫娘が気前よく来たんだ、良く笑って行ってね。



私も……


「もう恋しがるのはやめるから。」


さようなら、おじいちゃん。


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