174話 外伝8話
「何事にも最善を尽くし、一人も脱落することなく大切な仲間を守り抜き…… あいたっ!」
現国家ランキング1位のジオ容赦なく引っ張るセッピョル小学校の生徒会長、チャン・セナが奥歯に力を入れた。
「あんたこそ。あんたこそちゃんとやってよ、お願いだから。え?また途中でよそ見して違う道にそれたら承知しないから!」
幼稚園、小学校……これまで積み重ねてきたジオの戦績は数知れず。
何かするように言いつければ、ネズミも鳥も気づかないうちに抜け出して隅っこでぐっすり寝ているのが常だった。
とにかく、言い争っているうちに、前の組は全部出発した。彼らの順番がすぐにやってきた。代表としてソル・セラがくじを引いた。
「やっ!ひえっ、何これ!」
「はい、『有望株』組、出発します。」ピーッ!
反発する間もなく、ホイッスルの音と共に背中をぐいっと押す教官の冷たい手。
森の道は尋常でなく暗かった。
「す、スイッチ!」
ヤン・セドは慌ててランタンをつけた。うわああ!チャン・セナが悲鳴を上げて隣のジオにべったりとくっつく。
「……ヤン・セド、あんた!この、死にたいの?懐中電灯を自分の顎の下からつけるなんて!」
「あ、ごめん!」
潔く謝るヤン・セドと、間髪入れずに胸ぐらをつかむチャン・セナ。その騒ぎに乗じて、キョン・ジロクがジオに囁いた。
「魔力は絶対使うな。絶対に。お前、今治療中だってこと忘れてないだろうな?」
「……えぐえぐ。」
勘のいいバンビのやつ。
ジオは黙ってタンブラーをまたちびり、吸った。
そうして、小さな懐中電灯の光だけを頼りに進んでいく行進。
光の量が少ないので足元も不安だった。5人の子供たちは円を描くように集まり、慎重に一歩、一歩移動した。
「風の音がまるで幽霊の泣き声みたい。なんかスースー、ススッて。」
「ひっ。え、どうしてわかるの?セラ、幽霊を見たことあるの?」
「やあ、幽霊の話はやめてって、マジで。お願い……」
「やめろよ。チャン・セナが泣くだろう。」
いつの間にかランタンはキョン・ジロクの手に移っていた。方向を見定めていたキョン・ジロクがちらっと振り返る。
「本当に怖いなら、お前が持つか?」
「いいの?ありがと……」
お守りのようにジオを抱きしめていたチャン・セナがさっと受け取った。
ジオは今にも泣き出しそうなその顔をじっと見上げた。
「あれ?わあ、何だろう?急にすごく暖かい……。光のせいかな?」
「うん。光のせいだよ。」
「キョン・ジオ……」
「とにかく光のせいだよ。」
バンビの鋭い眼差しに、ジオが知らないふりをしてソル・セラに擦り寄った。
友達の中で一番背の高いソル・セラがジオを抱きしめる。
「ジオ、大丈夫?歩ける?辛かったら言って。おんぶしてあげる。」
「暗いのに二人とも転ぶことになったらどうするの?何をおんぶするのさ、おんぶなんて。あの子に自分で歩けって言えばいいんだよ。」
「あなたの弟、冷たいわね、やっぱり妹が一番よね。」
優しくジオの頬を撫でたソル・セラが大人びて笑った。どうしてこんなに冷たいのかと、小言も一言。
「ジオは本当にどうしてこんなに大きくならないのかしら。幼稚園の時と全然変わらないみたい。」
「セラが大きくなったからそう見えるんだよ。いつも私を見下ろしてるから。」
「そうかな?とにかく、好き嫌いもやめて、夜遅くまでゲームするのも少しは…… あ、みんな、あれ見て!」
切羽詰まった声にチャン・セナがびっくりしてそちらを照らす。
真っ暗な茂みの中で一人存在感を放つ銀色のリボン。
キョン・ジロクが何の迷いもなく茂みの中に入っていった。ずんずん歩いてリボンの下、木の隙間から物を取り出してくる。
円筒形の小さな箱。開けてみると中にはライオンの形の木彫りの工芸品が入っていた。
「これがその『宝物』みたい……」
「確かにこれは違うみたいね。」
がっかりしたソル・セラが力なく紙をぱらぱら振った。[ミニ冷蔵庫]と書かれた紙を。
「ねえ。これ本当に何か間違ってるんじゃないの?一体、森のどこで冷蔵庫を見つけてくるっていうのよ!」
ああ! むしゃくしゃしたチャン・セナがかん高い声を上げるその瞬間。
ジオの手がその口を塞ぐ。いつの間にか変わっている眼差し。
「……何かいる。」
スースー
風が茂みを散らす音がどこかぞっとする。
キョン・ジロクが隣に来て立ち、チャン・セナが緊張した顔で手を離した。
「な、何なの、どうしたの?」
「どうやらもう引き返した方がいい……!」
「?ジオ!」
きゃあああ!
子供の悲鳴が森の中に長く響き渡った。
★★★
「先生!ここに置いてあったおまけの紙を見ませんでしたか?一枚だけどうしても足りなくて……」
「え?そこにあったのは宝物の紙じゃなかったんですか?ええっ、どうしよう?誰かが落としたのかと思って、一緒に入れて混ぜちゃったのに。」
後になってミスに気づいた教官たちが困った顔を見合わせた。
「……どうしましょう?もう出発した子たちにまた戻ってこいって言ったら大騒ぎになるだろうし。公平性の問題もあるし。」
「仕方ないですね。とりあえずは置いておいて、戻ってきたらよく説明してなだめるしかないですね……」
「先生たち!」
タタタッ!緊迫した足取り。
まだ出発の順番が来ていなくて残っていた子供たちが一斉に顔を上げた。
状況がどんなに急を要していても、子供たちに混乱を与えてはいけない。
走ってきたセンターの要員がはっと気づき、慌てて息を整えた。何食わぬ顔で歩いていき、声をひそめて言う。
「今すぐ残っている子供たちをキャンプ場に復帰させ、出発した子たちも全員呼び戻してください。」
「何かあったんですか?」
「近いうちに速報が出ます。『リベンジテロ』が予告されました。不幸なことに犯人が爆発物を設置したと名指しした地域がこの近辺です。一刻を争います。早く!」
教官たちの顔色が一変した。事態の深刻さをすぐに悟ったのだ。彼らは急いでマニュアル通りに行動し始めた。子供たちが動揺しないように、最大限自然に。
「さあ、さあ!みんな、もう移動はやめよう!今日の度胸試しは時間が足りないのでここまで!」
「ええ…… なんだあ……」
「みんな早く教官の指示に従って動きます。列を崩さずに!」
続いて、すでに森に入った子供たちを連れてくるために、要員とギルド員も投入され始めた。
モンスターの接近を防ぐ大保護結界が壊れてはならないので、大量の魔力を行使することはできないが、彼らは訓練された精鋭たち。
子供たちはわけもわからぬまま彼らに抱きかかえられ、一人、二人と素早く復帰していった。
一人、二人、三人……。冷静に人員リストをチェックしていた教官が唸る。
「まだ一つの組が足りません。」
「どこですか。……ちょっと待ってください、この組。『銀バッジ』をつけていた子たちがいた組じゃないですか?」
絶対に見過ごせない言葉だった。
隣で忙しなく動いていたセンター所属の幹部職員がぴたりと止まる。彼が血の気の引いた顔で言葉を詰まらせた。
「……あの!今、何て、何て言いましたか?」
「特別管理対象に属する子供たちのことです。まだ戻ってきていない組が、その子供たちの組なので。」
「こ、くそ、マジかよ、ちくしょう!」
手に持っていた書類を投げ捨てる国家公務員。周りが驚いて見たが、全く重要ではない。
「人間ども!その子供たちに何かあったらこの国は滅ぶんだぞ、クソが!」
やばい、国宝が危機に瀕している!
しかし決して大声で叫ぶことのできないその言葉。冷や汗で濡れていく背筋がじっとりしていた。
「先輩?どこへ行くんですか!」
「離せ!今、祖国がまた滅びる瀬戸際なんだよ!」
「ちょ、ちょっと待ってください!それでもこれだけは確認してから行ってください!」
「何だ!重要なことじゃなかったらマジで殺すぞ!」
山猫のように鋭く振り返る先輩。後輩はぎこちない笑みを浮かべ、自分の背後を指さした。
「こちらの方々が、見たことがあると……」
★★★
頭がぼうっとする。
首の後ろが少し痛むような気もする。
ジオはゆっくりと意識を取り戻した。慣れない空気に目を細めると、ぼやけた視界の向こうに見えるのは……
「……殺人鬼?」
まさかソル・セラの言っていたことが本当だったのか?
低めの照明を反射した刃物の刃が、陰気な光を放っている。
密閉された暗い空間。濃厚な獣の血の匂いと革、そして焦げた薪の匂いがした。
指先で近くを探ると触れる感触が、場所はおそらく小屋のようなものだと思われる。
手足……体まで縛られている。
ジオは気感を研ぎ澄ませて周囲を認識した。幸い、バンビと友達がすぐに感じられた。
生命波長が活発に揺れ動いていることから、ジオとは違って目を覚ましてからしばらく経っているようだった。
案の定、左側のチャン・セナがとても小さく囁いてくる。
「ジオ、起きた?」
「しーっ、黙ってて。心配しないで。何があっても私たちがあなたを守ってあげるから。」
気絶する前の最後の記憶は、セラの悲鳴。
そして訓練しながらよく嗅いで慣れている睡眠薬の匂いだった。
本来なら魔力が防がなければおかしいのだが、問題は現在の体の状態。
絡み合った体内魔力の均衡を癒す過程にあって、手出しする暇もなくやられたようだった。
以前のように眠らなかっただけで、スイッチが全部オフになっている状態と変わらなかったから。
ジオは縛られた手を動かしてみた。子供だと侮って適当に縛ったのか、動かせそうだ。ジオが手印を結ぼうとした時。
ぎゅっ。
右側。ジオは横に視線を少しずらした。バンビの指が力を込めてジオを掴んでいた。
「じっとしてろって言っただろ。守ってやるって。」
低く噛み締めた声。しかし……ジオが口を開こうとしたその時。
「ほう、みんな起きたみたいだな。」
金属を引っ掻くような声。長く洗っていない体から漂う悪臭、そして奇怪だというより滑稽なジグソウのマスク。
ソル・セラが描写した人相と正確に一致した。
ゴゴゴ、タッ!埃っぽい床の上を鉄のハンマーが重く引きずられる。
彼が立ち上がると、ジオはビニールに包まれた壁の血痕を見ることができた。
背中を合わせて縛られているせいで、斜視のように震えるヤン・セドがまざまざと感じられた。
一方、スリラーを怖がる小さなチャン・セナは、現実のスリラーの前では冷静でいるだけだ。
「おじさん。私たちは何も見ていません。大人にも絶対に言いませんから。解放してください。」
「関係ない。何を見たか、言おうと。お前たちが俺の目の前にいるということが重要なのだ。」
「欲しいものは何ですか?お金?家具、知ってますよね?うちのママがあそこの社長なんです。いくらでも払えます。」
ヒヒッ!男が笑い出した。
「そんなものはどうでもいいんだよ、生意気な小娘。俺が欲しいのは……!」
「今だ!」
?走れ!
キョン・ジロクの合図。
待っていた。ソル・セラが勢いよく立ち上がり、ジオを自分の方へ引っ張った。ドアに向かって一直線に走っていく。
手が器用なヤン・セドがロープを解き、チャン・セナが注意を引きつけ、ソル・セラがジオの面倒を見て、キョン・ジロクが逃走する時間を作る。
ジオが意識を失っている間、身振り手振りを動員して子供たちが作ったプランだった。しかし。
「あ、開かない!鍵がかかってる!」
「くそっ!」
どうしよう?早く考えないと。
体格差が大きい。相手は銀色のライオンのおじいさんくらいの巨漢。果たして相手にできるだろうか?
シャベルを拾い上げた手にぐっと力が入る。キョン・ジロクが唾を飲み込んだ。
その時、隣のチャン・セナが悲鳴を上げながら鉄の串をめちゃくちゃに振り回す。
「やあああ!かかってこい、クソ!私たちが素直に死んでやると思うか?!」
それにわっと、荒い嗚咽を漏らしたヤン・セドもまた叫んだ。
「そ、そうだ!私たちは5人もいるんだぞ!一度に全員殺せるわけないだろ!誰かが逃げておじさんを必ず罰を受けさせるから!」
「……ジオ、だ、大丈夫。怖がらないで。」
ガタガタ震える手でぎゅっと抱きしめてなだめてくるソル・セラまで。
キョン・ジオは友達を見る。
平凡で弱い友達を。
「ねえ、何?あなたたちどうしていつもあなたたちだけで遊んでるの?私とも遊ぼうよ!私はヘンニム組のチャン・セナよ!」
「これ食べる?セドは食べなくても大丈夫だけど……」
「友達をどうして押すの?一緒に遊びたいなら遊びたいって言えばいいじゃん!私みたいに!私はソル・セラよ、あなたたちと一緒に遊びたい、仲間に入れて!」
幼稚園の頃からひときわ小さかったジオの面倒を見ながら団結することになった3人の友達は、いつもこんな感じだった。
お前は小さいから、お前は私たちより年下だから。私たちが守ってあげる。いつもそう言いながら、どんな状況でもジオの前に立とうとした。
「知ってはいたけど……」
まさかこんな状況でまでそうするとは思わなかった。
バンビも慌てたのか振り返る。
みんな一体どこから湧いてきた勇気なのかわからない。
涙と鼻水をぐちゃぐちゃにしながらもジオの前を必死に遮る3人の友達。彼らはジオを守ろうとしたのだった。
皮肉にもその行動はキョン・ジオが何があっても自分の日常を守らなければならないと覚悟を決めるようにさせた。体だろうが何だろうが、どうなっても構わない。ジオが巨大な魔力を動かそうとしたその瞬間。
「降参!」
……
「負けた。ハハ。お前たちの友情は、いや、義理堅さは本当にすごいな!」
え、ええ……?
トッ!ジグソウのマスクが軽快に床に落ちる。
感動と緊張が入り混じった現場が蜃気楼だったかのように空気が変わった。
殺人鬼……いや、殺人鬼コスプレの教官がにっこり笑ってみせた。
「サプライズ!騙された?ハハハ。」




