156話 10. 獅子は死して人を遺し、人は遺って歴史となる
「ジョー」の《ゼロベース》入場後から14時間。
韓国の人々は、私がいつ国の心配をしたのかというように、すっきりした顔で各自日常を営んでいった。
「キム代理、昨日見た?」
「プレミアリーグですか? なぜですか、うちの国のやつがまたゴールを決めたんですか?」
「いや、それじゃなくて。ゼロベースインガ、それだよ! ハハハ」
「ああ! えー、次長! それは見たかって聞いちゃだめですよ、全国民が一緒に見たのに! きゃー、ランク1位がぴたっと出る時、胸がじーんと熱くなって! バベルtotoをばーんとぶっ放したじゃないですか」
「まさか、君も?」
「次長もですか?」
「当然だろう。私は一日かけたぞ」
「えー、小心すぎますよ。うちの王中王が行ったのに! 私は15時間! もうあと1時間ですね。これ、ドキドキします」
どこに行っても笑い声がいっぱいだった。表情は明るく、人生は活気に満ちている。
よじれ曲がった時代に、世界で一番強い強者を所有した国民の特権と言っても過言ではなかった。
危険要素が解消されたと判断されるやいなや、KOSPIは連日急騰し、韓国事態を注意深く注視していた各国の専門家たちも、先を争って明るい見通しを出すのに忙しかった。
全部たった一人の合流で成し遂げられたことだった。
不敗の魔術師王、その偉大な名前の前に不幸な未来などありえないかのようだったから。
よって、一抹の心配は全部……もっと多くのことを見て、もっとたくさん考えなければならない者たちの分け前として。
「国は本当に明るいな、見ていて気持ちがいい。こういうのも国民性の一環として見なきゃいけないのかな? すぐに燃え上がり、すぐに消える」
「見えるものがそもそも部分的なのに、彼らのせいにするのもおかしいことだ。自国民を嘲笑したところで、自分の顔に唾を吐くだけだぞ、ギル・ガオン」
「……はい。道徳経の化身の前で、言うべきでないことを言ってしまいました」
「うむ。その言葉には誤りがある。厳密に区分すれば〈ヘタ〉は仏教に属する宗派の一つとして……」
「ああ、神よ。どうか止めてくれる気はないの?」
そこで見物だけしているのではなく。
ジョンギル・ガオンのぶつぶつに、読んでいた新聞から目を離さずに虎が応酬した。
「明鏡止水。揺るぎない水面を覗き込む時、汚い心も洗い流されるものだ」
「副代表? その言葉は今、私が汚い心の持ち主だという、私に向けられた計画的な人身攻撃として受け止めてもいいかな?」
「ご自由に。ギルド法務チームが忙しくなければいいが」
「……は?」
ジョンギル・ガオンが呆れた顔で彼を見つめた。それなりに冗談だったのに、通じなかったようだ。
虎は少しも悟られない気まずさを隠し、ベルを押した。白鳥のティーカップが空になっていた。
「ありがとう。お茶の香りが素晴らしいな」
「よければ帰る時に持って行っても構わないけど」
「それでもいいのか? 遠慮はしないぞ。夏が訪れるこの頃になれば、元々大護法があれこれと用意して送ってくれたものだが、もう不可能になったからな」
「……ああ」
「私にとっては母親のような方だった。もちろん、母親の記憶は全くないが」
表情のない顔で、息をするたびに事情を吐き出す白鳥の悲劇自販機。
これ以上いると少女最も級のエピソードが溢れ出しそうになり、ジョンギル・ガオンは慌てて話題を変えた。
「それより……『非常事態』に備え、『外部警戒』を緩めるな、か。どう受け止めるべきだ、これ? 一人だけ何を知っているんだ」
バベルの悪ふざけか、横暴か、国内S級がことごとく塔にチャーターされたこの状況。
その上、「ジョー」まで入った今、事実上大韓民国は、空き家だと言ってもよかった。
もちろん、空き家を空き家のように見せないようにするのが、家を支える柱たちの役目だが。
君子「白鳥」、俳優「ジョンギル・ガオン」……病臥中の老将「ウン・ソゴン」の代わりに彼の後継者「虎」まで。
国内ビッグ3は、誰が何も言わなくても銀獅子ギルドに集まって会同を持つところだった。
小粋な薄い色のスーツ姿のジョンギル・ガオンが前髪をかき上げる。微笑む顔とは反対に、手つきには若干の神経質さが混ざっていた。
3人の中では人に接する仕事が一番多いだけに、理解できないこともない。どれだけ苦しめられたのだろうか?
「どこか解釈してみろよ。一番近い『側近』じゃないか?」
「うむ。文字通り理解すればいいだろう。『ジョー』は優しい性格らしく、私たちが心配で残した言葉のようだから……」
「……いや、いや。ちょっと待って! ちょっと! いつから白鳥さんがジョーの側近だったんですか? 私だけ今知った?」
驚いて机をバンバン叩くジョンギル・ガオンに、虎がゆっくりと口元をこすった。おい。
「私も今、戸惑っているのが見えないか?」
二人の男の騒ぎに、白鳥は不快になって眉をひそめた。
彼女は最近(10日前)にジオと会った自分が近い側近だと信じて疑わなかった……。
「論旨からどんどん外れている。可能であれば、一度に一つのテーマだけに集中してくれ。キルガオン、君のスタイルが騒がしいのはよく知っているが、気が散る」
「撃沈された……」
手のひらで顔を覆うジョンギル・ガオン。ちらっと彼を見た虎が淡々と会話を続けた。
「月桂紅家襲撃で、外部勢力が国内を狙っているのはもう明白になった」
「いや、私の言いたいことは……」
「もちろん、ジョン理事、あなたが気になるのはこういうことではないだろうが、これ以上深く入る必要はないように見えるが。『ジョー』は敵ではないじゃないか」
「複雑に考えるな。あなたの性格ほどひねくれて考えることもないし」
自称側近の白鳥の判断がおかしいが、もしかしたら正確でもある。文字通り見ればいい。
虎は目を伏せ、魔術師用刻煙管に火をつけた。ぼんやりとした紫色の煙が広がる。
「あの子は……見かけよりずっと単純なんだ」
「それとも。もしかして『別の』理由でもあるのか? 理事の神経質さに」
返ってくる答えがなく、そのまま静寂が訪れる。
燃え尽きていくタバコの火、白鳥がお茶を味わう音、窓の向こうの都市の騒音……。
首を傾げ、じっとその音を聞いていたジョンギル・ガオンがソファに埋もれていた体を起こした。よっこらしょ。
「雑念終わり」
「最近、風邪気味だったからな……体が疲れると思考回路が否定的に回るんだ。『感じ』が良くないけど、オーケー。今回は戦友であり親友たちの意見に従いますよ」
テーブルに置いてあった車のキーを手に取り、彼は淡泊に手を振った。
「とりあえず海外に避難させておいたやつらは復帰させるよ。残りは徐々に調整して、それくらいでいいだろう?」
決めたら未練はない。
虎は窓際の下で、去っていくジョンギル・ガオンの後ろ姿をじっと見つめていた。考えが長くなった。
「どうした?」
「昔のことを思い出して」
「昔のこと?」
「キム・シギュンの推薦でセンターから協力要請を受けた日。引き受けるかどうか少し迷ったんだ」
あるランカーの集まりの最中だった。
『悪夢の3月』の余波でギルドは忙しく、気にかけることも山ほどあった。
センターからの連絡を受け、タバコを一本吸っていた彼に、最近一番有望だという大学生ハンターが近づいてきて、いきなり話しかけてきた。
「お節介だってわかってるんですけど、そちら今、やるかやらないか悩んでますよね? それ、できればそのまま
やった方がいいんじゃないですか?」
「……何を知って騒いでいるんだ?」
「さあ。私はこういうことには勘がすごくいいので。生まれつきなんです」
「普段なら無視しただろうが、その日に限ってなぜかそうしたくなかったんだ」
そして。
「向かっていた車の方向を変えて訪ねて行った、まさにその日、そこで……あの子と出会ったんだ」
白鳥が沈黙する。虎はフィルターまで燃え尽きたタバコを揉み消した。
少し頭が痛むが、仕方ない。今の時点で備えることができることはすべてやった。
今回はジョンギル・ガオンの生まれ持った勘が外れることを願うだけだ。
* * *
そして結論だけ言うと……。
『アルファ』の勘は今回も外れなかった。
[ローカルチャンネルのセキュリティ段階が低いです。ご注意ください。]
[ファイアウォールの現在のセキュリティ段階が低いです。(3段階一般管理国家:危険度高)ご注意ください!]
[W arning! W arning! W arning! ]
ウェエエエエ엥-!
[ゲート発生、ゲート発生。]
[突発亀裂が発生しました。周辺の市民は速やかに当該地域から離れ、安全な場所に避難してください。]
「構造出動! 構造出動、もっと早く動け! 3チームが現場統制、5チームがサポートする。急げ!」
「先輩! ゲートロケーションは?」
緊急事態発生時、状況室からリアルタイムで位置を知らせてくれる。構造鎮圧3チーム長は、何気なくスクリーンをチェックした。
「K大前! さっき見たらここからの距離はそんなに遠くな……ちょ、ちょっと待って! こ、これは何……?」
慌てた声に振り返った支援チーム長もそのまま固まる。あれは何だ……?
「これは一体何……」
ゲートの位置を知らせる青い火。
スクリーンの緑色が薄れるほど、画面は同時多発的な青色で点滅していた。
言い換えれば、状況発生位置はもう……ソウル特別市全体だった。
たった一日でゲート8個。
「ジョー」のデビューによって国家段階が格上げされて以来、過去最多記録だった。
1〜2級の出現がなく最悪の事態は免れたが、今後の可能性までは保証できなかった。
専門家たちは今回の事態の根源が全部「種ゲート」だということに焦点を当てた。計画されたテロという意味。政府は直ちにデフコン3に準ずる防御態勢を整えた。
翌日、不幸にも事態はさらに悪化した。
開いたゲートの数は前日より少なかったが、問題は場所。
〈ヘタ〉の雪岳山、〈D.L〉のサムソン駅、そして……光化門。
ギルド〈銀獅子〉の重要戦力のほとんどが光化門に駆けつけたのは、あまりにも当然のことだった。
「……獅子よ! こ、光化門に行ったやつらを全部、すぐに呼、呼んで……呼んでくるから、だから!」
「よろしい」
「代表、代表……」
「泣くな。皆うまく終わったのに、なぜ泣くのか?」
しかし、息を殺したすすり泣きは収まることなく長くなった。
ウン・ソゴンはかすれた笑みを浮かべた。
静かに頭上の空を見上げると、ひときわ澄んでいる。北極星が手に届きそうなくらい近かった。
ゴホッ……。赤色の中に沈んでいく老将の息だけが白かった。
何も持たずに、ただ体一つで始めた人生。
彼はただ、あの星たちを指標として、暗く真っ暗な道を歩いてまた歩いてきた。
ある日は寂しく、次の日も物寂しかったが……またある日は意地悪ではなく、彼に優しかったので、止まらずに歩くことができた。
その過程で運良く、捨てられたもの、寂しいもの、痛いものを見分ける目も得た。
振り返ってみると、手ぶらで来たくせに、本当に多くのものを得てきたのではないか?
寂しかったが、寂しかったと決して愚痴ることしかできない生ではなかった。
【ソゴン、ゆっくり休め。これまで苦労したな……】
ウン・ソゴンは笑った。
「上帝が……迎えに来てくださるのかな……
それでも最後は愛する家族たちのそばで過ごしたかったのに、空も無情だな。
『私の愛する孫娘は、そうは見えなくても心がかなり弱いのに……』
ぽつり……。
降り注ぐ星明かりの下、うなだれる人々の中を血の川が流れた。獅子たちが崩れ落ちて嗚咽した。
老将……そして獅子。
20xx年5月。
城北洞近くの小学校。
2級突発亀裂に立ち向かい、生涯最後の炎で幼い命たちを無事に守り抜き……。
最初の一世代ハンター、ウン・ソゴン
戦死。




