150話
「だから、たとえ沈みゆく船だとしても……あの恐ろしい犯罪者たちに舵を任せるわけにはいかないでしょう。」
犯罪者たち。
向こうのチームに選抜された人員の中には、犯罪者も含まれているようだった。
その言葉に、なぜ始まった途端に脱落者が発生したのかも自然に理解できた。
始まった途端に相手チームで内部衝突が発生したのだ。ゼロベース展開とは全く関係なく。
キナンは既に崩れた自分たちの世界について簡潔に説明した。
生存者がわずかしか残っておらず、犯罪者たちが主導してのさばる世の中。
最悪な彼らにディレクター権限まで譲り渡すわけにはいかないと、キナンは歯を食いしばった。それでは自分たちの世界は本当に終わりだと。
最悪を免れるために次悪を選ぶ気持ちとは、果たしてどんなものだろうか。
ナ・ジョヨンは気の毒な気持ちで彼を慰めた。
「……心配しないでください。この戦いはすぐに終わります。そちらが望む方向に。私たちの世界の最強がここに来ましたから。だからヘヤがオーナメントを見つけて開けてくれさえすれば……」
「[あらら。]」
今度は気の毒がるのは相手側だった。
「[簡単にはいかないでしょう。]」
「え?」
「[キープレイヤーはこの中に誰が入ってきたのか全く分かりません。それがこの『ゼロベース』の第一規則です。]」
テーブルに着席したキープレイヤーに、ランカーたちの姿はただの『キャラクター』として露出される。
例えば、ドラゴンスライカー、皇宮魔法人、ウォーロード、クルセイダーなどなど……。実際とは名前も、姿も全て違って映し出された。
「[それを推測して調整することまでがキープレイヤーの試験……。]」
キナンが深くため息をついた。
「[誰が誰か分かっていたら、うちのあの子が、あの殺人魔を一番最初に解放したはずがないじゃないですか……。自分の兄弟を殺した人なのに。]」
忘れてはならない。バベルは慈悲深さとは程遠い。
『キープレイヤー』は底辺から選出された候補。それだけ他のランカーたちに比べて試される領域も厳しく多様だった。
自分の管理権限の一部を譲り渡す候補を選ぶのに、バベルがそう簡単にいくはずがないから。
黙って横で聞いていたファン・ホンが、面白くなさそうな低い声で付け加えた。
「わしも驚いた。見事に『キャラクター』をわしらに合わせて選んでくれたから、当然知っているものだと思っていたのに。まさかそれが単なる運試しだったとは……」
「そんな……」
暗澹たる表情でクォン・ゲナが『テーブル』側のスクリーンを見つめる。
強張っていたナ・ジョヨンは驚愕し、手すりに駆け寄った。
尖塔の外の戦場の真っただ中。
もつれ合って戦う味方と敵の間、四龍と飛竜たちの間でたった一人奮闘する炎と雷があった。
黒く、青く……そして黄金色。
キョン・ジオの色だ。
「嘘……嘘よ。だめ……」
矢に貫かれた手の甲が痛いことさえ分からなかった。ぎゅっと、ナ・ジョヨンは力強く手すりを掴んだ。
いつの間にか涙でいっぱいになった顔でスクリーンを見つめる。切実さのせいか、膝が自然と折れた。
お願い、お願い……。
「名前を呼んで。どうかその名前を呼ばなければ……!」
* * *
「[そちらの惑星もレベルが知れるな。こんなものを代表として送り込むとは。]」
相手は白目まで真っ黒な奇怪な外観を持つ者たちだった。
四龍の体から着地した男が、思い切り嘲笑しながら近づいてきた。
パチパチ!まだ残りの魔力が残っている地面。血で濡れたその上に倒れたジオの背中を、ぽん、ぽんと蹴る。
「[おい、しっかりしろ。お前いくつだ?お前たちの基準で成人にはなったのか?おい、ヨボヨボ爺さん!]」
「[ん?]」
「[本当にこいつがチャンピオンなのか?シードチーム1位?こんなに小さくては首もまともに狩れないだろう。]」
「[おお。もちろんだ。間違いない!さっきわしがわしのヘルパーに確認したから。へへ……。]」
「[お前の言葉を信用できるはずがないだろう。情けないやつ。]」
卑屈に微笑む部下を横目で見た魔龍軍ストライカーが、チッチッと首を横に振った。
そのまま腰を屈めて座り、ジオの髪の毛をぐいっと掴んで持ち上げるのだが。
「[……は。これを見ろ。]」
消えない眼光、少しも挫けない眼差し。目が合うとキョン・ジオが鼻で笑う。
瞬間、気勢で完全に押されたストライカーが無理やり歯を見せた。
「[そうだな。そうですよ。『チャンピオン』……。お前はわしが必ず芸術のように殺してやる。格にふさわしく。]」
他の世界の殺人魔が、傷ついた自尊心を隠して笑った。欲望にギラギラ光る目で。
「[劇的に、お前の封印が解かれるとか……。そんな無駄な期待は捨てることだな。見るところ、お前もギャンブルなんかに命を懸ける性格ではないだろう?]」
小さな顎を近くに引き寄せ囁く。たとえ運良くオーナメントを見つけたとしても……。
「[そちらのキープレイヤーが幽霊の目玉でも持っていない限り、絶対に不可能だと。]」
その言葉にキョン・ジオは……明るく笑った。
米 * *
[ORNAMENT DETECTED!]
[オーナメントを1個発見しました。ボックスが解体されます!]
ハア、ハア……。
血管をちゃんと通ったのか、眉の上の傷から血が流れ続けていた。
隙間の空間に身を隠しながら、ホン・ヘヤは湿った目元を拭った。
懐からキーを取り出す。
黄金の鍵が熱で熱く熱せられていた。私を早くそこに、差し込めと喚いているかのように。
続いて黒い四角いボックスが開くと、豪華な光の筋が飛び出す『オーナメント』。
完全化まで終えたそれは、鍵の形をした溝が描かれた円球だった。
透明な円球の中で、様々な色の粉が集まったり散らばったりを繰り返す。それはまるで。
「人の魂みたい……美しい。」
無意識のうちに考えながらホン・ヘヤは鍵を力強く差し込んだ。それと同時に、カチッ!
サラサラサラ-!
溝がぴったりと噛み合う音と共に、周辺空間が急変する。
壁の中と似た暗黒空間。
ホン・ヘヤが参加者たちにゼロベースの『キャラクター』を最初に付与する時と同じ密閉空間だった。
その時と違う点は、もう彼を囲むキャラクターカードが数百枚ではなく、たった9枚だということだけ。
そしてそれぞれが担当するカードと共に浮かび上がったランカーたちの現在の姿……。
バベルから自分と同じ所属の韓国人ランカーたちだと聞いたが、誰が誰なのか肉眼では見分けがつかなかった。
全部初めて見る見慣れない外観だったから。しかし……。
ゆっくりと、ホン・ヘヤは粉々に砕けた眼鏡を外した。血で濡れたボサボサの髪をかき上げると。
「……もう分かった気がする。ダルヤが私に何を遺して行ったのか。」
暗闇の中で黄金の目が光る。
短い期間の間、生死線を数えきれないほど行き来した。大切なものを失い、また失った。
誰かが正当な資格を論じるなら、少年は十分に持つ資格があった。
最初は刹那だったし、瞬間だったが……その間隔がだんだん長くなった末に、ついにホン・ヘヤは自分が持っている能力に気づいた。
彼は『読む』ことができる。
[生と死の境界に到着しました。英雄たちが長い眠りから覚める準備をします。]
[足かせから抜け出す英雄の名前を呼んでください。]
[現在選択可能な英雄は9人。一度指名すると取り消すことはできません。]
憎いのは事実だ。少なからず恨んだのも事実だった。
しかし、その全てを乗り越えて『見え』、また『読めた』。
今一番重要なことは何か、目の前にいる人々が誰を望んでいるのか。
少年は切実に祈る女から最後に視線を離した。
「……指名する。」
1回目の大韓民国バベルの塔ディレクター、ホン・ヘヤ。異名は『黄金律(黃金律)』
人が自分を待遇するように、自分もまた人を待遇するという名前がついた彼が持つ黄金の目の能力は……。
人の心を読むこと。
[解放の名前を呼んでください。]
「ドラゴンスライカー。」
画面の中の皆が切実に願っていた。そこでホン・ヘヤは呼んだ。
「……キョン・ジオ!」
* * *
「……どこに擦り付けてるんだ。」
「[何?]」
「わしは『目』だけは生まれつき良いんだ。」
「だからホンさんたちは良い『目』を持って生まれるんだって、まあそんなことだ。」
ひどく萎縮して気後れした中でも、自分の目だけは生まれつき良いと言って微笑んでいたホン家のあの少年。
血に濡れた髪の間から、キョン・ジオは鋭い笑いを爆発させた。
「幽霊の目玉なんぞとどこに擦り付けてるんだ。」
《おめでとうございます!》
《オーナメントアンロック!黄金の鍵を持つ少年が足かせ解放の対象を指名します。》
ゴオオオオオ-!
ここにいるものたちとは全く違う唸り声だった。空を裂き、空間を裂く。
サラサラサラ。
【思う存分暴れろ。わが王。】
感じられた。星の制限が一時的に解除される。
クラス特性で『龍』の特典が付与されたというお知らせが後に続いた。
聞き慣れた声、聞き慣れた世界魔力、聞き慣れた権威……。
魔術師王『ジョー』が笑った。
《チャンネル『国家大韓民国』の最初の足かせが解除されました!》
《封印解除(封印解除)!帝国軍メイン攻撃手『ドラゴンスライカー』が目覚めます!》
《解放された味方のランキングはステージ総合順位、1位です。》




