145話
「経験値、いただきます。」
[フィールドボス出現!土着系変異種「デルパマの三頭蛇(Lv.48)」が強い敵意を表出します。]
このトーナメントが面白いのは、レベルが表示されるという点だ。
覚醒者の生まれ持った器はD級、A級。詳細な能力値は「上下」、「極上」などと曖昧に数値化されていたジオの世界とは違っていた。
「こうやって教えてくれれば、どれだけ楽になる?ね?」
どれくらい差があるのか、はっきり見当がつくじゃないか。ジオはキャラクターウィンドウに表示された自分のレベルを見て、フッと笑った。
[> 「ドラゴンス トライカー」Lv.1が
「どれだけ面白いかって、こんな詐欺劇が。」
5階級まで到達した魔力は、純粋に魔法陣を通してキョン・ジオ自らが得た能力値だ。
したがって、今まで獲得した経験値とは隔たりがあるはずで、現在のレベルも能力に比べて微々たるものだった。
キャアアアアク!三頭蛇の頭一つが濃い毒霧を吐き出した。沼地に霧が低く立ち込める。
バトルアックスを握ったチェ・ダビデが素早く走り出した。ジオはその前で風の方向を変えながら言った。
「おい、ヒドン。」
「……はい、はい?」
「防御呪文の数式の中核だけ言ってくれ。5階級の中で一番使えるやつで。」
「ここで、今ですか?まさか!」
すべての適業スキルが当然そうであるように、魔法は遊びではない。
手印と真言、演算、魔力回路などなど、このすべてが同時に行われなければならない高度な総合技芸だった。
手印一つに慣れるためには、数十、数百回同じ軌跡を描いてみなければならず、世界の秩序と自分の魔力回路が適切に噛み合うには、寸分の狂いもない演算が必要だ。
この複雑な過程をスキップしようと多くの覚醒者が魔峡で簡単キットや変形スキルを買い込むが……。
まともな魔法使いなら、魔塔に閉じこもって何日も何日も修練ばかりするのが普通。
ところが、たかが他人が唱える数式だけ適当に聞いて魔法を実現するというのか?
「ありえないだろ?」
再び拒否しようとする彼をジオが振り返った。緊迫した周辺状況とは異なり、ただ穏やかな顔で。
「それで。やらないのか?」
シャア、パガガク!
砕けた木の破片が顔に飛び散った。頬が熱くなる。チョン・ヒドは赤い傷跡がついた自分の顔を掴みながら、目の前の光景を眺めた。
沼に投げ込まれたチェ・ダビデが辛うじて横に転がるや否や、三頭蛇の巨大な尻尾が叩きつけられ、水しぶきが四方八方に飛び散る。
キャアアアア-!蛇たちが鋭く鳴いた。風はまるでそれらを押し出すように後ろに吹いている。
この小さな女が変えた方向だった。
「……知っている中で使えるのは、5階級上位呪文『ケライア』だけです。」
角の形をした魔力保護膜が敵から衝撃を受けるたびに、一枚ずつ加えていく反応型防御膜。
「しかし、絶対に不可能です。効果的ではありますが、難易度が……!」
「お前はちょっとおかしいな。魔法を使うやつが。」
チェ・ダビデを噛み砕こうとする蛇の目
玉に水の柱を突き刺しながら、ジオが呟いた。彼をちらっと見る。
「いつから魔法使いが『不可能』を言ったんだ?」
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「言ってくれ。忙しくて死にそうなんだから、もう遊んでないで。」
チョン・ヒドがぎゅっと歯を食いしばった。
「ちくしょう、私もわからない。」
「……約束された真言体系は古代ヘブライ文字です。リアクションタイプなので、予備客体ごとに値を指定。位置しなければならない基本構成要素は、風、放出電流、回転……」
彼の言葉が早口で続いた。
魔法使いが見る星図と文字表なしに記憶だけに頼って言わなければならないのは、彼も同じ。思いっきり集中したチョン・ヒドの声が慌ただしく速くなると、ジオの演算にも速度がつく。
「媒介仲介者は北ドラコ。赤経15h 24m 55.7747s。赤緯+58° 57’ 57.836"。距離は……」
「いい。」
振り返らずにジオが遮った。
手印を描いていた指先が逆三角形の頂点を仕上げ、パチン!と強く一度噛み合ってから広がる。
逆方向の風が吹いていた。なびいて倒れた髪の横で、王の目が星のように輝いた。
金色の魔力回路の稼働、異世界の魔力が服従する。
キョン・ジオが命じた。
「[律法の荒々しい角には隙がない。] 」
[適業スキル、5階級上位呪文(強化)—「ケライア・モテット」]
ウウウウ-!沼地を満たした水の上に波紋が広がる。
多重合唱のように音が重なり響き渡り、キョン・ジオの足元から生成された黄金色の円が拡張され、一帯に広大に広がっていった。
[変異種「デルパマの三頭蛇」が激怒に満ちて身もだえします!]
キャアク!クグン、クググン!
怒った蛇たちが頭と胴体でぶつかるたびに、角の形をした保護膜がさらに硬くなった。
ますます刃を立てる角の角に、三頭蛇の巨大な体にも傷が増えていく。
「へえ、体格の割に抗魔力はひどいみたいだな。」
残念だ。ジオが退屈な視線で怪獣の悪あがきを見物した。
「……ハア、ハ!これは一体。」
弾かれて水際に座り込んでいたチェ・ダビデが、キョン・ジオと三頭蛇を交互に見た。作り笑いをこぼすと、すぐに歯の抜けたバトルアックスを片手で持ち上げる。
肩に担ぎながらこちらを見ているが、茶色の目が殺気と喜悦で光っていた。状況を完全に把握した様子だ。
「クソ。じゃあ、もうあの奇形蛇野郎を好き勝手に殺してもいいってことか?」
分割する価値もあった
本人の能力だったら、あんな蛇が〈ヘタ〉の夜叉の遊び道具にでもなっただろうか?
そんな中でも許可を求めるのが殊勝なほど。ジオはゆっくりと魔力を再整備した。続いて短く顎で合図する。
「喜んで。」
思う存分暴れてくれ、ウォーロード。
お前の補助はこのキングがしてやるから。
ス * *
「天恵の才能、世紀の天才。そんな修飾語さえ足りなく感じる方でした、大帝陛下は。」
「冬の公も偉大でしたが、先ほど申し上げたように、公が人間ではないということは帝国人みんなが知っている事実だったからです。」
沼地の戦闘から数時間前、帝国公爵家。
応接室のテーブルの上のティーカップから湯気が立ち上る。見慣れない姿の異邦人3人を前に、ビテルガルト公爵はカップをすすった。
「千年もの間、冬の山脈の主としてのみいらっしゃったあの方を、人間たちの間に連れてきて皇帝の龍にしたのも陛下ご本人でしたから。」
「へえ。大陸統一も足りず、龍まで……本当に女性一人で成し遂げたとは信じられないほどすごい業績ですね。そうでしょ?」
「……はい。本当にすごいです。」
いつの間にか心から感銘を受けたようなクォン・ゲナ。彼女の感嘆に機械的に呼応しながら、ペク・ドヒョンは時計をちらっと見た。
肖像画の前から始まった会話がもう1時間。あのティーカップもすでに3回も変わっているのだ。
「うむ。実に帝国人が当然崇め奉る人間の王であり、神と星たちが寵愛してやまない天界の『真の』主人でした。」
そろそろ制動をかけなければならないかと迷っていたペク・ドヒョンが一瞬止まった。ずっとのんびりとしていた老公爵の口調が変わっていた。
「あの噛み殺しても気が済まない……呪われた悪魔野郎どもではなく。」
殺気に近い敵意、骨に染み込んだ恨み。
彼らをここに導いた商人アロンも似ていた。
「敵軍?ハハ、違うよ。魔龍軍は敵……という単語で定義できるような関係じゃないんだ。」
「じゃあ……?」
「これから知っておいてくれ。わが帝国人たちは心から陛下を尊敬して愛していたんだ。幼いあの方は、あの美しい白鳥皇宮が建てられてから、あそこに1ヶ月以上滞在されたことがないんだ。」
「いつも戦場、最前線にいらっしゃった。身を挺して私たちを守ろうと。そんな方を、どうしてただの『敵』などと呼べるだろうか?」
大帝が幼くして両親を亡くした少女王時代から、立派な成人として成長し、大陸の征服者として君臨していたあの日まで。
人々は彼女を見守ってきた。
人間の王であったが、帝国の親であり、同時にまた帝国人たちの子どもだった。
あの悪魔野郎どもは私の両親の仇であり、私の子を屠殺した殺人鬼だ。
「……閣下、魔龍軍をこの地から追い出したいのは私たちも同じです。心から。」
魔獣と悪魔で構成された悪の軍隊。
より高い神の座に到達しようと罪のない人間たちを虐殺した魔龍王と、彼らに抑圧される帝国人たちの姿は、善人の共感を呼び起こすのに十分だった。
低い声で伝えるナ・ジョヨンの本心には、真実の力があった。老公爵はぼんやりと見つめ、ゆっくりとカップを置いた。
「……思わず昔話が長くなってしまったな。そう、聞けば君たちは帝国の遺産を探していると?」
「しまった。まさかわざと時間を稼いでいたのか?こちらの意中を把握しようと。」
それならナ・ジョヨン、ナイスだ。ペク・ドヒョンは軽くため息をついた。
「はい。詳しく説明することはできませんが、私たちには現在の状況を反転させるキーがあります。しかし、それが成立するためには、ある物が必要で……」
「それがこの帝国にとって重要な物、皇宮にある遺産ではないかと私たちは推測しています。ああ、帝国英雄と関連した!」
オープニングのシネマティックムービーを思い出したナ・ジョヨンが慌てて付け加えた。
老公爵が顎髭を撫で下ろす。
帝国の英雄といえば、陛下のことを言うのだろう。しかし。
「陛下と関連した物はすべて魔龍軍側で破壊されて久しい。植民政策の一環として。」
「ああ……」
「ただし、がっかりするにはまだ早い。思い当たることが一つある。」
「皇宮礼拝堂。」
期待感に満ちた3人を見て、老公爵が微笑んだ。
「神の息吹が濃く残った聖所では、あえて彼らが狼藉を働くことはできない。忠心深い侍女たちが陛下の所蔵品をそこに集めておいたと聞いている。」
よし!3人は視線を交わした。
見つけた。あそこだ。ランカーの直感が正しい道に来たと知らせていた。
「それでは君たちに必要なのは、もう皇宮に入る機会だろう。敵の目に触れないほど秘密に。」
人なつっこい笑顔とともに老公爵が小さな鐘を持った。彼らが無事に入れるように人を付けてやるつもりで。
しかし、まさにその瞬間だった。
ドーン!
「か、閣下!」
「……アーチボルト?どうした?」
乱れた姿で執事が慌ててドアを開けた。すると軍服姿の騎士がその間を走り出て膝をつく。
しかし、3人の男女はそこに集中できなかった。強烈に鳴り響く警鐘とともに、目の前にアラートウィンドウが浮かび上がっていた。
[戦争が勃発しました!]
「閣下、すぐに避難しなければなりません!突発的な敵の攻撃で皇宮と神殿で衝突が起こり、枢機卿が死亡されました!」
「何!」
「メル将軍が急いで帝国軍と独立軍戦力を総招集中です。早く、閣下!」
[敵軍が奇襲攻撃を開始しました。帝国軍に合流して味方を守ってください!]
敵軍出現。それを知らせる真っ赤な赤色のアラートだった。




