141話
チェ・ダビデは勘が鋭い方ではない。状況判断が優れているとも言えなかった。
しかし、あの賢そうな間抜けが取り返しのつかない川を渡っているということだけは、本能段階で分かった。
例えるなら、イエス様を目の前にして、インチキ坊主だと貶しているようなものだったから……。それも牧師級、神父級の奴が……。
「あ、あれを助け……ないでおこうか……?」
まさに歴代級のやらかし。割れた眼鏡を指して損害賠償請求すると喚き散らすチョン・ヒドを見て、彼女はもう我慢できなかった。
チェ・ダビデは拳を握って勢いよく立ち上がった。
「こら!この間抜け野郎!」
叫び声に集中する視線。その中にはジオもいた。表情なくむっつりとしたその顔を見たチェ・ダビデは、一瞬躊躇する。
「……まさか今、俺に言ってるんですか?世の中の間抜け分野チャンピオンに言われたい言葉は絶対ないと思いますが。」
「こ、この……!」
「赤ん坊の言葉じゃなくて、ちゃんと言葉にしてください。」
「あいつは、一介の検事なんかじゃないんだよ!」
「……え?じゃあ何なんですか?」
私が言ってもいいのかな?ぶっちゃけてもいいのかな?マイフレンドが何のシグナルも送ってこないのはなぜ?
こんな重要な決定を自分で下したことのないチェ・ダビデの目がぐるぐる回り、結局。
「ド、ドジェだって!抜刀斎!」
「気づけよ。チョン・ヒド、お前の口で言ったじゃないか。ドジェは検事じゃなくて、相当な実力のある魔法使いだと……」
「……まさか、あの人斬り抜刀斎?」
チョン・ヒドの表情が深刻になる。彼は何か悟ったような表情でジオを見つめた。
「それで……」
「そうでしょ。お前が今考えているそれが正解だよ!」
「それで、ずっと俺にあんな横柄な態度だったんですか?放送で俺のことを魔法使いだと持ち上げて?コン・ジホさん!検事のケチ臭さには本当に言葉もありませんね。」
「ああ、もういい。やめろ、この間抜け野郎。」
すでに検事の色眼鏡を装着した魔法使いの信念を打ち砕くのは非常に難しい。チェ・ダビデは諦めて手足をだらんと垂らした。
ゼロベースに落ちて以来、腹ペコだった二人だった。日も暮れ、
今日の移動はこれ以上無理だ。
掘っ立て小屋は幸い、三人が一晩泊まってもいいほど広々としており、食料も十分だった。ワニ肉を噛み締めながらジオが感嘆した。
「ご飯を食べるだけで能力値が上がるんだな?」
「序盤はそうみたいだ。体力は全部基本で、ワニは耐久、ヘビは知力、みたいな感じで。」
互いに確認したところ、今回の49階では落ちた時刻がほぼ同じだった。
しかし、ご飯も食べられずに強制召喚されたせいで、闘気がフル充電されていたチェ・ダビデは、意地でこの一帯をめちゃくちゃにしたそうだ。
夜遅くの沼地は静かだった。
水がちゃぷちゃぷ揺れる木の板の下をしばらく見ていたチョン・ヒドが尋ねた。
「掘っ立て小屋を建てる場所は、どうしてここを選んだんですか?」
「さあ?ただここがいいと思ったから。ピンときたというか?」
「チッ。S級だけあって、本能だけはすごいですね。獣の勘とでも言うべきか……」
「腹いっぱい食わせてやったと思ったら、この米袋を引っ掛けて歩いている魔法オタクが何を言うんだ?」
「本当によくやったと思いますよ。場所選びは最高ですね。」
夕食はほぼ終わった。無骨な木の皿を片側に押しやり、チョン・ヒドはローブの袖をまくり上げた。
チョークのようなものを取り出すと、床に円を描く。割れた眼鏡の間から、魔法使いの眼差しが沼よりも静かに沈んだ。
そうして数分が過ぎる。
一緒に見ているようだったチェ・ダビデは、退屈だとすぐに脱落した。ジオは一人、黙ってチョン・ヒドの背中を守った。
正統な魔法使いが一筆で描き上げていく魔法陣。
ルーン文字と真言で礎を築き、数式で大を建設し、星々の名前で祭文を捧げる。
まるで巨大な城一つを設計しているかのようだった。
一人の魔法使いのための城壁。
ぽつり、床に汗が落ちると同時に、彼が手を離した。白色の魔法陣は、掘っ立て小屋の床をほぼ埋め尽くすほど大きかった。
顎を拭ったチョン・ヒドが振り返り、びくっとする。集中していて、後ろに誰がいるのか分からなかった。
「……何ですか?よく見ていましたね。無知な検事さんは退屈だったでしょうに。あちらで気楽に寝込んでいる誰かさんのように。」
「面白かった。」
後ろ手に組んで見物していた視線も落ちる。ジオは斜めに首を傾げた。
「初めて見るけど……韓国魔塔で使っているものなの?」
「正確にはメイドバイ世界魔塔です。マーリンが直接作ったものだから、実質的に使える人は少ないですが。」
「ああ、マーリン……」
スコットランド出身の、若い顔をした魔塔主を思い出したジオが、ふっと笑った。
異常に気づかないチョン・ヒドが、得意げな顔で床を見つめた。彼は結局、魔法オタク。会話のテーマが魔法なら、断る理由がなかった。
「『ウィザードキャッスル』と呼ばれる魔力特化系列専用の陣です。魔力凝集と増幅の効果があります。」
本来の用途は、戦闘中に魔力が急に不足したり、大規模な魔法を実行する時に主に使うが……。
「今のような場合にも、これ以上ないほど役に立つでしょう。数時間座っていれば、少なくとも2階級まではすぐに到達するはずです。ここは場所がいいですから。」
基礎的なスキルを使うためには、少なくとも1階級の円が形成されていなければならない。その時から見習い魔法使いのレッテルでも貼ることができた。
魔力がほんの爪の先ほどしかない今としては、魔法使いなどと口にするのも恥ずかしいレベル。
チョン・ヒドは嬉しそうに説明した。
一定の境地に達した魔法使いでなければ読めない、私ほどの人材だからこそ、この過酷な環境でこれほど実現できたのだ……。
まさにその時だった。
「自分の口で言うのも何ですが、韓国の次期マーリンは誰が見ても明白じゃないで……」
「シーッ。」
静かにして。ジオが囁き、眠りについたチェ・ダビデが目を開けたのは同時だった。
刹那の違和感。
そしてS級が感じたその微細な違いは正確だった。ピロリン!弦楽器の音で始まる聞き慣れたメロディーが聞こえてきた。
「ヴィヴァルディの四季……?」
空間全体に響いている。
三人は誰が先ともなく外に飛び出した。音が流れ出てくる方は空……。
「それならバベルだ……!」
《チャンネル「国家■■■■」がオーナメントを獲得しました。》
《星間(星間)トーナメント:ゼロベース1日目、最初の夜が始まります。》
《テーブルオープン!》
沼地いっぱいに響く音楽の音だったが、どんな獣も目を覚まさなかった。こちらの世界ではない、他の世界から来た参加者にだけ聞こえるという意味だ。
そして今、虚空を埋め尽くすあのスクリーンも。
塔に最初に召喚された時に見えた砂時計の画面と似ていた。チェ・ダビデが慌てる。
「え?あいつは……」
画面に現れた主人公は、ジオにもよく知っている人物だった。ジオは食い入るように見つめた。
「ホン……ヘヤ。」
暗闇の中で明らかになるポーカーテーブル。不安な顔をした少年がまさにそこにいた。
* * *
[オーナメントが到着しました!]
[►Caution:忘れないでください!オーナメントは「黄金の鍵」でのみ開けられます。味方のオーナメントでも、相手のキープレイヤーが先に見つけてオープンした場合、解除権限は相手チームに移ります。]
[テーブルがオープンされました。]
[黄金の鍵の悪霊が目を覚まします。再び日が昇るまで生き残ってください。]
[スペシャルステージ:影狩りStart!]
18世紀の円形監獄パノプティコンをそっくりそのまま真似た構造だった。
違いがあるとすれば、真ん中に位置するタワーが2つ、またそれがタワーではなく「テーブル」だということくらい。
機械音と共に二つのテーブルがむくっと上に飛び出した。現れた位置は、巨大な円形空間で互いに向かい合った端と端。
結局、テーブルオープンはステージ移動を意味していた。暗闇の中で一人ぼっちだったテーブルをこちらに移してくること……。
「多すぎる。」
ホン・ヘヤは円形空間をびっしりと囲んだ数千の扉を見つめた。そこに収納された正方形のボックスごとに南京錠がしっかりと取り付けられている。
あの中にオーナメントが隠されており、先に見つけて開けなければならなかった。それが「キープレイヤー」の役目であり、試練だった。
そして今聞こえ始めた、ぞっとするこの鬼哭まで。
「……くそ。」
相手チームのキープレイヤーが急いでテーブルから飛び降りるのが見えた。ホン・ヘヤも後を追った。
「脱落とかどうでもいい、ここで死んだら犬死にだ……!」
それがホン・ヘヤが受け入れた現状だった。長くて長かった現実否定の過程を経た末に。
「[おめでとうございます!あなたはチャンネル「国家大韓民国」のキープレイヤーに選ばれました。]」
r [キープレイヤーは49階のワイルドカードとして、選抜代表9人以外、現時点で最も有力なディレクター候補です。]」
「[泥の中に埋もれている黄金!あなたの価値と可能性を塔と星々に証明してください。]」
「……何、何なの!ここはどこなの!誰かいませんか?ここに人がいます、出してください!」
「[ゼロベースカットシーン 一 シネマティックムービー:「鍵を握る少年」が始まります。]」
プロローグ映像が終わると、ホン・ヘヤはぼうぜんと自分の手を見つめた。
「……これが。」
真っ暗な密室の中でも、黄金の鍵の存在感は薄れなかった。映像の中の少年が握っていたまさにその鍵だった。
「「これがなぜここに……?」
「[黄金の鍵獲得!与えられた鍵でオーナメントを見つけてオープンしてください!足枷に縛られた仲間たちがあなたの助けを待っています。]」
「[しかし、簡単ではないでしょう。長い間、魔竜王の呪いを受けてきた黄金の鍵には、切り離せない悪霊が宿っています。]」
「[長い眠りから覚めた影は、執拗なハンターのようにあなたを追いかけるでしょう。夜が始まったら絶対に目を閉じないでください!]j
「[►Tip:ミッションフィールドの味方がオーナメントをテーブルに転送することに成功すると、該当オーナメントはランダムでボックスに収納されます。できるだけ早く適切なボックスを見つけてください!]」
正気に返る暇もなかった。数多くの出来事が瞬く間に過ぎ去った。
数百枚のカードの山からキャラクターカードを選び出して割り当てることから、遠隔モニターで帝国軍の兵力と境界を調整することまで。
一人で座っているポーカーテーブルはまるで操縦席のようで、言われた通りにしている最中にも、ホン・ヘヤは疑問を拭い去ることができなかった。
テーブルの上の複数の画面の中。
そこに映るランカーたちは、まさにサバイバルを繰り広げているのに、彼は一人で戦略ゲームでもしているかのようだったから。しかし。
「ちくしょう、サバイバルじゃねえか……!」
ホン・ヘヤは階段の手すりをつかんで下の階に飛び降りた。今しがた立っていた階段が、わがちゃくと崩れるのが見えた。
獰猛な牙のついた影が再び体を大きくする。ハアッ、ハアッ!ホン・ヘヤは荒い息を整えた。
「絶対に先に疲れてはいけない。」
夜は長く、やつらは疲れない。再び走り出す少年の目から黄金の光が輝いたが……ほんの一瞬だった。
《おめでとうございます!》
《チャンネル「国家■■■■」の最初の足枷が解除されました!》




