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129話 9. 金のなる木

[幻魔種「マッドハッター」が激怒し、眷属を呼び寄せます!]


「3時方向!フォーメーション維持!


クッ!」


「ブ、副ギルド長!大丈夫ですか?」


果てしなく落ちていくトンネルの中。


足場と言えるのは、無重力状態で浮遊する奇怪な形の個体の上だけだ。


童話〈不思議の国のアリス〉に出てくる兵隊そっくりの怪物を斬りながら、ウナセムが巨大なキノコの上に降り立った。


逃げ場のないフィールド。


上下に出没する敵だけでなく、四方の壁を囲む肖像画にも決して油断できなかった。


うわああ!近くにいた肖像画の攻撃にギルドメンバーの一人が悲鳴と共に墜落する。


「狂った野郎、しっかりしろ!」


「す、すみません!」


ウナセムは慌てて引き上げながら後ろを振り返った。「彼」の口の形が言っている。もう少しだ。


「もう少し、もう少し……


濁ったピンク色の髪に夕焼けと似た光が絡みついた。


そして血と混じった汗が、滑らかな顎を伝って落ちていく瞬間。


「……よし。」


見たくなかったら、さっさと顔を背けろ。


背中の刺青が血の色に光る。


最後の陣に手のひらを叩きつけながら、ファン・ホンが囁いた。


「[第4門 阿修羅道、開門!]」


ドンドン、ドンドン、ドンドン!


赤い霊気が虚空に欲界の門を描き出す。契約した領主の呼び声に従い、門が開き。ギイイイ!


上から見下ろしていた「マッドハッター」の巨大な頭が、くるりとこちらを向いた。


[敵が強い警戒を示しています!]


[注意!幻魔種「マッドハッター」が最後の攻撃を準備します。]


「バカだな。こっちはウォーミングアップが終わったぞ。」


門の隙間、真っ赤な眼光がギラギラと光る。「領主」の許可が下りるのを今か今かと待ちわびる闘鬼たち。


血の味で生臭い奥歯をギリッと噛み締める。ファン・ホンは躊躇なく彼らの足枷を断ち切った。


「行け。」



キャアアアア!



絶え間なく闘争する修羅道の再臨。


ズタズタに引き裂かれる「マッドハッター」を見つめながら、ファン・ホンは顔を下げた。永遠に続くかと思われた墜落が終わろうとしていた。


ようやく見える床、そして……「勝利の鐘」。


相変わらず現れたクリスタルの鐘の姿に、どうしようもない笑みがこぼれる。毎回経験するが、全く慣れないこの気分。


しかし、また絶対に逃れられない—


ファン・ホンは爽やかに笑った。


「くそ、会いたかったぜ、このクソバベル野郎!」



《勝利の鐘が鳴り響きます!》


《勝者に星々の加護を!》


《バベルの塔48階攻略に成功しました。》




* * *


[おめでとうございます、韓国!]


[バベルの塔—48階クリア!]


[ギルド「黎明」が勝利の鐘を鳴らします。]


[Loading ■□□□□ 20%]


[バベルの塔—国家「大韓民国」チャンネルのアップデートを実施します。]


[次の階の解禁のため、アップデート点検に入ります。点検中は塔に入場できません。]



……チャンネルアップデート?


唐突な通告に戸惑ったのも束の間だった。前回のサーバー点検もそうだが、最近のバベルは全く予測不可能だ。


もちろん予測したからといって、どうにかなる相手でもないのだが……。



「それにしても、もう攻略か……?本当に早いな。」


先日、ギルドの方で47階を攻略してから、わずか3日しか経っていない。


理由はよく分からないが、最近になって最上位ランカーたちの攻略に急激にスピードがついていた。


おかげで周辺国では、お前ら何か企んでるのか、良い霊薬を手に入れたなら分け合おうぜ、などと大騒ぎだった。


チャン・イルヒョンはため息と共にチョコレートラテのグラスを置いた。


認証ショットに可愛いミルクの泡がついた。見てはいけないものを見た周辺の学生たちが驚愕してざわめく。


「何あれ、コンセプト?見てて気まずいんだけど。」


「カフェも入れ替えとかしないとダメなんじゃない?視線強奪ヤバすぎ。うちのパパと同年代くらいなのに、マジか。」


「そうだよね。サスペンダーとかありえない。入れ替えじゃなくて、顔面入れ替えしてやりたい。」


「ひゃあ!びっくりした!ど、どなたですか?」


「……そこの人。仲間じゃないふりするのはやめて、こっちに来てください。」


「そこの帽子を被ったショートカットの学生さん。そうです。知らないふりしないで、三浪生さん、そちらですよ。そちら以外に誰がいるんですか!」


チッ。


自然に偽装していたキョン・ジオが、とぼとぼと制服を着た学生たちの間から歩いてきた。


手首には適当に引っ掛けたショッピングバッグがぶら下がっていて、今日も相変わらず楽な格好……あれ?


「珍しくちゃんとした格好じゃないですか?前回みたいに変装したわけでもないし、最近は出勤する時もジャージで行ってると、汝矣島で噂になってますけど……


「噂じゃなくてストーカーだろ。」


黒いニットトップスにベルトまでしっかり締めたチノパン姿のチャン局長をじろじろとスキャンした。


「おじさんは何なの?3行以内で釈明お願い。外で見てて恥ずかしくて逃げ出すところだった。」


「……こんな人通りの多い場所で会うことになったので、仕方ありませんでした。ジオさんだけが身分を隠さなければならないわけではないんですよ。こちらも毎日ニュースに出ている人間なんです!」


「ふーん、なるほどね。コンセプトはどこだ……マリオ?」


「博士……いえ、結構です。」


チャン・イルヒョンは慌てて上着を羽織り、サスペンダーを隠した。何も考えていなかったが、急に恥ずかしくなった。


学生たちで賑やかな新村のフランチャイズカフェの中。


最初はなぜこんな場所を選んだのかと思ったが、彼らが話をするにはかなり適切に見えた。埋もれるにはちょうど良かったから。


「帰国されてから10日ちょっと経ちましたよね?この間、色々と大変だったようで……かなりお忙しかったでしょう。」


ジオがそっけなく答えた。


「私の仕事じゃないし。」


「そうですか。」


チャン・イルヒョンは苦笑した。


「中国側とは歴史観を整理するという線で終わりにしようと思っています。実はこれだけでもかなりの利益です。これ以上関わらないだけでも、面倒なことは減るでしょうから。」


「ふーん。」


「しかし、おっしゃっていたトン・ヨハンの赦免問題は……やはり難しいようです。あちらが非常にナーバスになっているので。申し訳ありません。」


「別に。何か欲しいものがあるか聞かれたから、とりあえず言ってみただけだし。気にしないで。結局、家の問題は自分たちで解決するのが正しいし。」


「それなら幸いですが……


あっさりと大丈夫だと言うので、用件も簡潔になった。


仕事の事後処理過程の報告。


このような場を持つたびに、ジオは少し面倒くさそうにしていたが、チャン・イルヒョンは考えを曲げなかった。


少なくともあなたが率先して国がどのような利益を得て、またどのような方向に向かっているのかくらいは知らせるのが正しいから。


彼のこの考えは、キョン・ジオが幼い頃からずっと変わらなかった。


「おじさん、話は全部終わったの?」


「あ!それが、ジオさん。」


立ち去ろうとするジオをチャン・イルヒョンが慌てて引き止めた。事の顛末は虎とキョン・ジロクを通じて聞いた。


ジオが深く被ったバケットハットを人差し指で軽く持ち上げる。普段と変わらず無表情な顔。


しかし、長年の側近であるチャン・イルヒョンは、見えているものが全てではないことを知っていた。


「本当に……蔚山には行かれなくても大丈夫ですか?」


真昼のカフェ。


キョン・ジオは制服を着た学生たちがやけに多いカフェの中をざっと見渡した。


もしホン・ダルヤが生きていたら、ちょうどあの辺りにいただろう。


「……チャンおじさん。」


「世の中は本当に広いですね。最近、つくづくそう思います。世の中はもともと広かったのに、不思議と。」


「ジオ、それはあなたの責任で……」


「悩み中です。」


言葉を遮りながら、ジオが再び帽子を深く被った。ショッピングバッグを手に取りながら軽く失笑する。


「結論はいつも通り、私が出します。じゃあ、これで。」


「……え、どこに行くんです!」


「お見舞いです。」


ひらひらと手を振りながら出ていくキョン・ジオ。その後ろ姿を見て、チャン・イルヒョンはここが某大学病院の近くであることを思い出した。




* * *


「10……何階だっけ?」


あれこれボタンを押したジオが、エレベーターの中のモニターを見上げた。ランキングニュースが流れていた。


一週間のランカーの現状と順位変動を知らせるニュースとして、視聴者層がかなりしっかりしている放送だ。


ジオはチャンネル表示の下の弔いのリボンアイコンをじっと見つめた。一段階ずつ上昇した1番チャンネルのランカーたちの順位も。


[あなたの聖約星、「運命を読む者」様がチャン・イルヒョンが間違ったことを言ったわけではないかと、様子を伺っています。]


[ホン・ゴヤもホン・ダルヤも、どうせ死が間近に予定されていた者たちだったと囁きます。]


「それでも、モヤモヤするんだから仕方ないだろ。」


知っている人の死が与える重みとは、そういうものだった。


まだホン・ゴヤが淹れてくれたお茶の味や、ホン・ダルヤの炎のような瞳が鮮明なことを考えると、なおさらだ。


「だから一人で島のように生きる方がマシだってことだったのに。」


蔚山ホン家を急襲した者たちの正体は明らかにされなかった。


目撃者たちの証言を総合した結果、国際テロ組織である〈解放団〉の仕業だと推測したが、彼らの目的が何なのかだけは全く分からなかった。


……までがマスコミに明らかになった内容だが。


回帰者ペク・ドヒョンは暗い表情で告げた。


「おそらく……ホン・ヘヤを排除する目的だったのでしょう。」


ホン・ヘヤの暗殺。


念のため安全装置までして行ったが、力不足だった。まさかあの「マッドドッグ」が自ら出向いてくるとは、誰が予想できただろうか。


たかが高校生の男の子一人を暗殺するために。


「なぜ?E級をわざわざ必死に消す理由があるの?」


「……それは。」


ピンポーン。


「49階が開けば、ジオさんも分かるようになるでしょう。前回のように進むなら。それをそちらがどうやって知っているのかは分かりませんが……。」


「すみません。ちょっと入ります。」


「え?13階もう押されてるね。」


わらわらと乗り込んでくる介護人の群れ。ジオは帽子を深く被り、隅に避けた。


「あら。でもジフンママ、顔色が悪いわね。すごくピリピリしてる。子供の世話は大変?」


「いいえ……そういうわけではなくて。」


「言わないでください。ジフンの隣のベッドの患者のせいじゃないですか。仮病患者みたいだけど、とんでもないクレーマーなのよ。」


「違いますよ。ひどく怪我をしているようでしたよ。ハンターだとか……


「最近のハンターたちは、政府の支援金をもらうために、ちょっと怪我しただけでも、こんなに大きく!怪我したと大げさに言うのを知らないんですか?チッチッチ。若い女の子なのに、口も悪いし。口を開けば悪口ばかり。」


「悪い人ではないんですよ。ちょっと口が悪いだけで。保護者の方はまた、とても親切で優しいんですよ。」


「ああ、あのすごく有名なギルド長に似ているって人ね?」


「ええ。最初は同一人物だと思って、サインまでお願いしちゃいましたよ。恥ずかしい……。よく見たら違うと確信しましたが。」


「どんな感じ?」


「それが……哀れというか、いじめられているのを見ると、思わず同情してしまうというか……


ピンポーン。


ドアが開き、おしゃべりしていた介護人たちがビクッとした。聞かないふりをしながら熱心に盗み聞きしていたジオもドキッとした。


ジフンママの評価は正確だった。


「……ジオ?」


すごく有名なギルド長。


〈ヘタ〉の白鳥がぼうっとそこに立っていた。目の下と頬がくぼんだ、やつれた姿……ちょっとかなり哀れな介護人の姿で。


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