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120話

「……。」


しばらく固まっていたドゥン・リーワーが、鋭い目で通訳を睨みつけた。


「[今、ちゃんと通訳したのか?] 」


「 [そ、それが……。] 」


「[ちゃんとやれ!] 」


「[合っています、ドゥン大校。] 」


パッと、ドゥン・リーワーの首が回った。


キョン・ジロクの隣、通訳担当として同席したナ・ジョヨンだった。イントネーションが完璧な標準中国語で、ナ・ジョヨンがもう一度言った。


「[貴官が理解した通りです。黄海のクラーキョンは、来る途中に我々『韓国』側で既に処理しました。] 」


正確には、うちのキングがやったんだけど。


中国語が分からず、(一行に教えてもらった)「ハングオ」だけをぶつぶつ言っていたジオのぼやきが思い出される。ナ・ジョヨンは口元を撫でて、笑みを隠した。


隣でキョン・ジロクが斜めに顎を傾けた。不思議だな。


「怪獣出現の可能性があるから注意しろという案内文は、中国側から先に送られてきたと記憶しているが。なぜ驚く?」


会うとは少しも予想できなかったから?それとも……。


「もしかしてそちら、自分の国で何が起こっているのかも全く把握できていないのか?」


「言葉を選んでください……!」


「ドゥン大校。」


「……。」


「特に大きなことも、意図したことでもありませんでしたが、結果的にはこちらから先に助けになった格好になりましたが、どうしますか?」


事務的な眼差し。ドゥン・リーワーが唇をぎゅっと噛み締めた。


「一体どうして……?」


認める。慌ただしい内部事情のせいで、全ての情報が彼女を通るわけではなかった。


だからその点は一旦置いておくとしても、既に会ったとは。さらには処理まで終わったとは……。


韓国ハンターのレベルを知らないわけではない。しかし、これは予想をはるかに上回った。


推定1.5~2級魔獣クラーキョンは、安易に処理が不可能な相手だ。怪獣自体が与える難易度もあるが、地理的背景のせいで。


旧時代の原発と海洋研究所。


一つ二つ魔石エネルギーに代替しているとはいえ、依然として多くの原発が黄海沿岸に残っていた。


下手をすれば、すぐに原子力事故につながりやすい。


速いスピードと圧倒的な戦力差を前提としない限り、対敵自体を悩まなければならない敵だった。


しかも……。


大陸は広大で、バベルは冷酷だ。一つの都市だけにずっと気を配るほど、現在の中国のゲート状況は余裕がなかった。


「だから上も焦って、ますます無茶をするんだろうけど……。」


時間稼ぎ用として投げた会心のカードが、こんなにもあっけなく折れるとは。


しばらく無言で彼らを見つめていた若い英官、ドゥン・リーワーはかろうじて口を開いた。


「……証明は可能ですか?」


「すぐに海に行ってみれば分かるはずだが。それとも……もしかして、こんなものが欲しいのか?」


シャッー。


キョン・ジロクが手を握ったり開いたりした。


インベントリ召喚。薄い青みを帯びた透明な水晶が、彼の手のひらの上に浮かび上がった。


魔石。濃い青色から1級になるほど透明になる特性上、一目見ても2級以上に準ずる魔石だった。


文字通り、言い値で売れる最高級の魔石。


ドゥン・リーワーの目に一瞬、欲望がよぎったが消えた。目の前の男は、彼女が安易に欲を出せる相手ではないので。しかし。


「譲るくらい、別に難しくありません。」


「……!」


「俺には有り余るほど魔石があるし、どうせそちらの領海から出たものだから。ただし。」


「……。」


「その笑えるテストの結果が少し気になるな。もし黄海のクラーキョンでこちらの本気を確認したのなら、その次は何を要求するつもりだったんですか?」


手の中で転がる魔石の光が眩しい。


ドゥン・リーワーは生唾を飲み込んだ。いつの間にか部屋の中の空気が完全に変わっていた。


陰惨な……「森」の気運だった。


低い声、冷たい眼差しでキョン・ジロクが失笑した。中国に得たいものがあって来たんでしょう、か……。


「私がこの国に何をしに来たのか、『本当に』知らないんですか、ドゥン・リーワー大校?」


タン。


魔石が消える。ドゥン・リーワーが凍り付いた。


そこで初めて、もう一つの彼の別名が思い出された。神の槍、そして……神殺しんさつの槍、キョン・ジロク。


「おい、中国人。」


「……。」


「俺の血筋でふざけるのは、ここまでだ。」


エジプトのカイロで単身で太陽の破片を残酷に討伐し、聖槍「ロンギヌス」の主になった者。


金色がかった目で彼が歯を剥き出した。


「このバビロンのキョン・ジロクと『本気』で相手をしたくないなら、そのガキを今すぐ俺の目の前に連れて来い。」


くだらない手でグズグズ時間稼ぎをするな。


「[……こ、生意気な韓国人が!]」


殺気に慌てた軍人たちが、慌てて銃を取り出して構えた。全て装填された銃。


しかし、その引き金が引かれることはなかった。


「[う、うわああ! わ、私の手!]」


皆が敬意を込めて言った。未成年のキョン・ジロクが遠いエジプトで一人で手柄を立てたと。


いや、違った。


キョン・ジロクは一度も一人だったことはない。


彼の後ろには常に、彼と背中を合わせているもう一つの背中があった。


巨大な世界を足元に、狭い関係を視野に入れた乱暴な支配者の背中が。


世界の王、キョン・ジオが冷たく彼らを凝視した。


凍り付いた銃と手を掴んだ軍人たちが、わっとひざまずいた。


酷寒の氷華が、手の施しようもなく彼らの全身に急速に広がっていった。


ガバッと立ち上がったドゥン・リーワーが、唖然とした顔でその場面を見つめた。


「抗魔結界がオンになっているはずなのですが……! 」


「 [一体全体どういうこと……!] 」


手出しが過ぎるのではないか!


キョン・ジロクを振り返ったドゥン・リーワーが、ぎゅっと拳を握った。誰の仕業なのか、皆の視線を見れば分かった。


ずっと気に障るほど、そっけない表情でこちらを見ていたあいつ。あの男だった。


「[……神槍! 本官は確かにあなたの味方だと言いました! あなたと友達になりたいと! それなのに、そんな、そんな……!] 」


ドゥン・リーワーは憤慨して叫んだ。


「[そんなロシア人に騙されてこちらを無視するなんて!] 」


…….


……え?


……え?


え? ちょっと待って、何て?


韓国人全員が戸惑おうがどうしようが、ドゥン・リーワーはただ悪に染まってわめき散らすばかりだった。


「 [卑怯な西側諸国と親しくしているとは聞いていたが! 本当に失望した! 東洋の誇りはどこに売り払ったんだ! 同じアジアの同志同士で助け合って生きていくべきなのに!] 」


いや、あの……。


中国語が分からなくても、「ロシア人」という単語とニュアンス、ボディーランゲージだけを見ても内容把握は十分に可能だった。


そしてモゴモゴ、たどたどしくナ・ジョヨンの通訳まで終わると、言葉を失って片方に向かう目。


その視線の中央。


ジオルスキ(国籍:大韓民国/ソウルっ子)がゆっくりと人差し指を立てた。自分自身を指しながら。


「まさか……私?」


……コクリコクリ。


「本当に、私ですか?」


コクリコクリ。


「……ふむ。死ぬ日が近いと目も霞むというが、哀れ者達め。このキング・ジオがすぐに楽にしてやる。」


「ち、落ち着いてください! ジオさん! 今のあなたの姿は外国人なのは間違いないじゃないですか!」


「うっ!ジョジョさん、ジョジョさん!人種差別が悪いんですよ!」


口だけは落ち着いている自称「韓国」様がスキルを始動し、秩序善たちがくっついて引き止めること数分。


騒ぎが収まると、スイートルームは一時に静まり返った。


立っている者たちは、韓国側4人とドゥン・リーワー、そして彼女を守っていたヤン・ガンだけ。


「予想外のめちゃくちゃさだけど……。」


対話するには、むしろ適切になったかもしれない。


友達、「友達」か……。繰り返して言及された単語一つが、妙に引っかかる。キョン・ジロクは首の後ろを揉みながら言った。


「どうやら……。」


「……。」


「中国首脳部の方が二つの派閥に分かれたという情報が本当だったようだな。」


「……。」


「『俺』を置いて。」


それにヤン・ガンが答えた。なかなか流暢な韓国語で。


「やはり、ご存知でしたか。」





* * *


「これだけやってくれればいい。できるだろ? そうすれば、今回こそ本当に君が望むものをあげるよ。」


「ハ。」


「別に難しいことでもないじゃないか、ダーリン。その恐ろしい力では。」


血と埃。汚れた頬で彼女が嘲笑した。


「こんなことまでさせて、あんたが私を愛していると? 気持ち悪いからその戯言はやめてくれ。」


荒々しい言葉とは反対に、声には力がなかった。疲れているようだった。


彼は躊躇せずに、その汚された頬に自分の唇をつけた。丁重に、優雅に彼女の前に持てる全ての膝を屈しながら。


「愛している。自分自身よりも、誰よりも。」


「……。」


「毎瞬間、こうして絡み合った君と私の運命を憎むほどに。そして……毎瞬間、こうしてでも出会えた私たちの運命に敬意を払うほどに。」


「……。」


「ただ……ごめん、愛しい人。」


「……クソ野郎。あっちへ行け。」


「私はそんな君よりも、この脆弱な世界を愛しているだけだ。」


許しを請わない。


絶対に私を許さないでくれ。


ただ、私たち一緒に終章に向かうことを願うこの気持ち悪い愛さえ、愛と呼べるように……。


どうかそれだけは私に許してくれ。


「……3月、13月! おい、『キッド』!」


「……起きた。マッドドッグ。」


「ちくしょう、一体いつまで寝てるんだ? ここがお前の棺桶か? 忙しいってやつが何……。あ? おい……、おい。お前、泣いてるのか?」


キッドは目元に重い腕を乗せた。ひどく眩しかった。


「夢」を見るといつもこんな感じだ。


継承された記憶が完成していくたびに、よく経験する過程だった。


俺がひどく起こしたからかと、マッドドッグが自分の行いを気にして様子を伺った。今生にも変わらず純粋な兄弟を見て、キッドが苦笑した。


「いや、そんなことない。」


「そうでなければいいけど! 運の悪い悪党のくせに、体は貴族みたいに紙みたいで!」


「何を言ってるんだ。この程度ならすらっとしている方だろ。ああ、俺を心配してくれてるのか、ハニー?」


「心配なんかするか! 他人を卑怯に殺せば殺したで、どこで死なない悪党を俺がなぜ!」


「その悪党行為、お前もやっているということは、ずっと忘れているみたいだな。親愛なる私の兄弟。」


キッドはだるい体を起こした。


歩いていき、窓の外をぼんやりと眺める。捨てられた彼らの土地、無主の土地を。


いつものように太陽がなく、影だけが差す彼の故郷だった。


風が吹く。低く吹く風に、空色の髪が揺れた。


殺風景な死の荒れ地を凝視しながら、キッドが小さく呟いた。


「泣かせたいと思っても、実際に泣くのはいつも俺の方だな……。」


このクソみたいな運命。


マッドドッグが待っている。長年の誓いの「執行者」は、再びいつものように笑う顔で後ろを振り返った。


「さてと。私たちの『トリックスター』は、中国によく馴染んでいるだろうか?」


「まあ、4月のあいつのすることだから……。勝手にめちゃくちゃにしてるだろうな。」


「よし。それじゃあ、こっちもそろそろ出発してみるか。」


韓国。親愛なる王が席を外した、長きにわたる災いの始まりの地点へ……。


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