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108話

「もしご興味がおありでしたら、あなたのユンが喜んでお見せすることもできますが……。」


「結構だ。」


冷たい風がピュー。


ジオは冷たく拒絶した。少しの余地も与えない様子だった。


【聖約星、「運命を読む者」様がどこかでよくある手口だと政府を嘲笑う正室のようにふんぞり返っています。】


「叩き落とすわけではないが……。」


受け入れる理由も特にないし。


よくキツネの妖怪を指して妖艶な存在だと言う。人を惑わして食い殺す怪物だと。


実際に数百年を生きて霊物になったキツネたちが聞けば、かなりむかつく話だった。


彼らの最終目標は神仙もしくは神霊。


ひたすら玉を育てるのに忙しいキツネたちが、人間に気を遣う余裕などあるはずがない。


しかし、目の前の「メグ」……神仙挑戦で光の速さで脱落したこのキツネ「ユン」だけは例外。


「お前また幽霊を見せてやるとかほざくだろう。さっさと失せろ。こら。」


「ご、ご主人様……。」


メグが涙を浮かべた。


可憐で清純そのものだったが、ジオは全く相手にしなかった。あの美しい外見に騙されてはいけない。


よこしまなものを閉じ込める「ローサ殿」。


(いくつかの例外を除けば)ここにいる大多数は人間に有害だったり、または害を及ぼしたりしてウン氏に捕まってきた奴らだった。


メグもまた同じ。


愛する夫を失った悲しみで逆上してしまった堕落キツネ。


外見はまともに見えるかもしれないが、昔々にとうにイカれてしまった狂気の巨大妖怪だ。


ローサ殿内でも最も残酷な悪質だったが、10数年前(本人の言葉によれば)「運命の相手」に出会い更生した。


もちろんここで言う「運命の相手」とは、当然……。


メグがジオの手にそっと自分の頬を寄せた。


「どうしてユンにだけこんなにつれないのでしょうか……もちろんそんな姿さえ少女の胸をときめかせますが……。」


「千年もののババア、何してるんですか?ジオは二十歳ですよ。」


「ちぇっ!ユンがこんなに可愛くて若いのにそんなひどいことを言うんですか?憎らしい。」


言葉では憎らしいと言いながら、さらにぴったりとくっついてくる体。


あー、どこを擦り付けてるんだ?ジオもそっけない顔でメグの頬を容赦なく押し退けた。


キョン・ジオ固有のタイトル。


「世界の王」。


生まれ持った宿命を意味するこのタイトルの中には、「サバ世界の王」、「人間の王」、「韓半島の王」などの付属タイトルも付いている。


平凡な人間はこの意味に気づきにくい。


しかし、「天機」を読み、「流れ」を感じる存在、超越的な強者であるほど話は違った。


混沌とした世の中で誰よりも鮮明な者。


不完全だった世界が誰によって初めて完全になったのか、見るや否や一目で分かったからだ。


幼いキョン・ジオが邸宅に足を踏み入れた途端、ローサ殿の罪囚全員がその前にひざまずいた。


「あなたをお待ちするあまり、この長い歳月をさまよったようです……。」


子供の足の甲に額を当ててオドゥクソニが深く嘆息した。


まるでロマンスファンタジー小説の中の人間ならざる男性主人公のようなセリフだったが、彼らの心情は本当にそうだった。


そうして自発的に服従した、王の最も熱烈な追従者たち。


その中でもメグは特にひどかった。


強力な存在感にうっとりしたあまり、この狂ったキツネは自分の妄想まで丸ごと被せてしまう境地に達したからだ。


メグはジオが自分の死んだ恋人の生まれ変わりだと固く信じていた。


おかげでどれほど執着が至れり尽くせりなのか……。点数を稼ごうとしてこれまで犯したことの数々を考えると頭が痛い。


亡霊召喚もその一つ。


「クソ……詩的死者の意味って一体何……?葉に吹く風にも苦しみ……風が吹くのに一体なぜ苦しむの?クソ、お前は葉っぱか?」


「あら、お知りになりたいですか?聞いてみましょうか?やっ!」


「……?……ひ、ひえっ!」


「さあ、早く説明して差し上げてください。ご主人様、質問は何でしたっけ?葉っぱ?」


「あ、いや!いえ、いいです!どうかお帰りください、どうか……申し訳ありません。大、大韓独立万歳!」


中学校の時、問題を解いていて行き詰まって少し文句を言ったところ、いきなりその詩人を呼び出したり。


「バンビバンビ、この漫画の次の巻貸して。」


「何?21巻?ないよ。その作家ずっと休載中だよ。」


「えー、何なの?続きが気になって死にそう!」


「ふふん、ユンがお手伝いできるかもしれませんが……。」


「……今回は死んだ人でもないのにどうやって?」


「殺して聞いてみれば簡単じゃないですか?」


「やめて!」


休載中の作家を殺して連れてこようとしたり。


どうせ今回も分かりきっていた。


「あの世に行ったパパを呼んで直接聞いてみようとするだろう。」


さすが妖怪と言うべきか、考え方がバラエティ豊かだ。


人道的に故人はゆっくり休ませてあげよう、どうか。まとわりついてきてドタッと倒れたメグに向かってジオがうんざりしたように舌打ちした。


「じっとしてろって言ってるだろ?鬼主キジュを呼ぶぞ。」


「……わ、分かりました。」


鬼主キジュ、虎はキツネの天敵だ。


彼の名前にメグが華奢な肩を震わせた。


「で、でも……しく。」


「ヘ、ヘジマヌンは凍え死ね。コックリさんをするなら虎のガキを呼べ、お前は使わないって言っただろ、言わなかったか?」


「ちょっと、お姉さん、それでも足は……。」


慎重なキョン・グミの制止。


ああ。


ジオはそこで初めてメグの背中を踏んでいた足を退けた。メグがぶるぶるっと身を震わせる。


【聖約星、「運命を読む者」様があの狂った変態キツネがまさか今残念がっているのかと、強力な競争者の出現に驚愕しています。】


【きょ、競争者だなんてバベルこの野郎マジでどうかしてる、ジャギヤあれはお兄様が書いた言葉じゃないと机をガンガン叩いています。】


「全員黙れ……。」


「起きて。用件が終わったなら一秒やるから消えろ。」


「ち、ちょっと待ってください、ご主人様!今回は誰かを連れてくるなんて絶対にそんなことありません。そんなこととは全く関係のない、本当に良い方法なんです!あなたのユンを信じてください!」


わっと、ズボンの裾に取りすがるメグ。玉のような涙が儚げな頬を濡らす。


美貌一つで一国を泣かせると言うキツネの妖怪らしく、切実なすがりつきがドラマのワンシーンのようだった。


視聴者モード装着したキョン・グミがつぶやいた。あ、あれは……。



「見捨てられる後悔もの?」


「……一度聞いてみようか?」


「ダメです。あいつのやることなんて分かりきってる。」


「な、なんてひどいクソ男なの。美人ヒロインがあんなにすがりついているのに!」


「……?」


「あ、ごめん。つい。」



正気に戻ろう。


ハッと没入から覚めたキョン・グミ(ロマンスファンタジーウェブ漫画の愛読者)がジオの視線を気まずそうに避けた。


それでもデタラメの割にはそれなりに効果があった。末っ子の言うことなら寝ていても飛び起きるシスコンがメグを見下ろす。ふむ。


「まあ、聞くだけなら……。」


「おい、言ってみろ、その方法。」


電灯に反射した涙のせいだろうか?


メグの目が一瞬輝いた。すぐに消えたが。


「それがですね……。」


袖で口を少し隠すメグ。やがてそっと下ろす。


上気した頬でメグがジオを見上げた。ゆっくりと唇を開くと見える、赤い舌の上の……。


「……キツネ玉。」


キツネ妖怪の宝珠。


きらびやかな五色の玉をじっと見つめていたジオがゆっくりと視線を上げる。


そのまま見つめ合うとメグが笑った。


にっこり、きれいに目を細めて。




* * *


デーン、デン。


バベルネットワーク


【おめでとうございます。韓国!】


【バベルの塔━45階、46階クリア!】


【ギルド「バビロン」が勝利の鐘を鳴らします。】


【国家大韓民国━バベルの塔47階が解禁されました。】



「イカれてるな。」


虎は短く評価した。


国中に鳴り響く鐘の音。


まるで何かの脅しのように聞こえた。


私が誰なのか、またどんな意味なのか、はっきりと聞けと言うキョン・ジロク式の宣言。


全世界が彼の名前で騒がしい中。


一言の釈明も、意思表明もなかったが、そうしてキョン・ジロクは誰よりもランカーらしく自らを証明していた。


自分の名前で大韓民国の鐘を鳴らしながら。


「若いと言うべきか……。」


すごいと言うべきか。


「必ず何かやらかす目つきだと思ったよ。」


早朝、邸宅を出る時から様子がおかしいとは思っていた。平然を装っていてもキレているのが丸見えだったから。


それでもこれはちょっとひどいな。


顎をさする虎の前で青衣を着た童子、〈銀獅子〉4部隊長コグィが首をかしげた。


「虎よ、元々塔ってこんなに早く壊れるものだったか?一日も経たずに二つの階だなんて。」


「連携シナリオですからね。確かに無理をしているようですが。」


また倒れるんじゃないかと心配だ。数年前、 覚醒したばかりのキョン・ジロクがそうだったのに。


「ほほう……。大きくなったな。赤ん坊でも雄鹿だと言うことか。自分の仲間を傷つけると怒ることも知っているとは。」


コグィが舌なめずりをした。ちょっと待てよ。


「TVに出ていたあの子のせいだろう?こうなったらこの童子様が行ってさっさと食っちまうのはどうだ?」


「どうぞ。本気で『あの方』の逆鱗に触れたいのであれば。」


「……エググ。」


何も言ってないと言うようにとぼけるコグィ。虎がフッと笑った。


「バランスに敏感な性格をご存知でしょう?」


無秩序の中の秩序だと。


そうは見えなくても、意外と気難しい方だった、「あの子」は。


チート、最強、キング、冗談めかして口にするが、強迫的になるほど徹底した線引きを持っているから……。


一人の人間に依存する世界がどれほど危険なのか、誰よりもよく知っているからだ。


当の本人からして、最後まで見守ってからでないと動かない方なのに、ましてや他の者がどうだろうか?


人間ならざる者たちがバランスを無視して勝手に暴れたら、すぐに鉄槌が下るだろう。ジオを思い浮かべる彼の目元が優しくなった刹那。


「とりあえず放っておき……。」


「ん?どうした?」


余裕を持って続けていた言葉が途切れる。


笑みも一瞬にして消えた。虎はそのまま立ち上がりドアを蹴破った。


「気配が消えた。」


居間にいた二人の姉妹。そして……虎の足取りが早くなる。


しかし、階段を降りてきた時にはすでに遅かった。


「……。」


ザー……。


散らばっている紅色の霧。


自分の存在を隠すキツネの術だった。虎は険しい表情で床を押さえた。


「……【急急如律令きゅうきゅうにょりつりょう】。」


「命じた通り速やかに実行せよ」。


フッ、浮かび上がる青色の陣。


下から吹く風に虎の髪が揺れた。重々しく降りかかる鬼主キジュの律令。


魑魅魍魎が動き出す。


王を連れて逃げた、あやしいものを追えと言う厳命に従い。




* * *


そしてキツネに連れ去られたそのキングは現在……。


【インスタンスダンジョン - 「キツネ玉狐界玉こかいぎょく」に入場しました。】


【所有者が存在するダンジョンです。】


【ダンジョンマスターの基本設定によりアバターモードが適用されます。】


【/モード】アバター - 一部のステージで適用される分身モードです。本神を基盤とした仮想肉体で活動することになり、すべての能力値が初期化されます。/


「えええ……。」


天上界の満レベルからどん底の初心者に転落。


錆びた鉄剣をぶら下げたニュービージオがぼうぜんとした。な、何だこれ?


私の本キャラ返してよ……。


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