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105話

* * *


がたっ。


窓枠に手をかける音。


ジオは軽々と窓を飛び越える弟、キョン・ジロクを見やった。


腰掛け、靴をポン、ポンと脱ぎ捨てる。部屋の中で靴を履くとご先祖様が「こら!」とおっしゃるから。


「くそったれじじいども。ぼろぼろにしやがって。このジャケットがいくらするか知ってて。」


「……うわ。泥棒だ。泥棒野郎だ。」


「うるさい。」


ワシャ、クッキーをかじりながら無表情で叫ぶキョン・ジオ。


だらしなく寝そべった姿から、横に抱えている最高級魔力清浄機まで。まるで仙人暮らしだ。


「まったく、自分の家だと思って。」


いつどこでも相変わらずの様子なので、さほど驚きもしないが……キョン・ジロクはどさりと倒れるようにジオの隣に横になった。


「……心配した俺が馬鹿だった。この家に来た初日から家の主みたいにしてたやつを。」


「え、私がいつ?」


「は、昔ここに来るなり、後ろ手に組んで『こっちへ来い!』って叫んだの覚えてないのか?マジで狂ってると思った。」


そ、そうだったか?


そもそも、迷惑をかけたやつは覚えてなくて、迷惑を被ったやつだけが覚えているものだ。ジオは視線をそらした。


「いいよ。そんなこと言い出したらきりがないだろ?お前の迷惑行為の歴史は俺のバベルの塔の歴史より長い。」


「う、うちのバンビ。お姉ちゃん心配した?」


「するに決まってるだろ?」


キョン・ジロクが鋭く言い返した。


元々そういう風に生まれた姉だということはわかっている。誰よりもよく知っている事実だった。


それでも時々、ひどく無神経だと感じるたびに、どうしようもなくうんざりした。


繊細で幼い私の鹿。


ジオはぼんやりと腕で目を覆ったキョン・ジロクを見つめた。乾いた唇がひどく荒れていた。


「……なあ。私は絶対死なない。バンビこそ気をつけろ。」


「うるさい……。お前がそう断言するたびに、お前のことが本当に嫌になるから。世の中に100%なんてないんだから。お前が神様かなんかか?調子に乗るな、キョン・ジオ。お前は人間だ。刺されば血も出るし、怪我をすれば痛いし……ああ、もういいや。何言ってんだ。」


「泣いてる?」


「黙れ……。」


ジオは身を起こした。腕を引っ張って下ろすと、感情でひどく歪んだバンビの目。


神経質そうに振り払ったキョン・ジロクが再び顔を覆う。ジオは黙って彼の胸に顎を乗せた。


硬い外皮の下、常に同じリズムで鼓動する心臓の音。


今日は少し速い。幼いバンビが泣いている音だった。


「どうしよう?」


キョン・ジオは一度もキョン・ジロクをうまく慰めたことがない。いつも下手だった。幼い頃からずっとそうだった。


泣き虫バンビがすすり泣く時は、一歩離れてぼんやりと見ていることしかできなかったから。


止まるまでただ待ちながら。


[あなたの聖約星、『運命を読む者』様が大丈夫だと、今あなたが考えている通りに言えばいいと優しく囁きます。]


そんなはずはないが、風が背中を押すように感じられた。ためらっていたジオが唇を動かした。


「……ごめん。」


はっと、キョン・ジロクの肩が震えた。


ゆっくりと現れた顔は、今何を聞いたのか疑っているようだ。


「……お前、キョン・ジオか?」


こいつ、まだ具合が悪いのか?


「もう一度言ってみろ。」


嫌だ。ジオは貝のように口を閉ざした。


心から謝ったのは、虎の肩を切り裂いた幼い頃以来、ほとんど初めて。


何でも自分のせいのように感じ、申し訳なくばかり思っていた幼年期から抜け出したので、もはや口に出すことすらしなかった。


そしてその事実をキョン・ジロクが知らないはずもなく……。


「なんでまた泣くんだ?謝っただろ。」


「なんだと、クソ。泣いてねえよ。」


引き寄せて抱きしめた体。


キョン・ジロクは小さな肩に額を埋めた。本当に泣いたり、そんなことはない。ただ……。


人は、長い冬の終わりに春の兆しと向き合うたびに、感傷的にならざるを得ない弱い動物ではないか。


新緑の森の匂い、そしてその中にほのかに混ざった花の木の香り。


春の森。


バンビのコンディションが最高に柔らかくなる時にする香りだ。ジオは息を深く吸い込んだ。


キョン・ジロクが小声で駄々をこねた。互いにだけ聞こえるように。


「マジでびっくりしたんだぞ……。体は血まみれだし、目の前で倒れるし。怖くてこれから塔に行こうなんて言えるか?」


「言うくせに。」


「あー、クソ、もちろん言うけど。コスパがヤバいじゃん、一回で6個がマジ?」


もう、ふっと笑ったりもする。


同じ速さで戻ってきた心臓の鼓動。ジオは安心して体から力を抜いた。


「なくなった記憶は?まだそうなの?」


「うん。」


「もしかして、お前の聖約星が触ったんじゃないの?昔もそうだったじゃん。今は戻ってきたみたいだけど。」


「ひょえー、バンビ。言ってもないのに全部知ってるんだ。」


「いつになったら言わないとわかるんだ?今更。」


確かに……。納得したジオがすぐに首を横に振った。違う。


「今回はお姉ちゃんのせいじゃない。」


事件発生時、前科のあるやつから叩き潰すのは基本中の基本。


記憶の空白に気づくや否や、ジオもお星様から最優先で叩き潰してやった。


「この役立たず……また私の記憶に手を出したの?」


「[聖約星、『運命を読む者』様が、いや、それは一体何の濡れ衣だと、この兄はマイベイビーの意思でなければ大切な肉体に1ミリも触れないと言って猛反論します。] 」


「[どうして僕の真実の愛を疑うんだと、悔しくてポロポロこぼれた涙はもうすでに漢江だと、悲恋の主人公のように床に倒れます。] 」


「ふざけたこと言ってないで、正直に言いなさい。」


「 [あなたの聖約星、『運命を読む者』様がうーん……まだバベルは早いと思ったんじゃないかと顎を支えます。] 」


「はあ、あのね。このグレートキングジオは謎みたいなの大嫌いなの。大の苦手なの。すごいネタをばらまくふりして意味深にちょっかい出さないで、素直に全部吐き出しなさい。」


「[非情で無道な我が君よ、『世界律』を守るふりくらいはしないといけないんじゃないかと聖約星が情けなく訴えます。一次警告まで受けた立場だから少しは慎まないといけないとぐずぐず言ったりもします。]」


それは本当だった。


慌ててステータスウィンドウを確認すると、運命を読む者の名前の横にぴったりとくっついている一次警告の札。


「あ、いや、これは一体……?記憶が飛んだ間に一人で何かしでかして警告の札が飛んでくるように仕向けたの、この役立たずが!」


「[あなたの聖約星、『運命を読む者』様がウプウプ、ウプウプ言いながら自主的にフィルタリングをかけます。]」


「ふざけないで。これ何次警告まであるの?」


「【何を心配しているのかはわかるが……しなくてもいい。】」


「【たとえお前の意思でも、俺たちが別れることなどありえないから。】」


「……ジオ、寝てる?」


「ううん。でも眠い。」


静かな大邸宅の夜。


昔、ここはジオが使っていた部屋だったが、同時にジロクの部屋でもあった。


すぐに眠りに落ちたジオを見て、キョン・ジロクはゆっくりと目を閉じた。


腕の中の慣れ親しんだ温もり。


塔から出てきて数日が経ったが、ようやく家に帰ってきた気がした。




* * *


企業型巨大傭兵ギルドが概ねそうであるように、〈銀獅子〉ギルドも軍隊体系に似たように部隊単位に分かれる。


全部で13個部隊。


獅子と虎の下に13人の部隊長が存在するシステムだったが……実質的に部隊を責任を負うのは部隊長ではなく、補佐役である13部将たち。


直属の部隊長の顔を見たこともないギルド員が多かった。


彼らもまた疑問を持つどころか、部隊長の空席を見ても大したことではないようにやり過ごすのが常だった。


なぜなら、ただの何かの「象徴」としてしか認識していないから。


オドゥクソニ部隊、イムギ部隊、コグィ部隊、メグ部隊などなど。


今は引退した老獅子たち、彼らのニックネームから取った部隊であるだけに、名誉の殿堂、または永久欠番のような感じで空けておくものだと思っているだけだった。


しかし、名誉の殿堂だとか、ニックネームだとか全部でたらめ。


ロサ戦で最も長く生き残り、強い13妖怪たちが一つずつ担当しているのがまさに〈銀獅子〉の13部隊。


人々と混ざり合うのが難しい彼らの性格のせいで、人間の部将たちに押し付けておいただけで、現役を蒸し焼きにするほど元気そのものだった。


むしろ引退が当然なほど老衰しているのは……。


「ええい。棺桶の匂いがもうすでに家に充満しているな。獅子よ、お前は一体何年生きたと思ってもう死んでいくと言うんだ?」


日当たりの少ない邸宅の応接室。


アームチェアに座ったウン・ソゴンが読んでいた本から視線を離した。眼鏡を鼻にかけた老人からは、一時代を風靡した老将の姿を見つけるのは難しかった。


乾いた咳をしながらウン・ソゴンがかすかに笑う。


「心配するな。私が居なくてもお前たちが勝手に屈服した主人がいるじゃないか。この微力な看守などではなく。」


「うむ、それはそうだな……。考えてみれば残念がる必要もないかも。」


「イムギ、お前!義理のないやつめ!お前が龍になれなかったのは、そのケチな情けなさのせいだ!そんなこと言ったら聞いているソゴンの気持ちはどうなるんだ!」


「むう!こんな生意気な童子を見たことがあるか。も、ものが言えないことはないな!」


傷ついたイムギ老人がぶるぶる髭を震わせたが、青い服の童子はきれいに無視した。


ウン・ソゴンの隣にどさりと座り込み、ああ、と号泣する。


「文忠公の死が近づいた時も、私はこんなに泣いたことはないぞ、ソゴンよ。」


「……これは、童子。」


「しくしく、そうだ。私の気持ちわかるだろ?だからお嬢様にもお前のことをよく言ってやってくれ。私みたいなやつは珍しいから近くに置いておけと。うん?」


「なんて卑怯なコグィ野郎だ!隙間攻略とは!」


一人二人と騒ぎ始める老いぼれ妖怪たち。怪物らしく人間性なんてどこかの犬にでもくれてやったような姿だったが。



「黙れ!」


……。


光の速さで一斉に沈黙。


星がぶら下がった国防部長官が軍隊に現れてもこれよりは騒がしいだろう。


20歳のキングが見せてくれた炎のようなカリスマに感嘆しながらウン・ソゴンが笑った。


「待っている知らせでもあるのか?テレビの前にそんなに近くに座ると目を悪くするぞ。」


「いや、別に。大して。ただ今日友達が出るって言うから。」


「そうにしてはかなり集中しているようだが……。」


言いながらもこちらには振り返らず、じっとテレビ画面だけを見ている様子。


幼い頃、『クレヨンしんちゃん』、『シュガシュガルーン』を待つ時のような姿だったが……ウン・ソゴンも笑いをこらえて一緒に画面を見つめた。




********


[……そういう事情で残念ながら白鳥様は今日お招きすることができなくなりました。申し訳ありません。]


[しかし!残念がるのはまだ早いですよ、皆さん!モナとリザはいつも視聴者の皆さんのために最善を尽くすということをご存知ですよね?そこで、お招きしました、じゃじゃーん!]


[ハイ。]


[まさに、ランキング8位のチェ・ダビデ様!キャー!ようこそいらっしゃいました、ダビデ様!お久しぶりですね!正式に視聴者の皆様にご挨拶をお願いします!]


[他者公認、韓半島最強大韓民国1位ギルド〈ヘタ〉の大長老チェ・ダビデと申します。]


[……自他公認でしょうね。]


[……あ、アハハハ!はい!ダビデ様、その……放送なので足はテーブルから下ろしていただいて。]


「まったく、あのビー玉頭の馬鹿。」




******


「友達か……。」


最近ランカーチャンネルが活気づいていると思ったら、そんな変化があったようだ。


自分に許された時間が短いのが残念なだけ。丸くなったジオの頬を見てウン・ソゴンはそっと微笑んだ。


「お嬢様の友達だと……?」


「そ、そんなはずが。私が作ったお嬢様の友達になれる101個の検証テストは試してもいないのに一体いつ……。」


「ああ!うるさいって言っただろ!」


「あの……可愛い子ちゃん、褒められたくてそう言ってるわけじゃないんだけど、このオドゥクソニ様さっきから一言も発してないぞ。クフフム。」


「だから何。」


「……。」






*******


[う、うわー、本当ですか?6年もいらっしゃったんですか?わ……白鳥様は本当に……うう、このモナは本当に何と言っていいのか……!]


[塔を登るランカーの方々の精神力はすでに人間のレベルを遥かに超越しているようですね。]


[まあ、みんながみんなそうじゃないけど。あの子が特に!格別でとても!特別ではあるよね。正直に言って、私の親友であるあの子が行かなかったら、どうなって……うわああああ!]


[は、はい?親友?]


[あああああ。今の言葉は、なし、なし!へ、編集。チョキチョキ!みんなレッドサン!]



チッ。


冷たい可愛い子の反応に拗ねたオドゥクソニがむっくりと立ち上がった瞬間。


彼が踏んだリモコンのせいでチャンネルが変わったのは一瞬だった。


やがて画面に映るあるニュースの一場面。


トローリングに憤慨する暇もなく、画面の中の赤い字幕を読んだ応接室が沈黙に包まれる。


[……孫です。]


[もう一度おっしゃっていただけますか?]


[韓国のS級、キョンハンターが私の実の孫だと言いました。]


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