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102話

「……誰を見ているんだ?」


ザーッ。


雨が降っていた。


ジオはまじまじと冬の大悪魔を見つめた。何かデジャヴのようなものを感じて。


明らかに初対面の男、初体験のはずなのに、妙に親近感を覚えた。 しかし、しかし。


「人違いだ」


冷たく言い放つ否定に、彼は苦笑した。苦しみに耐えかねるような目で呻いている。


「そんなはずはない」


「……」


「私自身は忘れても、君を見間違えることは絶対にないだろう。……ジオ」


驚く間もなく、精神を呼び覚ます声。



【どこで小細工を。】


[警告。権限を逸脱した介入です!]



パチパチッ——。虚空に火花が散る。


ジオは眉をひそめた。


目の前で、大悪魔の表情が一瞬にして冷たくなる。まるでお星様の言葉が「聞こえる」かのように。


視線を外さずに、彼が唇を動かした。静かに。


「何度■■……■■■?」


【■■■ ■■のくせに生意気だな。■ ■■■のか?■■。】


[——エラー発生。聞き取れません。]


[エラーコード:アクセス禁止]


[許可されていない領域です。規定に従い、管理者権限で任意にフィルタリングします。]


『聖約星、「運命を読む者」一次警告。』


『違法行為が続く場合、星系星約に基づき「天文」への接続が制限されることがあります。』




【バベルのくだらない策略に惑わされるな。】


【行け。】


星の強制介入、相次ぐ警告。入れ替わる視界。


「強制空間移動……!」


すべてほんの一瞬の出来事だった。ジオはハッとして顔を上げた。


速く吹く風、座標点はわずかに変わったが、依然として橋の上の虚空だ。


「空間移動」がまた失敗したことがわかった。しかし、驚いたのはそのためではなかった。


「どうしても行かなければならないのなら……」


遠ざかるどころか、以前よりも近づいた距離と、いつの間にか手の中に握られている、刀の柄の感触。


重なった両手。離す暇もなかった。


「このまま死ぬのか?」


無意識にそう思った瞬間。


グシャッ!


「ああ……」


こちらではない。


勢いよく引かれた刃がそのまま引き込まれ、彼の胸、心臓の中心に正確に突き刺さった。


ジオは息を呑んだ。肉を裂く感覚が生々しかった。


目が合うと……壊れそうなほどかすかな微笑み。低く大悪魔が囁いた。



「君の手で。この儚い命を奪って行け」


塩の橋の上、抱きかかえられ逆さまに体が落下していく。


砕けたバラの花びらの数があっという間に増えていく。血と雨が混ざり合う視界の中で、青灰色の髪が短く舞い散る。


そして、かすかに響き渡る……。




ゴーン——、ゴーン——、ゴーン。


鐘の音と地面への落下は同時だった。ドサッ。溶けかけている万年雪の上に赤い血が広がっていく。


ジオはゆっくりと身を起こした。座り込んだまま、じっと大悪魔を見つめた。


死が漂う色の対比があまりにも強烈で、どうしても彼から目を離すことができなかった。




《勝利の鐘が鳴り響きます!》


《勝者に星々の加護を!》


《バベルの塔39階攻略に成功しました。》


[39th フロア ━ メインシナリオ┃第3章 塩の橋の恋人たち]


[シナリオが終了します。]


[5秒後に広場に移動します。]


[5……4……]



彼がジオに手を伸ばした。


主の命に自ら命を捧げる猛獣のように、ジオの手に無力な自分の頬を埋める。


悲しみに濡れた瞳。


短く途切れる息。切なく疲れた声が囁いた。


「……私の今生の、名前は、ウィンターだ」


「……」


「無駄に長くて多い名前だったが……君がくれたもの以外はすべて捨てた」


視界がぼやける。


何かの力にジオは自分の体が後ろに引かれるのを感じることができた。


ポツン、とウィンターの手が落ちる。


冷たい地面と触れ合った彼女の頬の横に涙が流れ落ちた。血で濡れて震える唇。


「永遠に共にいようという約束、守れなくて……すまない。」




[……1秒。移動。]


[信じられない偉業!シナリオの破滅を阻止しました。]


[単独で大悪魔「千年公爵」を処置しました!特性、「悪魔殺害者(準神話)」を獲得します。]


[不可能な偉業!格が違う敵を処置しました。]


[あなたは上位格を初めて殺害した征服者です!「天文」の一部聖約星たちがあなたを恐れ始めます。]


[固有タイトル、「逆転の反王(反王)」が解除されました!]




ハアッ、ハアッ。


四方から複数の荒い息遣いが聞こえる。


人工的な石の床、天の川が垂れ込めたドーム型の高い天井。体を濡らしていた雨粒はどこにもない。


バベルの塔のグラウンドフロア、広場だった。


あちこちに倒れている人々。呪いにかかって見えなかった攻略隊員たちも皆戻ってきていた。


うつ伏せになって息を整えていたナ・ジョヨンは、やっとのことで身を起こした。


ぶるぶる震える腕で床を支えていると、目の前にポツポツと落ちてくる血……血?


びっくりして見上げたナ・ジョヨンが真っ青になって叫んだ。ジオ、ジオ様!


「血、血が!」


「お前……!」


キョン・ジロクは近づいてジオの腕を掴んだ。血の海から這い出てきた人のように、頬から服まで血まみれだった。


ぼんやりと自分の手を見下ろしていたジオがゆっくりと顔を上げた。いつの間にか元に戻った弟と向き合い、呟いた。


「……これ、私の血じゃない」



[完了報酬を精算中です。]


[39階メインシナリオ - ヒドゥンルート「大悪魔殺害」攻略完了。塔の現在のレベルを飛び越える大偉業を記録しました。]


[功績度と難易度を総合的に推算し、次の階が解除されます。]




バベルネットワーク


[おめでとうございます。韓国!]


[国家 大韓民国 ━ バベルの塔40階が解除されました。]


[41階が解除されました。]


40階から41階、42階、43階、44階、45階連続解除。


階層が6つ同時に開いた。


前例のない大記録。これまで以上に盛大な鐘の音が韓半島と世界に鳴り響き、広がっていた。


しかし、歓呼する暇はないようだ。ジオのまぶたがゆっくりと瞬いた。




「……なあ、バンビ」


不安そうに彼女を見る目。相変わらず。


「勘はものすごく良いんだから……」


「ジオ!」


ジオはフッと笑った。そしてそのままふらつき、倒れる体。キョン・ジロクが慌てて支え抱きしめる。


覚えている場面はそこまでだった。




* * *


[ベスト] 韓国バベルの塔39-45階連続攻略大成功


(匿名) │ 20xx. xx. xx.


(記事リンク) バベルの塔攻略ランキング韓国が1位獲得


コメント (+42899) おすすめ 7640 反対 3


- 一体、一体、この国で何が起こっているんですか? ㄴㅇㄱ


- 私の国が私を仲間外れにしているみたい。一体何なの


- [速報] またもや偉大になった大韓民国…じっとしていたらまた国格が爆上がりしてしまった韓国人たち「衝撃」


- ??:攻略スキップするな / 韓国:それ何? / ??:スキップするなって / 韓国:それどうやるの


- ああ、ベベルトト買わなかったのまじ?


↳ - 1年以内にクリアするに賭けても、過去の自分を殴り殺したい


- 40階台には行けないと喚いていた愚かな奴ら、どこに行った?


↳ - ここですよ


↳ - バーン!まだいるか?


- 二度と……誰も韓国を無視するな……!


- おかしいな、アマゾン決済するのに、なぜパスポート番号で、できないんだ?韓国のパスポートなら全部できるんじゃないのㅡㅡ なんとゴッド大韓民国のパスポートなのに?


↳ - クソワロタ


↳ - ほどほどにしろ


- アメリカの者なんですが、どうか目立たないように韓国人にアピールする方法を教えてください。どうかお願いします


↳ - かわいそうに…後進国での異郷暮らし頑張ってください。私たちの同胞ファイティン^^!


↳ - おい、国粋主義レベルじゃないか


↳ - 極端な極右主義そのもの


- ドリップなのはわかってるけど、 みんなパスポート自慢は空気を読んでやろう!外国のやつら今むかついて頭おかしくなってて、うちの国ほとんど公共の敵レベルだよ


↳ - ?? なぜ


↳ - 反則じゃないか


- 上のコメントマジレス。 スウェーデンのあるランカーは、ただでさえ小さな国にランカーが多いから怪しいと言って、東洋の神秘的な力でバベルとコネクションがあるんじゃないかと釈明要求インタビューまでしてた (動画リンク)


↳ - ??? 半島


↳ - スウェーデン…?それはどこについてる小国だ?大国に聞こえないから大きく言ってくれㅎㅎ


↳ - 東洋の神秘的な力でイケア不買運動に入ります


↳ - ところで動画のおすすめ数何?なんでこんなに多いの???


↳ - どうせあれ全部島国のやつらだ。ジョー限定版フィギュアをかけてもいい。


↳ - え?そんな貴重なものを……?


- oh no :( 韓国が羨ましいなら、お互い憎み合わずに韓国人に生まれ変わればいいんじゃないですか? )


- はあ,,, 朝鮮黒幕説とは。感慨深い。 これで私たちも天朝国や大陸みたいに悪の帝国タイトル獲得か?


- やっぱりタイトル獲得に誰よりも本気な国


- でも本当に見ても見ても信じられない。これって理論的に可能なことなの?バンビ一体塔で何をして出てきたんだ。


↳ - バベルに論理を?本気で?


- マジで気になって頭おかしくなりそう。インタビューしてくれないかな


↳ - してくれるわけない。 キョン・ジロクがいない間、放送局でやったこと忘れたのか。ボイコットは可能性ある


↳ - 放送局のやつらマジむかつく


- ギルド長級が2人も入る時から何かただ事じゃないとは思ってたけど,,, 本当に,,歴史を変えて出てくるとは,,


- バンビが爆上げするたびにディズニーの株価が暴騰するの私だけ笑えるのか。 そのバンビじゃないだろ世界のやつら。


- バンビもバンビだけど、白鳥がマジですごい。何年かぶりに塔に入ってすぐにランキング更新。くうう……やった


↳ - 3位…8位…ヘタ戦力マジか。胸が熱くなる


↳ - また比較してる


- ウンスクキムの次回作はまだ?ジョン・ギルガオンは泣かずに家でドラマでも見てろ


↳ - いや、扱い何


↳ - うちの理事に何するんですか。 ドラマにハマったのが罪じゃないでしょ…!!


↳ - 泣いてるのはジョン・ギルガオンじゃなくてファン・ホンじゃないか。昨日アップされたインスタが長文すぎてヤバかった (インスタリンク)


↳ - これなりすましアカウントだよ


↳ - あ、マジ?ちょっと変だとは思ってたけど


↳ - 当然だろ。ハイランカーが狂って涙セルカアップしてるわけないじゃん


- でもどこに行ってもキョン・ジロクと白鳥のことばかり言ってるけど、ナ・ジョヨン、ペク・ドヒョンにも注目する必要があると思う。 呪いにかかってた攻略隊員たちのインタビュー見ると、こいつらがいなかったら39階マジで大変なことになってたと思う。


↳ - 私はペク・ドヒョンってやつがマジでヤバい奴だと思う。チケットはどうやって手に入れたのか、一人で支援チームとして入っていく大胆さまで 無駄にS級じゃないみたい


↳ - ペク・ドヒョン、数日前に誰かが銀獅子で見たって言ってたけど、 銀獅子が後押ししたんじゃないの?


↳ - ?? 銀獅子暇なの?


↳ - (関係者の要請によりブラインドされたコメントです。)


- 本当に…うちの国は地が良いのか何なのか…どこからこんなやつらが次々と現れるのか


- ふむ。結論は韓国ももうジョー一人にだけ頼る必要はないってことだな。


↳ - ?


↳ - え??


↳ - (規則違反によりブラインドされたコメントです。理由:過度な暴言)


↳ - (規則違反によりブラインドされたコメントです。理由:親への侮辱)


↳ - ワイラノ…ワイラノ…


↳ - ふむ。こいつサイバー自殺一度キメてみろ ㅊㅅㅊ


↳ - ふむ。一度くらいは考えてみる価値のある意見ではあります。ただ怒るのではなく、現代の知識人らしく多様な意見を尊重する必要があるにはあるけどクソ野郎。学校で王と信仰は触れるなって習わなかったのか。死にてえ。


- 正直今出回ってる説の中では、ジョーが力を隠して入って手伝ったってのが一番納得できるんだけど。上のコメントは何。


↳ - あ、こいつまた何だよ。一体何言ってるんですか


↳ - キムカカオ!お母さんがウェブ小説見るのやめろって言ったでしょ!このガキ!何歳になってもまだ懲りないのか!


↳ - 陛下がそこに行くわけないだろ唐突な妄想垂れ流し






そこまで唐突ではなく、弟を助けるために自ら塔に現れたランキング1位。


歴史に残る歴代級の偉業を成し遂げたものの、(久しぶりに)力を隠しクリシェ通り何の栄光も得られずに出てきた「ジオ」は今……。




「あらまあ、うちのお嬢ちゃんはまだ寝てるのか?」


「シーッ、シーッ。寝てるみたいだから静かに出て行こう」


[あなたの聖約星、「運命を読む者」様が、あの年寄りたちが出て行かないとドアの陰に隠れて泣きながらジャギの寝顔を陰湿に盗み見ているとチクってきます。]


「……くそっ」


余裕のある週末。天気は曇り。


現在キョン・ジオは必死に寝たふりをしていた。ソウル特別市城北区城北洞、まさに銀獅子の豪邸で。


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