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異世界転生したけど、職務放棄された件について

コンクリートの壁に囲まれた廊下を歩くたびに、靴音が不気味に反響する。


護衛に囲まれながら無言で進む。椅子に座らされた。一人の男が待っていた。


「……このわずかな時間でなかなか立派になったじゃないか」


低く落ち着いた声。冷たくも、どこか楽しげな響きが混じる。


「……ジェリド」


エイトはその名を噛みしめるように呟いた。


ギルドの建物で会い、俺を施設送りにした男。


「まずはレベルアップおめでとう。ここにきて僅か1日でひとつクエストを完了させるとは」


ジェリドは黒檀の鎧に纏われた長い脚をゆったりと組みながら、静かに笑う。少し老けたようにも見えるが、あの目は変わっていなかった。


「お前を迎える日が来るとは思っていたよ。……だが、もう少し賢くなっていると思ったがな」


「……」


俺は拳を握りしめた。無理だと分かっていても、今すぐにでもこの男の喉元に拳を叩き込みたかった。


「さて、もう身をもって知ってもらったと思うが、お前の動きはこちらですべて把握している」


黒い本を開いて見せた。ほとんど読めなかったが、なんとなく過去ログデータのようなものであることは理解できた。


本を閉じると、ジェリドはゆっくりと歩み寄る。俺と至近距離まで近づくと、静かに目を細めた。


「だが……私は嬉しいよ。お前がまだ私を"身元引受人"として認めてくれていることをね」


その言葉に、背筋がぞくりと冷たくなる。


ここに戻ってきた理由は分かっている。この男は俺を利用するつもりだ。できればこの場所で決着をつけなければならない。


「……お前の好きにはさせない」


静かに吐き捨てると、ジェリドはクックッと喉を鳴らし、笑った。


「それはどうかな?」


背後で鉄の扉が開く音が響いた。


「お呼びかい、騎士殿?」


シルビィがクロワッサンを頬張りながら入ってきた。あのクロワッサンは宿屋の朝食用のではないか。


「彼女がお前の世話係だと言ったのは覚えているな?シルビィ、あれから何があったのか教えてやれ」



「……まあ見れば分かるわ」


そう言って、シルビィはエイトの前を歩く。乾いた風が吹き抜け、草木の香りと焦げたような匂いが混じる。


俺は無言のまま、その後ろをついていった。


施設の裏側にまわると景色が一変した。


なんだ!ここは最初にギルドいた人たちと一緒に連れてこられた治安維持部隊の施設ではないか。


「……これが、あの襲撃の跡じゃ」


目の前に広がっていたのは、無惨に荒らされた建物だった。


地面はえぐれ、巨大な足跡がいくつも残っている。その大きさはエイトがすっぽりと入るほど。


足跡の周囲には、根こそぎ倒された木々や砕けた岩が散乱し、まるで神話に出てくる怪物が暴れた後のようだった。


「なあ……一緒にきた他の人たちはどうなったの?」


俺は信じられない気持ちで呟いた。


「さあね、アタシの知ったこっちゃないね」


シルビィは声は無関心そのものだった。無理もない。こんな惨状を目の当たりにすれば、どうでも良くなるのも当然だろう。


「石像はどこへ消えた?」


俺は足元の地面を見ながら尋ねる。ここに残骸がないということは倒せなかったということだろう。


「北から現れて……ウチの兵士をぶっ飛ばした後、南東へ向かった。あの村のほうだ」


南東――あの村。


俺は息を呑んだ。


「つまり、この道の先に……まだ、奴らがいる可能性があるってことか」


冷たい汗が背筋を伝う。


「案内はここまでだ」


シルビィは後ずさりながら言った。


「……アタシはこれ以上は関わりたくない、呪縛解除。あとは好きにしな」


エイトの手枷が消えた。


「え、あんた俺の世話係だろ?」


「ジェリドが勝手にそう言ってるだけだ。てかアタシァ放任主義なんでねぇ」

頭がオーバーヒートしそう この後どうしよう( ´艸`)

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