異世界転生したけど、異世界探偵団の出番の件について
エイトとゴンダァは村の調査に乗り出す。
翌朝、エイトはミーナから朝食の入ったバスケットを受け取った。
ミーナはそそくさとすぐに帰ってしまった。
「エイトぉ、おめぇさては昨日の夜、あの娘と何かー」
「何もねぇよ!お前と一緒だったろうが!」
スケベな目で見てくる石像を目の前にして朝食を食べるのはあまり気分のいいものではない。
味があまりしない気がする。
「ゴンダァ、この村を調査するぞ」
エイトは腕を組み、鋭い視線で村の広場を見つめた。どこか不自然な静けさ。まるで何かが隠されているような違和感。
「ゴンダァ、どう思う?」
「決まってんだろぉ、エイト。この村、なーんか隠してやがるぅ」
「お前もそう思うか……」
エイトは小さく息をつく。
「この村には何か秘密がある……そう考えていいな?」
「おうよ。ってことは、オラたちのやることは一つ――」
二人は顔を見合わせ、同時に叫ぶ。
「「調査開始だ!」」
「さて外に出る前に…」
エイトはニヤリと笑い、ゴンダァに一着の服を差し出した。
「おい、ゴンダァ。これ着て、村を歩いてみろよ」
ゴンダァは差し出された服を見下ろし、眉をひそめた。――それは、治安維持部隊の制服だった。
どう見ても本物だ。
「……エイトぉ、おめぇまたロクでもねぇこと考えてるなぁ?」
「いやいや、ただの実験さ。村人たちの反応を見てみたいんだよ。お前がこれを着て歩けば、村のヤツらがどう思ってるか丸わかりってわけだ」
「……なるほどなぁ。で、もし袋叩きにされたらぁ?」
「そのときは助ける!」
「…頼りねぇなぁ」
ゴンダァは深くため息をつきつつ、しぶしぶ制服を羽織った。サイズが微妙に合わないが、意外とサマになっている。
「ったくぅ、しょうがねぇなぁ……。んじゃ、ちょっくら歩いてくるかぁ」
ゴンダァが村の通りへ足を踏み出した瞬間――空気が変わった。
先ほどまで穏やかに会話をしていた村人たちが、一瞬にして沈黙する。視線が集まる。警戒、怯え、そして……憎悪。
「……おいおいおい、何だぁこの空気ぃ」
ゴンダァが一歩進むごとに、村人たちはじりじりと後ずさる。小声で何かを囁き合い、家の扉がバタンと閉められる音が響く。
「お、おいおい……。オラぁ、ただ歩いてるだけだよな?」
しかし、次の瞬間――
石が飛んできた。
「っ!?」
ゴンダァが身を翻し、間一髪でかわす。続けざまに、別の老人が木の棒を手に走り出した。
「お前ら、また来たのか!!」
「もう何も残っちゃいねぇんだよ!いい加減にしろ!」
「お、おいおい、ちょっと待てぇ!」
ゴンダァは慌てて手を挙げるが、老人たちは容赦ない。次々に武器になりそうなものを手にし、殺気すら漂わせている。
――これはヤバい。
ゴンダァが後ずさったその瞬間、路地裏からエリオットが飛び出した。
「お前ら、逃げろ!!そいつは敵だ!!」
「……はいはい、エイトぉ、そろそろ助けてくれぇ?」
遠くの屋根の上で見物していたエイトは、苦笑しながら小さく頷いた。
「よし、実験終了。答え合わせといこうか」
こうして、ゴンダァの命がけの実験によって、この村と治安維持部隊の間にただならぬ因縁があることが証明されたのだった。
「なーにナレーションっぽいこと言ってるだぁ!」
「…(そのまま村人たちをひきつけろ!)」
エイトはもぬけの殻になった村のとある家に素早く侵入した。
「では忍び込ませてもらうとしますか」
家内は閑散としていた。生活に必要なもの以外はほとんど見当たらない。
家具も古く、道具はほとんど使い古されていた。
この村の貧しさが手に取るようにわかる。
(さてどこに証拠となるものがあるか)
直観に従って、鍵のかかった机の引き出しに目を付けた。
スキル発動!【器用貧乏】
カチャと音がした。
机の中は書類が整然と並べられている。
クエスト完了報告書の束だ。
パラパラとめくり…見つけた。証拠だ。
エイトは書類の一部を抜き取り家から出ると、しれっとした態度で家に向かった。