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異世界転生したけど、村に秘密があるような気がしてきた件について

グリフォーンを倒すことに成功した二人。


エイトは頭痛に悩まされる。

グリフォーンの魔石は赤黒い色をしていた。エイトはこれをポケットに入れた。


ゴンダァはまだいくらか魔石を持っていたようで、それを食べると頭のヒビが綺麗に消えた。


「またか……!」


エイトはこめかみを押さえながら、その場に立ち止まった。鋭い痛みが脳を突き刺し、視界がぐらりと揺れる。


(今度は……なんだ?)


脳内に直接響くような声が告げる。


『ギルド職員の罪を認めさせろ』


「エリオットが隠した真実を暴き、その罪を認めさせなさい。報酬:不明/失敗ペナルティ:不明」


前に一度聞いた、冷たい口調の命令だった。


「エイト、大丈夫かぁ?」


隣にいたゴンダァが心配そうに顔を覗き込む。


こういう時は妙に細やかな気遣いを見せる。


「……ああ、大丈夫だ。ただ、またあの“命令”がきた」


ゴンダァは腕を組み、難しい顔をする。


「なんだぁ?声がするのかぁ?」


「ギルド職員の不正を暴け、だとさ」


「また妙なことをいうだぁ……」


二人はため息をつきながらも、とりあえず今夜もエリオットが世話してくれた家に戻ることにした。


家に戻るやいなや、エイトはずっとベッドに横になっていた。幻聴は消えたが頭痛は完全には収まらない。


夜になり、ミーナが夕食を持ってきた。


「エイトさん、ご飯持ってきましたよ~」


扉の向こうから聞こえる声はいつもより元気がない。エイトは扉を開け、食事を受け取ろうとしたが、ミーナの表情がどこか沈んでいることに気づいた。


「……ミーナ?」


「あの……ギルドマスターは、オルディスは見つかったんですか?」


彼女の声は震えていた。


「え?」


エイトはふと脳裏に浮かんだ“命令”を思い出し、背筋に冷たいものが走った。


――ギルド職員の不正を暴け。


まさか、それと関係が……?


ミーナの様子はいつもと違う。エイトは静かに、だが確実に何かが起こり始めていることを感じていた。


「あの、ミーナ」


帰ろうとしていたミーナを呼び止めた。


「ちょっと上がっていかないか?少し話がしたい」


エイトはそう言ってしまってから、へ?今俺女の子を家に上げようとした?それもすごい自然に?と自分でも驚いた。


「は…ハイっ!」


ミーナは上ずった声で返事をした。


う、うおお!なんだこの展開は!?


俯いて家に入ってくるミーナ。いや落ち着け落ち着け落ち着け…話をするだけなんだから。


ミーナを椅子に座らせると、エイトはテーブルの真向かいに座った。


そして彼女の様子を注意深く観察していた。


「……ミーナ、話だけど」


エイトはゆっくりと言葉を選ぶ。ミーナはテーブルにそっと料理を並べながら、小さく息をついた。


「ギルドマスターのことですか?」


「そう。どういうことなのか、詳しく聞かせてほしい」


ミーナは少し躊躇った後、小さな声で話し始めた。


「実は……この村、最近ちょっとおかしいんです。ギルドの管理がずさんになっていたのは前から噂になってました。冒険者たちも不満を募らせています。でも、誰も強く言えないんです……」


「なぜ?」


「それが……エリオットさんが関わってるかもしれなくて……」


エイトは軽く眉をひそめた。


エリオットはこの村では出世頭だ。エイトが金時計を返さなかったら会うこともなかったはずだが、よくよく考えると不審な点がある。彼は取調官に殴られていた。そこまでするということは前々から目をつけられていたのかもしれない。もし彼が何か裏で動いているのだとしたら――


「エリオットが?」


「……いえ、確証はないんです。でも、ギルドマスターのオルディスがいなくなってから、エリオットさんがギルドの業務を一部仕切るようになって……それからお金の流れもおかしくなって……」


「なるほどな」


エイトは腕を組み、思考を巡らせた。エリオットはこの村で信頼されている存在だが、俺に空き家を独断であてがうこともできる。権力者だ。もし彼が何かを隠しているのだとしたら?


そんなエイトの様子を、ミーナはどこか不安げに見つめていた。


「エイトさんは……エリオットさんのこと、信じてますか?」


ミーナの大きな瞳が、まっすぐエイトを見つめる。


静かな夜の空気。テーブルの上で揺れるランプの光。


二人の距離はいつの間にか近づいていた。


(……あれ? なんか、いい雰囲気じゃないか?)


ミーナの頬はほんのり赤い。エイトは無意識に喉を鳴らした。


このまま話を深めれば、ミーナの本音がもっと聞けるかもしれない。


「ミーナ、俺は――」


「おいエイトォ!! 魔石、残ってねぇか!?」


バァン!!!


扉が勢いよく開かれ、ゴンダァが乱入。


「うおっ!?」


エイトは思わず仰け反り、ミーナも「ひゃっ」と小さく悲鳴を上げた。


「いやぁ、腹減っちまっただぁ! ミーナっちゅうたかねぇアンタ、なんか余ってねぇ?」


「……え、石像?」


ミーナは顔面蒼白で立ち上がってゴンダァを見つめている。


エイトは頭を抱えた。せっかくいい雰囲気になりかけたのに、すべて台無しだ。


(こいつ……マジで空気読めねぇな!!)


「お前、少しはタイミング考えろよ……!」


「ん? 何の話してたんだぁ?」


「いや、もういい……」


エイトは深いため息をついた。


その横でミーナはくすっと笑う。


「エイトさん、ゴンダァさんって本当におもしろいですね」


「いや、面白くないから……」

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