異世界転生したけど、いきなり捕まった
異世界転生したことを受け入れる俺。
何故か親近な感じのする騎士に目をつけられる。
「ふざけんな!今日借金返す予定だったんだ!金が入らねぇと借金取りがうちに来て、女房と子どもがビビッて故郷に帰っちまって、それで義実家に会わす顔が無くなっちまう!報酬を払え!さもないと」
戦士の男は腰のソードを抜いた。
その途端、ギルドの入り口脇に置いてあった高さ2メートル半はあろうかという、石像の目が赤くギラリと光った。
そしてたちまち戦士を取り押さえた。
「みなさん!床に伏せてください!防犯装置が作動中です!伏せて!そして動かないで!」
職員が叫んだ。そして入り口のシャッターが閉じた。
俺は言われるがまま床に伏せた。
「うおお!離せ!離しやがれ!」
石像に組み伏せられた戦士の男が喚き散らしている。
獣人の男性は石像の攻撃をヒラリヒラリと躱した。
金髪の女性は杖の先から青い光の玉を出し、石像にぶつけていた。
ローブを着た魔法使いはいつの間にか、ギルドカウンター奥の本棚の上に座り、じっと様子をみていた。
(ああ!これはもう本当に異世界転生しちまったんだな俺)
シャッターが開いたかと思うと、正規兵のエンブレムをつけた漆黒に光る黒檀の鎧を装備した騎士が、布鎧を着た兵士たちを引き連れてなだれ込んできた。
兵士たちはあっという間に、俺とギルド内にいた戦士、ローブを着た魔法使い、獣人の男性、金髪の女性を取り押さえた。
かなりの手練れだ。
あれだけすばしっこく動いていた獣人の男性も兵士に取り押さえられ、すっかりおとなしくしている。
金髪の女性は髪に触らないでくださる!?と高慢な態度だったが、精一杯去勢を張っているようにしか見えなかった。目に涙を浮かべている。
魔法使いはへらへらしている。まるでこの状況を楽しんでいるみたいだ。
騎士は宝石のようなものを掲げた。そして石像の動きをピタリと動きを止めた。
「一体これはどういうことかな?責任者は君かな?」
騎士は兜を脱ぎ、中年の職員に詰め寄った。
「は、そのう・・・」
中年の職員は震えあがっている。小刻みに指を震わせ、顔は汗がにじみだしていた。
「私は君に命じたはずだ、ギルドの運営をしてほしいと、ギルドの運営をしろ、バカ騒ぎを起こせではない」
「剣を抜くことは違法行為です。それで装置が作動したもので」
「注意喚起はしていたのか?見た限りそれらしき文言が付いた張り紙等は無いように見えるが?」
「は・・・」
中年の職員はハンカチで汗を拭きながら必死で抗弁した。
「それは・・・ギルド内で剣を抜いてはいけないなど常識の範囲内かと、ああ・・・」
中年の職員はそこまでいうと、へたへたとその場に膝をついて座り込んでしまった。
体力を使い果たしたようだ。
俺は兵士に取り押さえられながらずっと様子を見ていた(あの男はいったい何者だ?)
騎士の男と目が合った。
「おや、これは珍しい。客が来たな?おいもう全員連れていけ!」
兵士たちはギルド内にいた人たち全員を立たせ、外に待たせてあった荷馬車に乗せるよう命じた。
当然、俺も荷馬車に放り込まれることになった。
「さっさと乗れ」
兵士に命じられ、荷台に座る。なんか臭い。
騎士の男はじっと俺の方を見てかすかに微笑んだ。
一応、話は繋がっている。
よな?