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異世界転生したけど、デビュー戦を飾る件について

今の俺ならやれる?本当にそうだろうか?相手は4匹だ。しかも一頭は角がついている。


食らえばダメージが入ることは間違いない。


「ゴンダァ、俺本当にやれるのか?」


ゴンダァの石の顔が微かに歪む。石像とはいえ、バトル漫画読破総数100タイトル越えの俺にはわかる。これは明らかに師が弟子を見守っている顔だ。


「今までの目無鼠とは違うぞ。あいつは、ただの獣ではない……。子分を連れ、リーダーシップを持つ。"連携プレイの具わった魔獣" だぞ?」


ゴンダァはエイトの肩を軽く叩いた。


「だからこそ、今やるんだぁよ。オラたちがこのまま小物狩りを続けてても、いずれ限界が来るだぁ。だからぁ、どこかでぇ一歩踏み込まなきゃいけねぇ」


ゴンダァはしばし沈黙した。石でできた腕を組み、空を仰ぐ。


「……わかった。ならば、お前の慧眼を信じる」


俺はニッと笑う。


「そうこなくちゃなだぁ!」


***


獲物は、"一角の兎"――目無鼠を率いるちいさな子型の魔獣だ。


その小ささは、今までオンラインゲームで戦った魔獣とは桁違い。全長は優に50センチくらい、その瞳は燃えるような赤。


「エイト……お前ぇ、本当にやるのかぁ?」


「今さら何言ってんだよ、ゴンダァ」


エイトは警棒を握りしめた。


「こいつらを倒せば、俺たちは次の段階に進めるんだ」


風が吹く。一角の兎が低く唸った。


ゴンダァがエイトに来るぞ!戦闘指揮を取る。


「よし……やるぞ!」


そして、戦いが始まった。


最初の一匹目の目無鼠。これは一撃で沈めた。


二匹目はジャンプ攻撃を繰り出してきたものの、縦に振り下ろした警棒にあっさり沈んだ。


三匹目はエイトが攻撃を繰り出そうとするやいなや、パッと草陰に入り見えなくなった。


代わりに一角の鋭い突きがエイトの正面に繰り出された。


「お前が入れ替わりで攻撃してくることなどお見通しだ!」


想定の範囲内の攻撃をエイトはカウンターで難なく仕留めた。


魔獣たちは粉みじんになり、あとには魔石が残った。


一角の兎が残した魔石は目無鼠より赤みを帯びた色をしていた。


「楽勝だな!ゴンダァ喜べ!赤いのが出たぞ!」


エイトは満面の笑みでゴンダァに戦利品を見せた。


ゴンダァは憮然としてエイトを見つめている。


「なんだぁお前、大人しいな」


「……」


「あ?コレジャナイってか!?」


「……」


ゴンダァは変わらず、憮然としてエイトを見つめている。


「なんだよ気持ち悪いな!お前のために取ってきてやったんだぞ!」


「……」


「なんか言ったらどうだお前ーー」


突然、エイトの左足のアキレス腱に激痛が走った。


目無鼠の前歯が刺さったのだ。


エイトは警棒を振り回し、噛みついた目無鼠を追い払った。


「痛ぇ!痛い!クソ痛ぇ!」


患部を見ると、真っすぐな刺し傷が出来ていた。不気味なことに血はあまり出ていなかった。


「逃げたと思ったのにまだいやがったのか!?」


エイトは完全に頭に血が上っていた。茂みを警棒でかき分け、目無鼠を探した。しかし見つからなかった。


「ふっ、恐れをなして逃げたか」


すっかり落ち着きを取り戻したエイトは回収した魔石をうっとり眺めた。


実力で稼ぎを数えるのは実に気分がよかった。


後ろで打撃音がした。ゴンダァが目無鼠をパンチで仕留めていた。


「今ぁあんたぁの悪ぃところが出てたぁだよ、あんなぁ真正面から突っ込んでいくのは無茶ちゅうもんだぁ」


「しかしこいつらはー」


「”楽勝”とか思ってたんだぁ、そういう動きだっただぁアンタ。本来は一角の兎だけを仕留めれば目無鼠はリーダを失ったと思って錯乱状態に陥ってたはずだったぁ。そっから魔獣連中は散りじりになっておしめぇだったぁ」


そうだったのか、しかし俺はそんな生態をしているなどー


「ここは戦場だぁ。知らんかったぁ、では済まないだぁ」


ゴンダァはエイトに手のひらを見せてきた。


「っ!なんだそれ!?」


それ は明らかに人間の指のような形をしていた。ぐちゃぐちゃの傷口から骨が飛び出している。対照的に爪が綺麗だったのが印象的だ。


「目無鼠は獲物を抱え込む癖があるだぁ、明らかに一匹だけおかしぃ動きしてただぁよ」


「食いちぎったということか…気持ち悪い」


弱い魔獣でもそれくらいのことはやるのだ。エイトは身震いをした。


ゴンダァはもう片方の手をすっと差し出した。


「あ、ああ!これからもレクチャーとかアドバイス頼む!」


エイトはガシッと握手を交わした。そして熱き友情とともに、異世界を攻略していける前向きな気持ちが湧き出てくるのを感じた。


「あぁ教えるくらいはお安い御用だぁ…オラァ魔石をよこしてほしかったんだがぁ」


「…ああそう」


ゴンダァの手は冷たかった。石像だから。

なんとかオチまでかけた(´・ω・`)


これからどうしよう

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