割とこれでも落ち着いてます!!
朝日が目に入る。
嫌でも目覚める心地よい日差し。幸せなポカポカするような温かさ。毛布から出たくない…そう強い意思を
本能で感じ取っていた。
もう気づけばクリスマス。誰か友達が出来るわけなく、淡々と過ごす日々。嫌気が刺すくらいに退屈だった。
「純〜!ご飯よ〜!降りておいで〜!」
冬休み初日だと言うのに布団を出ることを強制するとは…
布団から出ることを渋ってると階段を登る音がした
ガチャンと扉を開けられる。
「なんだよ」
「どうせお布団から出ないと思って」
年とは似つかない顔をした母はかなり元気な声で話しかけてくる。何かいい事でもあったのだろう。絶対に聞くことはないが。
「今日は純の好きな厚焼き卵があったのになー要らないなら」
「別に食べないとは言ってないだろ」
我ながら反抗期だと自覚するくらいには強く当たってしまった。母は悪くないのにどうしてこんなにも強く当たってしまった。
しかし謝るのはプライドが許さないのでそのまま階段を降り、朝ごはんを食べる。
やはり、母の厚焼き卵は美味しい。だが今日の厚焼き卵は悲しい味がする。いや今日もの方が正しいかもしれない。反抗期だと自覚するようになってからも反射的に強く当たってしまう。一種の精神病だと錯覚してしまうほどに。
朝ごはんを食べ終わった純はそさくさと自分の部屋に戻ろうとする。
「ご馳走様の一言でも言ったらどう?」
何も返さなかった。なぜか本能的に癪に触る。最早逆撫でるようなぐらいに腹立たしい。
「俺の家はここだけだわ」
「本当にずっとログインしてるよね」
「お前もだろ」
「確かに笑」
絶対に笑ってなさそうな笑をつける人種がネッ友のミナミカワ。おそらく本名ではない。
何回かオフで会ったことあるがリアルで2人で話すことは今までなかった。お互いギリギリリアルの顔を知ってる程度の関係性だ。
だがゲーム内の個人チャット、略して個チャならこのように気を緩めて話すことができるのだ。
そしてミナミカワから想像もしてないようなメッセージが届いた。
「今年の大晦日…付き合って欲しい場所があるんだけど…」
一般男子なら胸キュン。勝手に思い上がっちゃうような内容だがドキリともしない。なんせ彼ーーミナミカワは男だから。
「他に誘ってる奴は?」
「えーといないかな?」
「なぜに疑問系?」
「さぁね」
「どこ集合?」
「アキバ行きたいから東京のどっかにしよう」
「当日決めるんか」
「そういうこと」
おそらくタイミング的に年末年始のグッズ販売のことだろう
クリスマスに話す内容ではない気がするが年末年始の推しのグッズは逃さないし、1人で行くよりきっと楽しいだろう。そう思い、時がすぎるのを待った。
12月31日、0時になったら並び始めて、整理券を貰えるという仕組みらしいがもう並んでいる輩がいる。
「おいおい、まだ20時だぜ?」
焦燥心が純の心を逆撫でる。
内心焦りながら目的の場所へ向かう。
「いた!オグラ氏〜!」
「本当にオタクみたいになってきたな」
「それはお互い様だろ」
「ゲームみたいな口調じゃないんだな」
「流石にキャラだよ」
リアルでは本名で呼ぼう。と約束しその時彼の本名を知った。南川達吉。世間一般的に進学校と呼ばれている高校に通う割とエリートな暗めなインキャ。といった印象。てか実際そうだ。決めつけは良くないが彼の話す内容的にそうだろうと予測がつく。
「なんかもう並んでる奴いるし」
「早くね?まだ21時だぞ」
「そうなんだよ」
「ま、どうせそいつらには整理券配られんだろうし」
「それだといいな」
早歩きで向かいながらそんな他愛のない話をする。
それが楽しいんだから。
「ていうか店員かわいそうだよな」
「なんで?」
「いや、年越しの瞬間も働かせられるんだぜ?」
「確かにw苦痛かも」
実はリアルでもしっかり笑っている事実に唖然としていると達吉はこちらをぼうっと眺めた。
遠い目をして…
目の前が赤く染まる。典型的な異世界ものの導入とかもこうしてトラックに引かれてたりしてたような、
それよりミナミカワは大丈夫なのか?
体がくらっとする。あはは、もう、持たないな…
重い瞼を開けようとするとそんな声が聞こえた。
「よーし、よし、ちゃんと2人とも殺せて一安心」
明るい元気な声。
「は?どう言う事だよ!」
達吉の声がする。
「え?達吉?」
思わず声に出る
「じゅ、純?!」
「お二人ともお困りの所申し訳ないんだけど、こっちの都合で君たちが邪魔になったから殺させていただいた。」
「はぁ?!」
「ふざけるんじゃねぇ!」
「ふざけておらん。我を誰だと存ず」
そう言ったあいつの頭の上をみる。なんかあからさまな天使のような輪っかが付いていた。
そして追い打ちをかけるような黒い羽がたくさんついた翼。
「もしかして、天使?」
「なわけないだろこのゴミ虫が…我は悪魔だぞ?」
「悪魔ぁ?」
「はぁ…最近の者は…よろしい、一度しか言わん。よく聞け我は堕天使ルシファー七つの大罪において傲慢を司る者。」
「おーなんか聞いたことある気がするー」
「なんだ?その薄っぺらい感想w」
「我を侮辱しているのか?」
「いえいえ、滅相もない。」
「そう怒ってやるなルシファー」
いい加減本気でぶち殺しにきそうなルシファーを止めようと近づいてきた。この見た目はもしや…
「あ!こいつ見たことある!あの憤怒を司ってる奴」
「サタンってことか!」
「なぜサタンがわかり、我を知らん!」
「落ち着けルシファー、これが格の違いってやつだ。身を弁えろ」
拗ねた子供のように俺らを見つめるルシファーには少し可愛げがあった。
「話を変えようか…君たち、理不尽に殺されてご立腹だろう?」
「まぁそりゃあ」
「準備もせず死んでしまったしな」
「しかもあと少しで…」
「悔やまれるぜ…!」
「お主らが何を言っているかわからんが、そのお前らの言う推しと言うものに異世界で転生させてやろう」
「マジで?」
達吉は理解できたようだが俺は理解が追いついていなかった。
「と言ってもそのゲームの中に入れるわけではない、我々が住まう世界にだ。姿だけだがな。能力は弱、中、強だったらどれが欲しい?」
「そりゃあもちろん弱だろ」
「同じく」
「ほう、バカかお前ら…目先の力を自ら捨てるは実に愚かだな」
「いやいや、そんなチート能力もらって無双とかつまんないだろ」
「そうだそうだ!だから傲慢なんだよ!」
「ほら、戯言はいいからさっさと行け」
正直言って初夢がこんなにも嘘くさいなんて…そんなことを考えている内に目が白い光に包み込まれる。ただただ眩しい。そんな感覚。
目の前に広がるのは知らない天井。
だが天井だけでここがとんでもないくらいの豪邸だと分かるような、美しいシャンデリアが視界に映ったから。
赤ん坊ではない。ただ自身の姿を見る限りおおよそ13歳程度だと分かる。そしてあいつの言っていた通り、俺は推しの姿になっていた。
髪は銀杏の葉に近い明るい茶色のロングで腰まである髪は美しく艶やかだった。そして、一番大事なのは俺の性癖であるロリ貧乳がしっかりと再現されているのだ。さすが!サタン様って感じ。
この体の記憶がずらっと頭の中に押し寄せてくる。だが少し不便なことが、この姿と推しの姿は同じだが名前や記憶諸々全て違うのだ。強いて言うなら性格は似ている。
この体の持ち主の名前はラミリス=アレフ。
この国では有名な貴族の一人娘。上品で品のある所作言動は様々な人から求婚されては断っているそうだ。
成り行きで勇者様御一行とダンジョンに行くことになっている。
無理言ってお願いした感じなのでおそらく一時的な参加になるだろうが、私にはチート能力がある!
で、一つ困ったことがあった。
「私そのような発言や所作はできませんのぉ!」
と叫んだ
違和感を感じた。人生で1番と言っても過言ではないレベルの。
そして気づいた。自分が話す内容や所作は全てラミリスそっくりになっているってことに…
助かるぅ〜!内心そう思ってすんごい浮かれていた。
そしてラミリスが待ち望んだであろう勇者様と愉快な仲間たちとダンジョンをする日がやってきた。
「とりあえず自己紹介といこうか、まず俺から
俺の名前はユウキ=ワタナベ、勇者だ。」
勇者と言うだけあって体つきはたくましい。割と美形より。the勇者みたいな格好してるし強いんだろう。
「次は俺だな。俺の名前はクリス=スラープ、聖槍使いだ」
一瞬卑猥な物を想像したがそんなもの払拭して、こいつはさっきの勇者よりたくましい体つきだな、しかし、顔はそんな好みじゃない。論外だな。
「次は私ですかね。私の名前はフレン=ラスペンダ、戦士です」
この子もガタイいいな、全員ムキムキになるまで鍛えてるのか?それにしてもかなりの体つきだな。むっつりしている。まさにボッキュンボンだな。
「え、えーと私はメリス=スペランド…僧侶です…」
かわああああ!性癖ドストライク!!ああああ!のうがぁ、脳が癒されるぅぅ!胸はぺったん!身長同じくらい!おとなしい性格!可愛い!可愛い!あああ!
「最後に私ですね。私の名前はラミリス=アレフ、一応魔法使い、と言うことになるんでしょうか」
なんとか平静を保てた。あぁ前世ならおかずにしてたかもしれん。
「よろしくね、ラミリスさん」
「よろしくお願いします」
軽く会釈を交わした後、目的地であるダンジョンへ向かう
期待と貪欲は時に合わさり罪となる。
その罪はおそらく…傲慢だ。
疲れました。ここまでにさせてください…人気出たら続き書きますので…