第五夜
こんな夢を見た。
夢の中で僕はテレビ番組の製作スタッフになっていた。
その日は心霊番組を作るため、とある幼稚園を訪れていた。
僕たちが訪れた幼稚園は、斜面に沿って造られた住宅地の隅にあった。
裏手が森になっている。
特筆すべきは、なぜか園庭に鐘撞き堂があることだった。
お寺が幼稚園や保育園を経営するというのは意外に多いらしいのだが、近くに寺があるという訳ではないようだった。
別にそこに何かいわくがあるわけではない。
平凡な日常生活の中でたまたま映ってしまった風な映像をでっちあげようというのだ。
要するに僕たちはいわゆる"やらせ"の番組を作ろうとしているのだ。
ともかく、現地に到着してさっそく僕たちは撮影に取り掛かった。
何の変哲もない幼稚園の日常風景を撮っていく。
園児の親が撮ったホームビデオ風に。
まずは"平凡な日常生活"部分の撮影というわけだ。
後でその中から使えそうなものを適当に見繕えばいい。
そこへスタッフの一人が鐘を外して持ってきた。
園庭の鐘撞き堂にあったものだ。
思ったよりも小さかった。
彼が言うには、神聖なものを粗末に扱えば何かしらの心霊現象が起こるのではないか、という。
理に適ってはいるが、祟りに遭うのは正直ご免こうむりたい。
それに僕たちはあくまでもでっちあげの心霊映像を作るために来ているのだ。
だがこれが予想外の結果を生んだ。
スマートフォンで写真を撮っていたスタッフが、突然顔をしかめた。
何事かと尋ねると、何も言わず一枚の写真を表示した。
園庭で遊んでいる園児たちの写真だ。
やや暗がりになっている画像の隅を、ピンチアウトで拡大してくれる。
果たしてそこには、人の顔が写っていた。