第四夜
こんな夢を見た。
枕元に目覚まし時計が置かれていた。
家に来たセールスマンがお試しにと無料で置いてくれた物だった。
それは一見、双眼鏡のような形をしていた。
レンズのように見えるのはカメラで、二つ付いているから双眼鏡のように見えるのだ。
そのカメラで寝ている間の体調を計測し、異常が生じた場合然るべき場所に連絡してくれるという物だ。
表示盤やボタンは上面に付いている。
デジタル式で、緑に光って暗闇でもよく見えそうだった。
その日は起きる時間を設定し、布団に潜り込んだ。
今になって思えば、夢の中で眠るというのも妙な話ではあったが。
翌日、僕はけたたましいアラーム音に起こされた。
あの目覚まし時計が、枕元で時間を告げていた。
休日だったので、どんなものが記録されているのか見てみることにした。
目覚まし時計をケーブルでテレビに繋ぐと、すぐに映像が流れ始めた。
布団から突き出た、僕の頭のつむじが映っている。
暗視機能を使っているのか、視界は白と黒の濃淡だけで表されていた。
流石に時間の無駄なので、早送りで進めていく。
最初の二時間ほどの僕は、行儀よく眠っていた。
布団が呼吸に合わせて上下していなければ、死んでいると勘違いしてもおかしくない。
風向きが変わったのはちょうど日付が変わる頃のことだった。
映像の中の僕が、突然身を捻った。
そのまま戻る勢いで布団を吹き飛ばす。
あとは意味不明な踊りの始まりだった。
両腕をホタテのように開閉する。
横向き寝で自転車をこぐような足から急に階段を上るような足へ。
しまいには何かを一気飲みしているように身体をのけ反らせる。
謎の踊りは、目覚めるちょうど二時間前まで続いた。
映像は、目覚めた僕がアラームを止めるところで終わった。
自分の寝相が存外悪いことを知り、僕は苦笑した。