いないんだよ!
まず、俺は一つ一つ×ボタンを拾い集め始めた。パズルなら、とにかくこれらを集めなければならないはずだ。しかし、数個ほど拾い集めたところでタケルに止められた。
「パズルって、そういうことじゃないんだよ」
「じゃあ、どうすればいいんだよ」
タケルは、先ほどよりは機嫌良く、パズルの意味について語った。
「ここには、いっぱい×ボタンがある。それは、元は何かを伝えるために作られた世界の残骸。でも、君に伝わらなかったものは数多くある。そのまま消されれば、役目を果たさず終わった世界だ」
「……何が言いたいんだよ」
「つまり、パズルというのは……君が伝えなければならない事を探す事だ」
「俺が伝えなければならない事?」
てっきり、全部世界を元に戻せと言われると思っていた俺は、じとっとタケルを見つめた。
タケルは、そんな俺にため息をついた。そうしてから、俺の頭を引っ掴み、無理やり上を向かせた。
「うっ! なっ……?」
口から出ようとした文句は消えていった。俺の頭上には、巨大な五つの輪っかが輝いている。光そのものでできた輪。そう、タケルの頭の上にあるような。
「パズル自体はこれだよ。君は、この輪っか一つ一つを通って、別々の世界に行く。ここ見たいな空間だろうね。そこで、君が伝えなければならないことを探すんだ。」
「タケル……俺、そうすれば帰れるんだよな」
真剣な調子で言ったつもりだったのだが、タケルは、君みたいな人にも会えるかもね、おどけた調子で俺に言った。
「俺みたいな人?」
この質問は届かなかった。俺は、一番近い輪に、ぽーんと放り投げられた。輪を通り、光に包まれる中、タケルが羽を広げたことだけが分かった。