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第1話:転生したら、推しが闇堕ちする世界だった!?

「えっ……」


目を開けた瞬間、見覚えのある天井が目に入ってきた。


「え、待って、ここって……もしかして!」


私はゆっくりと体を起こし、周囲を確認する。広々とした天蓋付きのベッド、壁にかかる豪華なタペストリー、そして窓から差し込む柔らかな光。全てが私にとって、懐かしさを感じる光景だった。


「これは……私が大好きだった乙女ゲーム『デュアル・レジェンド』の世界じゃない!」


まさかの転生だ。つい数時間前、私は日常の中で突然の交通事故に遭い、そのまま気を失った。でも、目を覚ましたらまさかの大好きなゲームの世界に来てしまうなんて!


『デュアル・レジェンド』。これは「サンセット」と「ミッドナイト」の二つのバージョンに分かれた乙女ゲームで、私が心から愛していたゲームだ。それぞれのバージョンで攻略できるキャラが異なり、サンセットは明るい冒険とロマンスがテーマ。一方で、ミッドナイトは闇と陰謀が渦巻くダークな世界で、登場キャラのほとんどが悲劇的な運命をたどる。


「これって、サンセットの王国の中枢、エリシア王国の王城の一室だよね……」


そう呟きながら、ベッドから降り、部屋の中を歩き回る。目の前の光景がどう見てもゲーム内のエリシア王国なのは間違いない。でも、ここに来たということは、もしかして――


私は急いで鏡の前に駆け寄った。大きな鏡に映ったのは、金色の長い髪と優しげな顔立ちの少女……ゲームの主人公そのものだった。


「やっぱり! 私、『デュアル・レジェンド』の主人公、マリアに転生してるんだ!」


嬉しさで思わず声が出てしまう。だって、この世界には私の大好きなキャラクターたちがたくさんいる。みんな、私が何度も攻略した推しキャラだ!


でも、ふと冷静になった瞬間、胸に不安がよぎった。この『デュアル・レジェンド』、普通の乙女ゲームじゃない。バージョンごとにキャラの運命が大きく異なり、サンセットではヒーローだったキャラが、ミッドナイトでは闇に堕ちてしまうことが多い。


「……もし私がこの世界にいるってことは、ミッドナイトの悲劇も訪れる可能性があるってこと?」


そう、ここで思い出してしまった。サンセットの優しい王子、レオン。彼は誰もが憧れるような誠実で頼りがいのあるキャラだった。でも、ミッドナイトでは――


「レオン王子が……闇堕ちしちゃうんだよね」


その姿を思い浮かべただけで、心が痛んだ。ミッドナイトで彼は、王国の裏切りに絶望し、すべてを失ってしまう。信じていた者たちに裏切られ、やがて闇の力に取り込まれてしまうのだ。


「いや、そんなの絶対に許せない! 私はこの世界で、みんなを幸せにするんだから!」


自分の決意を強く握りしめる。これまでゲームでは、どちらかのバージョンでしかキャラを救えなかった。でも、私は両バージョンを知っているプレイヤーだ。未来の悲劇も、運命の分かれ道も全部わかっている。だからこそ、この世界で誰も悲しませないように、全員を幸せに導いてみせる!


「まずは、レオン王子を救うために動こう!」


私はすぐに行動に移した。レオン王子はこのエリシア王国の第一王子で、民からも臣下からも愛されている。しかし、ゲームでは数年後、彼の周囲に裏切り者が現れ、彼を絶望に追い込む。私はその運命を変えるため、まず彼と早く接触することが必要だ。


そう思って、私は王城の廊下へと駆け出した。


――――――――――


広い廊下を走っていると、ちょうど向こうから見覚えのある姿が歩いてくるのが見えた。金色の髪が美しく揺れ、整った顔立ちと気高いオーラを放つ人物――それは、まさにレオン王子だった。


「レ、レオン王子!」


思わず叫んでしまう私に、彼は優しげな笑みを浮かべて近づいてきた。


「どうしたんだい、マリア? そんなに慌てて」


その声、その笑顔、まさしくサンセットのレオン王子だ。ゲームの画面越しに何度も見たはずなのに、実際に彼の優しい声を聞くと胸がドキドキしてしまう。


でも、ここで立ち止まっている場合じゃない。彼を闇堕ちさせないためには、早めに行動しなければならない。


「レオン王子、お願いがあります!」


私は思わず彼に向かって頭を下げた。


「お願い?」


レオン王子は私の行動に少し驚いたようだったが、すぐに優しい声で答えてくれた。


「君のお願いなら、何でも聞いてあげるさ。言ってごらん、マリア」


そう言ってくれる彼の姿に、私は強く心に決意を抱いた。この優しい王子が、闇に堕ちてしまう未来なんて、絶対にさせない。彼を、そしてこの世界のすべてのキャラを幸せにするために――


「私は、王子を信じている人を守りたいんです! だから、王子にもその力を貸してほしいんです!」


レオン王子は少し驚いた表情を浮かべたが、すぐに穏やかな笑顔に戻り、私の頭にそっと手を置いた。


「もちろんだよ、マリア。君がそう言うなら、僕は全力で君の力になるよ」


その言葉に、私は強く頷いた。これで、第一歩だ。レオン王子を救うための、最初の一歩を踏み出したのだ。

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