9 更衣室
体育の授業終了後、真美は優花と一緒にボールを片付けた後、更衣室に向かった。着替えを入れたロッカーを開ける。
「な、何これ?!」
真美が叫んだ。ロッカーに入れていたジュースのペットボトルの蓋が開き、横に倒れていた。ブレザーの制服がジュースでビチョビチョだ。
「うわぁ……」
優花が真美のロッカーを覗き込んで絶句した。真美が落ち込んで呟く。
「ちゃんと蓋を閉めたはずなのになあ。何でだろ……」
ちょうどその時、先に更衣室で着替え終わっていた明日香が、取り巻きと一緒に真美の後ろを通り過ぎた。
「あらあら、制服が台無しじゃない。真美ってホント抜けてるよね」
明日香が鼻で笑った。取り巻きがクスクス笑う。何も言わない真美を尻目に、明日香とその取り巻きは更衣室を出て行った。
「なにあれ、感じ悪っ!」
真美と2人だけになった更衣室で、優花が更衣室のドアに向かって怒った。
† † †
「はぁ……」
「まあ、クリーニングに出せば綺麗になるよ。元気出しな、真美!」
「ありがとう……」
真美が優花に励まされながら、体操服姿で濡れた制服を持って廊下を歩いていると、男子トイレからジュニアが出て来た。すでに体操服から制服に着替え終わっている。
悪魔もトイレに行くのか。家ではトイレに行ってなかったような……などと真美が考えていると、ジュニアが真美に声を掛けてきた。
「あれ、真美さん、その制服どうしたんですか?」
「ジュースをこぼしちゃって、着れなくなっちゃったのよ。今日はこのまま体操服ね」
「ちょっと借りますね」
そう言うと、ジュニアが真美の濡れた制服を持って階段を下りて行ってしまった。
「クリーニング店に行っちゃったのかな?」
優花が不思議そうに呟くと、ジュニアがすぐに階段を上がって戻ってきた。
「お待たせしました。もう乾きましたよ」
ジュニアが真美に制服を返した。制服は何故か乾いていて、ジュースの匂いやベタつきもない。
「ホントだ、乾いてる!」
「どうやったの?!」
真美と優花が驚いた顔でジュニアに聞いた。ジュニアが笑顔で答える。
「まあ一種の魔法的なアレですね」
「ははは、何それ。保健室とかで借りたんでしょ? ジュニア君は機転が効くのね」
優花が笑顔で言った。ジュニアのことだから、本当に魔法みたいなものかもしれない。
「さあ、真美さん、その制服に着替えてきてください」
「そうよ真美、せっかくだし着替えてきなよ。先生には私が伝えとくから」
「あ、ありがとう!」
真美は、ジュニアと優花にお礼を言うと、急いで更衣室へ向かった。
更衣室で制服に着替え終わった真美が教室に戻ると、すでに授業が始まっていた。
真美がこそこそ自席に向かうと、体操服姿で授業を受けている生徒が目に入った。明日香だ。
明日香は何故か悔しそうに真美を睨みつけてきた。
真美が明日香の視線に気づかないふりをして席に着くと、隣の席の優花が小声で話し掛けてきた。
「明日香も飲み物をこぼして制服がビチョビチョになったんだって。いい気味よ」
「ほらそこ、授業進めるぞ」
先生に指摘され、真美は慌てて教科書の準備をした。
† † †
「いやあ、こちらの世界の学校も楽しいですね」
その日の夜、真美の自室。風呂上がりのジュニアが布団に入りながら笑顔で言った。
ベッドで寝転がっていた真美が起き上がり、ベッドの上に胡座をかいて、ジュニアの方を向いた。
「ねえ、ジュニア君。あの制服ってどうやって乾かしたの? どっかから借りてきた訳じゃないんでしょ?」
ジュニアが眠そうな目で言う。
「あれはですね、汚れを返したんですよ」
「返した?」
真美が不思議そうに聞く。ジュニアが笑顔で答える。
「ええ、どうやらあの制服を汚した犯人がいたようでしたので、その犯人に『服の汚れ』を返しておきました」
そういえば、明日香が体操服姿で授業を受けていたが、優花曰く、明日香は制服を飲み物で汚してしまったということだった。
「え、その犯人ってもしかして?!」
真美が聞いた時には、すでにジュニアはスヤスヤと眠っていた。
続きは明日投稿予定です。