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6 悪魔の級友

 翌日、日曜日の午後、真美とジュニアは昨日同様繁華街の大通りを歩いていた。


 昨晩はジュニアと同じ部屋で緊張して寝られないのではないかと思ったが、案外ぐっすりと眠れてしまった。


「ねえ、ジュニア君、契約したがっている人とかは分からないの?」


 真美がジュニアに聞く。


 今日は、真美が強く言ったこともあり、ついにジュニアが通行人に声をかけたのだ。


 しかし、いくら美形とはいえ、オドオドしながら「あの、悪魔なのですが契約しませんか?」と言うジュニアの話を立ち止まって聞いてくれる人はいなかった。


 真美の言葉を聞いたジュニアは、頭を横に振る。


「残念ながら分からないですね。ただ、すでに悪魔と契約した人は分かるのですが」


「え、他にも悪魔と契約してる人がいるの?」


 真美が驚いて聞く。ジュニアが新しくオープンしたお店を満足そうに眺める男性を指差して言う。


「そうですね。例えば、あの男性がそうですね」


「あと、さっき通り過ぎた女性もそうですし、向こうの店に入って行った男性もそうですね」


「そんなにいるの?!」


「ええ、都会には結構いますね。あと、日本は悪魔への抵抗感が比較的少ないようで、契約者は多いですよ」


「そうなんだ……」


「お、ジュニアじゃないか!」


 突然、後ろから声をかけられた。真美が後ろを振り返ると、ホスト風のスーツ姿の若者が立っていた。スポーツマンタイプの爽やかイケメンだ。


「あ、マモン君!」


 ジュニアが驚いた顔で答えた。マモンと呼ばれた若者が真美を見て驚く。


「ついにジュニアが契約できる相手が見つかったんだなあ。どれどれ」


 マモンが真美を見つめる。


「……なるほどね、ジュニアらしいな」


「ねえ、マモン、わたし最後のお願いを何にするか決めた」


 近くの店から出てきた美しい女性がマモンに話しかけてきた。両手いっぱいに高級ブティックの紙袋を持っている。


 マモンが優しく答える。


「何でも言ってごらん」


「わたしをバカにした奴らに復讐したいの」


「君はもう美人で大金持ちだ。その姿を見せるだけで十分復讐になるんじゃないの?」


 マモンが不思議そうに聞く。それを聞いた女性はギラギラした目で言う。


「そんなんじゃ足りない。足りないの! アイツらには死ぬよりも苦しい思いをさせてやらないと気が済まない!」


 マモンが優しく微笑んだ。


「分かったよ。それじゃあ、どう復讐するかは食事でもしながら考えようか。ほら荷物持つよ」


 マモンは女性から荷物を受け取りながらジュニアにウインクすると、女性と一緒に歩いて行ってしまった。


「マモン君は学校でトップクラスの成績です。常に複数の契約を抱えています」


「有名な悪魔の一族の子息で、性格も良くて面倒見もいい。学校の人気者です」


 マモンを見送りながら、ジュニアが(つぶや)いた。


「ですが、彼や彼の一族と契約した魂は……」


 ジュニアが少し怒った顔をした。初めて見る表情だ。


「……ジュニア君?」


「……あ、すみません。何でもありません。小生、何だか甘いものが食べたくなってきました」


「え、まだ1件も契約できてないでしょ?」


「美味しいケーキを食べたら、契約できるような気がします」


「ホント? 怪しいなあ」


 そう言いながら、真美もケーキが食べたくなってきたので、2人は大通り沿いのお店でケーキを食べることにした。


 ケーキはとても美味しかったが、結局その後契約は1件も取れなかった。



† † †



「はあ、今日も契約取れなかったね。やっぱり道端でいきなりっていうのは難しいのか……」


 夜、ベッドに寝転びながら、真美が呟いた。


 布団の中で漫画を読んでいたジュニアが、それを聞いて布団から飛び起きた。


 ジュニアは真美の両手を持って、(すが)るような目で言う。


「真美さん、やっぱりそうですよね! 道端でいきなりは難しいんですよ。別の方法をゆっくり考えましょう」


「う、うん。明日から学校だし、そうしよっか」


 ジュニアの顔を見て、真美は思わずそう答えてしまった。まあ今のところジュニアと一緒で嫌なことはないし、のんびり進めるとしよう。


「それじゃ、私そろそろ寝るね」


「はい、お休みなさい、真美さん。小生はこの巻を読み終わったら寝るとします」


 ジュニアは布団に戻ると、手に持った少女漫画を指差して笑顔で言った。


 何だろう、意外とジュニア君との生活は居心地良いかも。そう内心で思いながら、真美はベッドに潜り込んだ。


 まるで昔から同じように生活していたような、不思議な気分だった。

続きは明日投稿予定です。

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